2024.03.12
人材教育
ビジネススキル
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OJTは、現場で必要となる実務的なスキルを経験を通じて身に付けていく教育方法です。
新入社員に施される印象が強いかもしれませんが、若手の中途入社者にも適用できるため、多くの企業で導入が進んでいます。
ただ、具体的なOJTの方法が分からず、現場の先輩社員に任せっぱなしになっている企業も少なくありません。
特に、自分自身がOJTを受けた経験がない先輩社員が指導する場合は、OJTのノウハウやコツをきちんと把握したうえでOJTを実施しないと、本来の効果を得るのが難しくなります。
今回は、OJTのメリットや注意点、基本的な実施ステップをあらためて解説します。自分自身がOJTを教える側になる方も、OJTの教育担当を任命しようと考えているマネジメントや人事の方も、参考にしていただければ幸いです。
OJTとは
OJTとは「On The Job Training」の略称で、業務経験を通じて行われる教育方法のことです。
一般的には、対象者が配属される部署の上司や先輩社員が教育担当者となり、業務に必要な知識やスキルを指導していきます。
現場実務が多い流通業や飲食業等で、新入社員やアルバイト・パート入社者に、店舗での実務を通じて業務習得させる方法が分かりやすいでしょう。
ほかにも営業職の営業同行や、企画職で一緒に資料作成を行う等、OJTが適用できる業種や職種は幅広いといえます。
OJTとOFF-JTとの違い
職場での経験を通じて教育するOJTに対し、職場外での講習会や研修を実施するのが「OFF-JT(Off the Job Training)」という教育方法です。
OFF-JTは新入社員基礎研修等、比較的同じ状況にある社員を複数集めて実施されることが多い傾向にあります。
従って、個別指導でアウトプットをしながら進めるOJTと比較すると、大人数に対してのインプット型である点が特長です。
複数社員に一斉に教育を施せるメリットがある一方で、社員一人ひとりの教育効果を丁寧に追い切れない点がデメリットといえます。
新入社員を例に取ると、会社の基本情報やビジネスマナー等、全員に必要となる教育をOFF-JTで実施し、配属先での教育をOJTで行うという使い分けが一般的でしょう。
OJT実施の目的・メリット
多くの企業で取り入れられているOJTですが、実際にOJTを実施した企業でよく聞かれる狙いやメリットについて、あらためて紹介します。
1. 教育研修の効率化
前述したOFF-JTの代表的な手法である集合型研修と比較すると、OJTは生産性が高い教育方法といえます。
集合型研修を実施する際は、会場の準備・講師の手配・資料の準備・日程調整等、事前の準備にコストやパワーが発生してしまいます。
一方、OJTは教える側の指導担当が社員であれば、特別なコストは発生しません。
準備のためにある程度の労力は必要となりますが、既存業務で使用しているマニュアルや資料を流用できるケースも多いでしょう。
効率的に社員を教育できる点は、OJTの大きなメリットといえます。
2. 社員定着率の向上
社員の定着率を上げることも、OJTを導入する目的やメリットになります。
OJTでは、実際の職場で今後一緒に仕事をしていく先輩社員や上司に指導をしてもらうことになります。職場でのコミュニケーション機会が増えることで、新しく配属された社員が部署に馴染みやすくなる効果が期待できるでしょう。
特に新入社員の場合、仕事以外に職場の人間関係に馴染むかどうかという不安を抱えがちです。OJTは教育効果を狙うだけではなく、新入社員の不安要素を解消し、部署への定着を促す目的もあります。
社員の離職に頭を悩ませる企業が多い昨今、OJTを社員定着率向上のために活用する企業は今後も増えていくことでしょう。
3. 個人の状況や業務に合わせて指導できる
OJTのメリットとして、現場や個人の状況に合わせられる柔軟性も挙げられます。
例えば、教育の定着状況や実践度合いを現場で確認し、その状況に応じて次の教育メニューを考えることができます。教えられる側も自分の状況に応じた教育施策を受けられるため、地に足がついた成長ができるでしょう。
