2024.06.26
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組織が競争力を発揮するには、単に優秀な人材がいるだけでなく、社員それぞれの個性や力を最大限に発揮できていることが重要です。
特に、VUCAの時代といわれる変化が激しい現代のビジネス環境においては、社員個々人が状況変化に対応できる柔軟な組織づくりが求められます。
そこで注目されているのが、組織開発の手法である「チームビルディング」です。
本記事では、チームビルディングの定義やチームワークとの違い、チームビルディングの5つの段階や代表的な手法まで幅広く紹介します。
社員の能力や多様性が活かされるチームを作りたいとお考えの方は、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
チームビルディングとは?
チームビルディングは、組織開発の手法のひとつです。
組織ビジョンや目標を達成するため、チームに所属するメンバー個々人の能力や個性が最大限発揮できる環境整備や取り組み全般を指します。
チームビルディングの特長は、メンバー一人ひとりの個性に注目し、本来の特性を重視している点にあります。組織に合わせて無理にメンバーの個性を修正するのではなく、本来所持している持ち味やスキルを活用することで、より大きな組織力を生み出すのが目的です。
新しく生まれたチームに活用できることはもちろんのこと、チームビルディングは既存チームの結束や生産性をより一層高めるためにも効果があります。
チームワークとの違い
チームビルディングと似たような言葉として挙げられやすいのが「チームワーク」です。
チームワークとは、メンバーが組織目標を達成するために、スムーズに共同作業が行えるという目的があります。
組織目標の達成に向けてメンバー同士が連携するという観点では、チームビルディングと共通する点も多いといえます。
ただし、チームワークは個々人の弱点をメンバー間で補完しながら、ある課題を乗り越えることに主眼を置いた考え方です。
そのため、チームワークは短期的、かつ特定の課題に対して用いられることが多いでしょう。また、課題解決が重要視されるため、メンバー個人の能力開発や成長にはそれほど力点が置かれません。
一方、チームビルディングは個人の能力を引き出し、企業に中長期的な付加価値をもたらすことを目的としています。
メンバーの育成や成長にもきちんと着目し、ある程度中長期的な視点で取り組むのが特長です。
チームビルディングマネジメントの目的や意義
組織的・戦略的にチームビルディングに取り組むことを「チームビルディングマネジメント」といいます。
本章ではチームビルディングをマネジメントすることで、どのような状態を実現したいかという3つの目的についてお伝えします。
目的①企業ビジョン・ミッションの浸透
チームビルディングマネジメントの目的の1つは、企業ビジョン・ミッションの浸透です。
企業ビジョンやミッションを反映したチームビルディングを実施すると、自然な形で組織に企業の考え方が浸透しやすくなります。
そのためチームビルディングは、期初のキックオフや新規プロジェクトの立ち上げの際に導入される傾向があります。
企業ビジョンの重要性が理解できることはもちろんのこと、中長期的にビジョンが浸透する風土形成にも効果があるでしょう。
目的②組織の結束力強化
メンバー一人ひとりの結束力を強固にするために、チームビルディングを用いるケースもあります。
具体的には、組織の目標共有や達成に向けて、お互いが果たすべき役割を考えるような設計で、チームビルディングを実施します。
組織の存在意義や達成すべきミッションの目線がチームメンバー間でそろうことで、スムーズなコミュニケーションや結束力を高めることが2つ目の目的です。
また、ミッション達成に向けてのお互いの役割が明確になれば、メンバー個々人の自律的な行動も促せるでしょう。
目的③コミュニケーションの活性化
チームビルディングを行う3つ目の目的は、コミュニケーションの活性化により、メンバーの心理的安全性を高めることです。
メンバー同士の相互理解や相互承認を高めるようなチームビルディングを実施すれば、コミュニケーションの基盤ができます。
お互いの多様性を認め合うフラットなコミュニケーションが多くなるほど、何でも率直に話し合えるような安心感が形成されるものです。
その結果、自分の意見を安心して場に出せる「心理的安全性」が醸成されていきます。
心理的安全性が高まっている組織では、会議の場での意見交換が活性化し、新しいアイデアが生まれやすくなるでしょう。
チームビルディングマネジメントのメリット
チームビルディングマネジメントの実施目的は前章で紹介した通りですが、本章ではもう少し具体的な3つメリットをお伝えします。
1. 社員のモチベーション向上
チームビルディングを行うことで、社員のモチベーションの維持・向上がしやすい点がメリットです。
