2023.07.24
eラーニング
人事制度・組織づくり
昨今、圧倒的な成果を上げる「ティール組織」という組織モデルが注目を集めています。
ティール組織とは、経営層や上司がマイクロマネジメント(あらゆる業務を管理・監視するマネジメント)をしなくても組織の目的実現が可能になるという、独自の工夫にあふれた組織のこと。
そもそも「ティール組織」とは?
世界中の組織を調査したファシリテーターのフレデリック・ラルーの著書『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』(2018)より、ティール組織とはメンバー全員が互いを信頼して、独自のルールや仕組みを試行錯誤しながら、組織を運営していくスタイルです。
ティール組織では既存の組織と違って、社長や管理職からの指示や命令をする系統を作りません。
組織がどこに向かっているかを話し合う場などを設けて、メンバーが共鳴し合いながら、目的に向かって進んでいきます。
代表的な企業事例には、ザッポス社、パタゴニア社、パソナ社、ウィルコム社などがあります。
ちなみに、ティールとは「青緑」という意味で、ケン・ウィルバーのインテグラル理論に基づいています。この理論では意識は「赤 → 琥珀 → 橙 → 緑 → 青緑」の順で複雑化し発展していくと考えられています。
ティール組織に求められる「思想」と「人事制度設計」
ティール組織の思想は、主に次のような特徴があります。
自己管理
従来の管理階層が少なくなり、個々のメンバーやチームが自らの業務を管理し、決定を行います。
目的志向性
組織は利益だけでなく、共通の目的やミッションを重視し、その達成に焦点を置きます。
全体性の意識
組織全体の利益や全体最適を重視し、部門間の連携を促進します。
成長と発展
メンバーが個人として成長し、組織全体も柔軟で変化に適応することで、持続的な発展を目指します。
次に、ティール組織の人事制度は、従来の上下関係や階層的な評価に代わり、以下のような特徴を持ちます。
ロール(役割)指向
メンバーは組織内で適切なロールを持ち、その役割に基づいて評価や報酬が与えられます。
ホラクラシー
タイトルや階層ではなく、ロールと役割に基づいて組織が運営されます。メンバーは適切なロールを自ら選択し、変更することも可能です。
フィードバック文化
定期的なフィードバックや評価が行われ、メンバーが成長し続けるためのサポートが行われます。
通常の企業組織と比較しても責任感、役割分担がかなり明確なので、より一人ひとりの自立性も求められると言えます。
ティール組織に必要な「セルフマネジメント」
メンバーの自主性に任せるティール組織を目指すには、組織自体が「セルフマネジメント」できなければいけません。そのためには、以下のようなことが必要です。
1.情報の透明化(上司や特定の部署が情報を留めずに、メンバー全員で共有する)
2.意思決定プロセスの権限移譲(上司が決済するのではなく、チームで意思決定できるようにする)
3.人事プロセスの明確化(人材の配置や担当業務について、メンバーで話し合って決める)
これらがなされていると、仕事の成果やプロセスがリアルタイムで見えます。結果として、メンバーやチームは、自らの成果やプロセス、行動を自覚し、進化させる機会を持つために動くようになるのです。
ティール組織の企業事例(国内)
日本企業の中にもティール組織のアプローチを取り入れている例がいくつかありますが、ティール組織の採用はまだ限られています。ここではティール組織と近いホラクラシーという組織形態を導入している事例をご紹介します。
株式会社キャスター
2014年の創業以降、全従業員がリモートで勤務しているため、結婚・出産等の事情で地方に住む女性が多数在籍し、活躍している企業です。
「ホラクラシー」という組織形態を人事制度として導入。
マネージャー以外の役職を無くしてフラットな組織にし、経営の意思決定権を組織全体に拡充。主体的に仕事に取り組むことで継続的に会社を成長させながら、働きがいを持てる組織を実現しています。
従業員が希望するライフスタイル・ワークスタイルに対応しやすい働き方を実現しながら活躍を推進しています。
eラーニングでメンバー個々の能力を高めよう
「組織自体がセルフマネジメントを行うなんて難しい」「そもそも個々のメンバーにそこまで任せられない」と思われるかもしれません。
たしかに、意思決定のプロセスや人事プロセスまでチームやメンバー全体で行うようになるためには、個々のメンバーの能力が高く、互いに信頼できる関係であることが求められます。
企業は、そのための新たな知識やスキルの取得、または個人的な不安や人間関係についての問題解決などを支援していきましょう。
eラーニングは、そのための強力なツールのひとつです。個々がいろいろな仕事に挑戦できるように新たな知識やスキルを学ばせたり、相互の人間関係を良好にしたり、意見や感情の相違を解決したりするトレーニングを行うことができます。
eラーニングでセルフマネジメントできる組織を目指そう
国内外でもティール組織はまだまだ少ないですが、eラーニングを活用すれば、実現も不可能ではありません。
これからの企業経営を考えるうえでは、eラーニングで個々の能力を高めて、セルフマネジメントができるティール組織を目指すことを視野に入れてはいかがでしょうか。