また教える側や職場での状況にも、OJTはある程度、柔軟に対応できます。
新しく発生した業務がOJTと相性が良さそうであれば、先輩社員と一緒にやってみる、等のケースです。
常に新鮮な現場の題材で教育できるだけではなく、時には先輩社員の業務の手助けにもつながる効果も期待できるでしょう。
4. OJT担当者(教える側)のスキル向上
OJTを導入すると、教えられる側だけではなくOJT担当者(教える側)のスキル向上も期待できます。
なんらかの知識を他者に伝えようとした際に、新たな気付きや自分自身の学びにつながった経験は、誰しもお持ちではないでしょうか。
教えるプロセスのなかで、新たなビジネスアイデアが湧いたり、業務改善ポイントが見つかったりすることは、OJTを教える側のメリットといえます。
業務上のメリットだけではなく、分かりやすく伝える力やモチベーションを上げるためのコミュニケーション等、教える側の成長も期待できることから、組織的な底上げにもつながりやすいでしょう。
OJTを実施する注意点
OJTは職場主導で進めていきますが、マネジメントや人事部門は何もサポートをしなくてもいいというわけではありません。
本章ではOJTの本来の効果を得るために、組織全体で注意したい点についてお伝えします。
1. 中長期的な計画が必要となる
一般的にOJTの期間は3か月~1年間と中長期的におよぶため、きめ細やかな指導計画をあらかじめ作っておく必要があります。
計画に基づいた教育を施し、実施期間中には進捗や教育効果を確認しながら、計画のチューニングも行わなくてはなりません。
従って、慢性的に人手不足の職場や、繁忙期の渦中にある現場等では、計画が十分に立てられずにOJT本来の効果が得られにくい点には注意が必要です。
2. OJT担当者(教える側)に掛かる負担が大きい
OJTで注意したい点としては、OJT担当者(教える側)にもある程度の負荷が掛かる点です。
OJTでは、対象者1名(多くても2〜3名)に対して教育担当社員を一人配置し、丁寧に指導をするのが基本的な方法になります。
OJT担当者は準備や指導のために時間やパワーを割く必要があり、担当社員に掛かる負担は自然と大きくなってしまいがちです。
OJT担当のミッションを担った社員の通常業務を減らす、上司も一緒にOJTをサポートする、全社的にOJTノウハウを共有する等の負荷を減らす工夫が求められるでしょう。
OJTを教える側に求められるスキル
本章では、OJT担当者に求められるスキルについて紹介します。これからOJTを通じて教育を実施するという方は、ぜひ参考にしてください。
コミュニケーションスキル
実務を教えることにはじまり、フィードバックに至るまで、OJTにはコミュニケーションスキルが欠かせません。
単に話す・伝えるスキルだけではなく、対象者の言動を観察することで理解度を推測するような、相手を理解するスキルも必要です。
一方的に知識を詰め込むような方法では、OJTのメリットは十分に得られません。
相手とのコミュニケーションを重ねながら、成長を促すようなコミュニケーションスキルが必要となるでしょう。
フィードバックスキル
本人が実践した内容について、反応・評価を示すフィードバックスキルも、OJT担当者には求められます。
フィードバックは具体的であればあるほど、本人に伝わりやすくなります。
褒める点、改善を求める点については、具体的な根拠を示し、次の成長目標も詳細に伝えるようにしましょう。
OJT初期段階は、本人もできないことが多く、自己効力感を得にくいため、些細なポイントでも褒めることをお勧めします。
一方で、ある程度の成長が確認できたら、大きめの課題に対してネガティブフィードバックすることも必要です。
ネガティブフィードバックを行う際は、「うまくいかなかった点を自覚したうえで、成長のために改善してもらう」という目的を忘れないようにしましょう。
相手を一方的に叱責したり、モチベーションを下げたりするようなフィードバックは避けてください。
OJTの基本的な4ステップ
