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2024.03.12

プロダクトマネジメントとは?具体的な業務内容や必要能力を解説

2024.03.12

プロダクトマネジメントとは?具体的な業務内容や必要能力を解説

ビジネススキル

人材教育

現代は、かつてのように製品を開発してリリースすればビジネスが成功する時代ではありません。 モノや情報があふれる現代のビジネスシーンにおいては、顧客のニーズを深く理解したプロダクト開発や、提供方法・購入後のアフターフォローまで注力することが求められます。 そこで重要となるのが、プロダクト全般の管理を行うプロダクトマネジメントという手法です。 当記事では、プロダクトマネジメントの概要やプロダクトマネジメントが広がった背景、業務フローや必要となるスキルまで解説します。自社にプロダクトマネジメントの機能を導入したい方も、今後プロダクトマネジメントの業務に就きたい方も、参考にしていただければ幸いです。 プロダクトマネジメントとは プロダクトマネジメントの「プロダクト」は製品や商品です。プロダクトマネジメントを直訳すると「製品管理」という意味になります。 しかし、業務としてのプロダクトマネジメントは、単に製品管理をするだけではありません。 一般的に、プロダクトマネジメントの仕事は「上流」と「下流」に分かれます。 上流は、製品をマーケットに投入する以前に「何をつくるべきか」「どうつくるべきか」等、プロダクトの開発工程を考える仕事です。 一方の下流は、製品の市場投入方法や投入後の改廃検討等、マーケティングや製品改良・撤収時期の見極めを行います。 このようにプロダクトマネジメントの仕事は範囲が広く、製品管理だけでなくビジネスマネジメントまでおよぶといえるでしょう。 1930年代、アメリカのP&G社ではじまったプロダクトマネジメントの取り組みが礎となり、その後、HP(ヒューレットパッカード)やトヨタ等の企業で発展していきました。 プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントの違い プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントは混同されがちですが、マネジメントの対象が異なります。 プロダクトマネジメントの対象は製品であり、その製品の誕生から撤退するまでが対象です。求められる能力は、開発・技術力やビジネス全般の知識等、幅広いスキルが必要になります。 一方、プロジェクトマネジメントは管轄するプロジェクトが対象であり、決められた期間が過ぎれば終了です。プロジェクトマネジメントのスキルは必要となりますが、どちらかというと対象となるプロジェクトへの知識や理解が必要となります。 それぞれの違いは、以下の表の通りです。   プロダクトマネジメント プロジェクトマネジメント 対象 製品・商品 プロジェクト 期間 製品が市場に存在する限りは続く プロジェクト開始から完了まで 目的 製品価値の最大化 想定した期限・予算内でのミッション達成 求められるスキル 技術・開発の知識やビジネス全般の知識とスキル プロジェクトを管理するスキルや当該プロジェクトへの知見 どちらもプロダクトの開発に関するマネジメントを行うため重複する部分はありますが、プロジェクトマネジメントはプロジェクトを完了させるのが目的です。 プロダクトマネジメントは、企業に自社プロダクトがある限り、継続的に価値や利益を最大化し続ける目的というのが異なる点になります。 プロダクトマネジメントの業務内容 欧米企業と比較して、日本企業ではプロダクトマネジメントを専任で行う人材が少ないといわれています。そのため、プロダクトマネジメントの業務内容のイメージがつかないという方も多いのではないでしょうか。 本章では、プロダクトマネジメントは具体的にどのような業務を担うのかについて紹介していきます。 製品のプロトタイピング 企業方針として製品開発が決定したら、最初にプロトタイピングを進めます。 プロトタイピングとは、製品開発を本格的に始める前に、簡単な機能やデザインのみを実装したプロトタイプ(試作品)をつくることです。 使い心地、必要な工程・リソース等を検証することを指します。 できあがったプロトタイプは、顧客に確認してもらうほか、市場リサーチ等でニーズや改善点等を分析し、さらなる検証を行います。 プロトタイピングで、開発前に製品の改善点や問題点を見つけ出せるため、より品質の高い製品開発を行える点がメリットです。 また、プロトタイプがあることで実際の商品をリアルにイメージでき、新しいアイデアを生み出すきっかけにもなります。 その後、正式に製品開発を行うことになったら、より精緻なスケジュールや予算を決定していきます。 ターゲットの設定、明確化 プロダクトマネジメントを行ううえで、ターゲットユーザーが具体的になっていると、製品の開発もしやすくなります。 できるだけターゲット層の特徴やニーズを明確にし、絞り込むことで製品開発に反映できます。 ターゲット戦略がおろそかになっている場合、見込んだ成果を得ることが難しくなるため、慎重に設定する必要があるでしょう。 このフェーズではマーケティングのフレームワークを使う傾向にあります。 例えば、STP分析や4P分析等です。 【STP分析】 市場を細分化する「Segmentation(セグメンテーション)」 その市場のうち、どの顧客を狙うか「Targeting(ターゲティング)」 その顧客に提供できる、自社の提供価値は何か「Positioning(ポジショニング)」 【4P分析】 ・Product(顧客からみた製品価値) ・Price(価格戦略) ・Place(流通・商流・販売の場所や方法) ・Promotion(広告宣伝・販売促進の方法) プロダクトマネジメントで、開発技術だけでなくマーケティング要素が求められる理由は、このようなプロセスを経るためです。 プロダクトロードマップ・KPI設定 続いて、プロダクトマネジメントをどのように推進していくのかという、プロダクトロードマップを立案します。 同時に、プロダクトマネジメントの成否を確認するためのKPIも設定します。 プロダクトロードマップとは、製品のビジョンやターゲットという概要と、リリースに向けての進捗方法を要約したものです。 プロダクト開発の規模が大きいほど、ステークホルダーが多くなる傾向にあります。 プロダクトロードマップを作成しておくことで、大勢のステークホルダーが、方向性や優先順位等を共有しやすくなるでしょう。 KPIとは、最終成果のみならず、プロセスが順調に進んでいるかを計測するための指標です。 あらかじめ目標数値や中間指標を決めておくことで、指標を参考にしながら途中の軌道修正もスムーズにできるようになります。 効果測定と開発の振り返り 製品をリリースするだけでなく、機能や顧客評価を効果測定し、振り返るのもプロダクトマネジメントの重要な役割です。 プロダクトマネジメントは、自社が対象製品を市場から撤退させるまで続きます。この全体のマネジメントのことを「プロダクトライフサイクル」といいます。 定期的に機能開発を振り返ることで、改良点を見いだせたり、市場でのポジショニング変化の必要性が明確になったりします。 製品の価値を増大させるために、製品に対する分析を継続することが重要です。 プロダクトマネジメントのステークホルダー 大型の開発案件であれば、プロダクトマネジメントには、多くのステークホルダーが存在します。 ステークホルダーの人数や、各メンバーが担うべき役割については企業によって異なりますが、本章では一般的な関係者や役割を紹介します。 CPO(チーフプロダクトオフィサー) CPO(チーフプロダクトオフィサー)とは、最高製品責任者のことです。 CPOの責任や裁量範囲は企業により異なりますが、規模の小さい企業では実質的にCEO(チーフエグゼクティブオフィサー:最高経営責任者)がCPOの役割を担っているケースもあります。 PO(プロダクトオーナー) PO(プロダクトオーナー)は、プロダクトマネジメント全体の責任者、あるいは開発チームの全体責任者を指すことが多いです。 プロダクトコンセプトに基づき、構想をどう開発現場へ落とし込んでいくかを考え、スケジュールやリソースをコントロールしながら実行する役割です。 企業やチームの規模によっては「プロダクトマネージャ」と統合し、POとPMを兼務するような役割になることもあります。 PM(プロダクトマネージャ) PM(プロダクトマネージャ)とは、プロダクトマネジメント全体の実行を主導する役割、あるいは開発チームの実行責任者です。 プロダクトマネジメントの全体計画書や予算・スケジュールを立案し、進捗を確認しながら、何か問題が発生したら調整を行います。 現場メンバーへの指示と経営陣への報告の媒介となるため、プロダクトマネジメントの成否を分かつ重要な存在といえるでしょう。 PMM(プロダクトマーケティングマネージャ) PMM(プロダクトマーケティングマネージャ)とは、顧客が求めているプロダクトを発見し、顧客ニーズを満たせるプロダクトの企画、マーケティング、販売戦略を考える立場です。 PM(プロダクトマネージャ)の役割から派生し、マーケティングに特化した役割として生まれました。 日本国内ではまだPMMを導入している企業は少ないものの、マーケティングが盛んな欧米企業では一般的な職種です。 プロダクトマネジメントに必要な能力 ここまでプロダクトマネジメントの業務について紹介してきましたが、どのようなスキルを持った方に適性があるのでしょうか。 本章では特にプロダクトマネジメント業務に必要な能力を3つ取り上げます。 1. 戦略立案・設計能力 前述した通り、プロダクトマネジメントは、製品管理ではなく製品を中心としたビジネスマネジメントです。 そのため、プロダクトマネジメントを担うには、製品を売るための戦略を描き、実行への道筋を設計する能力が必要となります。 具体的な戦略の内容としては、市場調査からのニーズの発掘という上流工程に始まり、ターゲットやコンセプト設計、リリース後のライフサイクルマネジメント等、多岐にわたります。 単に知見が豊富なだけではなく、実際にビジネスフレームワーク等を用いて、根拠のある戦略を導き出せるスキルが必要となります。 2. マーケティングスキル プロダクトマネジメントでは、マーケターとしての高い能力が必要です。 対象となるプロダクトに応じたマーケティング・セールス戦略を実践し、売上を最大化させるためには、幅広いマーケティング知識や手法を駆使し、実行しなくてはいけません。 例えば、前述したSTP分析や4P分析の古典的なマーケティングのフレームワークにくわえ、最近はデジタルマーケティングに特化した知識も必要となります。 プロダクトマネジメントを担うためには、とりわけマーケティング分野の高い能力は必須です。 3. 数値理解・分析能力 製品の考案~投入~撤収までが範囲になるプロダクトマネジメントは、要所要所で数値を用い、分析する能力が必要です。 プロダクトマネジメントのプロセスは、判断場面が多い傾向にあります。 そのため、根拠となる数値データを読み解き、正しい経営判断を促す役割があります。 もちろん、成果の振り返りの際にも、定量データでの判断が求められるでしょう。 昨今はSaaS等に代表される数値分析ツールが豊富にあるため、最新のITツールを活用する能力も必要といえます。 まとめ 近年、消費者の購買行動の変化スピードは増しています。 一方、製品を作り出すには一定のタイムラグが生じます。変化の激しい時代だからこそ、素早くPDCAを回し、絶えず戦略を見直すプロダクトマネジメントの重要性も増していくでしょう。 戦略立案力やマーケティング力まで求められる能力は広範囲にわたりますが、今後さらに必要な機能といえます。 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 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2024.03.12

