OJTを教える側に求められることと効果的なやり方を徹底解説

2024.03.12

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OJTを教える側に求められることと効果的なやり方を徹底解説

OJTは、現場で必要となる実務的なスキルを経験を通じて身に付けていく教育方法です。

新入社員に施される印象が強いかもしれませんが、若手の中途入社者にも適用できるため、多くの企業で導入が進んでいます。

ただ、具体的なOJTの方法が分からず、現場の先輩社員に任せっぱなしになっている企業も少なくありません。

特に、自分自身がOJTを受けた経験がない先輩社員が指導する場合は、OJTのノウハウやコツをきちんと把握したうえでOJTを実施しないと、本来の効果を得るのが難しくなります。

今回は、OJTのメリットや注意点、基本的な実施ステップをあらためて解説します。自分自身がOJTを教える側になる方も、OJTの教育担当を任命しようと考えているマネジメントや人事の方も、参考にしていただければ幸いです。

OJTとは

OJTとは「On The Job Training」の略称で、業務経験を通じて行われる教育方法のことです。

一般的には、対象者が配属される部署の上司や先輩社員が教育担当者となり、業務に必要な知識やスキルを指導していきます。

現場実務が多い流通業や飲食業等で、新入社員やアルバイト・パート入社者に、店舗での実務を通じて業務習得させる方法が分かりやすいでしょう。

ほかにも営業職の営業同行や、企画職で一緒に資料作成を行う等、OJTが適用できる業種や職種は幅広いといえます。

OJTとOFF-JTとの違い

職場での経験を通じて教育するOJTに対し、職場外での講習会や研修を実施するのが「OFF-JT(Off the Job Training)」という教育方法です。

OFF-JTは新入社員基礎研修等、比較的同じ状況にある社員を複数集めて実施されることが多い傾向にあります。

従って、個別指導でアウトプットをしながら進めるOJTと比較すると、大人数に対してのインプット型である点が特長です。

複数社員に一斉に教育を施せるメリットがある一方で、社員一人ひとりの教育効果を丁寧に追い切れない点がデメリットといえます。

新入社員を例に取ると、会社の基本情報やビジネスマナー等、全員に必要となる教育をOFF-JTで実施し、配属先での教育をOJTで行うという使い分けが一般的でしょう。

OJT実施の目的・メリット

多くの企業で取り入れられているOJTですが、実際にOJTを実施した企業でよく聞かれる狙いやメリットについて、あらためて紹介します。

1. 教育研修の効率化

前述したOFF-JTの代表的な手法である集合型研修と比較すると、OJTは生産性が高い教育方法といえます。

集合型研修を実施する際は、会場の準備・講師の手配・資料の準備・日程調整等、事前の準備にコストやパワーが発生してしまいます。

一方、OJTは教える側の指導担当が社員であれば、特別なコストは発生しません。

準備のためにある程度の労力は必要となりますが、既存業務で使用しているマニュアルや資料を流用できるケースも多いでしょう。

効率的に社員を教育できる点は、OJTの大きなメリットといえます。

2. 社員定着率の向上

社員の定着率を上げることも、OJTを導入する目的やメリットになります。

OJTでは、実際の職場で今後一緒に仕事をしていく先輩社員や上司に指導をしてもらうことになります。職場でのコミュニケーション機会が増えることで、新しく配属された社員が部署に馴染みやすくなる効果が期待できるでしょう。

特に新入社員の場合、仕事以外に職場の人間関係に馴染むかどうかという不安を抱えがちです。OJTは教育効果を狙うだけではなく、新入社員の不安要素を解消し、部署への定着を促す目的もあります。

社員の離職に頭を悩ませる企業が多い昨今、OJTを社員定着率向上のために活用する企業は今後も増えていくことでしょう。

3. 個人の状況や業務に合わせて指導できる

OJTのメリットとして、現場や個人の状況に合わせられる柔軟性も挙げられます。

例えば、教育の定着状況や実践度合いを現場で確認し、その状況に応じて次の教育メニューを考えることができます。教えられる側も自分の状況に応じた教育施策を受けられるため、地に足がついた成長ができるでしょう。

