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管理職向けコンプライアンス対策と役割|7つの違反例も紹介

2024.05.30

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管理職向けコンプライアンス対策と役割|7つの違反例も紹介

ハラスメントや情報漏えいといったコンプライアンス違反は、企業の社会的信用の失墜や経済的損失につながる可能性があります。

コンプライアンス違反を防ぐためには、管理職が中心となって社員のコンプライアンス意識を高めることが大切です。

この記事では、職場のコンプライアンス対策における管理職の役割を解説します。

コンプライアンス違反例や違反を防ぐための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてください。

コンプライアンスとは

コンプライアンスとは、「法令遵守」を意味する言葉で、企業においては法律を守るだけでなく、就業規則や社会通念上のルールを守ることも含まれます。

例えば、パワハラやセクハラ等のハラスメント、長時間労働、情報漏えい、著作権侵害等がコンプライアンス違反に該当します。

コンプライアンス違反によって企業は社会的信用を失ったり、経済的な損失を被ったりする可能性があるため、管理職を中心として社員のコンプライアンス意識を高めて違反を防止することが大切です。

コンプライアンスが重視される社会的背景

企業が社会的信用を得ていくためには、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めていき、コンプライアンス違反を起こさないことが重要です。

ここでは、なぜコンプライアンスが重視されるようになったのかを社会的背景から詳しく解説します。

背景1. コンプライアンス関連法の施行・改正

コンプライアンス関連の法令は多く、下請企業に対する無理な値引き交渉等を禁止する下請法や、著作物の無断使用を禁止する著作権法等、さまざまな法令があります。

正しく把握していなければ、知らないうちに法令違反してしまう可能性があるので注意が必要です。

また、2022年から大企業・中小企業問わず就業規則等にパワハラの禁止や処分についての規定を設けたり、相談窓口を設置したりするパワハラ防止対策を講じることが義務化されました。(参照:https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/00330.html

コンプライアンス違反をしないためには、管理職がコンプライアンス関連法の施行・改正内容を把握したうえで、社内ルールの改定や部下指導をしていくことが求められます。

背景2. SNSの普及

SNSの普及によって個人が容易に情報発信できるようになったことから、SNSを通じて顧客情報や機密情報が漏えいするリスクが高まっています。

SNSの不適切な利用は企業の損失につながる恐れがあるため、管理職は情報の取り扱いについて部下に指導する必要があります。

また、インターネットが普及した現代では、企業の不祥事がSNSで急速に拡散されるリスクもあり、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めることが大切です。

背景3. リモートワークの導入

働き方の多様化が進み、リモートワークを導入する企業が増加しました。

リモートワークの導入によってパソコンやUSBメモリ等を社外に持ち出す機会が増えると、情報漏えいのリスクが高まります。

情報漏えいが起きると企業の社会的信用を失うだけでなく、取引先や顧客から損害賠償が請求される可能性があるため、適切な情報管理をしなければなりません。

そのような状況にならないためには、管理職がリモートワークに対応したセキュリティ対策ルールを周知し、情報漏えいを防ぐ必要があります。

コンプライアンス違反例

コンプライアンス違反をしないためには、どのようなケースが違反に該当するのかを知っておくことが大切です。

ここからは、コンプライアンス違反の事例を紹介します。

1.ハラスメント

ハラスメントは社員同士のトラブルだけでなく、企業に対する訴訟問題や企業イメージの低下につながる可能性があります。

大手繊維メーカーの男性社員が上司から暴言を浴びせられる等のパワハラを受けて退職を余儀なくされたとして、会社と上司に対して計660万円の損害賠償を求めた。

その後、裁判で上司によるパワハラがあったと認められ、計55万円の支払いが命じられた。

パワハラやセクハラだけでなく、産休や育休を理由に不当な扱いをする「マタニティハラスメント」や、飲酒を強要する「アルコールハラスメント」等さまざまなハラスメントがあります。

