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社会人基礎力とは何か?高める方法や定義を徹底解説

2024.04.09

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社会人基礎力とは何か?高める方法や定義を徹底解説

「社会人基礎力という言葉を耳にすることはあるが、具体的な内容は知らない」

「社員の社会人基礎力がどの程度あるか把握しておきたい」

業種や職種をまたいで、会社で働くうえでの素地として求められる社会人基礎力

2006年に経済産業省が提唱し、社会人として押さえるべき基礎が詰まった概念ですが、具体的な内容や自社での高め方は実はあまり知られていません。

今回は「社会人基礎力」とはどのような内容で構成され、どのように鍛えていけばよいかについて紹介します。

「社会人基礎力」とは?どのような位置づけなのか?

社会人基礎力とは、2006年に経済産業省で「多様な人々と仕事をしていくうえで必要な基礎的な力」として定義された概念です。

もともとは企業で働く人と、未就業者である学生の間で「身に付けておいてほしい能力水準」に意識の差があったことから、企業と学生間での認識のギャップを埋めるために定義されました。

社会人としての能力は、まず社会人としての心構えや基本的なビジネスマナー等が挙げられますが、さらに必要となるのが社会人基礎力です。

社会人基礎力が十分に備わったのち、各職種で必要となる専門知識・スキルがさらに上乗せされていくイメージでしょう。

参考:経済産業省「社会人基礎力」

社会人基礎力の3つの能力と、12の能力要素

社会人基礎力は「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力と、それらに紐付く12の能力要素で成り立っています。

具体的には以下の表の通りです。

3つの能力 能力要素 内容
前に踏み出す力

(アクション)

主体性 物事に進んで取り組む力
働きかけ力 他人に働きかけ巻き込む力
実行力 目的を設定し確実に行動する力
考え抜く力

(シンキング)

課題発見力 現状を分析し目的や課題を明らかにする力
計画力 課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力
創造力 新しい価値を生み出す力
チームで働く力

(チームワーク)

発信力 自分の意見を分かりやすく伝える力
傾聴力 相手の意見を丁寧に聴く力
柔軟性 意見の違いや立場の違いを理解する力
状況把握力 自分と周囲の人々や物事との関係を理解する力
規律性 社会のルールや人との約束を守る力
ストレスコントロール力 ストレスの発生源に対応する力

ここからは各要素の定義と、どのように伸ばしていったらよいかのヒントについて紹介します。

2.1 前に踏み出す力(アクション)

この力は、困難な状況でも一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力です。
3つの構成要素について具体的に紹介していきます。

①主体性

物事に進んで取り組む力が「主体性」です。

新卒採用時に、多くの企業で重視されている力といえるでしょう。

主体性を伸ばすためには、自己信頼を高める必要があります。

例え小さな課題でも「達成できた」という経験を重ねていくことで、徐々に自分で動いてよい、自ら動くべき、という感覚が生まれてきます。

例えば、部下や後輩が試行錯誤して出した結果に間違いがあったとしても「それではダメだ」と全否定せず、達成できたポイントを認めることも忘れないようにしましょう。

主体性に関する研修のポイントについては社員の主体性を最大限に引き出すための研修設計3つのポイントの記事も参考にしてみてください。

②働きかけ力

他人に働きかけ巻き込む力が「働きかけ力」です。

会社員として職場メンバーや顧客とやりとりするうえで、必要とされる力でしょう。

働きかけ力を伸ばすためには、身近な人間関係から他者に働きかけていくことが効果的です。

仕事のなかでは部署を横断するプロジェクトに参加させたり、勉強会を主催させる等して、自ら他者とやりとりする環境に身を置くことで、伸ばしやすい力です。

特に新入社員の場合は、見知らぬメンバーに積極的に声をかけにくい状況もあるかと思います。上司や先輩が他のメンバーや他部署メンバーを紹介する等、働きかけしやすい接点をつくりだすと効果的です。