また教える側や職場での状況にも、OJTはある程度、柔軟に対応できます。

新しく発生した業務がOJTと相性が良さそうであれば、先輩社員と一緒にやってみる、等のケースです。

常に新鮮な現場の題材で教育できるだけではなく、時には先輩社員の業務の手助けにもつながる効果も期待できるでしょう。

4. OJT担当者(教える側)のスキル向上

OJTを導入すると、教えられる側だけではなくOJT担当者(教える側)のスキル向上も期待できます。

なんらかの知識を他者に伝えようとした際に、新たな気付きや自分自身の学びにつながった経験は、誰しもお持ちではないでしょうか。

教えるプロセスのなかで、新たなビジネスアイデアが湧いたり、業務改善ポイントが見つかったりすることは、OJTを教える側のメリットといえます。

業務上のメリットだけではなく、分かりやすく伝える力やモチベーションを上げるためのコミュニケーション等、教える側の成長も期待できることから、組織的な底上げにもつながりやすいでしょう。

OJTを実施する注意点

OJTは職場主導で進めていきますが、マネジメントや人事部門は何もサポートをしなくてもいいというわけではありません。

本章ではOJTの本来の効果を得るために、組織全体で注意したい点についてお伝えします。

1. 中長期的な計画が必要となる

一般的にOJTの期間は3か月~1年間と中長期的におよぶため、きめ細やかな指導計画をあらかじめ作っておく必要があります。

計画に基づいた教育を施し、実施期間中には進捗や教育効果を確認しながら、計画のチューニングも行わなくてはなりません。

従って、慢性的に人手不足の職場や、繁忙期の渦中にある現場等では、計画が十分に立てられずにOJT本来の効果が得られにくい点には注意が必要です。

2. OJT担当者(教える側)に掛かる負担が大きい

OJTで注意したい点としては、OJT担当者(教える側)にもある程度の負荷が掛かる点です。

OJTでは、対象者1名(多くても2〜3名)に対して教育担当社員を一人配置し、丁寧に指導をするのが基本的な方法になります。
OJT担当者は準備や指導のために時間やパワーを割く必要があり、担当社員に掛かる負担は自然と大きくなってしまいがちです。

OJT担当のミッションを担った社員の通常業務を減らす、上司も一緒にOJTをサポートする、全社的にOJTノウハウを共有する等の負荷を減らす工夫が求められるでしょう。

OJTを教える側に求められるスキル

本章では、OJT担当者に求められるスキルについて紹介します。これからOJTを通じて教育を実施するという方は、ぜひ参考にしてください。

コミュニケーションスキル

実務を教えることにはじまり、フィードバックに至るまで、OJTにはコミュニケーションスキルが欠かせません。

単に話す・伝えるスキルだけではなく、対象者の言動を観察することで理解度を推測するような、相手を理解するスキルも必要です。

一方的に知識を詰め込むような方法では、OJTのメリットは十分に得られません。

相手とのコミュニケーションを重ねながら、成長を促すようなコミュニケーションスキルが必要となるでしょう。

フィードバックスキル

本人が実践した内容について、反応・評価を示すフィードバックスキルも、OJT担当者には求められます。

フィードバックは具体的であればあるほど、本人に伝わりやすくなります。
褒める点、改善を求める点については、具体的な根拠を示し、次の成長目標も詳細に伝えるようにしましょう。

OJT初期段階は、本人もできないことが多く、自己効力感を得にくいため、些細なポイントでも褒めることをお勧めします。
一方で、ある程度の成長が確認できたら、大きめの課題に対してネガティブフィードバックすることも必要です。

ネガティブフィードバックを行う際は、「うまくいかなかった点を自覚したうえで、成長のために改善してもらう」という目的を忘れないようにしましょう。

相手を一方的に叱責したり、モチベーションを下げたりするようなフィードバックは避けてください。

OJTの基本的な4ステップ

OJTの基本的な指導法として知られているのは、「4段階職業指導法」といわれる手法です。

この指導法は、第一次世界大戦中のアメリカで開発されたプログラムで、今は日本の多くの企業で社員教育の土台として活用されています。

本章では4つのステップをOJTに展開する際のポイントを解説します。

1.自らやって見せる(Show)