管理者は、どのような発言や行動がハラスメントに該当するのかを理解し、自身が違反しないことはもちろん、ハラスメントが発生しない組織づくりをすることが求められます。

ハラスメント教育については「「ハラスメント教育」とは?企業で取り組むべき内容を徹底解説」をご覧ください。

2.長時間労働

働き方改革が進んだ昨今においても、法律で定められた範囲を超えた長時間労働が行われている企業があります。

電子部品メーカーに勤務していた男性社員が急性心筋梗塞で死亡した原因が長時間労働だったとして、遺族が会社に計約8100万円の損害賠償を求めた。

男性の時間外労働は発症直前の1ヵ月間が約69時間、その前の1ヵ月は約81時間、さらに移動時間を労働時間に計上していない出張を繰り返していた。

裁判所は過重労働と死亡の因果関係を認め、計約5,700万円の支払いを命じた。

管理職が部下の労働時間を把握して改善や対策を行わなければ、退職者の増加や社員の心身不調による生産性の低下につながります。

社員からの訴訟問題に発展するだけでなく、採用活動にも影響をおよぼすことで優秀な人材が獲得できない状況になってしまいます。

長時間労働の解決方法については「生産性の低下を招く長時間労働の解決法」をご覧ください。

3.情報漏えい

情報漏えいが起きると損害賠償金や慰謝料の支払いが発生したり、取引先や顧客からの信用が低下したりする可能性があります。

自治体から業務委託を受けていたITサービス会社が許可を得ずに業務を再委託、再々委託し、再々委託先の社員が酒に酔って住民の個人情報が入ったUSBメモリを一時紛失した。

自治体はITサービス会社に2,900万円の損害賠償を請求し、支払いが行われた。

働き方の多様化が進み、リモートワークが導入されたことにより社外で仕事をする機会も増えています。

働き方の自由度が高くなった反面、パソコンやUSBメモリを紛失したり、情報を盗み見られたりする情報漏えいリスクが高まっています。

そのようなトラブルを起こさないためには、社外でパソコンや顧客情報を取り扱う際のルールを定め、従業員に周知することが大切です。

4.SNSの使い方

SNSの普及により、会社が運用するアカウントはもちろん、社員個人の発信についても教育する必要があります。

飲食店の店舗内でアルバイト従業員が配膳用のトレイ等を使って悪ふざけする動画がSNS上で拡散され、動画撮影に関わった3人が解雇処分となった。

飲食店は全店舗を一斉休業し、従業員教育と店内清掃を実施するとした。

このような違反を抑制するためには、不適切な投稿が企業にどれほど悪影響を与えるのかを伝えることが大切です。

SNSの炎上事例や対策方法については「SNS炎上の原因と対策|国内外5つの事例を紹介」を参考にしてください。

5.著作権違反

著作権違反は、イラストや文章といった著作物を著作権者の許可を得ずに利用することをいいます。

著作物であることに気付かずに、著作権違反をしてしまうケースもあるので注意が必要です。

自治体の職員がネット上にあったイラストをフリー素材と勘違いし、自治体のホームページに無断で掲載した。

しかし、このイラストは有料販売サイトで公開されていたもので、イラストを掲載しているサイトの運営会社から使用経緯について問い合わせる文書が届き、無断使用が判明。

自治体が権利者側に損害賠償金として約25万円を支払った。

著作権違反では、権利者の告訴によって10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金が科せられる場合があります。

このような事態を回避するためにも、部下に対して何が著作権違反に該当するのかを周知したうえで、ホームページやチラシにイラスト等を使用する際に事前確認できるような業務フローを整えていく必要があるでしょう。