OJTを教える側に求められることと効果的なやり方を徹底解説

2024.03.12

OJTを教える側に求められることと効果的なやり方を徹底解説

人材教育

ビジネススキル

OJTは、現場で必要となる実務的なスキルを経験を通じて身に付けていく教育方法です。 新入社員に施される印象が強いかもしれませんが、若手の中途入社者にも適用できるため、多くの企業で導入が進んでいます。 ただ、具体的なOJTの方法が分からず、現場の先輩社員に任せっぱなしになっている企業も少なくありません。 特に、自分自身がOJTを受けた経験がない先輩社員が指導する場合は、OJTのノウハウやコツをきちんと把握したうえでOJTを実施しないと、本来の効果を得るのが難しくなります。 今回は、OJTのメリットや注意点、基本的な実施ステップをあらためて解説します。自分自身がOJTを教える側になる方も、OJTの教育担当を任命しようと考えているマネジメントや人事の方も、参考にしていただければ幸いです。 OJTとは OJTとは「On The Job Training」の略称で、業務経験を通じて行われる教育方法のことです。 一般的には、対象者が配属される部署の上司や先輩社員が教育担当者となり、業務に必要な知識やスキルを指導していきます。 現場実務が多い流通業や飲食業等で、新入社員やアルバイト・パート入社者に、店舗での実務を通じて業務習得させる方法が分かりやすいでしょう。 ほかにも営業職の営業同行や、企画職で一緒に資料作成を行う等、OJTが適用できる業種や職種は幅広いといえます。 OJTとOFF-JTとの違い 職場での経験を通じて教育するOJTに対し、職場外での講習会や研修を実施するのが「OFF-JT(Off the Job Training)」という教育方法です。 OFF-JTは新入社員基礎研修等、比較的同じ状況にある社員を複数集めて実施されることが多い傾向にあります。 従って、個別指導でアウトプットをしながら進めるOJTと比較すると、大人数に対してのインプット型である点が特長です。 複数社員に一斉に教育を施せるメリットがある一方で、社員一人ひとりの教育効果を丁寧に追い切れない点がデメリットといえます。 新入社員を例に取ると、会社の基本情報やビジネスマナー等、全員に必要となる教育をOFF-JTで実施し、配属先での教育をOJTで行うという使い分けが一般的でしょう。 OJT実施の目的・メリット 多くの企業で取り入れられているOJTですが、実際にOJTを実施した企業でよく聞かれる狙いやメリットについて、あらためて紹介します。 1. 教育研修の効率化 前述したOFF-JTの代表的な手法である集合型研修と比較すると、OJTは生産性が高い教育方法といえます。 集合型研修を実施する際は、会場の準備・講師の手配・資料の準備・日程調整等、事前の準備にコストやパワーが発生してしまいます。 一方、OJTは教える側の指導担当が社員であれば、特別なコストは発生しません。 準備のためにある程度の労力は必要となりますが、既存業務で使用しているマニュアルや資料を流用できるケースも多いでしょう。 効率的に社員を教育できる点は、OJTの大きなメリットといえます。 2. 社員定着率の向上 社員の定着率を上げることも、OJTを導入する目的やメリットになります。 OJTでは、実際の職場で今後一緒に仕事をしていく先輩社員や上司に指導をしてもらうことになります。職場でのコミュニケーション機会が増えることで、新しく配属された社員が部署に馴染みやすくなる効果が期待できるでしょう。 特に新入社員の場合、仕事以外に職場の人間関係に馴染むかどうかという不安を抱えがちです。OJTは教育効果を狙うだけではなく、新入社員の不安要素を解消し、部署への定着を促す目的もあります。 社員の離職に頭を悩ませる企業が多い昨今、OJTを社員定着率向上のために活用する企業は今後も増えていくことでしょう。 3. 個人の状況や業務に合わせて指導できる OJTのメリットとして、現場や個人の状況に合わせられる柔軟性も挙げられます。 例えば、教育の定着状況や実践度合いを現場で確認し、その状況に応じて次の教育メニューを考えることができます。教えられる側も自分の状況に応じた教育施策を受けられるため、地に足がついた成長ができるでしょう。 また教える側や職場での状況にも、OJTはある程度、柔軟に対応できます。 新しく発生した業務がOJTと相性が良さそうであれば、先輩社員と一緒にやってみる、等のケースです。 常に新鮮な現場の題材で教育できるだけではなく、時には先輩社員の業務の手助けにもつながる効果も期待できるでしょう。 4. OJT担当者(教える側)のスキル向上 OJTを導入すると、教えられる側だけではなくOJT担当者(教える側)のスキル向上も期待できます。 なんらかの知識を他者に伝えようとした際に、新たな気付きや自分自身の学びにつながった経験は、誰しもお持ちではないでしょうか。 教えるプロセスのなかで、新たなビジネスアイデアが湧いたり、業務改善ポイントが見つかったりすることは、OJTを教える側のメリットといえます。 業務上のメリットだけではなく、分かりやすく伝える力やモチベーションを上げるためのコミュニケーション等、教える側の成長も期待できることから、組織的な底上げにもつながりやすいでしょう。 OJTを実施する注意点 OJTは職場主導で進めていきますが、マネジメントや人事部門は何もサポートをしなくてもいいというわけではありません。 本章ではOJTの本来の効果を得るために、組織全体で注意したい点についてお伝えします。 1. 中長期的な計画が必要となる 一般的にOJTの期間は3か月~1年間と中長期的におよぶため、きめ細やかな指導計画をあらかじめ作っておく必要があります。 計画に基づいた教育を施し、実施期間中には進捗や教育効果を確認しながら、計画のチューニングも行わなくてはなりません。 従って、慢性的に人手不足の職場や、繁忙期の渦中にある現場等では、計画が十分に立てられずにOJT本来の効果が得られにくい点には注意が必要です。 2. OJT担当者(教える側)に掛かる負担が大きい OJTで注意したい点としては、OJT担当者(教える側)にもある程度の負荷が掛かる点です。 OJTでは、対象者1名(多くても2〜3名)に対して教育担当社員を一人配置し、丁寧に指導をするのが基本的な方法になります。 OJT担当者は準備や指導のために時間やパワーを割く必要があり、担当社員に掛かる負担は自然と大きくなってしまいがちです。 OJT担当のミッションを担った社員の通常業務を減らす、上司も一緒にOJTをサポートする、全社的にOJTノウハウを共有する等の負荷を減らす工夫が求められるでしょう。 OJTを教える側に求められるスキル 本章では、OJT担当者に求められるスキルについて紹介します。これからOJTを通じて教育を実施するという方は、ぜひ参考にしてください。 コミュニケーションスキル 実務を教えることにはじまり、フィードバックに至るまで、OJTにはコミュニケーションスキルが欠かせません。 単に話す・伝えるスキルだけではなく、対象者の言動を観察することで理解度を推測するような、相手を理解するスキルも必要です。 一方的に知識を詰め込むような方法では、OJTのメリットは十分に得られません。 相手とのコミュニケーションを重ねながら、成長を促すようなコミュニケーションスキルが必要となるでしょう。 フィードバックスキル 本人が実践した内容について、反応・評価を示すフィードバックスキルも、OJT担当者には求められます。 フィードバックは具体的であればあるほど、本人に伝わりやすくなります。 褒める点、改善を求める点については、具体的な根拠を示し、次の成長目標も詳細に伝えるようにしましょう。 OJT初期段階は、本人もできないことが多く、自己効力感を得にくいため、些細なポイントでも褒めることをお勧めします。 一方で、ある程度の成長が確認できたら、大きめの課題に対してネガティブフィードバックすることも必要です。 ネガティブフィードバックを行う際は、「うまくいかなかった点を自覚したうえで、成長のために改善してもらう」という目的を忘れないようにしましょう。 相手を一方的に叱責したり、モチベーションを下げたりするようなフィードバックは避けてください。 OJTの基本的な4ステップ OJTの基本的な指導法として知られているのは「4段階職業指導法」といわれる手法です。 この指導法は、第一次世界大戦中のアメリカで開発されたプログラムで、今は日本の多くの企業で社員教育の土台として活用されています。 本章では4つのステップをOJTに展開する際のポイントを解説します。 1.自らやって見せる(Show) OJTの最初のステップは、教える側自らが「やって見せる(Show)」ことです。 初めにOJT担当者が実演してお手本を「見せる」ことで、相手は具体的な業務や実践のコツを得ることができます。 言葉やテキストだけでは業務のイメージをつかみにくい場合があるため、まずは動きを積極的に取り入れるようにしましょう。 2.説明する(Tell) 次のステップは、「説明する(Tell)」ことです。 ステップ1.で実演した業務について、業務の意義や目的を伝えることで、業務理解をより深めてもらいます。 この際、業務の目標(達成した状態)も同時に伝えると、より目的意識が高まった状態で業務を進められるようになるでしょう。 3.相手にやらせてみる(Do) OJTの3つ目のステップは、相手に「やらせてみる(Do)」ことです。 ステップ1.と2.で習得したイメージをもとに、実際に自分の体を使いながら業務を体験してもらいます。やってみることで、「思っていたより難しい」「実行するときは、この点に注意すべきだ」等、新しい発見があるはずです。 「『わかる』と『できる』は違う」といわれるように、自ら動くステップは非常に重要です。必ず実践するプロセスを踏ませるようにしましょう。 4.評価・指導する(Check) OJTの最後のステップは「評価・指導する(Check)」ことです。 ステップ3.での実践結果をもとにしながら、良かったポイントや改善すべきポイントをフィードバックしましょう。 コツとしては、実践した直後にフィードバックをすることです。1日の終わりにまとめて伝えるよりも、その場で伝える方が相手の記憶が鮮明なため、改善効果が期待できます。 OJTをより効果的に行うコツ ここまでOJTの基本的なノウハウをお伝えしてきましたが、本章ではより育成効果を高めるためのコツを紹介します。 自社でのOJT実践場面をイメージしながら、お読みいただければ幸いです。 育成目標を設定する 前述した「中長期の計画」とも似ていますが、育成対象者の得意・不得意領域や人柄も踏まえた育成目標を設定します。 OJT担当者が中心となって設定しますが、できればほかの同僚や上司等にも共有したりMBOにすると、育成目標のブラッシュアップや周囲の協力が得やすくなります。 育成目標の設定と組織共有があれば、組織ぐるみでの育成体制を構築しやすいでしょう。 事前に基礎知識を学習してもらう いきなりOJTのような実践教育をするよりも、事前に基礎知識を学習してもらうことで、よりOJTの効果を高めることができます。 知識をインプットした後にOJTでのアウトプットを行うため、知識の定着が効率的に進みます。 事前学習は、勉強会のような座学形式や、学習資料を渡して自主的に予習させる形式が考えられます。 トレーニングを反復して行う 学んだことをスムーズに実践の仕事につなげるためには、反復トレーニングが有効です。 育成目標や丁寧な指導があったとしても、実際に課題を克服したり、スキルを安定的に習得したりするまでには、それなりに時間を要します。 一度きりのトレーニングで終わらせるのではなく、ある程度時間が経過したのち、再度取り組みをさせることを念頭に置いておきましょう。 まとめ 多くの企業でOJTは導入されていますが、OJTの本来の効果を得るためには、本記事で紹介したようなポイントを踏まえることが重要です。 教える側や組織活性化にもメリットが高い取り組みなので、しっかり計画を立てて組織全体でOJTに取り組めるように準備してください。 またOJTというと「手取り足取り」のようなイメージもありますが、昨今のトレンドを考慮すると、リモート勉強会やオンライン講座等のバーチャルな学びも組み合わせると、よりOJTの効果が期待できるでしょう。 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 OJTを行う際のポイントや注意点をまとめたコンテンツを含む、100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.03.12