OJTの最初のステップは、教える側自らが「やって見せる(Show)」ことです。

初めにOJT担当者が実演してお手本を「見せる」ことで、相手は具体的な業務や実践のコツを得ることができます。

言葉やテキストだけでは業務のイメージをつかみにくい場合があるため、まずは動きを積極的に取り入れるようにしましょう。

2.説明する(Tell)

次のステップは、「説明する(Tell)」ことです。

ステップ1.で実演した業務について、業務の意義や目的を伝えることで、業務理解をより深めてもらいます。

この際、業務の目標(達成した状態)も同時に伝えると、より目的意識が高まった状態で業務を進められるようになるでしょう。

3.相手にやらせてみる(Do)

OJTの3つ目のステップは、相手に「やらせてみる(Do)」ことです。

ステップ1.と2.で習得したイメージをもとに、実際に自分の体を使いながら業務を体験してもらいます。やってみることで、「思っていたより難しい」「実行するときは、この点に注意すべきだ」等、新しい発見があるはずです。

「『わかる』と『できる』は違う」といわれるように、自ら動くステップは非常に重要です。必ず実践するプロセスを踏ませるようにしましょう。

4.評価・指導する(Check)

OJTの最後のステップは「評価・指導する(Check)」ことです。

ステップ3.での実践結果をもとにしながら、良かったポイントや改善すべきポイントをフィードバックしましょう。

コツとしては、実践した直後にフィードバックをすることです。1日の終わりにまとめて伝えるよりも、その場で伝える方が相手の記憶が鮮明なため、改善効果が期待できます。

OJTをより効果的に行うコツ

ここまでOJTの基本的なノウハウをお伝えしてきましたが、本章ではより育成効果を高めるためのコツを紹介します。
自社でのOJT実践場面をイメージしながら、お読みいただければ幸いです。

育成目標を設定する

前述した「中長期の計画」とも似ていますが、育成対象者の得意・不得意領域や人柄も踏まえた育成目標を設定します。

OJT担当者が中心となって設定しますが、できればほかの同僚や上司等にも共有すると、育成目標のブラッシュアップや周囲の協力が得やすくなります。

育成目標の設定と組織共有があれば、組織ぐるみでの育成体制を構築しやすいでしょう。

事前に基礎知識を学習してもらう

いきなりOJTのような実践教育をするよりも、事前に基礎知識を学習してもらうことで、よりOJTの効果を高めることができます。

知識をインプットした後にOJTでのアウトプットを行うため、知識の定着が効率的に進みます。

事前学習は、勉強会のような座学形式や、学習資料を渡して自主的に予習させる形式が考えられます。

トレーニングを反復して行う

学んだことをスムーズに実践の仕事につなげるためには、反復トレーニングが有効です。

育成目標や丁寧な指導があったとしても、実際に課題を克服したり、スキルを安定的に習得したりするまでには、それなりに時間を要します。

一度きりのトレーニングで終わらせるのではなく、ある程度時間が経過したのち、再度取り組みをさせることを念頭に置いておきましょう。

まとめ

多くの企業でOJTは導入されていますが、OJTの本来の効果を得るためには、本記事で紹介したようなポイントを踏まえることが重要です。

教える側や組織活性化にもメリットが高い取り組みなので、しっかり計画を立てて組織全体でOJTに取り組めるように準備してください。

またOJTというと「手取り足取り」のようなイメージもありますが、昨今のトレンドを考慮すると、リモート勉強会やオンライン講座等のバーチャルな学びも組み合わせると、よりOJTの効果が期待できるでしょう。

