2024.04.09
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大卒新入社員の3年目までの離職率は、ここ10年来30%台で推移しています。
約3人に1人は、一人前になる前に離職してしまうことを意味します。
時間と費用をかけたのに新卒社員が離職する要因は何なのか、どうしたら意欲をもって働く環境を作れるのかを本記事ではまとめます。
新入社員はやる気がない?
新卒社員に限ったことではなく、若い世代の特徴として「教えらたれたことをこなす能力は高い」、「真面目で理解力が高い」、「向上心がある」などなどが挙げられています。
一方で、「自主解決能力に欠ける」、「高望みせず、ほどほどで満足する」、「状況に適応する自律性がない」など、複雑でかつスピーディーなビジネスの現場環境で判断力を発揮し、新しい発想をチャンスへとつなげる実践力には乏しいようです。
このような話題になると、「最近の若者は根性が足りない」という諸先輩方の声が聞こえてきそうですが、時代にあわせた新人育成方法を考えることも、人事部にとっては大切な仕事です。
新入社員を育てる環境づくりの現状
産業能率大学が企業の教育担当者を対象にして行なった調査によれば、「中堅社員に求める役割」で第1位に挙げられたのは、「後輩の育成」(72.5%)でした。
しかし、「後輩育成を遂行していますか?」という問いに対し「遂行している」と回答したのはわずか2.9%と極端に実現率が低く、半数以上が「あまり遂行していない」と回答しています。
また、労働政策研究・研修機構による「人材マネジメントのあり方に関する調査」(2014年)では、若手層の人材育成上の課題として「業務が多忙で、育成の時間的余裕がない」「上長等の育成能力や指導意識が不足している」といった回答が多くなっています。
これらの調査結果から考えると、「若手が育たない」と嘆く裏には、「育てられない職場環境」が隠れているということがわかります。
OJTやoff-JTという研修方法を考えるだけでなく、実際に新入社員が配属される現場の指導体制はどうなっているか、指導係は誰なのか、受け入れ体制はできているかも考えていく必要がありそうです。
新入社員の意欲を高める3つのコツ
①職場の一員として認める
新入社員は仕事のことも会社のこともあまり把握できていないため、常に不安を感じています。
まずは、上司や先輩のほうから彼らを仲間として認め、信頼を得るために1on1などのコミュニケーションの場を設けることが重要です。
また、パワハラなどの問題にも上司が気を配らなければなりません。
新人を「新人」として一括りに考えるのではなく、一人ひとりの個人として向き合っていく意識を持つことも重要な要素です。
新入社員に対して高圧的にならず、成長を見守り導くというスタンスを持つべきでしょう。
②社会人マナーや会社ルールを積極的に共有する
新入社員は不安を抱えながらも、社会人としてのマナーや会社のルールを早く身につけて、会社の戦力として成果を挙げたいと思っています。
既存の社員はその気持ちを理解したうえで指導し、不足している点を補い、成長へと導く姿勢が求められるでしょう。
また、新入社員は既存の社員とは気質が異なるケースがあります。
それを「最近の若者は……」のひとことで片付けてしまうのではなく、いまどきの新入社員に見られる傾向についても理解しておきましょう。
コミュニケーションを密にして世代間のギャップを埋めることが重要です。
③新入社員のビジネススキル向上を図る
「あいさつ」「言葉づかい」「身だしなみ」「電話対応」など基本的なビジネスマナー研修だけでなく、OJTに対しても現場をサポートしていく必要があります。
教育担当である中堅層に「新人を育てる意識」を持ってもらうよう働きかける、メンター制など「相談できる先輩」がいる環境を整えるなど、自社に適した仕組みを探し、積極的に試していくことが求められています。
また、新入社員教育に適した方法としてeラーニングを実践する企業も多いです。
一体感を持って学習してもらうことでモチベーションを維持し、自発的に目標を設定することや、目標の達成に向けた実践について身につけることが可能です。
新入社員向け研修で検討すべきプログラム
まず新入社員に知ってほしいことは「社会人としての常識」や「仕事の基本」と言われるものです。
会社は学校とは違い、仕事をすることで報酬を得る場所なので、社会人・組織人としてふさわしい常識やマナー、コンプライアンス(法令遵守)を最初に身に付けてもらうことが必要です。
1. ビジネスマナー
身だしなみ、挨拶、電話応対、名刺交換などで、身についていて当たり前のマナーです。配属が決まり業務がスタートすると、なかなか研修の機会はありません。取引先への訪問などでは、新入社員であっても会社の顔となるので、まずマナー研修を行いましょう。
2. ホウレンソウ