MBOとは?導入メリットや効果的な運用ステップを紹介

2024.03.12

MBOとは?導入メリットや効果的な運用ステップを紹介

人材教育

人事制度・組織づくり

MBO(目標管理制度)は、社員自らが目標を設定し、達成をめざして業務を進めていくマネジメント手法のことです。 上司からの命令ではなく、本人の問題意識や成長課題に基づいて目標設定する点が特長で、多くの企業で導入が進んでいます。ただし、MBOの本来のメリットを享受するためには、運用やマネジメント側の関与の仕方で気を付ける点もあります。 今回は日本企業に浸透するMBOについて、メリットや注意点、効果的な運用ステップを解説します。 今後MBOの導入を検討している方も、現在のMBOの運用を見直したいとお考えの方も、参考にしていただければ幸いです。 MBO(目標管理制度)とは? 目標管理制度とは、四半期や半年という一定期間で達成すべき目標を決め、期間終了時に目標の達成度合をチェックするマネジメント手法です。 英語の「Management by Objectives and Self Control」の頭文字をとって、「MBO」と略されています。 MBOは、もともと経営学者として有名なP.F.ドラッカーが、『現代の経営』のなかで紹介した概念です。 「Management by Objectives and Self Control」の言葉で示されているように、「目標と自己統制によるマネジメント」がMBOの特長といえます。 つまりMBOは、社員自らが目標設定するため、会社や上司の指示とは異なるボトムアップ方式の目標なのです。自身の目標を達成すると、組織の目標達成にも寄与するため、モチベーションを高く保ちながら業務に取り組めるメリットがあります。 現代ではMBOの考え方は、アメリカはもとより、日本および世界各国の企業に浸透しています。またMBOだけでなく、ほかのマネジメント手法と組み合わせるケースも見受けられます。 MBOとOKRとの違い MBOは、しばしばOKRと比較されます。 OKRとは、インテル社のアンディ・グローブが1970年代に構築した、MBOの一手法です。 MBOは社員の自主性や業績を可視化することで、個々の社員の人事評価に活用できます。 OKRは企業やチームの目標を個々人に連動させることで、組織目標への目線をそろえる目的があります。 一般的に、社員の自主性を重視し、人事評価にも活用するのであればMBOがお勧めです。 一方のOKRは、個人の目標を企業やチームの目標に連動しやすいことから、階層的な管理体制になっている企業に適しています。 ただし、本来のインテルの思想としては、MBOとOKRは別の目的ではありませんでした。MBOで得られる効果をより高くするために開発したのが「OKRメソッド」なのです。 OKRの最大の特長は目標(Objectives)に必ず主要な結果(Key Results)をセットする点です。 これらは、KPI(Key Performance Indicator)やKFS(Key Factor for Success)という指標で略されているケースもあります。 市場に急速な変化が起こった場合、MBOの目標そのものを変更しようとすると、パワーがかかりスピードも遅れる懸念があります。 そのためMBOを取り入れつつも、MBOの機動力をより上げるために「OKRメソッド」を併用するという企業も一定数存在します。 日本で目標管理制度が広がった背景 近年は、日本企業でのMBOの導入率が高くなっています。 労務行政研究所が行った「人事労務諸制度の実施状況調査」によると、日本では78.4%の企業で目標管理制度を導入しています。 参考:人事労務諸制度の実施状況【前編】 実に8割近くの企業で導入が進むMBOですが、もう少し詳しく、目標管理制度が普及した時代的な背景を探っていきましょう。 MBOが日本で注目されたのは、1990年代です。 バブル経済崩壊後、業績の立て直しを迫られた日本企業は、経営や人事制度の大規模な見直しに着手しました。 その際に参考にしたのが、急成長していた米シリコンバレーのIT企業です。 イノベーションの文化や意思決定のスピード等、学ぶべき点が多々あるなか、注目されたのは「成果主義」の人事制度でした。 当時、その成果主義とともに注目されたのが「MBO」です。 成果主義を掲げるなかで、従来型の能力やプロセス重視の評価制度ではなく、結果重視のMBOは相性がよかったのです。 ただし、成果主義の潮流で導入が進んだことで、一部の企業では「MBO=ノルマ管理」のような間違った認識も広まってしまいました。 会社からの一方的な目標を強要したり、結果至上主義のようなドライ過ぎる運用が横行したりした事実もあります。 MBOを導入する際は、ドラッカーが提唱した「and Self Control」を尊重すべきことは、時代背景からも学ぶことができるでしょう。 MBOを導入するメリット これまでMBOの概要や導入が進んだ背景を紹介してきましたが、ここからはより現場で実感しやすい具体的なMBO導入のメリットについて確認していきます。 1. 社員が成長しやすい MBOでは社員自身で目標を設定し、達成までのプロセスを含めて管理します。そのため、自己管理能力が向上する等、MBOを通じて社員が成長しやすい点がメリットです。 上層部から与えられた目標の場合と比べても、自主的に目標達成できるための工夫や努力を行うため、その過程で業務効率化や、より高いスキルの習得が期待できます。 さらにメンバーの目標達成をマネジメント側がフォローすることで、マネジメント側も一体となって社員の成長を後押しできるでしょう。 2. 社員の主体性や自律性が高まる MBOの主役は社員一人ひとりであるため、社員の主体性や自律性が高まりやすい点もメリットです。 目標設定そのものも社員自ら決めますが、そこへの到達プロセスも社員自身でセルフコントロールする必要があります。 仮に目標の進捗が予定通りにいかない場合でも、上層部からの指揮命令を待つのではなく、社員個人がまずは解決策を考案しなければなりません。 もちろん必要に応じて上司の力を借りることもありますが、「自ら考える必要がある」という意識が芽生えることは、仕事に主体的に向かうスタンスが鍛えられるでしょう。 3. 人事評価の透明性・納得感が高まる MBOは情意評価やプロセス評価と比較すると、評価者の主観が入りにくいため、人事評価の透明性や納得感を高めやすいメリットがあります。 達成すべき指標や達成と見なされる状態、達成期限があらかじめ定められていることで、目標の進捗や達成・未達成が可視化されているのがMBOの特長です。 また、評価に納得がいかないときであっても、「何を根拠にこの評価結果になったか」について確認できるため、健全な議論が進めやすい利点もあります。 もちろん、社員自らが設定している指標であるため、どのような結果であっても社員の納得感も得られやすくなるでしょう。 MBOを導入する際の注意点 1990年代に「ノルマ管理」のような誤認含みでMBOが浸透してしまったように、現代でもMBO導入には配慮すべき点があります。 本章では、MBO導入企業で陥りやすい注意点を紹介していきます。 低い難易度の目標を設定してしまう MBOの目標は社員が率先して設定するため、なかには低い難易度の目標を申請する社員もいます。 このように社員の自己申請だけに任せていては、目標レベルに差が生じがちなのがMBOの注意点です。一段高いレベルの目標を掲げる人もいれば、これまで通りの業務の進め方で達成できる内容を選ぶ人もいるでしょう。 MBOは目標の達成度で評価するため、低い目標を設定した方が評価は有利に働くことになります。 挑戦的な目標を掲げた人が低評価で、低い目標を掲げて努力しなかった人が高評価といった不公平な事態になりかねません。 このような事態を防ぐためには、マネジメント側がメンバー間の目標難易度を調整しながら、目標設定をサポートする必要があります。 さらに部署間の難易度を是正するために、人事部門の介入や部門横断での目標確認ミーティング等も有効でしょう。 目標項目以外の業務が疎かになる 設定した目標達成にとらわれすぎて、目標とは関係がない業務を軽視しがちになるのもMBOの注意点です。 MBOのメリットは目標が可視化されることですが、目標には入れていないものの、やるべき業務が組織には数多くあります。 また期中には環境変化も予想されるため、誰の目標にも含まれていない業務が発生することもあるでしょう。 このため、MBOの運用では、期中に他メンバーや組織目標の共有をこまめに行い、メンバーが自分の目標ばかりに集中しないような工夫も必要となります。 期中には面談を行い、目標に含まれる内容や達成基準をチューニングすることで、結果評価の納得感を上げる工夫も効果的です。 社員のモチベーションの低下を招くことがある MBOは結果評価なので、メンバーによっては期中を通じたモチベーション維持が難しくなる点には注意が必要です。 特に営業部門等、数値目標が明確な職種では、マネジメント側が数値の達成状態しかチェックしていないと、メンバーのよい動きが拾えなくなってしまいます。 例えば顧客都合のような不可避な理由で目標達成ができなくても、顧客によい資料を作った・アプローチを工夫した等、評価できるプロセスはあるでしょう。 マネジメント側としては、結果だけではなく「結果に影響を与えるプロセス」に着目し、必要に応じてメンバーを褒める等して、メンバーのモチベーション維持に注意を払う必要があります。 また、経験の浅い新入社員やMBOを導入して間もない企業では、メンバーが適切な目標を立てられないこともあります。マネジメント側から適切なサポートが受けられないと、モチベーションの低下につながるため注意が必要です。 効果的なMBOの運用ステップ 効果的にMBOを運用するために、押さえるべき運用ステップを紹介します。あくまで基本的な流れとなりますので、適宜自社の状況に応じてアレンジいただければ幸いです。 STEP1. 目標を設定する 人事評価にMBOを活用する場合は、期初にメンバーからの申請を基に目標を設定します。 この際、メンバーの目標申請と組織・上司からの期待をすり合わせすることが重要です。 メンバーの申請だけを鵜呑みにしてしまうと組織成果から外れる可能性があります。一方で組織側からの期待だけを押しつけてしまうと、MBOのメリットが享受できなくなるでしょう。 期初の目標設定面談では、メンバーからの申請を尊重しつつも、組織成果からの期待・メンバーへの成長期待・他メンバーとの目標バランス等、幅広い視点でメンバーと目標をすり合わせる必要があります。 健全に話し合いを進めながら、メンバー・マネジメント側の双方が「今期はこの目標でやっていこう」と合意形成できることを目標設定のゴールとしましょう。 STEP2. 目標のブレイクダウンをする 目標内容のすり合わせだけでなく、もう一段目標のブレイクダウンをすることも必要です。 例え目標そのものは合意ができていたとしても、達成への到達プロセスが曖昧では、目標が未達に終わってしまうリスクがあります。 そのため、できれば期初の早い段階で「どのように達成をめざすか」という達成プロセスのブレイクダウンもしておきましょう。 前述したOKRメソッドを使い、目標達成までの中間指標であるKPIの設定もお勧めです。 また個別メンバーとの合意だけでなく、他メンバーや他部署の目標をチェックしたうえで、必要に応じて目標の横並び調整をすることも忘れないでください。 STEP3. 目標を遂行する MBOは目標設定と結果評価がクローズアップされがちですが、期中の目標遂行期間のフォローも必要です。 目標達成のためには、定期的な面談で進捗状況を確認し、状況に応じたマネジメント側のサポートが重要となります。 定期的に面談を行っていれば、進捗が頓挫したときや問題があったときに迅速に対応できます。問題が小さいうちに解決につなげられるため、目標の達成確率を上げることができるでしょう。 また、大きな環境変化のような予想外の事態が起きた際には、期中であっても目標修正をタイムリーに行うようにしてください。 STEP4. 結果を評価する 目標設定と同様に、結果評価の際にもメンバーからの自己申請を基に行います。 達成度の評価や根拠をメンバーが申請したうえで、マネジメント側が総合的に判断する流れがよいでしょう。 評価面談の際に自己評価とマネジメント側からのフィードバックを繰り返すことで、共通認識が深まることにもつながります。 また結果の評価という定量的な部分だけでなく、定性的なプロセスも評価することがお勧めです。目標達成の可否のみであれば、メンバーのモチベーション向上に貢献しにくくなります。 結果に関わらず、よかった動きや次にめざすべき成長課題を話し合う機会としましょう。 まとめ MBOは人事評価で活用されることが多いですが、本来は社員の自主性を引き出すマネジメントの概念です。 昨今は「自律キャリア」や「ワーク・ライフ・バランス」等、社員を主体とする制度を検討する傾向にあるため、日本企業ではMBOが馴染みやすくなりつつあるといえます。 ただし本来のMBOの目的を享受するためには、現場マネジメントや人事部門に工夫が求められるのも事実です。 一般的な概念だけではなく、自社に即した実運用を見越しながら、MBOを導入するようにしましょう。 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 MBOや部下の目標管理に役立つコンテンツを含む、100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.03.12

