2023.04.05
人事制度・組織づくり
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働き方を改革することで企業文化や社員の意識を改善し、成長型に変身する企業が増えています。日本企業を変えていく働き方の改革とは、どういったものなのでしょうか。
100人中30人が辞めていく劣悪環境からの脱出
ITベンチャーのサイボウズ社は、2005年には離職率が28%に達していました。人事制度を改革した現在では、5%弱にまで改善されたそうです。具体的に、どのような改革をしたのでしょうか。
まずは、社員の夢をかなえ楽しく働ける環境を作ろうという方針を決めました。しかし、社員一人ひとりが思い描く理想の働き方はそれぞれ異なり、全員の理想に応えることは不可能です。そこで、働く時間と場所にバリエーションを持たせた9パターンのワークスタイルを用意し、各自が自分で働き方を決める選択型人事制度を導入しました。
また、35歳以下のエンジニアやスタッフを対象に、自分磨きを目的とした転職や留学を認める「育自分休暇制度」を導入。この制度で退職した場合は、6年間復帰が認められる「再入社パスポート」を交付しています。
制度は自分たちで作るという意識を育てるオープンな社風
このような自由な働き方の提供には、意見の相違や利害関係の不一致による不満が出てくるでしょう。そこで、サイボウズでは「自立と議論の文化」を社員に徹底させています。お酒の席で愚痴るのではなく、「自分ならどうしたいか? どんな制度がほしいか?」といった問題提起と議論が自由にできる、オープンな風土の醸成に努めているのです。
トップダウンで1カ月の残業を平均20時間以下に
システム開発のSCSK株式会社は、人事制度の段階的な改革に取り組み、その成果が高い評価を受け、「日本の人事部「HRアワード」2015」の企業人事部門最優秀賞を受賞しました。
SCSKは「働きやすい、やりがいのある会社」づくりをモットーとし、社員の平均残業時間を月20時間以下(1日1時間以下)、有給休暇の取得率100%を目標とした「スマートワーク・チャレンジ」を3年間かけて達成しました。同社の執行役員、人事グループ副グループ長河辺恵理氏は、その結果会社全体で「以前より活力と明るさが増した」と語っています。
システムITという仕事は、その性格上24時間体制が基本です。そのため、以前は長時間・夜間勤務は当たり前で、「残業する社員や休まない社員が“いい社員”」という日本企業独特の風潮があったといいます。それでも、改革に成功した要因は、「トップの強い旗振り」「組織全体での取組み」「残業削減と有給取得100%をセットにしたこと」だと河辺氏は述べています。
全社総参加の本気の取り組みが会社を変えた!
削減した残業代を特別ボーナスとして社員へ還元することで、改革にかける経営トップの本気度が認識されました。また、残業が減れば業績が低下するという役員の懸念の声に、トップが断固として方針を貫いたことも、改革のあと押しとなりました。
そして、2012年よりフレックス制の適用、裁量労働制の導入、在宅勤務制度の拡充など、さまざまな施策を行ないました。そのなかでも特に効果が高かったのは、「業務の見直し・負荷分散」だったといいます。達成部門にはインセンティブを支給した「スマートワーク・チャレンジ」を通して、全社を巻き込んだ働き方改革がさらに推進されたわけです。
働き方がもたらす正のスパイラル
働き方の改革により、社内には次のような変化がもたらされます。
1.「働かされる」から「働きたい」への意識変化
2.コミュニケーションの活発化
3.やれば報われるフェアな職場環境の実現によるモチベーションアップ
4.ワークライフバランスの実現
こうした企業風土を築くことが、企業が健全な成長を続ける正のスパイラルへと導く、最も重要な要素だといえます。
また、個人のキャリアを尊重して人材の適材適所を実現するタレントマネジメントの活用も、働き方を変えていくうえで忘れてはなりません。タレントマネジメントについては、「個人キャリアの尊重が競争力を生む?「タレントマネジメント」と「エンゲージメント」の関係」「タレントマネジメントで人事戦略と働き方を考える」をご覧ください。
組織として目指す姿を明確にしよう
さまざまな企業で機能した改革の施策が、自分の会社でも同じ効果を発揮するとは限りません。しかし、世界的に活躍する企業へと成長するには、人事制度への取り組みは必須といえるでしょう。企業ごとに抱える課題やカルチャーが異なるので、目指す姿を明確にして、改革していくことが大切です。
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参考:
- 職場環境劣悪だったITベンチャー、なぜ離職率激減?再入社可、副業自由、社長も育休…|ビジネスジャーナル
- 受賞者一覧|日本の人事部「HRアワード」2015
- やるだけでなく、やりきる仕組み“働き方改革”でIT業界の常識を覆す SCSKの「スマートワーク・チャレンジ」とは|日本の人事部
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