③実行力

目的を設定し確実に行動する力が「実行力」です。

単に行動をするだけではなく、あくまで目的や目標をかなえるために適切な行動をとることがポイントとなります。

実行力を伸ばすためには、実現可能性が高い目的・目標の設定からチャレンジすることが有効です。

あまりに高い目的・目標を掲げてしまうと、実行の道筋が立てにくくなります。その結果、最初の一歩目が踏み出せず、足が止まってしまう可能性があるからです。

「少し頑張れば達成できそう」というレベルの目的・目標を達成することで、次はより高レベルの目標に向けての実行力が高まるはずです。

2.2考え抜く力(シンキング)

この力は、課題に対して疑問を持ち、諦めずに考え抜く力です。
3つの構成要素について具体的に紹介していきます。

④課題発見力

現状を分析し目的や課題を明らかにする力が「課題発見力」です。

仕事をしていくうえで課題を発見し、それを解決するための基本の力といえます。

課題発見力を伸ばすためには、まずは本人に考えさせ、フィードバックを重ねることが有効です。

特に新卒入社者の場合は、会社で発生する「課題」の見立てに慣れていないことが想定されます。課題の発見方法や、それを他者に伝える方法等を周囲がフィードバックすることで、徐々に力が高まっていくでしょう。

ただしいきなり正解を教えるのではなく、本人に考えさせることが重要です。正解を先に教えてしまうと本人の考える力が鍛えられないため、注意してください。

⑤計画力

課題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力が「計画力」です。

作業を進めるうえでの段取りを、組み立てる力とも置き換えられます。

計画力を伸ばすためには、納期だけを設定させるのではなく「何をいつ、どれくらいの時間で」作業をするかを見積もらせるようにしましょう。

そのうえで作業終了後には振り返りを行い、その見積もりが正しかったかを検証していきます。

徐々に慣れてきたら少し難易度の高い計画を設定して、効率よく仕事をする訓練をしていきます。

⑥創造力

新しい価値を生み出す力が「創造力」です。

人によって得手不得手が分かれ、なおかつすぐには鍛えられない要素のひとつです。

経験や知識を増やすことで鍛えられる力ではありますが、まずは日々いろいろな事にアンテナを張って自身の経験としていってもらうことが大切です。

ある程度の経験と知識量が得られたら「デザイン思考」等を取り入れることで、創造力を伸ばせる可能性が高まります。

2.3チームで働く力(チームワーク)

チームで働く力は、多様な人々とともに、目標に向けて協力する力です。

ここでは6つの構成要素について、具体的に紹介していきます。

⑦発信力

自分の意見を分かりやすく伝える力が「発信力」です。

相手にどの程度伝わっているかは分かりにくいため、自分の発信力が把握できないという方も多いのではないでしょうか。

この力を伸ばすには、本人の発言の内容が伝わったかフィードバックすることが必要です。

発信力のフィードバックは大きな仕事だけでなく、日常業務でも可能です。

例えばeメールでのやりとりに対して、伝わる順番で内容が書かれているか、受け手にきちんと伝えたい情報が伝わっているかをフィードバックすることでも、鍛えていけるでしょう。

⑧傾聴力

相手の意見を丁寧に聴く力が「傾聴力」です。

単に「聞く」だけでなく、相手の心情や意図に配慮して「聴く」ことがポイントになります。

この力を伸ばすには、例えば、コミュニケーションを取り合うようなグループワークの実施が効果的です。

傾聴力が高いイメージとしては、対談番組やニュース等に出てくるインタビュアーがよい例です。相槌のタイミングや、人の話を聞いて意見をどのように引き出しているかを参考にしてもらうのもよいでしょう。

⑨柔軟性

意見の違いや立場の違いを理解する力が「柔軟性」です。

ある程度仕事に慣れてくると、自分なりのルールができて柔軟性が発揮しにくくなるといわれています。

この力を伸ばすには、業務では関わりの少なかった人と接点を持つことが有効です。一緒にプロジェクトを進めたり、異なる環境で仕事を進めたりする等して、刺激や考え方の違いを体感させるのがよいでしょう。