SNS炎上の原因と対策|国内外5つの事例を紹介

2024.03.12

SNS炎上の原因と対策|国内外5つの事例を紹介

人材教育

人事制度・組織づくり

ビジネススキル

情報リテラシーの意味に変化が起きた要因として挙げられるのは、誰でも気軽にネット上で情報を発信できるようになった影響で、「炎上」などのトラブルが頻発していることです。 アルバイトなども含めた従業員の情報リテラシーを高めることは、企業としても急務です。なぜなら、たった一人の従業員のうっかり事故が、会社全体に悪影響を及ぼしてしまうリスクがあるからです。 今回は、特に話題になっているソーシャルメディアでの「炎上」事例を通して、情報リテラシー研修の必要性について考えていきたいと思います。 事例紹介 まずは、国内と海外での企業に関わる「炎上」事例をご紹介します。 いずれも企業の公式アカウントなどではなく、会社の目が直接届きにくい従業員のプライベートでの行動が、会社にも悪影響を与えてしまった事例です。 国内での「炎上」事例 ・空港 ショップ店員 芸能人が来店した際に、クレジットカード伝票や購入時のサインを店員が撮影し、Twitterに掲載。他のTwitterユーザーからの指摘ですぐに削除したものの、騒ぎは収まらず新聞などでも取り上げられる事態となりました。 結果、従業員が契約解除となっただけでなく、店舗を運営していた会社の役員は報酬の一部を自主返納することを発表。また、空港の公式ウェブサイトからは正式に謝罪文が掲載されました。 ・製薬会社 社員 MR(医薬情報担当者)の女性社員が、「同僚が睡眠導入剤を不正に入手し、飲み会でお酒に入れた」などとツイート。医薬品を適切に扱わなければならないはずのプロが、いたずらに使用したことに対してモラルを疑う書き込みが集中しました。会社は社員に対し調査を実施。ホームページに、お詫びのお知らせが掲載されました。 ・システムエンジニア ある会社のシステムエンジニアが、競合会社の社長について「何もわかってねーなー」などとツイート。他にも過激な発言や自身の会社への批判を繰り返していました。 本人は属している会社を明かしていませんでしたが、その他のツイートなどから会社や実名などを洗い出されてしまいす。その後は「○○会社のエンジニアが」と社名つきで炎上する結果となりました。 海外での「炎上」事例 ・大手ピザショップ 従業員 従業員が、店舗内で食材を鼻に入れたりピザ生地にツバを吐きかけたりといったいたずらを、動画でYouTubeへアップロード。会社の管理の杜撰さを問題視する声が集まり、ニュースなどでも取り上げられる事態となりました。最終的に、社長が謝罪動画を展開してようやく沈静に向かいました。 ・インターネットサービス会社 広報部長 ある大手インターネットサービス会社に所属する広報部長の女性が、 「今からアフリカに行きます。エイズになりませんように。冗談よ、私は白人だから。」という内容をツイート。 彼女のフォロワーは200人足らずだったそうですが、このツイートは差別的と受け止められ、世界中に拡散し炎上することとなりました。この短い文章で会社が信用を失ったのはもちろん、発言した本人は翌日即解雇されてしまいました。 なぜソーシャルメディアで「炎上」が起こるのか ご紹介した事例から、会社やブランドの公式アカウントでなくても、従業員の「炎上」が結果として会社に飛び火し、悪影響を与えてしまうことがお分かりいただけたと思います。 また、ソーシャルメディアでの「炎上」は、アルバイトから役職者まで、果ては経営者までもが当事者となりうるのが特徴です。では、「炎上」が発生してしまうのには、どのような背景があるのでしょうか。 メッセンジャーアプリとの違いの理解不足 特に若い世代で多いのがこのケースです。不特定多数のユーザーがアクセスできる状態になっているにも関わらず、本人は友達のみに情報を発信しているつもりのため、タガが外れて過激な内容を発信してしまうのです。 LINEなどメッセンジャー機能を主とするサービスと、不特定多数と関わりあうことが前提のソーシャルメディアとの使い分けを正しく理解する必要があります。 読み手に対する想像力の不足 みんなが読んでいると認識していても「炎上」は起こってしまう場合があります。そのほとんどが、軽い気持ちで人を不快にさせる内容や、モラルに欠ける内容を書き込んでしまう場合です。 ネット上には、様々な立場の人がいるということを再認識し、投稿する前に本当に問題の無い内容か確認する必要があるでしょう。 また、プライベートのアカウントなら何かあっても自分が謝れば済む、と考えてしまうのも誤解です。職場や仕事に関わる内容を投稿すれば、会社に迷惑がかかる可能性があることを認識しなくてはなりません。 情報リテラシー以外の問題 本来の情報リテラシーだけでなく、別の要因とも絡み合っているケースが多くあります。例えば、従業員の個人情報に対する意識の低さや、業務上の規則を守っていないがゆえに炎上した場合、根本原因はそちらにありソーシャルメディアはそれが露呈するトリガーに過ぎません。 しかし、それらの間接的な要因となった違反行為も、情報リテラシーと紐づけて考えるべきだと思います。規則を守ってもらうことが重要なのはもちろん、「炎上」の要因にはある程度傾向があるので、そこから対策も導き出すことができます。 ネットリテラシー研修をしよう では、これらの従業員による「炎上」を防ぐにはどうすればよいでしょうか?ソーシャルメディアがこれほど普及した世の中、従業員に利用を全面禁止することは不可能です。やはり、従業員の情報リテラシーを高めることが重要です。 「ソーシャルメディア利用ガイドライン」を設けよう まず挙げられるのが、社内で「ソーシャルメディア利用ガイドライン」を設けることです。従業員によって、ソーシャルメディアに関する知識や危機感のレベルはバラバラです。やってはいけないこと、危険なことなどを明確にする必要があります。 ただし、従業員がガイドラインを守ろうとせず、形骸化してしまっては、結局「炎上」を未然に防ぐことは難しいでしょう。そこで次に必要になってくるのが、情報リテラシー研修です。 ガイドラインを形骸化させないための「情報リテラシー研修」 情報リテラシー研修では、従業員にガイドラインの中身を理解してもらうことはもちろん、自主的に守ろうという意識をもってもらうことが重要です。 炎上は他人事ではなく誰にも起こり得ること、ネットリテラシーを高めることが会社と従業員双方を守ることにつながることを理解してもらいます。また、知識だけでなく事例紹介などを通して個々が適切な判断ができるよう、考える力を養うことも必要です。 たった数十文字の書き込みで会社を危機に追い込んでしまう炎上。今や「従業員の自己責任」では済まされない状況です。会社のリスクとして認識し、その回避のため情報リテラシーの向上に取り組む必要があると思います。 参考: 「バイトテロ、ネット炎上を未然に防ぐ―― 今、求められるネットリテラシー教育とは」HRプロ 「新入社員に教えるべきこと、それは“ネットリテラシー”」ITmedia ビジネスオンライン 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 SNS炎上対策とケーススタディが学べるコンテンツを含む100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.03.03

