2024.06.25
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近年、企業内の不祥事やハラスメントに関するニュースを見聞きするようになった方も多いのではないでしょうか。
基本的なコンプライアンス研修はすでに実施しているという企業が多いかと思いますが、自社のやり方で十分かどうなのか分からないという声も聞かれます。
そこで今回は、コンプライアンス研修の目的やテーマの選定方法だけでなく、研修の効果を高めるためのポイントについても紹介するので、参考にしていただければ幸いです。
コンプライアンス研修の概要
コンプライアンス研修に関する具体的な企画をする前に、あらためてコンプライアンスの定義や、研修が求められる背景について確認していきます。
コンプライアンスとは
「コンプライアンス(compliance)」とは、直訳すると「法令遵守」です。
企業内でのコンプライアンスは、法令のみならず社会的規範や行動倫理等も含めて遵守することと置き換えられます。
定義を踏まえると、コンプライアンス研修は、自社社員に対して守るべき法令を周知し、コンプライアンス違反によって生じるリスク回避を目的としています。
コンプライアンス研修で扱うネタ・題材は広範囲におよびますが、自社における優先順位を決め、リスクが生じやすいテーマから着手しましょう。
コンプライアンス研修が求められる背景
コンプライアンス研修が実施されるようになったのは、1990年代頃から企業での不祥事が相次いだことが影響しています。
例えば、大手企業による「粉飾決算」や「機密情報の流出」「超過勤務による過労死」等の事件です。
帝国データバンクの調査によると、2022年度にコンプライアンス違反が確認された企業の倒産は過去最多の300件、2年連続で増加しています。
企業の不祥事に対する社会的な関心や批判は高まっており、今後ますますコンプライアンス研修の必要性も高まっていくでしょう。
コンプライアンス研修の目的
社会全体としてコンプライアンスの重要性は増していますが、あらためて企業が自主的に研修を実施する意義や目的を確認していきます。
1. 法令・ルールの周知
ビジネスを進めるうえで知っておくべき法令に関して、社員への周知徹底のためコンプライアンス研修を実施します。
具体的には、ビジネスに不可欠な法律の知識や、自社の重要テーマに関する法令等、改めて啓蒙したい内容を取り上げます。自社のリスクに直結しやすいものについては、新たに立法・改正された法律をテーマに選定することも必要でしょう。
例えば、個人情報の取り扱いが不可欠な部門では「個人情報保護法」、購買で下請け取引が頻繁な部門では「下請代金支払遅延等防止法」、知的財産に関わるような開発部門では「知的財産権」等、業務に関するテーマが挙げられます。
全社員に共通して遵守すべき「労働基準法」「安全配慮義務」「インサイダー取引規制」等も取り上げるとよいでしょう。
2. コンプライアンス違反によるリスク回避
コンプライアンス意識が低かったことで起こるリスクを防ぐためにも、研修は必要です。
コンプライアンスに関する不祥事は、時に社員一人ひとりの意識に起因することがあります。
「これくらいの小さなことは、大丈夫だろう」という軽率な行動がきっかけで、コンプライアンス違反を問われれば、世間からの信用失墜につながることもありえます。
信用が失墜するのは早いですが、回復には多くの時間を要するものです。社員にコンプライアンス違反によるリスクを再認識させることも、研修の大きな目的です。
3. 社会生活での基本ルールの共有
社員一人ひとりの動きで事業を推進する企業においては、ルールの徹底もコンプライアンス研修の大きな目的となります。
特に社会人としての経験が浅い社員が多い場合は、コンプライアンスに関する意識が十分ではないかもしれません。
就業規則はもちろん、ビジネスマナーや社会人としての常識、SNSの取り扱いや取引先との関わり方等も、研修内容に取り入れたいものです。
円滑に業務を進めるうえでも、社員が共通して守るべきルールの徹底は不可欠といえるでしょう。
コンプライアンス研修の代表的なネタ
コンプライアンス研修は業界や職種によりさまざまですが、どこの会社でも共通して理解すべき内容もあります。
本章ではコンプライアンス研修の代表的なネタを5つ紹介します。
1. 各種ハラスメント
現在では「○○ハラスメント」という言葉が広く認知されるようになってきました。
厚生労働省においても、ハラスメントに関してのガイドラインや法規規制を拡充しているため、企業内でもハラスメントへの理解を深める取り組みが求められています。
参考:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)
具体的には、「ハラスメント」には以下のような気を付けるべきジャンルがあります。
- パワーハラスメント
- セクシャルハラスメント
- アルコールハラスメント
- マタニティハラスメント
- スモークハラスメント
- ジェンダーハラスメント
- モラルハラスメント
研修で取り上げる際には、ハラスメントの加害者や被害者にならないよう、どのようなケースがハラスメントに該当するのかを具体的に示すことが推奨されます。
2. 法規関連 著作権、商標権等
法規周りに関しては、職種を問わず遵守すべき法を社員全体に理解してもらう必要があります。
具体的には、著作権や特許権等の侵害は法律違反であり、企業価値を損なうだけでなく、刑事罰が下るケースもあります。
例えば、企業のSNSやブログで使用する動画や写真、文章等について、知識不足が原因で著作権を侵害してしまうケースがあります。
著作権や意匠権を侵害した場合、莫大な損害賠償金を請求される恐れがあります。悪質と判断されれば、個人に対しても、罰金や懲役等の刑事罰が科されるかもしれません。
3. 情報セキュリティ
情報セキュリティに関しては、昨今のコンプライアンス研修では特に無視できないテーマです。
スマートフォンやインターネットの普及でデジタル化が進む現代では、情報セキュリティに関する内容もコンプライアンス研修で扱う必要があります。
