2024.06.25
人材教育
ビジネススキル
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企業の業績向上、社員の成長、組織の風土形成・・・・・・。管理職が担う責務は多岐にわたります。
そのような重責を担う管理職ですが、あらためて何のスキルが必要かと問われると、具体的にはよく分からないという方も多いのではないでしょうか。
研修をはじめとした人材開発施策を企画するとしても、まずは管理職に求められる基礎的なスキルを把握する必要があります。
今回の記事では、業種や職種をまたいで、どのような企業でも共通となる管理職としての必要なスキルを取り上げます。スキルの解説だけでなく、スキルの高め方や階層別研修まで紹介するので、参考にしていただければ幸いです。
1.管理職の役割とは
管理職に必要なスキルを考えるためには、まず管理職が担う役割を理解する必要があります。
ここでは一般的に管理職が企業内で果たすべき役割を3つ紹介します。
1-1.業務管理・成果の創出
管理職は自分がマネジメントする組織の業務を適切に管理し、そのうえで求められる成果を創出する役割があります。
一般社員は、自分が担当する業務を確実に遂行することが求められます。一方、管理職はメンバーが担うそれぞれの業務の進捗を把握して、組織全体の業務管理をする必要があります。
個別業務の遂行だけではなく、組織全体を見渡すことが求められているのです。
また、管理職は会社経営の視点も必要となるため、担当組織が会社に対してどのような成果を出せるかを考えることが重要です。さらには自組織だけの成果を創出するだけでなく、ときには隣の部署や上層部と調整をしながら、成果を生み出すことも必要でしょう。
このように、管理職には組織や会社全体の状況を把握したうえで、業務管理や成果創出を担う役割があります。
1-2.メンバーの育成
担当する組織メンバーの成長を支援することも、管理職の重要な役割のひとつです。
管理職として組織をまとめ、成果を出すためには、メンバー一人ひとりが持てる力を発揮することが前提となります。
そのため、管理職は自組織のメンバーの様子を常々気にかけて、把握しておかなければなりません。
仮にメンバーが能力やスキルを発揮しきれていない場合は、原因を特定し、必要な支援を行います。能力面だけでなく、メンバーが悩んでいる場合は相談に乗る等して、メンタル面のケアも求められます。
部下の強みや弱みを把握したうえで、能力が発揮できるチャンスを与えたり、キャリアアップのためのサポートをしたり、管理職はメンバーを育成していかなければなりません。
1-3.経営者層と一般社員の橋渡し
管理職は、会社内において経営者層と一般社員との間に位置するポジションです。
自分の組織のマネジメント視点に加え、常に経営側の視点からも物事を見ることが求められます。もちろん、組織メンバーの目線も忘れてはなりません。
経営側の立場やメンバーの立場を理解したうえで、経営側と一般社員側の橋渡しをするのが管理職の役割です。
社員がそれぞれ異なる方向を向いていては、会社全体の利益を最大限まで引き上げることは難しいでしょう。
管理職は会社の経営理念や方針を、一般社員が理解できるようにしっかりと伝え、組織としての目線をそろえながら働けるよう導かなければなりません。
このような橋渡しの役割を管理職がしっかりと担えれば、一般社員も目の前の仕事だけではなく、経営層と同様の広い視野を持って業務にあたることができるでしょう。
2.【カッツ教授が提唱】管理職に必要なスキル
管理職の役割を果たすためには、実に多くのスキルが求められます。
管理職といっても、会社のなかにはさまざまな階層の管理職がいるだけでなく、部門や職位により役割は異なります。しかしどの階層でも「部門目標の達成」と「部下・後輩の育成」は求められます。この役割を果たすために必要なのがマネジメント能力です。
このマネジメント能力もまた階層によって求められるスキルは異なります。
ハーバード大学のロバート・カッツ教授は、自身の論文で、管理職の階層に応じて求められるスキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分けて提唱しました。これが「カッツモデル」と呼ばれる3つのスキルです。
