社内コミュニケーションの活性化は、業務効率の向上や組織力の強化につながるだけでなく、社員の満足度といった意識面の改善にも大きく貢献します。
頭では分かっていつつも、コミュニケーションを促進するために、何か具体的な施策を投じているかと聞かれると、頭を抱えてしまう方も多いのではないでしょうか。
今回は、社内コミュニケーションに関する企業の意識調査を確認しながら、その対策について考えていきます。
また、他社のコミュニケーション促進事例も記事の後半では紹介します。部分的にでも自社で導入できる施策は参考にしていただければ幸いです。
コミュニケーション不足が業務の障害となると考える企業は9割以上
HR総研の調査によると、コミュニケーション不足が業務の障害となると考える企業の割合は97%と非常に高く、どの企業もコミュニケーション不足による経営への弊害をよく認識していることがうかがえます。
また、約8割の企業が社内のコミュニケーションに課題があると感じています。
具体的には、「部門・事業所間」のコミュニケーションを挙げた企業が約7割ともっとも多く、次に約半数が「経営層と社員間」と回答しています。
コミュニケーションの問題は、普段対面する機会が少ないところで発生しやすいようです。さらに、部署内であっても「部長とメンバー」「課長とメンバー」「メンバー同士」「部長と課長」等でコミュニケーションの改善の必要性が認識されています。
「社内コミュニケーションに関する調査」結果報告|HR総研
※職場でのコミュニケーションの大切さについては、「仕事の効率化はコミュニケーションが取りやすい職場から」も併せてお読みください。
社内のコミュニケーションを阻害する要因は「組織風土・社風」
社内のコミュニケーションを阻害している要因としては、「組織風土・社風」を挙げる企業が54%と最も多く、「対面コミュニケーションの減少」(50%)、「コミュニケーションスキルの低下」(48%)が続きます。
具体的には、以下のような原因が考えられます。
管理層が積極的にコミュニケーションをとる意識が低く、対話の必要性が風土として根付かない
メールのやり取りが中心となり、対面コミュニケーションが減っている
ITツールがコミュニケーションの主要手段となり、相手を気遣いながらコミュニケーションを図るスキルが低下している
効率を重視した結果、職場で雑談する機会が減少し、仕事をこなすだけの関係になっている
風土や社風は内部にいると分かりにくいものですが、コミュニケーションを阻害する原因は、できるだけ客観的に把握するようにしましょう。
企業が実施して効果があった15の施策
社内コミュニケーションを改善するための施策としては、「社内報」がもっとも多く、約3分の1の企業で実施されています。
「コミュニケーション不全の防止・抑止策」として挙げられた上位15項目は、以下の通りです。
社内報(34%)
レクリエーション(31%)
従業員アンケート(30%)
自己申告制度(29%)
経営層との定期面談・ミーティング(27%)
クラブ・サークル活動(24%)
コミュニケーション研修(23%)
社員総会・キックオフ(21%)
社員旅行(21%)
飲み会補助(21%)
コーチング研修(20%)
メンター制度(17%)
運動会・スポーツ大会(13%)
社内公募制度・社内FA制度(10%)
社内ブログ・SNS(9%)
従業員の意識調査や研修、社内公募といった制度や研修を通して社内のコミュニケーションの改善に取り組んでいるほか、レクリエーション、クラブ活動、社員旅行等、仕事以外で社員同士が交流を図れる機会を設ける企業が多いようです。
また、経営層との直接対話ができるような場があると、経営側のビジョンを知る絶好の機会となり、モチベーションの向上につながるとの声も聞かれます。
昨今の傾向としては、オンラインツールが社内コミュニケーションの促進に活用されています。リモートワーク下で、オンラインツールの活用が進んだ企業も多いのではないでしょうか。
なお、コミュニケーション研修には、eラーニングも活用されています。詳しくは、「eラーニングとは?概要からメリットや最新トレンドを徹底解説」をご覧ください。
