2024.06.26
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コンプライアンスに関するニュースが絶えない現代のビジネス環境のなか、企業には高い倫理観が求められています。
多様な働き方が広がっている背景ともあいまって、積極的にハラスメント対策に取り組む企業が増えつつあります。
一方で、言葉としての「ハラスメント」は浸透しているものの、昨今ではさまざまなハラスメントが増えています。そのため、企業内でどのように教育施策を展開したらよいか分からないという声も聞かれます。
本記事では、あらためてハラスメント教育に取り組む意義から、組織的に取り組む教育内容例について紹介します。
そもそも「ハラスメント」とは?
ハラスメントの日本語訳は、「嫌がらせ」や「いじめ」です。
広義では人権侵害を意味し、性別、人種、年齢、国籍、身体的特徴等で、相手に不快感を与えたり、尊厳を傷つけたりすることがハラスメントに含まれます。
企業におけるハラスメントの特徴は、さらに細分化されています。
よく耳にする「セクシャルハラスメント」や「パワーハラスメント」にくわえ、昨今は「デジタルハラスメント」や「ロジカルハラスメント」等、社会情勢や職場特性を踏まえたハラスメントも増えています。
さまざまな種類があるハラスメントですが、共通するのは「相手が不快感や脅威を感じるかどうか」が基準となる点です。
ハラスメントをする側も、受ける側も無意識であることが多いため、事態を深刻化させないために、組織的に教育を行う必要があるといえるでしょう。
ハラスメントが注目される背景
ハラスメントに関するネガティブなニュースや報道が、企業がハラスメント教育に注目する背景であるのはいうまでもありません。
実際、厚生労働省が都道府県労働局等に設置した総合労働相談コーナーに寄せられる「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は年々増加しています。令和4年度の件数は11年連続でトップとなり、6万9932件にもおよんでいます。
参考:「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」を公表します
政府もこの事態を重く受け止め、企業のハラスメント対策として、2019年5月に改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)を制定し、パワーハラスメントの防止措置を事業主に義務付けました。
法改正により企業は、主に以下の措置をとる必要があるとされています。
- 企業でのパワハラ防止についての方針の明確化と周知・啓発
- 苦情等に対する社内相談体制の整備
- 被害を受けた労働者へのメンタルケアや再発防止策
参考:職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました︕
このような潮流を受けて、ハラスメントに関する注目は高まり、企業としても積極的にハラスメント教育に取り組む必要が生じてきたのです。
企業がハラスメント教育に取り組む目的
前章で紹介したパワハラ防止法の影響もあり、ハラスメント教育に取り組む企業が増えてきました。
しかし法規だけが理由で、ハラスメント教育に取り組むわけでは決してありません。
本章では、あらためてハラスメント教育を実施する本来の目的について紹介します。
目的①ハラスメントについての認識・意識統一
ハラスメントは概念的なものであるため、組織で働く社員の認識を統一することは重要です。
一部では、ハラスメントという言葉が流行りの言葉のように広がってしまったため、仕事上の指導とハラスメントの区別が付かず、この違いを理解しきれていないビジネスパーソンは意外に多いでしょう。
実はハラスメントの発生の多くが、「この程度なら許されるはず」という個人の解釈に起因しています。
そのため「人格を傷つけたり人権を侵害したりしていないか」「固定的な考え方や価値観を押し付けていないか」等、ハラスメントの根底的な考え方を社員間で共通認識にする必要があるのです。
目的②多様な働き方への対応
「働き方改革」の一環で多様な働き方が組織に広がり、対応すべきハラスメントの種類も増加傾向にあります。そのため、企業でハラスメント教育に取り組む必然性も増しているのです。
一般社団法人日本ハラスメント協会では、ハラスメントの種類は30以上におよぶと提言しています。
特に「ジタハラ(時短ハラスメント)」「マタハラ(マタニティハラスメント)」「リモハラ(リモートハラスメント)」のように、ここ数年では働き方に応じたハラスメントの種類が増加しています。
多様化するハラスメントへの理解を深め、適切に対応していくためには、組織的な教育を定期的に行っていく必要があるでしょう。
目的③企業ブランドの維持・向上 採用や顧客からの評価
ハラスメントを起こさないことは、企業ブランドやイメージの棄損を防ぐ目的もあります。
とりわけ、SNSでの情報拡散力が強い現代のビジネス環境においては、ひとたび企業のハラスメントが知れると、一気にネガティブなイメージが世間に広がります。
取引先からの信頼性を損なうのはもちろんのこと、人材採用においても「ブラック企業」との悪評が広がるリスクもあるでしょう。
ハラスメント教育を適切に実施することで、社外からの適切な評価を維持できます。
ハラスメント教育の内容例
企業でハラスメント教育を実施する際の代表的なテーマ・コンテンツについて紹介します。