なぜ低い?日本の女性管理職進出率

2024.03.03

なぜ低い?日本の女性管理職進出率

人事制度・組織づくり

最近では、キャリアアップに余念のない若い女性の姿をよく目にします。 「働く女性」が当たり前となった今日、女性の就業者率で見ても、日本のそれはほかの先進国と大差はありません。しかし、こと管理職レベルでの女性の進出となると、話は違うようです。 なぜ進まない?女性管理職の登用 各国の企業の課長以上、または管理的立場にいる管理的職業従事者に占める女性の割合をまとめてみました。データは2023年度のものとなります。 アメリカ 41.0% イギリス 36.0% スウェーデン 43.0% スペイン 33.0% ポルトガル 38.0% 中国 19.0% 日本 15.5% アメリカでは41%、スウェーデンで43%となっていますが、中国は19%、そして日本はわずか15.5%と欧米の先進国と比較すると、かなり低いことがわかります。 参考データ:(World Economic Forum)​​ (OECD Statistics)​​ (UNECE)​ 「家事や育児は女性の仕事」という社会的風潮が原因か 日本で管理職への女性の登用が進んでいない原因には、次のようなことが考えられます。 結婚を理由に退職する女性が多い 育児休暇が取りづらい職場環境 就業時間と家庭のバランスを取るのが難しく、出産後に仕事を続けられない 女性管理職を受け入れる会社の仕組みが整備されていない 入社時から一般職/管理職に分かれる人事管理制度 こうした状況は、男女ともにワーク・ライフ・バランスへの意識が不十分で、女性が家事や育児を担当するのは当たり前といった社会的風潮がベースとなっているようです。 女性管理職を育てるために企業ができることは? しかし、結婚、出産後も仕事を続けたいと願う女性は近年増えており、管理職を務める能力を持った女性も多く存在します。 この状況を打開するためには、女性の個人的努力に任せるだけでなく、企業側からの働きかけが欠かせません。 以下に、企業ができるサポート体制の具体例を挙げてみましょう。 産休・育児休暇制度の整備 復職後のワーク制度の変革(時短勤務、フレキシブル労働、自宅勤務など) 男性優先の評価制度の改正(昇進、昇格、給与制度など) 女性リーダーを育てる育成プログラムの実施 管理層も含めた社内の意識啓発の促進 女性自身の意識改革(社内外、異業種、海外拠点を含めた女性社員の交流ネットワークの構築など) 企業側が女性にとって働きやすい職場環境を整えていく以外に、女性たち自身の意識改革もよりいっそう重要になってきます。 日本では、管理職として道を歩んだ女性のモデルケースが少ないために、多くの女性が「私が管理職に就いたら、やっていけるのだろうか」という不安を抱えています。 そのため、企業側には、女性同士がこんなワークスタイルや育児の仕方もあるといった経験をシェアしたり、問題を話し合ったりできる場の提供も求められています。 女性が自ら「リーダーになりたい」と思えるように意識改革を行っていくことが、今後大きな効果を生んでいくに違いありません。 女性の管理職進出が進む海外では何が違う? 統計でみるかぎり、欧米諸国での女性管理職率は高いことがわかっていますが、必ずしも女性のキャリア進出がスムーズに進んでいるわけではありません。 海外でも「女性は家庭」という意識はあり、その偏見と戦わなければならない女性の姿は、程度の差はあれ日本と共通するものがあります。 女性が働きやすいサポート体制を準備 ただ、企業側の仕組みづくりにおいては、大変な努力がみられます。 たとえば、多くの欧米企業はワーク・ライフ・バランスの大切さを十分認識しており、女性たちには、先に挙げたようなフレキシブルな労働時間や自宅勤務のような選択肢がすでに準備されています。 また、性別より能力重視の公正な評価制度、働く女性がお互いのワークスタイルについて学び合える女性リーダーたちとのネットワーク構築などにも取り組んでいます。 日本と比較すると、会社のトップレベルから社員まで女性活用に対する理解度が高いと言えます。 女性登用を進める企業が未来を勝ち抜く 人材不足が叫ばれる今日においては、女性を戦力として活かしきれていないことは、企業が本来持ちえる人材ポテンシャルをみすみす逃すこととなります。 性別にとらわれず優秀な人材を積極的に育成していける企業こそ、未来に向かって高い競争力を蓄えることができるのではないでしょうか。 参考サイト: 「日本はなぜ女性管理職が少ない?欧米と何が違う?女性活躍の制度づくりの課題とは」Business Journal 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.03.01

インストラクショナルデザインとは?研修を効果的に設計

2024.03.01

インストラクショナルデザインとは?研修を効果的に設計

人材教育

eラーニング

社内で問題が持ち上がったとき、社員にどういった知識やスキル、態度を身につけてもらえば解決につながるのか、頭を悩ますことが多いのではないでしょうか。その問題解決の成否は、企業側がいかに効果的な研修内容を用意できるか、社員に意欲的に取り組んでもらうかにかかっています。今回は、研修を成功に導くカギであり、日本でも最近ますます注目度が上がっている「インストラクショナルデザイン」について解説していきましょう。 インストラクショナルデザインとは? 「インストラクショナルデザイン」(Instructional Design、以後ID)とは、「それぞれの環境において、最も効果的かつ効率的な教育を設計・開発するための方法論」(『日本の人事部』人事辞典より)のことです。 米国ではすでに1980年代から企業研修分野に導入され始め、大手企業では専属のインストラクショナル・デザイナーを抱え、独自の研修デザインが行われています。 企業戦略を着実に遂行するには適切な人材が必要ですが、IDを活用し、カスタマイズされた研修内容を作成していくことで、将来の業績や成果に結びつく学習の効果と効率を最大限に伸ばすことができるのです。 日本では2000年ごろを境に、eラーニングの普及にともないIDが意識され始めました。日本マクドナルドでは顧客満足度の向上やアルバイト従業員の離職率の改善などに効果を上げたほか、キャノンでもeラーニングのコンテンツ開発にIDを活用するなど、導入例が増加しています。 インストラクショナルデザインの5つのプロセス IDは、「ADDIEプロセス」と呼ばれる5つの基本モデルから形成されます。 1.分析(Analysis):ニーズ調査、問題と対象者分析 組織が抱える問題や課題がどのようなもので、研修が解決策として最適かどうかを分析する。また、社員のなかから対象者を絞り込む。 2.設計(Design):学習目標の設計、eラーニングやOJTなど手段の設定、内容設計 対象者は何ができず、受講後は何ができるようになっているべきかの具体的なゴールを設定する。業績や成果に結びつく目標を立て、最適な手法を選択し、研修効果の測定法や評価指標などを明確化する。 3.開発(Develop):教材、ツールの開発、教授プランの作成 研修で使用する教材やシステムの開発、作成をする。 4.実施(Implement):開発教材の実施、データ収集、フィードバック作成 開発した研修を実施する。評価のためにデータや受講者、講師からのフィードバックを収集する。 5.評価(Evaluate):実施後の評価 研修全体の方向性チェック、問題点の洗い出し、解決策提示を行う。 たとえば、課題が「自律した仕事ができる部下の育成」である場合、まず研修が有効な手段であるかを分析します。 その際、指導する立場のスキル不足が確認されたのであれば、しかるべき対象者に向けた「マネジャー研修」を企画します 。その研修では「部下の能力の見極め方」や「部下とのコミュニケーションのはかり方」、さらに「モチベーションアップの方法」といったスキルを習得してもらうことを目標とし、どういう手法や教材がいいのかを検討するなど、具体策へと移行していきます。 IDは戦略的な人材開発の強い見方 研修の組み立て方ひとつとっても、経営における「戦略的パートナー」としての人事部の役割は、過去にも増して重要視されるようになっています。研修の立案から評価までの各ステップを効果的にサポートし、ゴールへ導くIDの考え方は、単に教材開発の現場にとどまらず、人材開発担当者が身につけるべき理論なのです。 参考サイト: 日本のインストラクショナルデザイン 現状と展望 Next Education インストラクショナルデザイン 日本の人事部 インストラクショナルデザイン 課題解決へのアプローチ 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.03.01