重点的に鍛えたい場合は、会社をまたぐようなプロジェクトや、海外へ行って異国の文化に触れるのも有効な手段のひとつといえます。

⑩状況把握力

自分と周囲の人々や物事との関係を理解する力が「状況把握力」です。

自分の業務に集中するだけではなく、周囲の状況も把握し、配慮する力ともいえます。

この力を伸ばすには、何かに集中して取り組ませるのではなく、周囲のメンバーのフォローを積極的に行ってもらうことが効果的です。

周囲の状況が判断できるようになると、自分の強みや特長に基づいた貢献領域が分かってくるため、主体的に動けるようになってきます。

⑪規律性

社会のルールや人との約束を守る力が「規律性」です。

規律性が欠けていると、チーム単位での仕事がスムーズに進みにくくなります。

この力を伸ばすためには、約束や期日、社内ルール等、基本的な行動から始めることが重要です。

しかし、あまりに厳しくルールを守らせてしまうと、やや窮屈な雰囲気にもなってしまいます。本人が取った行動で周囲が困惑したり迷惑したりした場合に、自分の起こした行動の結果を振り返る機会を与えるようにしましょう。

⑫ストレスコントロール力

ストレスの発生源に対応する力が「ストレスコントロール力」です。

仕事をするなかである程度のストレスは避けて通れないため、自分で対応していく力が重要になります。

この力を伸ばすには、感情だけにとらわれるのではなく、どう乗り越えるかの対応策を考えさせることが効果的です。

人の性格によってストレスの感じ方は変わってきます。指導側は本人の特性に合わせた育成が重要になるでしょう。

 