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管理職に求められるスキルは階層により異なるので、すべての管理職で同じ内容の研修を行っても意味がありません。職位や人事制度上の等級や組織上の階層ごとに分けて実施する「階層別研修」が理想的です。 階層別研修では、それぞれの階層ごとに必要とされる能力や知識、態度の習得や、期待される役割を自覚させることを目的に実施されます。 「カッツモデル」の3つのスキルに当てはめると、 テクニカルスキル 会社や自部門の業務についての基礎知識や、商品・サービスに関する知識、業界知識等を習得する。 ヒューマンスキル 社員に対する理解やリーダーシップ、部下育成や評価、コミュニケーション能力を習得する。 コンセプチュアルスキル 総合判断や問題意識、問題解決の能力、調整力を身に付ける。 等が挙げられます。 つまり、ローワーマネジメントでは「テクニカルスキル」と、「ヒューマンスキル」を向上できる研修。 ミドルマネジメントでは「テクニカルスキル」は減少しつつも「コンセプチュアルスキル」の基礎と「ヒューマンスキル」を学べる研修。 トップマネジメントではより「コンセプチュアルスキル」に寄った内容と「ヒューマンスキル」を向上できる研修が望ましいと考えます。 7.まとめ 階層別研修では注意すべきことがあります。それは「人事制度上の等級は下だが、年齢は上」という「年上部下」が当たり前になりつつあることです。 年上部下に指示を出したり、部門方針に従わせたりすることは、上から目線で嫌がられるのではないか、あまり管理をしない方がよいのではないかと考えがちです。 いくつになっても人は「他者から認められたい」と願うもの。年上部下に対しても存在承認することが、管理職の重要な仕事です。その「存在承認のやり方」を、年下の部下と変えて行うだけです。 まずは相手の話をよく聞いて理解する「ヒアリング」力を向上させるところから始めてみましょう。自分の話を聞いて理解してくれていると感じると人間関係が良好になり、信頼関係が生まれます。これこそマネジメントする側に必要とされるスキルで、生涯、継続して向上させていくべき「ヒューマンスキル」だと考えます。 eラーニングとは?概要からメリットやトレンドまで徹底解説 eラーニング導入で失敗しないための3つのポイントを解説 効果の高いeラーニング教材の作り方と3つのポイント【企業事例付き】 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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新入社員を迎えて、初めて後輩の面倒を見る立場となったとき、先輩としてどのように接し、指導したらよいかと悩むところです。そんなときに知っておくと、後輩指導がスムーズに運び、先輩としての格もあがるのが「コーチング」(coaching)スキルです。 相手の力を最大限に引き出すコーチングとは? コーチングとは、相手が本来持っている能力やスキル、本人も気づいていないポテンシャルを最大限に引き出し、パフォーマンスを向上させる人材開発手法のひとつです。コーチは相手の話に耳を傾け、その考えや主張を承認したり、相手が自ら答えを導き出せるような質問をしたりすることで、自発的にパフォーマンスを高め、目標を達成させる手助けをします。 スポーツでは、素質に恵まれた選手が優秀なコーチの指導のもとで初めてその才能を開花させ、世界で活躍するという例がよくあります。サッカーや野球といった団体競技でも、監督やコーチ陣の指導があってこそ、各選手の才能がチームプレーに活かされます。職場でも同様に、上司やリーダー、先輩の立場に立つ者が優秀なコーチとして力を発揮することで、部下や後輩がより活躍しやすい環境を整えられるのです。 コーチングを成功させる4つのポイント 後輩の指導で使える具体的なコーチングのポイントを、以下に挙げてみましょう。 話をよく聞くこと コーチングは相互コミュニケーションなので、コーチはただ指示を出せばいいというわけではありません。 話し手が自分は受け入れられているという安心感を持てるように、相手の言葉に耳を傾けることが大切です。 また、適宜相づちを打ち、話を促すように問いかけることで、相手にとって話しやすい関係を築けます。 フィードバックで信頼関係を築く こまめなフィードバックも欠かせません。 後輩がプロジェクトの成功に貢献したり、陰ながらいい仕事をしたりしたときは都度評価をし、また、失敗したときにはさりげなくフォローをします。 「自分を見てもらえている」「働きを評価してくれる人がいる」という「承認」を相手に与えることが大切。こうした承認行動は信頼関係の基礎となり、チーム力のアップにもつながるのです。 相手に考えさせる質問で自律性を磨く 相手がするべきことを手取り足取り教え、従わせることがコーチングではありません。 