「ホウレンソウ」と呼ばれる報告・連絡・相談は、社会人の義務として徹底させましょう。とくに「報告」は重要で、慣れないうちは初めからすべて話そうとして、要点がつかめない報告となります。「結論」から話し始めて経過、理由を報告させるよう徹底させることが必要です。
3. コンプライアンス(法令順守)
コンプライアンスとは、企業が法律や規制、内部ルール、倫理的な基準に従って適切な行動をとることを指します。
コンプライアンスを学ぶ最大の理由は「やってはいけないことを学ばせるため」です。
<主なコンプライアンス項目>
・法律と規制(労働法、環境法、消費者保護法、競争法、税法など)
・企業内ポリシーと手順
・個人情報の取り扱い
・情報セキュリティ
・賄賂や贈収賄の禁止
・インサイダー取引の禁止
すべて覚えることは難しくても、コンプライアンスに関する禁止事項があることを理解し、日々の業務において意識することで、企業の信頼性向上と長期的な成功に繋がります。
4. ITスキル
ビジネスシーンではExcel、Word、PowerPointといったオフィスツールが使えることは必須です。
部署によってはExcel、Wordを多用するでしょうし、営業部ではPowerPointを使ったプレゼンテーションができなくては話になりません。
また、メールにもビジネス文書としてのマナーはあります。
件名や文面の書式も大切ですが、最も気にかけなくてはならないことは、「その用件はメールでよいのか」ということと、「宛先は間違えていないか」です。例えば、謝罪をメールで済ませることは社会人としては許されませんし、toとcc、bccの使い分けを知らなければ、インシデント発生の原因にもなります。
基本的なITスキルについては若い世代のほうが慣れていることもありますが、ビジネスにおける使い方は改めて学ぶほうが良いでしょう。
新入社員研修の効果を高める2つのポイント
①現場のニーズを優先する
多くの研修は座学形式で行われますが、配属先で実践しながら学ぶOJTを取り入れるのもよいでしょう。
部署により要求されるスキルは異なりますし、少しでも早く部署に慣れ、チームワークやコミュニケーションの取り方を学んだほうが早く成長することもあります。
現場で学べることには、仕事の指示の受け方、メモの取り方、タイムマネジメント、コスト意識、1日の業務の流れなどがあります。
しかし最も学ばなくてはならないのは、これから働く職場の雰囲気であったり、先輩や上司の仕事ぶりなどの自社の文化です。
帰属意識が高まり組織の一員であることを自覚させ、組織に貢献することで報酬を得ているという認識が強まります。
社会人・組織人としての基本的な常識やマナーを身につけながら、実践で業務を学ぶ。自社に必要・不要な新入社員研修のプログラムを調整することが重要です。
新入社員向けの研修を検討する際は社会人基礎力について理解しておくと参考になります。
②全社員の意識にも気を配る
新入社員研修=新入社員に対してどのような研修を行うかにフォーカスしてしまいがちですが、全社員が持つ社風も非常に大切です。
「自分の意見が自由に言えない」「社員同士の挨拶や会話がない」「部門長クラスの人間が人材育成に興味がない」という環境では、新入社員のやる気も低下していってしまいます。
社風そのものに問題があると判断した場合は、研修という枠を飛び越えて、全社員の意識を変えるために必要な施策を模索しなければなりません。
新人教育をしっかりと機能させていくためには、会社全体を見渡したうえで本質的な課題を見つけ、解決していくことが大切です。
まとめ|新入社員が育てば会社も成長する
企業にとって、将来を担う人材の確保は、最優先事項の一つです。
人事部には、新入社員を育成できる職場環境づくりのために、地道な継続と積極的推進が求められています。
「新人が育たない」といわれる現代でも、定着率の高い企業はいくつもあります。
そういった企業は何が成功しているのか、自社に足りないものは何なのかを常に考え、一人でも多くの新人を育てることができる環境を作っていきましょう。
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参考サイト:
- 新人若手育成のアタリマエを変えよう|人材育成・社員研修のリクルートマネジメントソリューションズ
- 平成26年版 労働経済の分析 -人材力の最大発揮に向けて-|厚生労働省
- 第27回(最終回) OJTにおける「課題」とは何か?~新人の成長課題とトレーナーの育成課題<後編>~ | ヒューマンキャピタル Online
- 新人がイキイキと働くために、人事ができること~誰しもが経験するつまずきを乗り越える方法とは?~ – 『日本の人事部』
- 恒例の新入社員の特長。2015年は「消せるボールペン型」。その心は?|ブラック企業|【瓦版】
- 「新入社員意識調査・特徴とタイプ」公益財団法人日本生産性本部)
- 「新人と中途採用者の研修、教育の方法」ビジネス・ソリューション