この3つのスキルについて、ここから詳しく紹介していきます。
3. 管理職に必要な3つのスキルの具体的な内容
3つのスキルは、どれかが秀でていればマネージャーとして優れている、という訳ではありません。
自分が担う業務分野や会社の方向性によって、どのスキルがより必要になるか考えながらご一読ください。
3-1.テクニカルスキル
テクニカルスキルは業務遂行能力のことで、業務を遂行するために必要となる知識や技術に関するスキルです。
例えば、自社が扱っている製品・サービスに関する知識や技術や業界の知識、業務プロセスに熟達していることがテクニカルスキルに該当します。
細かく区分していけば、情報収集力、分析力、プレゼンテーション力等も含まれます。
テクニカルスキルは、管理職のみならず若手社員でも重要視される傾向があるでしょう。
3-2.ヒューマンスキル
ヒューマンスキルは対人関係能力のことで、仕事上の人間関係を構築するうえで人を観察・分析し、望ましい働きかけを選択・実行するスキルです。
管理職の場合、多くの関係者と関わりながら仕事をしていきます。
メンバーマネジメントだけでなく、メンバーの上司として顧客や取引先、あるいは会社の経営層と対峙する場面も多いものです。
人と関わりあって成果を出すためには、相手の意向を的確に把握し、適切な提案や解決策を提示する対応が求められます。また、組織間に対立や摩擦が生じたとき、折り合いを付ける調整機能も管理職の役目です。
仕事では、経営層や部下・同僚、顧客や取引先等多くの人と関わります。必ず誰かと関わって仕事を進める側面があるため、このスキルも幅広い階層に求められるでしょう。
3-3.コンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルは概念化能力のことで、全体感を持ち、思案作業から具体的な将来像を描き、解決策を導く能力に関係するスキルです。
例えば、伝わりやすい方針やビジョンを描いたり、現在の環境を分析して計画を立てたり、問題を解決する能力全般がコンセプチュアルスキルには含まれます。
業務上でトラブルが発生したとしても、管理職に本質的な課題をとらえる能力が備わっていれば、速やかに問題を解決に導くことができます。
変化が激しく先行きの見通しがききにくいVUCAの時代といわれる昨今では、より重要性が増しているスキルといえるでしょう。
5.管理職階層によって必要となる3つのスキルの違い
前述した3つのスキルを、階層ごとに比重分けしたのが下の図表です。
ローワーマネジメント(リーダー層)、ミドルマネジメント(幹部層)では、主としてテクニカルスキルとヒューマンスキルが求められ、トップマネジメント(経営層)に進むにつれ、コンセプチュアルスキルのウエイトが高まるとされています。
つまり、上階層になるほど総合判断や問題意識、問題解決の能力が求められるということになります。
注目すべきは、「ヒューマンスキル」は常に同比率であるという点です。管理職である以上、部下を育成しマネジメントしていくためには、人間関係を構築し、部下の働きを観察、分析できなければ部下はついてこないということでしょう。
4.管理職に必要となるスキルの高め方
管理職に必要なスキルは、実践を通じて開発できます。ここでは管理職の業務を行いながら、意識的にスキルを高めるポイントについて解説します。
人事部門主導で管理職のスキル開発する際も、このような現場の仕事とスキルを接続する観点を持つことは意味が大きいでしょう。
4-1.リーダーシップを発揮する
自組織の方針を伝える、メンバーを指導する等マネジメントの各場面で「自分がリーダーである」という自覚を持つことで、リーダーシップが発揮されやすくなります。
また、組織業績の振り返りや成功・失敗のパターン分析を理論的にまとめることで、リーダーとしての説得力が増す効果もあります。
「シェアド・リーダーシップ」「サーバントリーダーシップ」「オーセンティック・リーダーシップ」等、ビジネス環境に応じた「○○リーダーシップ」と呼ばれる理論は数多く存在します。