個人キャリアの尊重で企業に競争力を生む2つのポイント

2024.03.01

個人キャリアの尊重で企業に競争力を生む2つのポイント

人材教育

人事制度・組織づくり

グローバルビジネスで競争力を発揮している企業では、個人のキャリアを中心にすえた「タレントマネジメント」を積極的に行なっています。 今回は「従業員エンゲージメント」の観点から、「タレントマネジメント」が重要な理由について考察してみます。 なぜ個人のキャリアの尊重が企業に競争力をもたらすのか? タレントマネジメントは、ビジネスで求められる適正な人材の育成と確保を目的としています。人材の能力やスキルをデータ化することで、個人の能力の発掘・開発、後継者の選抜、組織編制や人事配置を戦略的に実行できます。 これまでは会社が必要とする役職や業務に社員を従わせており、個人の適正や能力、希望に沿うタレントマネジメントについてはあまり考慮されていませんでした。 しかし、タレントマネジメントによって、個人がより能力を発揮してキャリアの構築ができるようになるのです。 従業員エンゲージメントの向上で利益率もアップ 従業員エンゲージメントとは、会社と社員がお互いのために「奉仕する」ことで、組織としてのパフォーマンスが高まるという考え方です。社員の会社に対する誇りが高いモチベーションとなり、ひいては会社の発展のために自助努力することにもつながります。 世論調査・コンサルティングサービスのGallup(ギャロップ)社は、2012年にのべ140万人の従業員を対象とした「Gallup Q12® Meta-Analysis」で、従業員エンゲージメントと企業パフォーマンスの関係性を調査しました。 その結果、従業員エンゲージメントの上位1/4の企業と下位1/4の企業を比較すると、上位の企業のほうが顧客評価は10%、利益率は22%、生産性は21%高いことが判明しました。また、離職率や常習欠席率、商品の欠陥率でも、ポジティブな影響が大きく現れています。 タレントマネジメントは高いエンゲージメントに貢献 組織変革コンサルティング会社である株式会社マングローブの代表取締役・今野誠一氏によると、高いエンゲージメントを実現させるのは誰かの役に立っているという「貢献のエネルギー」、自分が成長しているという実感を得られる「成長のエネルギー」、こうなりたいという自分自身の姿を描ける「実現のエネルギー」の3つだといいます。社員ひとりひとりのやる気や自己実現への欲求が満たされて初めて、組織としての力が発揮されるのです。 そのために、企業は個人を的確に育てるタレントマネジメントを行う必要があります。タレントマネジメントは、企業が強い組織づくりを進めるうえで欠かせない施策のひとつなのです。 トップダウンが成功のカギとなる こうしたタレントマネジメント施策の実行には、会社の文化や組織づくりの根本的な改革が必要となるため、社長以下、人事、管理部門が一丸となった取り組みが求められます。人事担当者がそのけん引役となるべく、社内の連携を強めるようなアクションを起こしていきましょう。 こちらの記事も読まれています: 勝ち続ける企業には欠かせない「グローバル人事制度」とは 海外グローバル企業の人材マネジメントはここが違う! 参考: 2015 Trends in Global Employee Engagement (PDF)|Aon  How Employee Engagement Drives Growth|Gallup  世界でダントツ最下位!日本企業の社員のやる気はなぜこんなに低いのか?|ダイヤモンド・オンライン  成果を生み出す 従業員「エンゲージメント」の主要10ステップとは?|日本の人事部   

2024.02.14

オンライン研修とは?メリットや注意点を実践的に解説

2024.02.14

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人材教育

eラーニング

「オンライン研修を導入する企業が増えているようだが、自社でも効果があるのか」 「オンライン研修を成功させるにはどうすればいいのか」 このようにお悩みの人事担当者の方も多いのではないでしょうか? コロナ禍をきっかけに、企業で大幅に普及が広がったオンライン研修。働き方改革の潮流も後押しとなり、新しい研修のあり方として注目されています。 しかしこれまでオンライン研修を実施したことがない企業では、具体的な効果や進め方が分からないという声もあるようです。 今回は、オンライン研修のメリット・デメリット、効果を上げるためのノウハウについてお伝えします。 オンライン研修を検討中の方は、自社の状況を思い浮かべながらご一読ください。 オンライン研修とは オンライン研修とは、講師や受講者が同じ場所に集まることなく、オンライン上で開催される研修です。Web会議システムを用い、パソコンやスマートフォンを通じて実施されるのが一般的です。 具体的には、講師のいる会場と各拠点をインターネット回線でつなぎ、受講者は手元のテキストやパソコン画面を確認しながら、講師の音声をヘッドホンで聞いて学びます。 オンライン研修のほか、実施形態に応じて「Web研修」、「ウェビナー(WebとSeminarを組み合わせた造語)」とも呼ばれています。 かつてのオンライン研修は、IT企業のデモに代表される特定場面で活用されていましたが、昨今は企業規模や業種を問わず広がってきており、スタンダードになりつつあるといえるでしょう。 オンライン研修が注目される背景 オンライン研修は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の動きを受け、一気に需要が高まりました。 インターネットを通じた非接触での研修が可能なため、密集・密接を防ぐことができるためです。 Withコロナを掲げるニューノーマルの時代になっても、オンライン研修の普及は広がりを続けています。 働き方改革が進み、時差出勤やテレワークを導入するなど、一人ひとりの働き方そのものを見直す組織が増えているからです。 すべての対面・集合型研修をオンライン研修に置き換える企業も一定数はでてきています。しかし、今後は対面・集合型とオンライン双方の特徴を踏まえて、ハイブリッドで研修を行う企業が増えることが予想されます。 従来型eラーニングとの違い 従来型のeラーニングとは、パソコンやモバイル端末、DVDなどの情報技術を利用して行う学習方法のことを指します。 サーバー(学習管理システム)に保存した教材を配信し、パソコンやスマートフォンなどを用いて受講する形式です。 近年はeラーニングもインターネット回線を介することが当たり前になったため、eラーニングは、オンライン研修のひとつとする考え方もあります。 例えば企業によっては、以下の使い分けをしていることもあります。 eラーニング……録画された講義を受講する「一方向型」 オンライン研修……受講中にリアルタイムで講師や受講生同士のやりとりを行う「双方向型」 いずれにしても厳密な定義ではないため、自社なりに言葉の使い方を区別するようにしましょう。 オンライン研修のメリット 多くの企業で導入が進んだ理由となった、オンライン研修のメリットをお伝えします。 コストや手間が削減できる 対面・集合型研修と比較すると、コストや準備の手間が削減できるのがオンライン研修のメリットです。 交通機関の利用や宿泊などが発生しないため、研修参加時の交通費や宿泊費が発生しません。また、全員が集合できる会場を用意する必要もありません。 受講者側も、研修前後の移動時間を確保する必要がなくなるため、業務時間の調整がしやすいでしょう。短時間の研修であれば、業務の合間に研修を受講でき、自分のペースで学習することが可能になります。 時間や場所がほとんど制限されない オンライン研修は、対面・集合型研修と比較して幅広い受講層に対応することが可能になります。 全員が一か所に集まる必要がないため、インターネットに接続できる環境と機器がそろっていればどこにいても受講可能です。 例えば地方拠点の受講者も、出張の負担なしに研修に参加することができます。 また、研修を録画して共有しておけば、視聴する時間も受講者の自由です。 これまでは時間や場所の制約で参加できなかった人もオンライン研修の対象となることから、社員間の研修格差の改善ができます。 インタラクティブなやり取りができる 講師と受講生とインタラクティブ(双方向)なやり取りができるのも、オンライン研修の魅力です。 Web会議システムを利用したオンライン研修は、複数の受講者をグループ分けすることも可能です。 全体での講義のあと、それぞれのグループに分かれてディスカッションをしたり、講師がフィードバックを与えたりなど、相互のコミュニケーションをとることができます。 さらにオンライン研修では、チャット機能を使って参加者の声を集めることができる特長もあります。例えば、講師への質問をチャットで行い、それに対してのフィードバックを講師がライブで行う、といったインタラクティブな講義も可能です。 オンライン研修のデメリット 次に、オンライン研修を実施した企業から、デメリットとしてよく聞かれる点についてもお伝えします。 横のつながりができにくい 対面・集合型研修と比べて横のネットワークが生まれにくい点は、オンライン研修のデメリットとしてよく聞かれます。 オンライン研修は、他の受講者から受ける刺激や受講者間の交流が、集合型研修と比べると少ない傾向にあります。受講者間の関係性構築を研修の目的としている企業からすれば、やや物足りなさを感じるでしょう。 ただしオンライン研修であっても、グループディスカッションや交流の時間を設けることで、デメリットの解消が期待できます。 内容に向き不向きがある オンライン研修は、実習型や技術の習得を目的とした講習には不向きとされています。 実務に必要な手技や細かい接客技能などを習得する目的の場合、オンライン研修では対応が難しいでしょう。ワークショップや実習をともなった研修をオンラインで行う際は、実施に相応の工夫が必要となる可能性があります。 オンラインでの研修を強行してしまうと、参加者の不満・不評にもつながるため、内容に応じて対面での研修も検討するようにしましょう。 オンライン研修実施のコツ(事前準備) オンライン研修をスムーズに行うための、事前準備のコツについて紹介します。 テクニカルトレーニングを行う オンライン研修を行う場合は、事前にパソコン操作のテクニカルトレーニングを行いましょう。 受講者の職種や業界、あるいは世代によって、オンラインでの研修の操作に不慣れな方もいます。操作方法が分からないと、ワークショップに参加できない、質問ができないなど、研修効果が半減してしまいます。 必要な機材、ログイン方法などの操作マニュアルを用意するのはもちろん、参加者にテクニカルトレーニングを行うよう実施する側に依頼しましょう。 【テクニカルトレーニングの例】 マイクのオン・オフの切り替え方(ミュート操作) カメラのオン・オフの切り替え方 質問やチャットの操作方法 簡単な操作であれば、研修の冒頭にアイスブレイクのひとつとしてテクニカルトレーニングを行うのもお勧めです。 オペレーターを用意する 研修講師とは別に、機材を操作するオペレーター担当者を用意すると、当日の運営がスムーズに進められます。 Web会議システムの操作に慣れた方や、機材トラブルに対応できる方をオペレーターにアサインするといいでしょう。即座に対応できる人がいるだけで、講師や受講者が安心して研修に取り組むことができます。 飽きさせない工夫をする 当日の進行や資料は、なるべくコンパクトにして、受講生を飽きさせない工夫をしましょう。 オンライン研修を長時間行うと、受講者の集中力が切れてしまうことが考えられます。 受講者が集中して研修に参加できるよう、タイムスケジュールはコンパクトにすることが望ましいです。30~60分程度講義を行ったら10分休憩を挟むなど、集中力を保てるようにスケジュールを組みます。 オンライン研修実施のコツ(当日~実施後) 次に、当日およびオンライン研修実施後にやるべき工夫点を紹介します。 カメラオンを推奨する 受講者に対して、カメラをオンにするように促しましょう。 受講者は「顔出し」で研修に参加することで、集中力が高まります。 研修内容によっては、顔が見えることでグループディスカッションも行いやすいでしょう。 講師の観点でも、受講者の反応を確認しながら研修を進行できるメリットがあります。 映り込んでしまう背景が気になるといった意見があったり、プライベートを保護したい場合は、バーチャル背景の活用を案内したりしてください。 内容を録画する オンライン研修の実施映像は、当日に録画しておくことをお勧めします。 受講者の状況によって、研修の開催日程とのスケジュール調整ができず、参加できないこともあるでしょう。業務都合で、当日欠席や途中退席となってしまうケースもあります。 前述したとおり、録画内容を共有すれば、不参加者や途中退席者であっても、後日の受講が可能です。 受講済みの従業員にとっても、録画映像で復習し、理解を深めることができます。 ただし録画の際はそのことを参加者全員へ事前に共有し、トラブルがないよう注意しましょう。 実施後のフォローを行う 受講後は、忘れずにしっかりフォローする必要があります。 フィードバックをしたり、レポート提出を設けたりするなどしてフォローしましょう。 使用するWebツールによっては、オンラインで受講後のアンケートまでできるものもあります。 次の研修企画のための情報収集を行うとともに、気になる受講者は個別にフォローしてください。 まとめ 今回は、企業ではスタンダードになりつつあるオンライン研修について取り上げました。 企業にとってはコストや手間の削減ができ、受講者は自分の時間を確保しながら学べる、メリットが大きい研修形式といえます。 オンライン研修を実施したことがないという企業は、まずは社内の小規模の勉強会からオンライン研修を試してみてはいかがでしょうか。 eラーニングは社員教育との親和性が高く、学習者にとっても企業にとってもメリットの要素が多い学習方法です。自社の研修内容に合わせてより効率的・効果的な提供方法をぜひ検討してみてください。 eラーニングとは?概要からメリットやトレンドまで徹底解説 eラーニング導入で失敗しないための3つのポイントを解説 効果の高いeラーニング教材の作り方と3つのポイント【企業事例付き】 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コンテンツ以上の厳選ラインナップは資料請求からご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2024.02.13