ここまでまとめた項目に加えて、チームで働くためにはチームビルディングに関する知識を身に付けておくことも有効です。

再定義で追加された社会人基礎力の3つの観点

昨今では、個人と企業や社会との接点が長くなる「人生100年時代」の潮流があることで、社会人基礎力の重要性がさらに増してきています。

そこで経済産業省は、2018年に個人がライフステージの各段階で活躍し続けるために「人生100年時代の社会人基礎力」として新たに定義しました。

これにより社会人基礎力は、若手社員だけでなく、シニア社員をはじめとした幅広い年齢層の社会人にとって必要な能力と認識されたのです。

ここからは新たに定義に加わった、3つの視点を紹介していきます。

学ぶ「何を学ぶか」

社会人基礎力として新たに取り入れられたのが「学び」という視点です。

学びと聞くと、子供や学生がする学校での学習というイメージが強いかもしれません。

しかし、昨今よく耳にする「生涯学習」「リカレント教育」等のように、社会人になってから新しい分野にチャレンジするために、学ぶ機会も増えてきています。

企業も労働力不足を回避するために、社員に新たなスキルを付与するリスキリングの取り組みが広まっています。

学ぶ内容も一律とは限りません。苦手な部分を克服する学びや、得意な分野をさらに伸ばす学び等、目的に応じて学ぶ内容も変わってくるでしょう。

統合「どのように学ぶか」

何を学ぶのかを明確にしたあとは、「どのように学ぶか」を検討する必要があります。

単に新しい知識を取り入れるのではなく、これまで培ってきた能力や経験、すでに身に付いているスキルと結び付けて、体系的に学ぶことが重要です。

統合的な視点でとらえると、一からすべてを学ぶより効率的に新しい知識が定着するだけでなく、経験に裏打ちされた実践的な能力が得られます。

また、周囲の人たちで各々の得意分野と絡めて学び合いをするのも、学びが企業風土に昇華しやすいので、お勧めの方法です。

目的「どう活躍するか」

学んだうえで「自分が活躍するイメージを固め、そこに向かって行動を起こす」ことは、モチベーションを維持しやすいでしょう。

キャリアアップや新しい業務へのチャレンジなど、人によって目的は違いますが、目的達成に向けて自ら行動する部分は同じです。

一歩前に踏み出し、例え失敗したとしても忍耐強く取り組む力は「前に踏み出す力」の開発にも効果的でしょう。

社会人基礎力の診断方法

社会人基礎力の概要を理解したうえで、自分や、自分のチームメンバーがどの程度の力を備えているか把握したいという方もいるのではないでしょうか。

社会人基礎力を診断する代表的な3つの方法を紹介します。

社会人基礎力検定|一般財団法人 社会人基礎力検定協会

「社会人基礎力検定」は、社会人基礎力検定協会が実施している検定試験です。検定問題は60問で、90分で回答します。

結果は3級・準2級・2級で判定されます。

出題されるのは同一問題ですが、級に応じて合格基準がそれぞれ設定される形式です。70〜80%未満の点数で3級合格、80〜90%未満の点数で準2級合格、90%以上の点数で2級合格となります。

参考:社会人基礎力検定|一般財団法人 社会人基礎力検定協会

ひらく社会人基礎力診断テスト120|経済産業省

経済産業省が実施している「ひらく社会人基礎力診断テスト120」は、セルフチェック式の診断テストです。

設問は120問用意されており、4つの選択肢のなかから当てはまるものを選びます。「よく当てはまる」から「全く当てはまらない」の選択肢から適したものを選ぶだけです。

Web上で回答したあとに自動的にグラフが作成されるので、強みや弱点を視覚的に把握できます。

参考:ひらく社会人基礎力診断テスト120|経済産業省

社会人基礎力診断|マイナビ

「社会人基礎力診断」は、採用に関するサービスを提供しているマイナビが実施している、Webで回答する診断テストです。

回答時間の目安は15分程で、分析後にデータが送付されるため、容易に社会人基礎力の診断ができます。

マイナビの社会人基礎力診断では、ビジネス上の得意部分や苦手部分を把握し、改善するイメージがしやすくなるのが大きな特長です。個人だけではなく、採用担当者にも活用されています。

参考:社会人基礎力診断|マイナビ

社会人基礎力の高め方

最後に、どの社会人基礎力の要素を高めるとしても、共通して推奨したい高め方のステップを紹介します。

「何を鍛えるか」を明確にする

社会人基礎力にはさまざまな能力要素があるため、まず「何を鍛えるか」を明確にすることが重要です。

自部門で鍛えたい力を設定する、本人の申請で鍛えたい力を決める等の方法があります。

どの力を鍛えるとしても、一人ひとりの成長が会社の成長につながることを意識してもらうようにしましょう。

「どう鍛えるか」を決める

「どう鍛えるか」も、鍛える力によってさまざまな方法があります。

OJTや研修受講、社外での学習費用の支援、社内の配置転換等が代表的な育成手法です。

全社一律で社会人基礎力を身に付けてもらう場合は、社会人基礎力専用の育成プログラムを持っている外部に依頼するのもお勧めです。

通常業務で能力を開発する

社会人基礎力は、特別なプログラムだけではなく、通常業務のなかでも少しずつ開発可能です。

例えば、主体性を開発したい社員がいた場合は、会議の場で積極的に発言を促す等の工夫が挙げられます。

通常業務で能力開発を行う場合は、マネジメントのサポートも重要になります。期初の面談で「どの力を今期は鍛えよう」と本人とすり合わせを行い、期中の動きを見守るようにしましょう。