チームメンバー間で意見・アイデアを出し合うことで、一人では成し得なかった目標が達成できれば、メンバーのモチベーションは向上します。
チーム全体での成功体験を積むことで、組織への貢献意欲も高まっていくでしょう。
さらに、他メンバーと関わることで自分でも気付いていない特性を発見したり、周囲からどのように必要とされているかを自覚できたりします。
このようなやりとりやきっかけを通じ、自分の役割を強く自覚できるため、組織や仕事に対するモチベーションが向上していくのです。
2. 組織の生産性向上
チームビルディングを実施することで、組織の生産性が上がりやすくなることもメリットです。
具体的にはチーム内のコミュニケーションがスムーズになり、互いの情報共有が活発になることで、メンバー一人ひとりの生産性が高まります。
特に経験の少ない若手メンバーが多いチームでは、お互いにサポートしあう土壌は不可欠です。
心理的安全性が高まっていない状態では「この意見は言わないでおこう」「もっとアドバイスできるけれど、まあいいか」と、情報交換が消極的になりやすくなります。
メンバー間の信頼感が高まり、常にアイデアやノウハウの共有がなされている状態が生まれることで、生産性だけでなく組織の問題解決力の向上も期待できるでしょう。
3. アイデアやイノベーションの創出
チームビルディングは、アイデアやイノベーション創出にもつながりやすくなります。そのため、新規事業のキックオフでチームビルディングを実施すると効果的です。
新規事業は想定外の困難な出来事も多いため、メンバー全員の知恵を場に出して問題解決することが求められます。
メンバーで情報交換を重ねることで「自分の抱えている問題は、○○さんに相談すればヒントが得られるかも」と、メンバー間の相乗効果が生まれていきます。
チームでの議論が前向きで活発になればなるほど、イノベーションが創出しやすい組織風土に進化しやすいでしょう。
チームビルディングの5段階プロセス
どのように優秀な人材を集めたチームでも、最初から成果が出せるとは限りません。成果を出すチームになるためには、組織の成長ステップを経る必要があります。
本章では、心理学者のブルース・W・タックマンが1965年に提唱したチームビルディングのフレームワークを紹介します。
成果を出すためにチームが通る5つのプロセスを具体的にご確認ください。
1.形成期
「形成期」は、プロジェクトを立ち上げるタイミング等、チームが形成されたばかりの初期段階です。
この段階では、まだチームメンバーがお互いのことを知らないため、コミュニケーションへの緊張感やぎこちなさが生じてしまう傾向があります。
それぞれの役割も理解しきれていないため、メンバーは自身にどのような言動が求められているのかを把握するのも難しいでしょう。
そのため、仮に何か問題が起きたとしても、「誰かが対応するだろう」と消極的な態度になってしまう点が課題です。
形成期でまず求められるのは、コミュニケーションの量です。
自己紹介にくわえて、交流のためのゲームを行ったり、懇親会を開催したりすることが有効な手法でしょう。
2.混乱期
「混乱期」は、お互いのことを少しずつ知るプロセスを経て、それぞれの考え方の違いが表面に出始める時期です。
この段階では、チーム目標は明確に定まっており、プロジェクトも進み始めています。しかし、お互いの理解が進んだからこそ、価値観や思考の違いに意識が向きやすく、対立構造が起きやすい段階です。
ただし、組織として成熟していくためには、混乱期は避けては通れない重要な時期でもあります。混乱期を通じることで、さらにお互いへの深い理解が生まれ、その先のプロセスがスムーズに進められるからです。
混乱期で求められるのは、コミュニケーションの質です。
対立が起こっても放置せず、チーム内で納得するまで話し合ったり、お互いの考え方や背景情報を交換し合ったりするような対話が重要となります。
3.統一期
無事に混乱期を乗り越えると、メンバーの相互理解が進み、チームが一丸になりやすい「統一期」を迎えます。
この段階になると、メンバー全員が組織・プロジェクト目標や自身が果たすべき役割を前向きにとらえ、他のメンバーと能動的・安定的な協力関係を築けるようになります。
統一期で求められるのは、小さな対立を乗り越えてでも、メンバー全員が合意した目標を達成することです。
その他、チーム内の規律やルールを守りながら、分担した役割を果たすことも求められます。
安定を乗り越えて次のステップに進むためにも、この段階でお互いの成功体験を話し合い、チームとしての組織力を高めることも有効でしょう。
4.機能期
「機能期」は最も組織機能が成熟しているステップであり、組織として高いパフォーマンスが期待できます。
メンバーそれぞれが自分の役割を強く自覚し、積極的・自発的な行動を起こし始めるため、優れた成果が次々と上げられるようになっていくのです。
機能期で求められるのは、高いパフォーマンスを継続していくための取り組みです。