適宜、自社が置かれた状況に応じてアレンジする際の参考にしてください。
ハラスメントに該当するケーススタディ
前述したとおり、昨今企業内で中止すべきハラスメントの種類は、数十種類におよびます。
どの職場でどのようなハラスメントのリスクが発生するかは分からないため、まずは社員にハラスメントに該当するものについて学んでもらう必要があるのです。
詳細な「○○ハラスメント」を紹介するようなコンテンツでもよいですが、「身体特徴に関するハラスメント」や「過大な要求によるハラスメント」等、大括りにして学習させることもお勧めです。
ある程度緩やかな定義のもとでハラスメントに学ぶ方が、参加者が「過去の経験だと、あの行動に該当するのでは?」と自分に置き換えて考える余地が生まれるでしょう。
いまの職場環境で起こり得るハラスメントについてアンケート
ハラスメントを防止するためには、ハラスメントの正しい認識を持ったうえで、未然に防止することが重要です。
そのために、まずは自分の職場環境を振り返り、日常業務においてハラスメントに抵触しそうな行動を改善する必要があります。
アンケートを活用することで職場環境を振り返り、ハラスメントの加害者・被害者双方の立場で考えさせるように、内容を工夫するようにしましょう。
ハラスメントについて考えるなかで、現在の職場が置かれた状況をあらためて見直す機会にもなります。
ハラスメント防止の心構えを学ぶ
ハラスメントを発生させないためには、社員一人ひとりの「ハラスメントを防止する」という心構えが重要です。
特に加害者は、ハラスメントをしている自覚が乏しいケースもあります。
ハラスメント教育では、相手に不快感を抱かせないよう、心構えや配慮を教えるようにしてください。
また、仮にハラスメントが発生している場合に、当事者でない第三者が「自分には関係ないから放っておこう」「見て見ぬふりをしよう」という心構えでは、企業からハラスメントはなくなりません。
ハラスメント場面を見かけたら、上司や人事部門または相談窓口に報告や相談を行い、組織的にハラスメントを防止することも重要です。
このように、ハラスメント教育においては、さまざまな立場の社員に対して適切な心構えを身に付けさせることを心がけましょう。
ハラスメント防止のためのコミュニケーションスキルを身に付ける
ハラスメントを防ぐ心構えを学んだあとは、防止のための具体的なコミュニケーションスキルを身に付けることが大切です。
ハラスメントは、コミュニケーションのすれ違いや誤解が起因しているケースも数多くあります。
例えば、マネジメント層はメンバーに対して「人格を攻撃するのではなく、問題の現象を指摘すべき」や「他のメンバーがいる場で注意するのではなく、個別指導すべき」というコミュニケーションをとる必要があります。
そのほか、円滑なコミュニケーションのためには、相手の言動を真似る「ミラーリング」や「共感を得るための相づち」等、ちょっとしたテクニックも重要です。
ハラスメント防止に効果があるコミュニケーションスキルを教育することで、社員同士が思いやりのあるやり取りを心がけるようになるでしょう。
ハラスメント教育の実施形態
ハラスメント教育の実施形態について明確な決まりはありませんが、社員数・人員構成等に応じて、ふさわしいやり方を選ぶようにしてください。
本章では代表的なハラスメント教育の実施形態を3つ紹介します。
1. 勉強会
勉強会は社員を一堂に集めて、ハラスメント教育を施す形式です。
比較的、基礎的な内容を大勢の社員に向けて教育するときに適しています。
コンテンツ説明等のインプットがメインとなるため、事例を多く盛り込む、スライドに動きを取り入れる等、参加者が興味の持てる工夫を施しましょう。
また対面での勉強会を開催する際は、同時にオンラインでも視聴できるようにすれば、遠方の社員等より多くの方に教育が行き渡るようになります。
2. 集合型研修
集合型研修は何人かの社員を集めて、研修形式でハラスメント教育を行うものです。
勉強会と違って、ロールプレイングやグループディスカッションを取り入れることができるため、より実践的なハラスメント教育が可能になります。
外部のハラスメント防止専門の研修企業に依頼するケースもありますが、身近なケースを扱う場合は人事部門等、社内講師が実施することもあります。
ハラスメントの加害者になりやすいマネジメント層には、集合型研修を実施し、よりハラスメントへの感度を高めてもらう企業も多いでしょう。
3. eラーニング
リモートワークの影響等で集合型の教育が難しい場合は、インターネットを介したeラーニングでハラスメント教育を行うこともできます。
時間と場所を選ばないeラーニングであれば、集合形式と比べて学ぶハードルが低くなり、より多くの社員にアプローチできるメリットがあります。
ただし知識の習得度合いは社員の意欲や意識によって異なるため、フォローアップアンケートや復習テストを実施し、ハラスメント教育の効果を高める工夫をするとよいでしょう。
まとめ
かつての時代であれば、ハラスメントはともすれば「当事者間の問題」で済まされたかもしれません。
しかし法規制もある昨今においては、企業として適切なハラスメント教育を施す必要性が高まっています。
適切にハラスメント教育が実施できれば、ハラスメント防止はもちろんのこと、円滑なコミュニケーションが起こる風土形成にも効果があるでしょう。
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