むしろその逆で、自ら気づき、考え、行動に移す自律性をつけさせることでパフォーマンスの向上を図るものです。 そのため、質問のしかたにも工夫が必要です。例えば、遅刻癖のある後輩にあなたはどう声をかけるでしょうか。 「どうしていつも遅れるの?」と問い詰めるだけでは、効果は期待できません。 それより、「どうしたら遅れないようになると思う?」と聞くことで自発的に解決法を考え、実行できるように導くことが大切なのです。 相手のタイプに応じてアプローチを変える 同じ言葉をかけても、受け取り方は人によってさまざまです。 そこで、相手の性格によって接し方を変えていく必要があります。参考にしたいのが、人の性格を9タイプに分類する性格応用心理学「エニアグラム」です。 以下にその9つのタイプをまとめましたので、普段から後輩を観察してタイプを見極め、対応を変えることを心がけてみましょう。 タイプ1 完ぺき主義者 特徴:まじめで責任感が強く、すべて完璧にこなしたがる。 コーチングポイント:日ごろのひとつひとつの努力を評価する。息抜きの仕方を教える。 タイプ2 世話好きな人 特徴:世話を焼き、人を助けることを好む。 コーチングポイント:その行為を褒める。自己犠牲のし過ぎに注意を向けさせる。 タイプ3 成功を追い求める人 特徴:結果第一主義で、挑戦意欲が強く行動力がある。 コーチングポイント:能力や実績を褒める。ときには、結果より周囲との関係の大切さを気づかせる。 タイプ4 特別でありたいと思う人 特徴:感情的でクリエイティブ、自己表現欲求が強い。 コーチングポイント:個性を尊重する。チームプレーの重要さを説く。 タイプ5 知識を得て観察をする人 特徴:知識が豊富で思慮深く、客観的判断ができるが、理屈っぽくクール。 コーチングポイント:論理的な話を心がける。他人への気配りや共感力を伸ばす。 タイプ6 慎重で安全を求める人 特徴:几帳面で慎重かつ保守的、忠誠心が高い。 コーチングポイント:慎重さのあまり考えすぎるので、細かく指示を出す。 タイプ7 楽しい至上主義な人 特徴:アイデアが豊富で、行動力はあるが長続きしない。 コーチングポイント:長所を伸ばす。地に足をつけて取り組む姿勢を身につける。 タイプ8 自己主張が強いチャレンジャー 特徴:他人との衝突を恐れず、リーダーシップを発揮できる。 コーチングポイント:自主性を尊重して任せる。妥協や協調の精神を学ばせる。 タイプ9 調和を好むマイペースな人 特徴:調和を愛し、他人との衝突を好まず協調性に富む。 コーチングポイント:プレッシャーをかけず、話をよく聞く。マイペースに取り組ませる。 後輩指導にあたって注意すべきポイント コーチングを後輩指導に活用する際には、次の点に注意することが重要です。 相手の立場に立つ 後輩の立場に立ち、相手の目標や課題に共感することが大切です。自分自身が経験したことを押し付けるのではなく、相手自身が答えを出すことを促すことが求められます。 質問を用いたコミュニケーション コーチングでは、質問を通じて相手の考え方を促すことが重要です。質問を通じて相手自身が答えを出すことで、自己効力感を高めることができます。後輩指導においても、質問を用いたコミュニケーションを心がけることが大切です。 フィードバックの与え方 後輩に対してフィードバックを与える場合は、具体的かつ具体的な内容を伝えるようにしましょう。フィードバックを受け取る側がどのように改善すれば良いのかを明確に伝えることが大切です。また、フィードバックを与える際には、相手の成長に繋がるようなポジティブなフィードバックを心がけることも重要です。 モチベーションの維持 後輩指導を行う場合には、相手のモチベーションを維持することが重要です。自己成長を促すためには、相手のやる気を引き出すことが必要です。自分自身で目標を設定し、それに向かって行動することができるよう、アクションプランを立てることが求められます。 評価の仕方 後輩指導においては、評価の仕方も重要です。成長のためには、適切な評価が必要です。しかし、適切な評価を行うためには、事前に目標や基準を共有しておくことが必要です。また、フィードバックを与える際には、具体的かつ建設的な内容にするようにしましょう。 後輩指導にはコーチングスキルを磨こう コーチングは対話を通して相手に気づきやきっかけを与え、やる気や可能性を引き出すコミュニケーション手法です。先輩として後輩指導にあたるときに備え、コーチングスキルを磨いてみてはいかがでしょうか。 今どきの新入社員の育て方については、以下の記事でもご覧いただけます。 いまどきの新入社員をどう育てる?教育法と注意点 人材育成における課題―新入社員が育つ環境とは? 採用・研修担当者必読!今どきの若者の働く意識を解読 こちらの記事も読まれています: 管理職に求められる3つのスキル 若手社員のモチベーションを上げるには? 