効果測定・振り返りを行う

社会人基礎力の向上には、フィードバックによる客観的な振り返りが役立ちます。

上司や同僚、仕事で関わりのある人等からのフィードバックを取り入れることで、自分では気付いていない部分を発見できる可能性があります。

一人ひとりの振り返りを行うのとともに、マネジメントや人事部門は組織全体の効果測定を行い、次に鍛える力の設定につなげるようにしましょう。

まとめ

社会人基礎力とは、主体性やチームワーク等、仕事をするうえで必要になる基礎的な能力です。

社会人基礎力を向上させるのは、企業にとってのメリットだけではなく、個人にとってもポジティブな影響があります。

人的資本経営の潮流がある昨今においては、ぜひ自社人材の能力の底上げとして、社会人基礎力の向上を心がけてはいかがでしょうか。

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企業の業績向上、社員の成長、組織の風土形成・・・・・・。管理職が担う責務は多岐にわたります。 そのような重責を担う管理職ですが、あらためて何のスキルが必要かと問われると、具体的にはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。 研修をはじめとした人材開発施策を企画するとしても、まずは管理職に求められる基礎的なスキルを把握する必要があります。 今回の記事では、業種や職種をまたいで、どのような企業でも共通となる管理職としての必要なスキルを取り上げます。スキルの解説だけでなく、スキルの高め方や階層別研修まで紹介するので、参考にしていただければ幸いです。 1.管理職の役割とは 管理職に必要なスキルを考えるためには、まず管理職が担う役割を理解する必要があります。 ここでは一般的に管理職が企業内で果たすべき役割を3つ紹介します。 1-1.業務管理・成果の創出 管理職は自分がマネジメントする組織の業務を適切に管理し、そのうえで求められる成果を創出する役割があります。 一般社員は、自分が担当する業務を確実に遂行することが求められます。一方、管理職はメンバーが担うそれぞれの業務の進捗を把握して、組織全体の業務管理をする必要があります。 個別業務の遂行だけではなく、組織全体を見渡すことが求められているのです。 また、管理職は会社経営の視点も必要となるため、担当組織が会社に対してどのような成果を出せるかを考えることが重要です。さらには自組織だけの成果を創出するだけでなく、ときには隣の部署や上層部と調整をしながら、成果を生み出すことも必要でしょう。 このように、管理職には組織や会社全体の状況を把握したうえで、業務管理や成果創出を担う役割があります。 1-2.メンバーの育成 担当する組織メンバーの成長を支援することも、管理職の重要な役割のひとつです。 管理職として組織をまとめ、成果を出すためには、メンバー一人ひとりが持てる力を発揮することが前提となります。 そのため、管理職は自組織のメンバーの様子を常々気にかけて、把握しておかなければなりません。 仮にメンバーが能力やスキルを発揮しきれていない場合は、原因を特定し、必要な支援を行います。能力面だけでなく、メンバーが悩んでいる場合は相談に乗る等して、メンタル面のケアも求められます。 部下の強みや弱みを把握したうえで、能力が発揮できるチャンスを与えたり、キャリアアップのためのサポートをしたり、管理職はメンバーを育成していかなければなりません。 1-3.経営者層と一般社員の橋渡し 管理職は、会社内において経営者層と一般社員との間に位置するポジションです。 自分の組織のマネジメント視点に加え、常に経営側の視点からも物事を見ることが求められます。もちろん、組織メンバーの目線も忘れてはなりません。 経営側の立場やメンバーの立場を理解したうえで、経営側と一般社員側の橋渡しをするのが管理職の役割です。 社員がそれぞれ異なる方向を向いていては、会社全体の利益を最大限まで引き上げることは難しいでしょう。 管理職は会社の経営理念や方針を、一般社員が理解できるようにしっかりと伝え、組織としての目線をそろえながら働けるよう導かなければなりません。 このような橋渡しの役割を管理職がしっかりと担えれば、一般社員も目の前の仕事だけではなく、経営層と同様の広い視野を持って業務にあたることができるでしょう。 2.【カッツ教授が提唱】管理職に必要なスキル 管理職の役割を果たすためには、実に多くのスキルが求められます。 