6.不正受給や書類の改ざん

助成金や補助金を不正受給したり、会計書類やデータを改ざんしたりする行為は法律違反です。

企業の社会的信用を失うだけでなく、法律で罰せられる可能性があります。

大手鉄鋼メーカーで製品の品質検査データが数十年にわたり改ざんされていたことが発覚した。

不正競争防止法違反として会社に罰金1億円の判決が言い渡された。

不正受給や書類の改ざんは、直接的に指示をしていなくても成果を追い求めることで発生してしまう場合があります。

そのような事態にならないためには、目標達成が難しかったり、トラブルが発生したりしたときに管理職に相談できる風通しのよい環境を整えることが大切です。

7.下請法

下請法とは、下請企業に対する無理な値引きや口頭発注による代金の未払いといったトラブルを防ぎ、立場が弱い下請企業を守るための法律です。

下請企業への不当な取引は、下請法違反にあたります。

量販店を運営する企業が下請企業23社の支払代金を不当に減額したり、正当な理由なく商品を返品したりしていた。

これらの行為が下請法違反にあたるとして公正取引委員会が勧告し、量販店の運営企業が違反認定された相当分の計約3,550万円分を下請企業に支払った。

管理職は、部下に対してどのような対応が下請法違反となるのかを指導し、下請企業と適切なコミュニケーションが取れる環境を整えることが大切です。

コンプライアンス対策における管理職の役割

社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高めるためには、管理職がどのような行動をするのかが重要です。

ここでは、コンプライアンス対策における管理職の役割を解説します。

部下の手本になる

部下のコンプライアンス意識を高める立場にある管理職が違反をしていると、部下にコンプライアンス教育ができません。

そのため、まずは管理職自身がコンプライアンス違反をしていないことが前提となります。

なかには、気付かないうちにコンプライアンス違反をしている場合もあるため、どのようなケースがコンプライアンス違反に該当するのかを押さえておくことが大切です。

「部下のため」や「会社のため」といった理由でパワハラや不正をしてしまわないように、コンプライアンスに関する正しい知識を身につけ、部下の手本となる行動を取りましょう。

部下のコンプライアンス違反を防止する

部下のコンプライアンス違反を防止するためには、コミュニケーションが取りやすい関係性を築いておくことが大切です。

部下が不正行為をしていないか、長時間労働となっていないか等を日頃のコミュニケーションを通じて把握しましょう。

コミュニケーションが十分に取れていれば、コンプライアンス違反につながる行動にいち早く気付き、違反を防止できます。

コンプライアンス違反が発生した際に対処する

管理職は、コンプライアンス違反が起きたときに被害がより大きくならないように適切な対処をしなければなりません。

違反者への事実確認や関係先への連絡、マスコミへの対応等、状況に応じた柔軟な対応が求められます。

迅速に対処するためにも、違反内容に合わせたマニュアルを作成しておきましょう。

コンプライアンス違反を防ぐための対策

コンプライアンス違反を起こさないためには、研修をしたりルールを定めたりするような対策をしておくことが大切です。

ここでは、コンプライアンス違反を防ぐための対策を紹介します。

コンプライアンス研修を実施する

コンプライアンス違反を防ぐためには、社員一人ひとりのコンプライアンス意識を高める必要があります。

管理職向けのコンプライアンス研修では、不祥事が起きるメカニズムや違反防止の仕組みづくり等を学びます。

このような研修を定期的に実施し、コンプライアンス違反が企業に与える影響等への理解を深めましょう。

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定期的に社内ルールを改定する

コンプライアンス違反が起きないように、法改正やリモートワークの導入といった働き方の変化に合わせて社内ルールを見直すことが大切です。

これまでは問題がなかったことでも、法改正や働き方の変化によってコンプライアンス違反となる可能性があるので注意しましょう。

相談窓口を設ける

ハラスメントや内部不正等の相談窓口を設けることで、問題の防止・早期発見につながります。

相談窓口を設置する際は、匿名で相談できるようにしたり、相談後のプロセスを明らかにしたりする等、誰もが相談しやすいように配慮するのがポイントです。

また、相談窓口があることを従業員に周知するのも忘れないようにしましょう。

まとめ

社員のコンプライアンス違反によって企業は社会的信用を失ったり、経済的な損失を受けたりする可能性があります。

管理職には、部下の手本となる行動や積極的なコミュニケーションを取って、職場でコンプライアンス違反を発生させないマネジメント力が求められます。

ただし、コンプライアンス関連法の改正や価値観の多様化が進むことで、これまで問題にならなかった行動がコンプライアンス違反に該当してしまう状況も少なくありません。

そのような状況にならないためにも、管理職向けのコンプライアンス研修や社内ルールを定期的に改訂して、企業全体としてコンプライアンス順守に向き合っていくことが大切です。

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