あらためて社内コミュニケーションの意義とは
社内コミュニケーションは重要と思いつつも、あらためて意義を考えてみたことがないという方も多いのではないでしょうか。
ここでは、社内コミュニケーションの意義と促進するメリットをお伝えします。
メリット①社内の活性化・生産性の向上
社内でコミュニケーションが良好であることは、社内風土の活性化につながります。
社員が自分の意見を積極的に場に出せる風土であれば、能動的に仕事に取り組みやすくなります。
仮にモチベーションが低下したときであっても、周囲に相談することで気持ちが持ち直す効果もあるでしょう。
コミュニケーションが円滑であることは、業務の生産性にも寄与します。
常に情報共有がなされた状況であれば、業務の連携ミス等が発生しにくくなるでしょう。
業務分担が適切になされて周囲に共有ができていれば、効率が上がるだけでなく、誰かが困っているときにも手を差し伸べやすくなります。
このようにコミュニケーションが雰囲気の活性化や業務の生産性に与える影響は、非常に大きいといえます。
メリット②エンゲージメント向上による離職率の低下
社内コミュニケーションが良好であれば、会社へのエンゲージメントが担保され、離職の防止にも効果があります。
仕事をしている時間は意外と長いので、職場の人間関係が悪いと、退職意向が高まりやすい傾向があります。
厚生労働省の調査「平成30年若年者雇用実態調査の概況」によると、会社を辞職した主な理由の一位は「労働時間・休日・休暇の条件がよくなかった」で、30.3%でした。
注目すべきは、第二位が「人間関係がよくなかった」で、選択率は26.9%である点です。
参照:平成30年若年者雇用実態調査の概況|厚生労働省(外部リンク)
日頃から社員同士が良好なコミュニケーションをとれる環境であれば、人間関係の悩みが減ることになるため、結果的に離職率の低下が期待できます。
企業9社の社内コミュニケーション成功事例
最後に、昨今企業で多く取り入れられているオンラインツールを活用した、社内コミュニケーション活性化の成功事例を9社お伝えします。
①ヤフー株式会社【1on1ミーティングの実施】
ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」を展開するヤフー株式会社では、コミュニケーションの円滑化のために、1on1ミーティングを活用しています。
週に1回、30分間の1on1ミーティングを行っているのですが、実施の目的を「部下のための時間」と掲げているのが特長的です。
ヤフーは外部の専門家にアドバイスをもらいながら、1on1のカリキュラムを会社にフィットする形にブラッシュアップもしています。
ミーティングはオンラインでも行われ、今では約6,000人の社員が1on1ミーティングを実施しているそうです。
企業サイト:ヤフー株式会社
②株式会社ディー・エヌ・エー【全社員にビジネスチャットツール導入】
ゲーム開発・配信を行う株式会社ディー・エヌ・エーでは、約3,000人の全社員にビジネスチャットツール「Slack」を導入しています。
かつては一部の部署のみの導入でしたが、全社導入によって、部署間を超えたコミュニケーションが活発になりました。
部門をまたいで気軽に相談し合える環境を構築することで、仕事で接点がない人ともコミュニケーションをとる機会となったそうです。
導入後は1日当たり、7~8万のチャットメッセージが、部門の枠を超えてやりとりされているとのことでした。
企業サイト:DeNA
③ディップ株式会社【全社員オンライン総会の実施】
「バイトル」等の求人サービスを展開するディップ株式会社では、コロナウイルス感染症の流行期以降、全社総会をオフライン実施からオンラインに切り替えています。
単にオンライン化するだけでなく、「みんなで同じケーキを食べる」や「会社のロゴ入りのドリンクを配り乾杯する」等、温もりが伝わる演出が特徴です。