管理職といっても、会社のなかにはさまざまな階層の管理職がいるだけでなく、部門や職位により役割は異なります。しかしどの階層でも「部門目標の達成」と「部下・後輩の育成」は求められます。この役割を果たすために必要なのがマネジメント能力です。 このマネジメント能力もまた階層によって求められるスキルは異なります。 ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、自身の論文で、管理職の階層に応じて求められるスキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分けて提唱しました。これが「カッツモデル」と呼ばれる3つのスキルです。 この3つのスキルについて、ここから詳しく紹介していきます。 3. 管理職に必要な3つのスキルの具体的な内容 3つのスキルは、どれかが秀でていればマネージャーとして優れている、という訳ではありません。 自分が担う業務分野や会社の方向性によって、どのスキルがより必要になるか考えながらご一読ください。 3-1.テクニカルスキル テクニカルスキルは業務遂行能力のことで、業務を遂行するために必要となる知識や技術に関するスキルです。 例えば、自社が扱っている製品・サービスに関する知識や技術や業界の知識、業務プロセスに熟達していることがテクニカルスキルに該当します。 細かく区分していけば、情報収集力、分析力、プレゼンテーション力等も含まれます。 テクニカルスキルは、管理職のみならず若手社員でも重要視される傾向があるでしょう。 3-2.ヒューマンスキル ヒューマンスキルは対人関係能力のことで、仕事上の人間関係を構築するうえで人を観察・分析し、望ましい働きかけを選択・実行するスキルです。 管理職の場合、多くの関係者と関わりながら仕事をしていきます。 メンバーマネジメントだけでなく、メンバーの上司として顧客や取引先、あるいは会社の経営層と対峙する場面も多いものです。 人と関わりあって成果を出すためには、相手の意向を的確に把握し、適切な提案や解決策を提示する対応が求められます。また、組織間に対立や摩擦が生じたとき、折り合いを付ける調整機能も管理職の役目です。 仕事では、経営層や部下・同僚、顧客や取引先等多くの人と関わります。必ず誰かと関わって仕事を進める側面があるため、このスキルも幅広い階層に求められるでしょう。 3-3.コンセプチュアルスキル コンセプチュアルスキルは概念化能力のことで、全体感を持ち、思案作業から具体的な将来像を描き、解決策を導く能力に関係するスキルです。 例えば、伝わりやすい方針やビジョンを描いたり、現在の環境を分析して計画を立てたり、問題を解決する能力全般がコンセプチュアルスキルには含まれます。 業務上でトラブルが発生したとしても、管理職に本質的な課題をとらえる能力が備わっていれば、速やかに問題を解決に導くことができます。 変化が激しく先行きの見通しがききにくいVUCAの時代といわれる昨今では、より重要性が増しているスキルといえるでしょう。 5.管理職階層によって必要となる3つのスキルの違い 前述した3つのスキルを、階層ごとに比重分けしたのが下の図表です。 ローワーマネジメント(リーダー層)、ミドルマネジメント(幹部層)では、主としてテクニカルスキルとヒューマンスキルが求められ、トップマネジメント(経営層)に進むにつれ、コンセプチュアルスキルのウエイトが高まるとされています。 つまり、上階層になるほど総合判断や問題意識、問題解決の能力が求められるということになります。 注目すべきは、「ヒューマンスキル」は常に同比率であるという点です。管理職である以上、部下を育成しマネジメントしていくためには、人間関係を構築し、部下の働きを観察、分析できなければ部下はついてこないということでしょう。 4.管理職に必要となるスキルの高め方 管理職に必要なスキルは、実践を通じて開発できます。ここでは管理職の業務を行いながら、意識的にスキルを高めるポイントについて解説します。 人事部門主導で管理職のスキル開発する際も、このような現場の仕事とスキルを接続する観点を持つことは意味が大きいでしょう。 4-1.リーダーシップを発揮する 自組織の方針を伝える、メンバーを指導する等マネジメントの各場面で「自分がリーダーである」という自覚を持つことで、リーダーシップが発揮されやすくなります。 