eラーニングでコンプライアンス研修を効率的に行う方法

2024.02.13

eラーニングでコンプライアンス研修を効率的に行う方法

人材教育

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コンプライアンスという言葉は、今や社会人なら聞いたことが無い人は居ないというほど世の中に浸透しています。企業においてコンプライアンスが注目され始めた背景には、リスクマネジメントとして経営者に認識されてきたことが挙げられます。また、企業の社会的責任(CSR)を果たすうえでもコンプライアンスの実現が重要視されています。 実際に、たった一人の社員がコンプライアンス違反を犯してしまうことで、損害賠償が発生したりイメージダウンによる業績悪化を引き起こしてしまうことも珍しくありません。そのため企業には、社員一人ひとりにまでコンプライアンス意識を高めてもらう、きめ細やかな対応が求められます。 コンプライアンスとは? コンプライアンスは、日本語で「法令遵守」などと呼ばれることもありますが、語源は英語の“comply”で「(何かに)応じる・従う・守る」という意味です。法律に限らず業務マニュアルやプライバシーポリシーのような社内規則、さらには法の精神や社会倫理なども含め、幅広くルールを遵守するもの、という考え方が広がっています。 そのため、一言でコンプライアンス違反といっても、さまざまな種類があります。 主なコンプライアンス違反の例 インサイダー取引 製品の性能偽装・産地偽装 労働基準法違反など、労働者の権利侵害 ソフトウェアの違法コピーなどの権利侵害 顧客への誤った対応や隠蔽 社員による犯罪行為(刑法違反) 個人情報漏えい 知識の補強だけではない、社内研修の役割 これらのコンプライアンス違反を防ぐために重要な役割を担うのが、社内研修です。なお、実施するべき内容は、大きく「知識面」と「意識面」の2種類に分けることができます。社員が両者をバランスよく身につけてこそ、コンプライアンスレベルの向上が達成できると言えるでしょう。 知識面についての研修 例えば個人情報の取り扱いルールなどは、どんな会社であっても社員一人ひとりにきちんと理解してもらう必要があります。また、インサイダー取引は上場企業だけに必要な知識だと思われがちですが、実は中小企業の社員であっても知っているべき知識です。 これらは体系的な知識も多く含まれるため、eラーニングで製品化されたコンテンツを活用したり、社外講師に研修を依頼したりすることで、効率的に学ぶことができます。また、会社で用意した規定や自社の属する業界や状況に沿った具体的な研修を行いたい場合は、社内講師を用意することも有効です。 その際重要なのは、「知識」だけでなく「考え方」も併せて学ぶことです。なぜなら、コンプライアンスの範疇は広いため、すべての知識を学ぶことは不可能だからです。考え方を学ぶには、実際に起きたコンプライアンス違反の事例を収集し、何が行けなかったのかその背景や原因を議論したり学ぶ、ケーススタディーが有効です。 ケーススタディーでは、犯しやすい判断ミスやなぜ企業にコンプライアンスが求められているのかといった理念や倫理も理解することができるので、判断力を培うことに繋がります。 意識を高める継続的な取り組み 知識があっても判断力があっても、社員にコンプライアンスを守ろうという意識が無いと、取り組みは形骸化してしまいます。つまり、分かっていても「つい」法令違反を犯してしまったり、法の抜け穴をかいくぐるような行為を行ってしまう恐れがあるのです。 社員の意識を高めるには、経営者自身がコンプライアンスに対しての積極的な姿勢をメッセージとして発信し続けることが重要です。決して建前ではなく、企業の価値を高めるために重要視していることを理解してもらうのです。 そして、コンプライアンスを社員一人ひとりが自分事として捉え、進んで守らないと会社はもちろん自身にも大きな影響を受けてしまう、という気持ちをもってもらうことが重要です。そうすることで、違反が発生しづらい、発生しても見逃さない風土を作り上げることができます。 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 コンプライアンス研修も取り揃えており、100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする   eラーニングとは?概要からメリットやトレンドまで徹底解説 eラーニング導入で失敗しないための3つのポイントを解説 効果の高いeラーニング教材の作り方と3つのポイント【企業事例付き】

