2024.05.17
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ここ数年で、日本企業での普及が広がった1on1ミーティング。
大手企業を中心に導入が進み、最近では企業規模を問わず1on1ミーティングが活用されています。
普及は進んだものの、「名称は知っているが、具体的な内容は分からない」「実施しているものの、今のやり方が正しいのか疑問だ」という声も聞かれます。
今回はあらためて1on1ミーティングのメリットや、効果的な1on1ミーティングの進め方を紹介します。
これから1on1ミーティングの導入を検討したいとお考えの方も、現在の1on1ミーティングの進め方を見直したい方も、参考にしていただければ幸いです。
1on1(1on1ミーティング)とは
1on1ミーティング(略称:1on1)とは、一般的には「上司とメンバーとの一対一の定期的な面談・ミーティング」のことで、短い時間・サイクルで定期的に行われます。
企業によって1on1の長さや頻度は異なりますが、1回15~30分程度、週1回~隔週1回の頻度で実施される傾向にあります。
面談者は、多くの場合は直属の上司が担いますが、部門長やメンターが担うケースもあります。
1on1は、もともとアメリカのTech系企業が集まるシリコンバレーで1980年代初頭に始まり、当時大きく成長した産業・企業を象徴する文化のひとつとして注目されるようになりました。
日本でもIT企業や大手企業が導入したことで注目が集まり、多くの企業で1on1の導入が広がっていきました。
1on1が注目された背景
アメリカのTech企業で始まったこの面談手法が、日本でどのように普及が進んだのか、背景をあらためて深堀りしていきます。
1990年代から変化が激しく、先行きの見通しが難しい「VUCAの時代」に全世界が突入したことから、社員一人ひとりが上からの指示を待たずに変化に対応することが求められてきました。
そのため、こまめに社員とコミュニケーションを取り、現状認識のすりあわせをしたり、情報交換をしたりする1on1の必要性が高まっていきました。
さらに、多くの企業で1on1が広まった背景のひとつが、コロナ禍の影響です。
ある企業が行った調査では、1on1ミーティングは日本企業の約70%で導入が進んでおり、そのうち60.5%がこの3年間で導入したという結果となっています。
コロナ禍では、リモートワークの導入や部門での食事会の減少等によって、上司と職場メンバーで直接コミュニケーションを取る機会が大きく減少しました。
また、これまで行っていたオフィスでの挨拶や雑談等から、メンバーの状況を把握することも難しくなったといえます。
そのような背景から、メンバーの仕事の状況だけでなく、喜怒哀楽も含めてこまめに本人の状態を感じられる1on1のニーズが高まっていきました。
従来型「面談」との違い
これまで行っていた「面談」と呼ばれるものと1on1の大きな違いは、1on1はメンバーのための時間という点です。
従来型の面談は人事評価の一環で、メンバーを評価したり業務マネジメントをしたりする目的がありました。
もちろん従来型面談の時間でメンバーの成長も考えると思いますが、どちらかというと組織側の観点で使われる時間といえるでしょう。
一方1on1はメンバーと対話を繰り返すことでお互いの考えを深め、メンバーの成長をサポートしていくことが目的です。
その対話過程でメンバーの成功や失敗が共有され、そのフィードバックを通じながら、双方向でコミュニケーションをする特長があります。
また、実施の頻度が評価面談は半期で1~3回程度なのに対し、1on1ミーティングは週1回~隔週1回と高頻度なこともポイントです。
1on1を実施する目的・メリット
通常の人事評価面談と平行して、1on1を実施する目的やメリットはどのようなものがあるのでしょうか。
本章では、すでに1on1を導入している企業からよく聞かれる狙いや実際のメリットをお伝えします。
メリット①メンバーの離職防止
上司とメンバーのコミュニケーションが密になることで、メンバーの離職意向を減少させるメリットがあります。
どのような人であっても、高いモチベーションを保ち続けるのは難しいでしょう。ときには落ち込んだり、悩みや不安を抱えたりすることもあります。
また、発生時点ではそれほど大きな悩みではなくても、手を差し伸べず放置しておくと深刻な問題に発展することもあります。
メンタルの不調や、組織や仕事に対するエンゲージメントが著しく低下し、休職や離職という事態につながるケースも考えられるでしょう。
このような事態を未然に防ぐために、1on1の場で上司がメンバー一人ひとりと向き合う頻度や密度を増やし、早めに異変を察知して対応・解消する効果があるのです。
メリット②メンバーの成長促進
1on1は、メンバーの主体的・自律的な考えを深めさせることで、成長を加速させることも目的のひとつです。
上司が一方的に業務指示をする面談では、メンバー自らが必要性やアイデアを考える等の「気付き」が得られにくい場合があります。
1on1はお互いに対話をしながら、一緒に問題解決の糸口を見つけていくアプローチです。
メンバー自身が現状の問題や、今後実現したいことに対して主体的に考えることで、徐々に自律型人材へと成長していくことが期待できるでしょう。
メリット③上司とメンバー間の信頼関係強化
1on1を通じてよく聞かれるメリットの声は、メンバーとの関係性が良化し、信頼関係が強固になったという意見です。
1on1は評価や指導の場ではなく、上司とメンバーが対等に話をする場です。
また、業務の話題だけでなく、プライベートの話題や世間のニュースについての雑談を交えることも効果的とされています。
リラックスした状態で対話することでお互いの理解が促進され、信頼が深まっていきます。1on1を通じた信頼関係が土台となり、日常のマネジメントが円滑になる効果も期待できるしょう。
1on1で話すテーマとは
1on1は比較的ライトな位置づけの面談ではあるものの、だからこそ「何を話せばいいのだろう」と首を傾げるマネジメントの方も多いようです。