また、組織業績の振り返りや成功・失敗のパターン分析を理論的にまとめることで、リーダーとしての説得力が増す効果もあります。 「シェアド・リーダーシップ」「サーバントリーダーシップ」「オーセンティック・リーダーシップ」等、ビジネス環境に応じた「○○リーダーシップ」と呼ばれる理論は数多く存在します。 まずはどのようなリーダーシップを開発するかの目標を定め、意識的にスキル開発を進めるとよいでしょう。 4-2.コミュニケーション力を鍛える コミュニケーションをさらに紐解くと「対人間での情報共有や意思の疎通」のことです。 コミュニケーション能力は、それらをスムーズに行うことができる力のことです。 この力を鍛えるうえで大事な観点は「コミュニケーションは双方向のもの」ということです。 コミュニケーション能力を高めようとすると、「いかにうまく相手に伝えるか」を意識しがちです。 相手への情報伝達だけでなく、「相手からの情報をいかに上手に・的確に受け取るか」という観点も持っておきましょう。 コミュニケーション力に苦手意識がある方は、いきなり情報発信を訓練するより、相手の話を「聴く」訓練をする方がやりやすいでしょう。 また、自分が「この人はコミュニケーション力が高い」と感じる身近な人を観察するのも効果的です。 4-3.課題解決力を鍛える 課題を解決するには、何が課題なのかを把握する能力が必要です。 課題解決力は、一朝一夕には身に付きにくいスキルといえます。発生した課題に対して「なぜこうなったのか」「どうしたら解決できるか」と真摯に向き合う姿勢が重要です。真摯に課題に向き合って対応した結果、課題解決力が鍛えられていくのです。 日常的に「なぜ?」「どうして?」と問いかける習慣をつけ、物事の意味や背景を考えて分析するような思考の癖(ロジカルシンキング等)を身に付けましょう。 ただし実際の業務を通じて課題解決力を鍛えようとすると、ややもすると仕事の失敗にもつながりかねません。意図的にスキル開発をしたい場合は、研修等Off-JT(Off-The-Job Training)の場を活用することも推奨されます。 6.管理職向け階層別研修のポイント ここまで3つのスキルを紹介しましたが、具体的にこれらを育成する最適な研修内容はどのようなものでしょうか? 管理職に求められるスキルは階層により異なるので、すべての管理職で同じ内容の研修を行っても意味がありません。職位や人事制度上の等級や組織上の階層ごとに分けて実施する「階層別研修」が理想的です。 階層別研修では、それぞれの階層ごとに必要とされる能力や知識、態度の習得や、期待される役割を自覚させることを目的に実施されます。 「カッツモデル」の3つのスキルに当てはめると、 テクニカルスキル 会社や自部門の業務についての基礎知識や、商品・サービスに関する知識、業界知識等を習得する。 ヒューマンスキル 社員に対する理解やリーダーシップ、部下育成や評価、コミュニケーション能力を習得する。 コンセプチュアルスキル 総合判断や問題意識、問題解決の能力、調整力を身に付ける。 等が挙げられます。 つまり、ローワーマネジメントでは「テクニカルスキル」と、「ヒューマンスキル」を向上できる研修。 ミドルマネジメントでは「テクニカルスキル」は減少しつつも「コンセプチュアルスキル」の基礎と「ヒューマンスキル」を学べる研修。 トップマネジメントではより「コンセプチュアルスキル」に寄った内容と「ヒューマンスキル」を向上できる研修が望ましいと考えます。 7.まとめ 階層別研修では注意すべきことがあります。それは「人事制度上の等級は下だが、年齢は上」という「年上部下」が当たり前になりつつあることです。 年上部下に指示を出したり、部門方針に従わせたりすることは、上から目線で嫌がられるのではないか、あまり管理をしない方がよいのではないかと考えがちです。 いくつになっても人は「他者から認められたい」と願うもの。年上部下に対しても存在承認することが、管理職の重要な仕事です。その「存在承認のやり方」を、年下の部下と変えて行うだけです。 まずは相手の話をよく聞いて理解する「ヒアリング」力を向上させるところから始めてみましょう。自分の話を聞いて理解してくれていると感じると人間関係が良好になり、信頼関係が生まれます。これこそマネジメントする側に必要とされるスキルで、生涯、継続して向上させていくべき「ヒューマンスキル」だと考えます。 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

