2023.07.14
人材教育
人事制度・組織づくり
少子高齢化社会への新しい働き方として政府主導でテレワークが推進されるなか、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を採用する企業が増加しています。
勤務形態のテレワーク化は、会社にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。また、導入にあたってはどのような課題をクリアする必要があるのでしょうか。
3つの働き方があるテレワーク
テレワークとは、情報通信技術を活用して実現する、時間や場所にとらわれない柔軟な働き方を意味します。その働き方には、以下の3通りがあります。
- 在宅勤務
自宅を就業場所とする働き方 - モバイルワーク
顧客先や移動中など、場所を選ばずにコンピューターや携帯を使って仕事をする働き方 - サテライトオフィス勤務
勤務先以外にサテライトオフィスのようなスペースを設け、就業場所とする働き方
テレワークの実施頻度は、週に1~2日や月数回、または、午前中だけなどさまざまです。業務の性格や企業が定める勤務ルールにより自由に設定できます。
テレワークのメリット
人材の獲得と定着の促進
リモートワークの選択肢を提供することで、優秀な人材をより広範囲から採用できる可能性があります。また、テレワークが希望する従業員にとって魅力的な制度であれば、企業への定着率も高まります。
事業継続性のリスク対策強化
自然災害や緊急事態などによるオフィスの利用困難な状況でも、テレワークによって業務を継続できる体制を構築できます。
従業員の満足度向上
育児・介護など従業員それぞれのワーク・ライフ・バランスに対して柔軟性を提供できるようになります。労働条件の向上にもつながり、従業員の満足度が向上する可能性があります。
環境への貢献
通勤の削減やオフィスの省エネ化により、企業の持続可能な経営や環境への貢献が期待できます。加えて、通勤費や電気代といった経営に関わるコストも削減が見込めます。
テレワークのデメリット
コミュニケーションの不足
常にリモート環境での仕事となるため、チーム全体が一堂に会しての議論や意見交換が難しくなり、情報伝達や意思疎通が滞ることがあります。また、社交的な面での孤立感を感じることも多くなり、従業員のモチベーションや士気に悪影響を及ぼす場合もあります。
チームの結束力の低下
リモートワークは社内のチームビルディングや社交活動を妨げることがあり、チームの結束力や協調性に影響を与える可能性があります。オフィス内での勤務と比べて従業員の業務のモニタリングも難しくなり、チーム間での業務の把握等にも影響が出やすくなります。
情報セキュリティのリスク
従業員が個々のデバイスを使用して外部ネットワークに接続するため、企業の機密情報やデータがセキュリティリスクにさらされる可能性が増します。
テレワーク実践法人の6割が「生産性向上・効率化」の効果を実感
日本マイクロソフトが、651の賛同法人と実施した「テレワーク週間2015」に関するアンケート調査によると、テレワークを実践したことにより「10%以上の経費削減効果」(39%)、「時間削減効果」(64%)、「生産性向上・効率化効果が1割以上向上」(60%)など、一定の効果が実感されているようです。
社員自らがタイムマネジメントをすることで自発的に効率よく働く意識を高め、達成感ややり甲斐といった「内的モチベーション」の向上につながるとの声も聞かれます。こうした自律性を尊重した働き方は、ストレス対策としても有効です。
テレワーク化の課題
実施企業で一定の効果とメリットが確認されているテレワークですが、実際の導入には以下のような体制の整備が必要です。サントリーと総務省での実践例を交えてみていきましょう。
従業員の労働時間の管理
タイムカードやパソコンのシステムなどで、従業員の労働時間を管理する必要があります。例えば、サントリーでは「新外形管理システム」を導入し、パソコンのログイン/ログアウト時間、累積利用時間などをチェックする体制を構築しています。
勤怠評価や能力評価などの制度の整備
サントリーでは、上記管理システムによる労働時間と勤務簿を照らし合わせて、マネージャーが勤怠管理を行います。また、予定所要時間と実際にかかった時間など業務の進捗状況を上司にメールで報告し、能力評価やマネジメントアドバイスも実施しています。
社員の理解促進
これまでと異なる働き方によって、社員に不安が残らないよう利便性と安全性への対策を整え、社内に浸透させることが大事です。サントリーでは、まずマネージャーに週1日のテレワークを義務づけ、本人と部下への理解促進をはかりました。
セキュリティ対策
社外勤務をするには、情報漏洩対策が必要となります。そのため、総務省ではテレワークにも省内で採用されているセキュリティと同じものを使用。端末ディスクの暗号化や総務省LAN以外の通信を制限し、ログイン時の指紋認証を行っています。
テレワーク化は自社業務の分析と適切な働き方の検討が必要
テレワークという新しい働き方には、さまざまなメリットがあります。
その一方で、Googleのようにオフィスでのメンバー間の活発なやりとりがイノベーションを生み出す源だとし、オフィス勤務を重視して成功している企業もあります。
テレワークの導入にあたっては、自社業務の性格を分析し、どのような働き方が適切なのか検討する必要があるでしょう。
しかしながら、深刻化する人材不足に対応するためには、企業が柔軟な働き方と働きやすい環境を積極的に提供していく必要性が、今後ますます高まります。企業活動の生産性と効率の向上につなげるひとつの策として、テレワーク化を検討してみてはいかがでしょうか。
参考
- テレワークの効果|日本テレワーク協会
- テレワーク実践法人の6割が「生産性向上・効率化の効果あり|jp
- 日本マイクロソフト、在宅勤務に代わる「テレワーク勤務制度」導入 「コアタイム」も廃止|ITmedia ニュース
- トヨタ、在宅勤務を大幅拡充 総合職の半分が対象に|朝日新聞デジタル
- 三井物産、正社員3500人に「在宅勤務」導入へ・・・どんな利点と課題があるのか?|弁護士ドットコムニュース
- テレワーク導入環境の整備|総務省
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