チームワークを高めるためのアクティビティを実施したり、リーダーがメンバーに対して丁寧なメンタルケアを行ったり、メンバーの自律を促す工夫が必要となります。
一般的に、チームは統一期から機能期に移行することが難しいといわれているため、壁を乗り越えるためにもチームビルディングが効果を発揮するでしょう。
5.散会期
「散会期」とは、目標達成やプロジェクトの終了等で、チームがその役割を終える時期のことです。
どれほど優秀なチームでも、組織内で永続的に同じメンバーで活動し続けることはありません。散会期と聞くとネガティブな響きもありますが、メンバーがこのチームの経験を活かして次のステップに進むために、必要な期間ととらえましょう。
この段階で求められるのは、経験の棚卸しや振り返りです。
活動のフィードバックを行い、各メンバーのさらなる成長につながる機会を設けることが効果的です。
ひとつのチームができ上がっていく5つのステップを経たメンバーは、他の業務でも力を発揮する力強い存在となることでしょう。
チームビルディングマネジメントの代表的な5つの手法
具体的にチームビルディングを行うにはどのような手法があるのでしょうか。本章ではメジャーな5つの手法をご紹介します。
昨今はオンラインやITツールを用いたチームビルディングも増えているため、手法と合わせて実施形態もご検討ください。
1. ゲーム
「マシュマロチャレンジ」や「NASAゲーム」等のビジネスゲームは、チームビルディングの代表的な手法です。
特に、前述した5段階のプロセスで形成期にあるチームは、ゲームを取り入れたチームビルディングが効果的といわれています。
形成期では、まだお互いへの理解が進んでおらず、組織内にぎこちなさやよそよそしさが漂いがちです。次のステップに進むためには、できるだけ早く緊張を解くことが重要なため、ゲームでお互いの交流を深めましょう。
時間配分や対戦チームの動向等も意識する必要があることから、戦略的な思考を養うことにもつながります。
2. アクティビティ
お互いの緊張が緩和してきた段階では、スポーツやダンスのようにチーム全員で身体を動かすアクティビティが有効です。
チームとして成果を上げるには、メンバーが共通の目標に向かって一致団結することが不可欠です。
チームメンバーが一丸となって行動するには、アクション要素があるアクティビティが効果を発揮します。
あれこれと思考を巡らせる必要がないアクティビティは、メンバー間の率直なコミュニケーションを促すきっかけになります。
チームメンバーの関係性をフラットに近づけやすく、信頼や団結を深めるのに適した手法といえるでしょう。
3. イベント
イベントの開催は、メンバーの相互理解を深める絶好の機会となります。
例えば、懇親会や座談会を行うことで、メンバーのありのままの姿を理解する効果があります。少し仕事を離れてリフレッシュしたい場合は、バーベキューや社員旅行等の社外でのイベントを開催するのもひとつの方法です。
仕事以外のプライベートの一面も知っていると、相手の個性や特長がより深く理解できるようになるため、コミュニケーションをスムーズにするうえで大いに役立つでしょう。
4. ワークショップ
メンバーの主体性を引き出したいときは、ワークショップの開催が効果的です。
ワークショップとは、体験型の講座やグループ学習のことを指します。用意されたケースについて、メンバーで解決のためのアイデアを出し合う等の形式が代表的なワークショップです。
ワークショップで成果を上げるためには、メンバー間での議論や創意工夫が必要となり、健全な協力関係を築かなければ目標は達成できません。
そのため、協力して成果を出すという経験を共有することで、チームとしての実力が磨かれていきます。
メンバーに主体的に行動してもらいたいときにも、ワークショップを実施して自主的な共同作業を促すのも効果的でしょう。
5. グループディスカッション
ワークショップと似ていますが、より実践的・現場に近い想定でチームビルディングを実施したい場合は、グループディスカッションもお勧めです。
例えばプロジェクトの中盤で、前半の振り返りをチームメンバーにディスカッションさせるような企画が考えられます。
実際の題材をもとに話し合いを進めるため、新たな気付きやノウハウが得られるだけでなく、プロジェクト終盤に向けての結束力強化も期待できるでしょう。
まとめ
メンバーの個性に焦点をあてて、持てる能力を最大限に引き出すためのチームビルディングマネジメントについて紹介しました。
少子高齢化の影響で人材不足に悩む企業は、現在の社員が余すことなく力を発揮することが求められています。
今回紹介したように、チームの成長段階に応じたマネジメント施策を投じることで、メンバーの成長と組織成果を同時に実現することをめざしましょう。
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