2,400人の一体感の醸成は難易度が高そうですが、各種工夫によって、アンケートでは「オンラインでも参加感を感じた」や「ディップの熱を感じた」等の前向きな反応が得られたそうです。
企業サイト:ディップ株式会社
④株式会社サイバーエージェント【全社棚卸会議の実施】
インターネット広告やゲーム事業等を行う株式会社サイバーエージェントでは、「全社棚卸会議」という名称のオリジナルの取り組みをしています。
名称の通り、全メンバーが担当している業務を可視化したうえで、やめる業務やプロセスを変える業務等、棚卸を行っているのです。
仕事のパフォーマンス向上だけではなく、他のメンバーの業務理解の促進も進み、インナーコミュニケーションの効果もありました。
業務改善と聞くと堅苦しい雰囲気もありますが、ユニークな名称で社員が参加しやすい工夫も参考になるでしょう。
企業サイト:サイバーエージェント
⑤サイボウズ株式会社【感動課の設立】
ソフトウェア開発を行うサイボウズ株式会社では、2011年に「感動課」というインパクトが大きい名称の組織を設立しています。
感動課のミッションは「社員を感動させること」とし、イベントの企画や社内報の制作等が主な業務内容です。
あえてコミュケーション促進に集中する部門を作ることで、社員でも気がつかないエピソードの発見等につながったようです。
企業サイト:サイボウズ
⑥カルビー株式会社【オープン社内報の発行】
菓子メーカーの老舗であるカルビー株式会社が行っているのは、noteを活用したオープン社内報です。
具体的には、商品の開発経緯やそこに込めた社員の想い等を発信しています。
他メンバーの業務理解促進とともに、商品や会社への愛着やエンゲージメントが芽生えやすい仕掛けです。
社内報は比較的古典的なコミュニケーション促進手法ですが、現在は利便性の高いインターネットツールも増えてきたため、導入しやすい施策といえるのではないでしょうか。
企業サイト:カルビー
⑦エン・ジャパン株式会社【バーチャルオフィスの設立】
人材サービスを展開するエン・ジャパン株式会社では、「バーチャルオフィス」を導入しています。
きっかけは、テレワークによって心身の不調を訴える社員が増加したことだそうです。
これまでもSlackやZoom等のコミュニケーションツールは導入していたものの、リアルのコミュニケーション減少が、ストレスにつながっている社員が多かったのです。
社員のコミュニケーション促進だけでなく、新入社員や中途入社者にオフィスの雰囲気を伝えることにも役立っているそうです。
企業サイト:エン・ジャパン
⑧株式会社ブイキューブ【オンラインオフィスデーの設定】
ビジュアルツールの開発や運用を行う株式会社ブイキューブでは、月に1回「オンラインオフィスデー」を設定しています。
原則テレワークを推奨しているため、希薄になりがちな社員同士の交流を促す目的があります。
自社開発のオンラインイベントプラットフォームを活用し、「雑談のフロア」や「ミーティングフロア」等、フロアごとに目的や雰囲気を分けているそうです。
孤独を感じやすいテレワークの気分転換として、気軽な息抜きや交流を促す場として効果があるでしょう。
企業サイト:ブイキューブ
⑨株式会社ビットエー【オンラインキックオフ会の開催】
Web制作を展開する株式会社ビットエーでは、全社員参加のキックオフを期末に実施しています。
事業部ごとの振り返りや来期戦略の共有、表彰等、メニュー自体はオフラインと同じです。
一方、YouTubeのライブ配信機能や、ニュースのようなテロップの演出等、臨場感が高いライブ配信となっています。
ライブ配信と同時チャットワークでキックオフ用のグループを作成し、オンラインでも盛り上がるような工夫も施しているそうです。
企業サイト:ビットエー
まとめ
社員が働きたいと思う環境や働きやすい環境を整えるには、社内コミュニケーションの円滑化が不可欠です。応急処置的な施策に留まらず、継続的な取り組みがコミュニケーションを活性化する重要なカギとなるでしょう。
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