2023.07.01

異業種交流を活用したグローバルマインドの育て方

2023.07.01

異業種交流を活用したグローバルマインドの育て方

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グローバル人材育成を考えるとき、最近よく叫ばれているのは「グローバルマインド」の必要性です。グローバルビジネスを成功に導くことができる人材とは、専門知識や語学力だけでなく自分の価値観や業界の垣根に縛られない広い視野と柔軟性を備えた人間であるという考え方です。その一環として、語学研修、海外短期勤務プログラム、クロスカルチャー研修などを導入している企業も多いことでしょう。今回はグローバルな視野を身につける効果的な方法のひとつとして、異業種交流に注目します。 異業種交流が打ち破る壁とは? 普段、私たちが日常業務や社内研修を通して学ぶことは、自分の働く業界にフォーカスした内容です。そこではどうしても自分の考えや価値観、知識などの“枠”に気付きにくいもの。異なるものの見方や世界に触れることで、初めて自分の立ち位置に気づき視野が広がるのです。 独立行政法人労働政策研究・研修機構による調査では、「正社員に今後求める能力・資質」という質問に対し「事業や戦略の企画・立案力」(40.5%)、「課題やリスクに対する想像力、思考力」(40.1%)、「新たな付加価値の創造力」(36.2%)という回答が寄せられました。「これまで求めてきた能力・資質」としては、同じ回答がそれぞれ32.2%、36.9%、28.0%だったことから、企業は社員が新しい発想力やより高い創造力を持つことに期待していることがわかります。 各業種の専門家同士による最新の情報や知見、知識の交換、取り組み方や考え方を知ることは、自社の課題へのヒントや新しい発想につながります。厳しい競争を迫られるグローバルビジネスでは、こうした“外を知る”ことで培われる企業の枠を超えた発想や、新規事業を起こすイノベーション力が求められているのです。 異業種交流でどのようなグローバル人材が育つのか 異業種交流は、グローバル化に対応できるマインド育成においてどのような効果をもたらすのでしょうか。以下に挙げてみましょう。 広い視野: 業界外の人と関わることで、自分の業界の常識にあるプラス面とマイナス面への気づき、異なるものの見方や解決法へのヒント、新しいビジネス動向への知識などを習得でき、視野が広がります。 柔軟な思考力: 新しい世界との接触は異なるものへの受容や理解を意味し、ものごとの多面性を理解することは「柔軟な思考力」を育てます。そして、これは個人の自律性を高めるだけでなく、自社の戦略を練るうえでも必要とされる能力です。 コミュニケーション力: 異なるバックグラウンドを持つ人との交流では、自分をどうアピールし、相手から何を引き出せるかという能力をフルに発揮する必要に迫られます。 伝える力: 自分と同じ知識や経験を持たない人に対しては、何ごとでも説明や理解を求める努力が必要となります。わかりやすく伝えるということは一見簡単そうですが実は難しいスキルです。話の通りやすい同業者との交流では培われにくい「伝える力」が鍛えられます。 人脈づくり: 異業種交流は、業種を超えたノウハウや技術、協力を得られる場です。新ビジネス進出へのヒントにもつながります。 異業種交流でグローバルなマインドセットを グローバル人材を育てるのは、語学力や海外経験だけではありません。むしろ、広い視野に裏づけられた創造力や発想力、柔軟性といったマインドセットが基礎となるのです。研修や人事育成の担当者はグローバルな視野を育てる意味で、社内に留まっていては得られない刺激をインプットできる異業種交流に取り組んでみてはいかがでしょうか。 参照サイト: 「「構造変化の中での企業経営と人材のあり方に関する調査」結果」 独立行政法人労働政策研究・研修機構 「異業種研究交流会」一般社団法人企業研究会 「アサヒビール、電通、ヤフー……エース社員研修に潜入」PRESIDENT Online  

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