参考: The Nine Enneagram Personality Types|The Enneagram Institute eラーニングとは?概要からメリットやトレンドまで徹底解説 eラーニング導入で失敗しないための3つのポイントを解説 効果の高いeラーニング教材の作り方と3つのポイント【企業事例付き】 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 部下の指導にも活用できるコーチングスキルを含む、100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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あなたは、「人は変われる」という考えの持ち主ですか? それとも「人は変わらない」と思いますか? どちらかによって、リーダーとしての資質に差が出てくるといいます。 成長のチャンスを奪う「決めつけ」「思い込み」 部下が期待に応えられなかったり、何度言っても失敗を繰り返したりすると、上司が「成長の見込みなし」というレッテルを貼ってしまうことがあります。こうした上司の思い込みが部下への態度にも表れると、その部下のモチベーションは著しく低下し、業績も下降。離職にもつながりかねません。 このように、他者への思い込みが行動や言動に反映することで、それが現実になってしまうことを、心理学では「自己達成的予言」と呼びます。 成長をサポートできるかどうかは「リーダーシップ」の問題 指導する立場にある人が「この部下は変わらない」と決めつけることは、「成長のサポート」というリーダーシップにおける重要な役割を放棄しているのと同じです。こうした見解は、さまざまな大学研究でも検証されています。 「人間は変われる」と考える上司は部下の成長を信じている 米サザンメソジスト大学の研究では、「人間の性質は生来のもので変わらない」と考える上司と、「人間は変われる」と考える上司が、それぞれの部下にどのように接するのかを調べました。その結果、「変わらない」と考える上司は部下のスキルアップに関心がなく、成長をサポートすることに熱心ではなかったそうです。一方で、「変われる」という信念を持つ上司は、フィードバックを怠らない、新しい課題へのサポートを惜しまないといった、部下の学習能力と成長を信頼しているという結果になりました。 「人間は変わらない」と思い込んでいる上司は部下の変化に気付かない また、別の大学研究によると、「部下は変らない」という固定観念を持つ上司は、成長、後退を問わず部下の変化に気づきにくいといいます。そのため、頑張りに気づいてもらえない従業員のモチベーションが低下し、離職につながるケースが多いそうです。一方で、部下の成長を信じる上司の下で働く部下は、成長への意欲と仕事への満足度が高く、離職率が低いという結果が出ています。 「人は変われる」という思考は、リーダーに求められるヒューマンスキル 部下の成長を信じて指導することは、リーダーに必要な能力のひとつです。「部署の環境はリーダー次第!?」でもご紹介したように、優れたリーダーシップを発揮するには、技術や知識、問題を解決に導く能力だけでなく、高いヒューマンスキルが必要になります。組織の上階層になればなるほど、こうしたヒューマンスキルを磨く努力が求められるのです。 リーダーシップ、部下指導についての具体的な方法については、「部下の主体性を引き出すリーダーの資質「サーバントリーダーシップ」とは」「知っておきたい!初めての後輩指導で使える「コーチングスキル」」「管理職に求められる3つのスキル」もご覧ください こちらの記事も読まれています: 社員の能力を伸ばすためにすること チームのモチベーションが上がらないのには理由がある「チームビルディング」がつくる強いチーム 参考: People Won’t Grow If You Think They Can’t Change|Harvard Business Review  KEEN TO HELP? MANAGERS’ IMPLICIT PERSON THEORIES AND THEIR SUBSEQUENT EMPLOYEE COACHING|Wiley Online Library   Do Subordinates Formulate an Impression of their Manager’s Implicit Person Theory?|Wiley Online Library   低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コンテンツ以上の厳選コンテンツラインナップは資料請求からご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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