OJTの基本的な指導法として知られているのは「4段階職業指導法」といわれる手法です。
この指導法は、第一次世界大戦中のアメリカで開発されたプログラムで、今は日本の多くの企業で社員教育の土台として活用されています。
本章では4つのステップをOJTに展開する際のポイントを解説します。
1.自らやって見せる(Show)
OJTの最初のステップは、教える側自らが「やって見せる(Show)」ことです。
初めにOJT担当者が実演してお手本を「見せる」ことで、相手は具体的な業務や実践のコツを得ることができます。
言葉やテキストだけでは業務のイメージをつかみにくい場合があるため、まずは動きを積極的に取り入れるようにしましょう。
2.説明する(Tell)
次のステップは、「説明する(Tell)」ことです。
ステップ1.で実演した業務について、業務の意義や目的を伝えることで、業務理解をより深めてもらいます。
この際、業務の目標(達成した状態)も同時に伝えると、より目的意識が高まった状態で業務を進められるようになるでしょう。
3.相手にやらせてみる(Do)
OJTの3つ目のステップは、相手に「やらせてみる(Do)」ことです。
ステップ1.と2.で習得したイメージをもとに、実際に自分の体を使いながら業務を体験してもらいます。やってみることで、「思っていたより難しい」「実行するときは、この点に注意すべきだ」等、新しい発見があるはずです。
「『わかる』と『できる』は違う」といわれるように、自ら動くステップは非常に重要です。必ず実践するプロセスを踏ませるようにしましょう。
4.評価・指導する(Check)
OJTの最後のステップは「評価・指導する(Check)」ことです。
ステップ3.での実践結果をもとにしながら、良かったポイントや改善すべきポイントをフィードバックしましょう。
コツとしては、実践した直後にフィードバックをすることです。1日の終わりにまとめて伝えるよりも、その場で伝える方が相手の記憶が鮮明なため、改善効果が期待できます。
OJTをより効果的に行うコツ
ここまでOJTの基本的なノウハウをお伝えしてきましたが、本章ではより育成効果を高めるためのコツを紹介します。
自社でのOJT実践場面をイメージしながら、お読みいただければ幸いです。
育成目標を設定する
前述した「中長期の計画」とも似ていますが、育成対象者の得意・不得意領域や人柄も踏まえた育成目標を設定します。
OJT担当者が中心となって設定しますが、できればほかの同僚や上司等にも共有したりMBOにすると、育成目標のブラッシュアップや周囲の協力が得やすくなります。
育成目標の設定と組織共有があれば、組織ぐるみでの育成体制を構築しやすいでしょう。
事前に基礎知識を学習してもらう
いきなりOJTのような実践教育をするよりも、事前に基礎知識を学習してもらうことで、よりOJTの効果を高めることができます。
知識をインプットした後にOJTでのアウトプットを行うため、知識の定着が効率的に進みます。
事前学習は、勉強会のような座学形式や、学習資料を渡して自主的に予習させる形式が考えられます。
トレーニングを反復して行う
学んだことをスムーズに実践の仕事につなげるためには、反復トレーニングが有効です。
育成目標や丁寧な指導があったとしても、実際に課題を克服したり、スキルを安定的に習得したりするまでには、それなりに時間を要します。
一度きりのトレーニングで終わらせるのではなく、ある程度時間が経過したのち、再度取り組みをさせることを念頭に置いておきましょう。
まとめ
多くの企業でOJTは導入されていますが、OJTの本来の効果を得るためには、本記事で紹介したようなポイントを踏まえることが重要です。
教える側や組織活性化にもメリットが高い取り組みなので、しっかり計画を立てて組織全体でOJTに取り組めるように準備してください。
またOJTというと「手取り足取り」のようなイメージもありますが、昨今のトレンドを考慮すると、リモート勉強会やオンライン講座等のバーチャルな学びも組み合わせると、よりOJTの効果が期待できるでしょう。
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