社員が個人のSNSに投稿した場合でも、会社の愚痴や悪評が不特定多数に閲覧されれば、会社の評判を落とします。嘘の書き込みをしたり、悪意を持って他人や会社の評判を貶めたりした場合には、罪に問われるかもしれません。
また、外部からのサイバー攻撃にも注意が必要です。
サイバー攻撃による個人情報の流出事件は、社員による不正や作業の単純ミスが原因で発生することも少なくはありません。
具体的にどのような対策が必要かを研修で広報し、社員の危機意識や正しい言動を促しましょう。
4. 社内手続き・ルール
社内における手続きもコンプライアンス違反につながりやすいため、研修の重点テーマといえます。
特に、経費に関する手続きはすべての社員に関係するものであり、不正を事前に防ぐためにもルールや基準等を明文化して、共有する必要があります。
不正内容によっては刑事罰となる可能性もあり、企業だけでなく社員を守るためにもコンプライアンス研修を通じて教育を施しましょう。
さらに、社内手続きに関しては社内通報の整備も重要です。
社内通報とは、会社内で起こっている問題や不正を社内窓口に通報することです。社内通報が制度化されていれば、大きな問題に発展する前に組織的な適切な対応がとりやすくなります。
5. 働き方改革
近年重要度が増しているコンプライアンス研修のテーマは、働き方改革です。
かつては残業してでも会社に貢献すべきという考え方が主流でしたが、昨今ではワークライフバランスを向上させる潮流があります。
コンプライアンス研修を実施することで、できるだけ定時で帰るよう業務効率を高めたり、タイムマネジメントを行ったりする必要性を強調しましょう。
コンプライアンス研修のネタの収集方法
コンプライアンス研修のネタ探しは、意識的に行う必要があります。急に研修企画が持ち上がっても慌てないよう、ネタの探し方について理解しておきましょう。
1. 同業界での事例収集
抱えるリスクが似ている同業種の事例を集めると、コンプライアンス研修のネタが見つかりやすくなります。
同業種の事例であれば社員にとっても問題やリスクを具体的にイメージしやすく、自社に当てはまる対策を社員自身が考え出す助けにもなります。
自分の状況とコンプライアンス違反が直接結びつきやすいので、社員の学ぶ意欲を喚起することもできるでしょう。
2. 法務部門・弁護士等の専門家に相談
しっかりとコンプライアンス研修を実施したい場合は、法務部門や弁護士等のプロフェッショナルに相談することも一手段です。
法務部は関連法規の改正や最新の法律に通じているため、コンプライアンス研修に含めるべき法律知識へのアドバイスをくれる傾向があります。
自社に法務部がない場合は、弁護士等の専門家に相談するのもよいでしょう。
業界・業種に必要な知識をもとに、実践的な研修を実施できます。具体的なケースでの質問にも、専門的な見地からアドバイスしてもらえるでしょう。
専門家が講師をする場合は、オンラインで研修実施し、後日いつでも再生できるように録画を用意しておく運用も増えています。
3. 書籍やインターネットでの情報収集
できるだけネタ収集のコストを省きたい場合は、書籍やインターネットで情報収集する手段もあります。
昨今ではコンプライアンスに特化した書籍が数多く出版されているため、ネタも収集しやすいでしょう。業種別の事例が掲載されていることも多く、自社にフィットしたコンプライアンスの事例を簡単に見つけられます。
ただし、インターネットで簡易にネタ集めはできるものの、各Webサイトの情報が信頼できるものかどうかを見極めることが重要です。
根拠が曖昧だったり個人的な見解が入っていたりすると、情報の信憑性が揺らぎます。誰が、いつ、どのような根拠で発信した情報なのか確認したうえで、コンプライアンス研修で使用しましょう。
コンプライアンス研修の効果を高めるコツ
ネタを集めただけでは、コンプライアンス研修の真の目的は果たせません。
最後に、コンプライアンス研修の効果をより本来的にするためのコツを紹介します。
コツ①継続的に実施する
コンプライアンスは社員一人ひとりの意識の問題であり、継続的な実施が重要です。
研修を単発で実施するだけでは、効果は一過性のものに留まりがちになります。定期的、継続的な実施によって、コンプライアンス意識の高い職場風土が醸成されます。
そのためには、社員全員が継続的に受講できる仕組みをつくることも大切です。
例えば、オンラインで研修を実施すれば、社員は場所と時間を選ばず受講できます。また研修という形式でなくても、定期的なミーティングで、管理職がコンプライアンス違反事例を共有し、注意喚起を促すような取り組みも有効です。
朝礼で社訓や社是を唱和したり、クレドや行動規範を読み上げたりするのも、心理的な効果があるとされています。工夫してコンプライアンスの啓発機会をつくるようにしましょう。
コツ②社員の意識に合わせたタイミングで実施する
コンプライアンス研修は、社員の関心事に沿ったタイミングで実施することも重要です。
例えば「実際に社内でコンプライアンス違反が発生した」「同業他社がコンプライアンス違反で事件になった」等が、注目が集まるタイミングといえるでしょう。
コンプライアンス違反がニュース等で取り上げられ、社会的に大きな話題となったタイミングで、自社の点検を兼ねて実施すれば、効果的な研修が実施できます。
まとめ
コンプライアンスと聞くと「堅苦しい」というイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、情報が錯綜する昨今のビジネス環境において、企業が健全に発展するためには不可欠なテーマといえるでしょう。
組織のCSR(社会的責任)が注目されている潮流もあり、コンプライアンス研修の重要性は今後も高まることが予想されます。
オンラインでの学習コンテンツ等を有効活用することで、ぜひ社員にも身近なコンプライアンス研修を展開していってください。
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