前述したように1on1はメンバーが主体の時間です。
そのため「メンバーが相談したいこと」が主題になりますが、メンバー側も「好きに話せといっても話題が思いつかない」と困るケースもあるでしょう。
そのため、上司側がある程度のテーマ・アジェンダを用意して、それについてのメンバーの意見を出してもらう工夫が有効です。
例えば、多くの企業で取り上げているテーマは以下のようなものです。
【1on1のテーマ・アジェンダ例】
・仕事の進め方や課題等、 最近困っていること
・職場の人間関係に関する悩み
・会社方針等、大きな出来事についての不安
・中長期的なキャリアに対しての考え、今後チャレンジしてみたい分野
・プライベート(家族のこと、休日の過ごし方、趣味等)
・最近の仕事から学んだこと(失敗・成功体験の共有)
「業務○○の課題について」等とテーマを固定しすぎてしまうと、1on1の時間が上司からの「指定」となってしまいます。
上記例のように、あくまでメンバーの考え方の「促し」となるような粒度でテーマを投げかけるよう注意しましょう。
効果的な1on1の進め方
話題にするテーマが決まったとしても、実際の進め方が分からないと、メンバーの成長を促せません。
1on1は30分程度と短時間なため、本章で紹介するような型に則ってミーティングを進めるようにしましょう。
STEP1. チェックイン
いきなり本題に入る前に、まずはメンバーに今の気分や関心のあることを共有してもらいます。
英語のチェックインには「物事が進んでいるかを確かめるために、短時間の電話や訪問等での連絡」という意味があります。
場のアイスブレイクという目的もあるため、話しやすい身近な話題から始め、場の空気をあたためるようにしましょう。
雰囲気作りのためには、物理的な環境にも気を配る必要があります。
個別の空間が望ましいですが、会議室のような静か過ぎる環境よりも、ミーティングスペースやカフェスペース等の環境が1on1にはフィットしやすいでしょう。
STEP2. テーマについてメンバーの考えを引き出す
チェックインが終わったら、その日のテーマに移っていきます。
上司からリードするよりも、メンバーが積極的に話せるような場をつくることを心がけ、上司は聞き役に徹しましょう。
メンバーが言葉に詰まったり、さらに詳しい状況を知りたかったりするときにのみ質問するようにし、基本的にはメンバーの話をさえぎらないようにします。
また、頷きや相槌を有効活用し、相手の話を聞く姿勢を伝えることも大切です。
特にオンラインでの1on1の場合、実際に対面でのミーティングよりも反応を大きくすると、メンバーが話しやすい雰囲気につながるでしょう。
STEP3. 上司・メンバーともに対応を考える
一通りテーマに関するメンバーの認識が把握できたら、これからの対応を一緒に考えていきます。
ここで重視するのは、メンバーが主体的に対応の方向性を導き出すことです。
上司が正解を教えるのではなく、「なぜそうなったと思う?」「次にどうしたらいい?」とメンバーの思考を深めるプロセスをサポートします。
「メンバー自身による考察→上司としての考えをフィードバック」というサイクルを守りながら、一緒に対応を考えるスタンスを忘れないようにしましょう。
STEP4. 次回の1on1までの具体的なアクションを決める
これまでの流れで、大筋の対応や方向性が見えたら、次回の1on1までにやるべきことを確認します。
「来週までに○○の方法を試してみる」「次の2週間は○○にチャレンジしてみる」等、スモールステップで進められる程度のアクション目標が望ましいでしょう。
チェックアウトとして、メンバー自身にこの1on1ミーティング自体の振り返りや感想を聞いてみることも有効です。
【注意】メンバーの満足度を下げてしまう1on1の注意点
最後に、1on1をやっていてもメンバーの満足度が低く「やらされ感」を抱いてしまうケースを紹介します。
注意点①上司ばかりが話してしまう
1on1では、全体の7~8割をメンバーが話している状態が理想です。
上司が話をしたい場合は、部下に「私の考えも少し伝えてもいい?」等と確認したうえで意見を述べ、その意見を採用するか否かはメンバーに任せるようにしましょう。
上司が話し過ぎたり、判断をしたりすることは避け、本人の意思や考えを話してもらう時間にしなければなりません。
「相談したかったのに、ずっと上司が話していた」「自分の意見をいろいろ話したけど、結局否定された」とメンバーが受け取ることのないように注意しましょう。
注意点②雑談で終わってしまう
メンバーとの関係性が良好な場合、雑談で終わってしまう1on1もときにはありますが、毎回雑談のみになるのは避けてください。
ミーティングを行ったことで、メンバーの成長を促せるような会話ができたかどうかが、本来の1on1のゴールです。毎回雑談に終始してしまい、次のアクションが決められない状態では、お互い時間の無駄にもなりかねません。
また、楽しく雑談して「コミュニケーションが取れた」と上司は思い込んでいても、メンバーには「上司の雑談に付き合わされ、貴重な時間を無駄にした」と思われている可能性もあるでしょう。
注意点③評価や進捗管理の時間ばかりになってしまう
1on1はメンバー評価をしたり、業務の進捗を管理したりする時間ではありません。
業務の進捗度合いや達成状況ではなく、そのプロセスで感じたことや喜び、困っていることを話してもらうために時間を使ってください。
あくまでメンバーの成長を促すための、人材育成の場であることを忘れないようにしましょう。
まとめ
1on1ミーティングは、上司とメンバーとのコミュニケーション促進の場として、多くのメリットが期待できます。
業務とは少し離れた位置づけでお互いの信頼関係を構築できれば、メンバーのモチベーションややりがいも向上します。
1on1がうまくいっている職場では、最終的に職場全体の活性化や自律化等、風土形成にも効果が期待できるでしょう。
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