まずはどのようなリーダーシップを開発するかの目標を定め、意識的にスキル開発を進めるとよいでしょう。
4-2.コミュニケーション力を鍛える
コミュニケーションをさらに紐解くと「対人間での情報共有や意思の疎通」のことです。
コミュニケーション能力は、それらをスムーズに行うことができる力のことです。
この力を鍛えるうえで大事な観点は「コミュニケーションは双方向のもの」ということです。
コミュニケーション能力を高めようとすると、「いかにうまく相手に伝えるか」を意識しがちです。
相手への情報伝達だけでなく、「相手からの情報をいかに上手に・的確に受け取るか」という観点も持っておきましょう。
コミュニケーション力に苦手意識がある方は、いきなり情報発信を訓練するより、相手の話を「聴く」訓練をする方がやりやすいでしょう。
また、自分が「この人はコミュニケーション力が高い」と感じる身近な人を観察するのも効果的です。
4-3.課題解決力を鍛える
課題を解決するには、何が課題なのかを把握する能力が必要です。
課題解決力は、一朝一夕には身に付きにくいスキルといえます。発生した課題に対して「なぜこうなったのか」「どうしたら解決できるか」と真摯に向き合う姿勢が重要です。真摯に課題に向き合って対応した結果、課題解決力が鍛えられていくのです。
日常的に「なぜ?」「どうして?」と問いかける習慣をつけ、物事の意味や背景を考えて分析するような思考の癖(ロジカルシンキング等)を身に付けましょう。
ただし実際の業務を通じて課題解決力を鍛えようとすると、ややもすると仕事の失敗にもつながりかねません。意図的にスキル開発をしたい場合は、研修等Off-JT(Off-The-Job Training)の場を活用することも推奨されます。
6.管理職向け階層別研修のポイント
ここまで3つのスキルを紹介しましたが、具体的にこれらを育成する最適な研修内容はどのようなものでしょうか?
管理職に求められるスキルは階層により異なるので、すべての管理職で同じ内容の研修を行っても意味がありません。職位や人事制度上の等級や組織上の階層ごとに分けて実施する「階層別研修」が理想的です。
階層別研修では、それぞれの階層ごとに必要とされる能力や知識、態度の習得や、期待される役割を自覚させることを目的に実施されます。
「カッツモデル」の3つのスキルに当てはめると、
テクニカルスキル
会社や自部門の業務についての基礎知識や、商品・サービスに関する知識、業界知識等を習得する。
ヒューマンスキル
社員に対する理解やリーダーシップ、部下育成や評価、コミュニケーション能力を習得する。
コンセプチュアルスキル
総合判断や問題意識、問題解決の能力、調整力を身に付ける。
等が挙げられます。
つまり、ローワーマネジメントでは「テクニカルスキル」と、「ヒューマンスキル」を向上できる研修。
ミドルマネジメントでは「テクニカルスキル」は減少しつつも「コンセプチュアルスキル」の基礎と「ヒューマンスキル」を学べる研修。
トップマネジメントではより「コンセプチュアルスキル」に寄った内容と「ヒューマンスキル」を向上できる研修が望ましいと考えます。
7.まとめ
階層別研修では注意すべきことがあります。それは「人事制度上の等級は下だが、年齢は上」という「年上部下」が当たり前になりつつあることです。
年上部下に指示を出したり、部門方針に従わせたりすることは、上から目線で嫌がられるのではないか、あまり管理をしない方がよいのではないかと考えがちです。
いくつになっても人は「他者から認められたい」と願うもの。年上部下に対しても存在承認することが、管理職の重要な仕事です。その「存在承認のやり方」を、年下の部下と変えて行うだけです。
まずは相手の話をよく聞いて理解する「ヒアリング」力を向上させるところから始めてみましょう。自分の話を聞いて理解してくれていると感じると人間関係が良好になり、信頼関係が生まれます。これこそマネジメントする側に必要とされるスキルで、生涯、継続して向上させていくべき「ヒューマンスキル」だと考えます。
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