2024.02.05

【産業医解説】メンタルヘルスとは?職場での3つの予防と4つの対策

2024.02.05

【産業医解説】メンタルヘルスとは?職場での3つの予防と4つの対策

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人事制度・組織づくり

職場のメンタルヘルスについては、近年、精神障害による労災申請も増加の一途をたどっており、職場において対処すべき最優先課題です。 人と人で利害と責任が絡み、ストレスに対しての耐性が労働者個々で異なる以上、完全には不可避でありますが、日頃からその予防と遭遇する局面に適切な対応と避ける準備が必要です。 しかしながら、予防や復職支援の観点から対策はなされているものの、実施へのプロセスが不十分な現状です。 筆者は産業医として具体的な事例と事案に携わった経験から、実践可能な対応策をこの記事を通じて紹介します。職場のメンタルヘルスに必要な「3つの予防」と「4つのケア」を軸に記事を進めていきます。 筆者情報 吉川博昭(医学博士・日本医師会認定産業医・日本ペインクリニック学会認定専門医) 都内医学部卒業。医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、医療機関で臨床業務に従事。 職場のメンタルヘルスとは メンタルヘルスは心の病気を指す言葉ではなく、心の健康状態をあらわす言葉です。 身体的な健康との対比に用いられることが多く、精神状態が健康なことは身体活動が健全に行えることの前提条件になるため近年注目を集めています。 「働く人が心身ともに健康的に働ける職場づくりをめざそう」は努力目標ではなく義務となりつつあります。 職場のメンタルヘルスに関連した法案の変遷 職場のメンタルヘルスに関連した法案は、この20年ほど専門家の間で熟考を重ね、労働衛生環境や安全配慮義務に配慮した施策が十分検討されているものの、まだまだ課題が山積みであるともいえます。 2000年 事業場における労働者の心の健康づくり 2004年 心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き 2006年 医師による面接指導の新設(過重労働・うつ病・適応障害等)2011年 心理的負担による精神障害の労災認定 2015年 ストレスチェック制度の義務化 2018年 働き方改革関連法 2019年 パワハラ防止法 労働者を取り巻く環境の変化 労働者を取り巻く環境として終身雇用の時代を経て、現在は労働者個人が技術を身に付け、職場を変える流れが主流になりつつあります。事業者としても、従業員が定着せず、離職者が後をたたないような劣悪な労働衛生環境を放置できない時代になりました。 職場でメンタルヘルスを維持するために重要なのは、労働者が一生使えるスキルを身に付ける好奇心と、企業の利益向上のために業務を効率的に遂行するための分担の工夫です。転職も盛んな時代になりましたので、労働者でありながら個人事業主という感覚で、スキル習得に注視すると高い壁も乗り越えやすくなるでしょう。 段階別3つの予防策 メンタルヘルスの予防は一次・二次・三次と3段階あり、すべての段階に関して作業環境や就労時間等の就労環境、家庭環境にも配慮した取り組みが必要です。 一次予防 健康者を対象に、メンタル不調を未然に防ぐ取り組みを指します。 近年はより早い段階での介入が求められており、一次予防の概念を実践している会社がホワイト企業認定されることが多く、メンタルヘルス対策専門の部署を設立していることも多く、いろいろな視点で配慮がなされているのが特長です。 二次予防 メンタルヘルスに不調が現れ始めた労働者を早期発見して適切な対応を行うことです。 早い段階で支援を行うことは、深刻な状態に陥ることを避けることにつながります。適切な配置転換や、就業上の措置を組み合わせることで早期に回復することがあります。 三次予防 メンタルヘルス不調により、休職した労働者の職場復帰支援の段階です。 休職による不安や焦りを緩和させる精神的フォローや、復帰を無理に急かさないような体制の見直し、社会的資源の適切な利用を案内することで離職につながらない体制を整えます。 メンタルヘルス対策における一次予防の重要性と4つのメリット 職員のメンタルヘルスに取り組むことは会社にとってメリットがあることが知られています。健康経営優良法人の認定条件には、「メンタルヘルス対策の実施」が含まれております。 メリット①離職率の低下と従業員定着率のアップ 従業員の定着は企業イメージの向上や採用力の強化につながります。 メリット②業務上のミスの発生率の低下 業務に慣れた職員が対応することは、致命的なミスや事故の危険性が減るばかりでなく、業務効率の向上につながります。 メリット③組織の浄化 ハラスメントの予防やホワイト企業認定は、若手人材や有能なスキルを持った人材確保や業績向上にもつながります。 メリット④会社のイメージ向上と外交戦略 会社の業績向上で、取引先や投資家からの信用力向上につながり外交面でも有利にことが運ぶでしょう。 三次予防からみるリカバリーとコネクション メンタルヘルスの問題で円滑に職場復帰することは、事業規模にもよりますが難しいでしょう。 プログラムを作れない方は、「産業保健総合支援センター」に相談すると良いでしょう。心療内科等、自己の状況を俯瞰して診てくれる医師のもとで適切な治療を受けることで、職場に在籍しながらサポートを受ける道もあることでしょう。 企業に求められる4つのケア 厚生労働省が2015年に公表した「労働者の心の健康の保持増進のための指針」で示された、職場でのメンタルヘルスに必要な「4つのケア」を解説します。 1. セルフケア 労働者個人でのケアになり、ストレスの予防や対処をすること。 ストレスに気付くためには、ストレスチェックの実施も有効です。自己であくまで啓蒙していく方針は骨組の基本姿勢ではあります。 2. ラインによるケア 課長・部長等の職責にある管理監督者がケアを行い、ストレス要因を把握し改善を図る取り組みを行うこと。 部署内や組織内で行うケアであり、内情に即したケアが可能なメリットがありますが、管理職の人が不適切な見識を持つとかえって悪化するデメリットがあります。 管理者がメンタルヘルス研修を受けることが必要になります。 3. 事業所内産業保健スタッフによるケア 事業所内の産業医や衛生管理者等による支援を受けること。 セルフケアやラインによるケアの実施をサポートします。 4. 事業所外資源によるケア 事業所外のサービスやサポートを利用すること。 メンタルクリニック等への受診や、カウンセリング等も含まれるでしょう。 客観視点で有用な一方、旧体制の事業所等ではいじめやハラスメント行為の心配もあり注意が必要です。 産業医と職場のメンタルヘルス 産業医が選任されている事業者においては、従業員の長時間・過重労働対策、健康診断後の面接指導や適正部署への配置転換の提案、休職者の事業復帰プランニング、ストレスチェック等、段階に応じた取り組みを進める対応が可能です。 産業医の専門が精神科でなくとも、適切な医療機関への紹介等、スムーズにことが運びます。 メンタルヘルスからみた職場でのよくある2つの問題 日本人の気質で、真面目は一貫した資質で長所です。 環境改善には能動発信が必要ですが、個人レベルで限界があります。いったんこじれた人間関係を事業所内のスタッフとの折り合いで解決するのは難しいことが多く、第三者に頼ることも大切です。 事業者、従業員ともに悩んでいるケースも少なくなく、介入が必要なケースも増加しています。 1. 就業規則とハラスメント問題 就業規則は国の定めに沿ったものであり、会社は原則遵守する必要があります。ハラスメントは雇用者同士により生じることが多く、そういった状況にならないシステムづくりや被害を受けた人への適切な心のケアが必要になります。 2. テレワークとメンタルヘルス問題 コロナ禍でICT(情報通信技術)の活用が飛躍的に進み、出勤せずとも仕事ができるようになったことはメリットが多いといえます。 しかし労働者の勤務状況やメンタル面の変調を把握しづらく、運動不足問題やコミュニケーションの不足は、不眠や自律神経失調症を招く要因になり得ます。 職場におけるメンタルヘルスからみた精神疾患との関連 職場での精神疾患には、有病率の観点からは通常器質性精神病・躁うつ病・統合失調症・神経症性障害ほか、分類されているものは数多く存在しますが、頻度として一番多いものは躁うつ病を含む気分障害です。 2020年の厚生労働省の労働安全衛生調査によると、約54%(※1)の方が、職場環境にストレスや不安を感じています。 2021年メンタルヘルスの不調で1か月以上休職した事業所の割合は10.6%で退職した労働者がいた割合が5.9%であり(※2)、治療が不十分なまま復職することで、その後退職に至るケースがいまだに多いことが問題となっています。 精神疾患は、特性や性格的傾向やうつのように状態名が病名になっているものが多く、環境要因がその発症に強く関連しています。 ストレスに対する耐性が労働者個々で異なる以上、休職者の多くにつく診断名で「適応障害」は、その環境への適応が難しいという部分でなんらかの予防と発症時の介入が必要不可欠になります。 医師にかかり適切なサポートを受けることで、アルコール依存や自殺等を未然に防ぐことが重要です。 ※1 出典:厚生労働省 令和2年 労働安全衛生調査(実態調査) ※2 出典:厚生労働省 令和4年 労働安全衛生調査(実態調査) 職場のメンタルヘルスと社会的資源の活用 労災認定と傷病手当金の受取に関して、質問されることがあります。 「傷病手当金」は、病気や怪我でやむを得ない理由で仕事を休んだときに健康保険協会から給付されます。 「労災給付金」は、仕事中に労働災害が発生した場合に労災保険から給付されます。怪我のみでなく、うつ病や適応障害等の精神疾患の罹患でも給付されるケースが近年増加しています。申請方式で、タイミングや給付額が異なります。 職場のメンタルヘルスが注目されている昨今、会社に対する損害賠償請求も同時に行い、認定されるケースも増えてきています。 職場のメンタルヘルスと職場復帰に関わるスタッフ 労働者の精神衛生状態に応じて、事業所内の人や事業所外の人を多職種組み合わせ利用するのが一般的です。 職場のメンタルヘルスと職場復帰に関わる職種と、主な仕事内容を一覧表にまとめました。 職種 主な仕事内容 衛生管理者・衛生推進者 従業員の健康を保持するための労働衛生管理体制を整えていく中心的な役割を果たす国家資格者。従業員の数により設置が定められている。 産業医 医師の立場で、事業所に健康管理に必要な方策に関して意見を述べ、ストレスチェックの実施者になり過重労働の面接等も担当する医師。 看護師・保健師 精神衛生状況に対して助言をする等労働者の健康管理の活動を担い、ストレスチェック制度の実施を担当する。 人事労務スタッフ 社員のなかで職場内での環境調整や適正な配置や勤務時間の調整を担当。社員の特性に応じた健康配慮義務を最優先に考える。 精神科医・心療内科医 メンタルヘルスの面から、多くの適応障害に潜む器質の精神疾患の有無を専門家の見地より判断し、適切なアドバイスを行う専門職。 精神保健福祉士 国家資格で、精神障害を抱える労働者の社会復帰に向けての支援を行う専門職。 産業カウンセラー・キャリアコンサルト 労働者の抱える悩みの傾聴(コンサルタント)と適切なアドバイスに関する専門家。 公認心理士・臨床心理士・カウンセラー 臨床心理学の知識や技術を用い、心の問題を専門的に扱う資格職。 職場のメンタルヘルスと自殺 令和3年度の調査においても、年間自殺者の約3割は被雇用者(※)であることが明らかになっています。 予防策は当然なのですが、起こってしまったことに対する再発防止や、遺族への適切な対応も大切です。約1~2週間あけた後で、雇用状況や勤怠の部分等の事業者からの事実開示と専門職の人や中立的な立場の人を含めた説明や、遺族の気持ちに傾聴することは大切でしょう。 ※ 出典:厚生労働省 令和3年中における自殺の状況 優良企業が取り組む職場のメンタルヘルス 一次予防の概念を理解し、実践している会社がホワイト企業になります。メンタルヘルス対策専門の部署を設立していることも多いのが特長です。 上司・同僚だけですと、利害関係が絡むこともあるので、第三者を交えた勉強会やカウンセラーや心理士の先生を雇っているケースも多いです。事業の規模に関係なく、それらの連携をとることで労働者のメンタルヘルスを正確に把握しやすいことが挙げられます。 職場とメンタルヘルスに関するよくあるQ&A 以下の2つは、産業医として事業者様より相談を受ける頻度の高い質問です。 Q1. 若者のほうがストレスに弱く精神疾患になりやすいのでしょうか? 人事の方より、世代間のギャップについて問われることがあります。 スキルの取得によりメンタルが鍛えられ、環境にも順応していくことは確かですが、精神疾病の発病に年齢の要素は明確には定義されていません。 職員の定着率が悪い事業所では、「メンタルヘルスアクションチェックリスト」等、客観評価できるツールも進歩してきています。ぜひ活用ください。 Q2. ストレス過多で休職中の職員を同部署に戻して良いでしょうか? 職員との話し合いが大切です。 しかし同僚や上司との関係性や環境面が適応障害を引き起こしていることが多く、部署移動等、環境調整を行うことが一般的には望ましいでしょう。 時短出勤や残業を減らす取り組み等、焦らせず段階を踏む取り組みが必要です。 まとめ 職場におけるメンタルヘルスは、事業規模に関係なく健全な組織運営と切り離せない問題となりました。 ストレスチェックや労働衛生環境を見直すことにより、予防と早期発見が可能となりました。また、休職者が発生した後も、適切なコネクションとリカバリーの策を講じることで、人的資源を失うことなく健全な組織運営と生産性の高い組織の運営を安定して継続し行うことを可能にすることでしょう。 持続可能な未来と社会の実現のためには、「段階別3つの予防策」と「企業に求められる4つのケア」を適切に組み合わせることが大切です。 三次予防は事業所としても対応が難しく、一次二次の段階で早期対応が望ましいでしょう。 著者情報 吉川博昭(医学博士・日本医師会認定産業医・日本ペインクリニック学会認定専門医) 大阪府出身。 ・都内医学部を卒業し、医師免許取得後は麻酔科やペインクリニックを専攻し、医療機関で臨床業務に携わる。 近年は内科診療・産業医学 ・職場におけるメンタルヘルス等などの生活に密着した御相談にも診療幅を広げ、「健康を通じたハッピーな生活をお手伝いしたい」をテーマにしている。 ・記事の監修や執筆においては、平易で分かりやすい表現を用い、丁寧さを心がけている。 取得資格:医師免許・医学博士・日本医師会認定産業医・日本ペインクリニック学会認定専門医   低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 一般社員にも管理職にも必須のメンタルヘルス関連を含む、100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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