2025.09.29
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ビジネスの現場では、データを活用する技術である「データサイエンス」がますます求められています。
データサイエンスは、日常生活やビジネス戦略のなかでも使われている身近な技術です。身近な例を知っておけば、ビジネスでのデータの活用方法をイメージしやすくなるでしょう。
本記事では、データサイエンスの身近な例や取り入れる際の基本的な流れを解説します。データサイエンスへの理解を深め、ビジネスで活用したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
データサイエンスとは
データサイエンスとは、大量のデータから価値のある知見や有益な情報を引き出し、意思決定や問題解決に役立てる技術のことをいいます。近年はビジネスや社会のあらゆる場面で活用されており、企業の競争力強化に欠かせない技術とされています。
データがあふれる現代では、数字や記録をそのまま扱うだけではビジネスに有効活用できているとはいえないでしょう。統計学やAI、コンピュータ技術を組み合わせ、データを整理・分析し、意味のある情報に変える力が求められます。
データサイエンスと統計学、AIの違い

データサイエンスと混同されやすい言葉に、統計学とAIがあります。
ここでは、データサイエンスと統計学、AIの違いを解説します。
統計学との違い
統計学は、データを整理・分析し、傾向や因果関係を導き出す学問のことをいいます。
一方、データサイエンスは統計学にくわえ、プログラミングや機械学習を取り入れて大量のデータから新しい知見や価値を生み出す実践的な領域です。
つまり、統計学はデータサイエンスを支える柱であり、両者は補完関係にあるといえます。
AIとの違い
データサイエンスは人が主体となり、統計学や情報工学を活用してデータから新しい知見や価値を生み出す技術です。
一方、AIは機械が主体となり、機械学習や深層学習を使って自律的に予測や判断をする技術のことをいいます。データサイエンスはAIを手段の一つとして活用し、AIはデータサイエンスによる分析や高品質なデータを土台として成り立っています。
【ビジネス】データサイエンスを活用している身近な例
データサイエンスは、以下のようなビジネス分野で活用されています。
- 商品やサービスの売上予測・施策提案
- 工場や建物の安全管理
- 配送ルートの最適化
- 在庫管理の効率化
- SNSのターゲティング広告
一つずつ詳しく紹介します。
1. 商品やサービスの売上予測・施策提案
小売店やサービス業では、商品とサービスの売上予測・施策立案をするためにデータサイエンスを活用するケースが多いです。
過去の売上データと季節、天候、イベント開催状況の関係を整理し「夏の猛暑日は冷たい飲料の売上が大きく伸びる」といったパターンを導きます。
このような分析をすることで、企業は仕入れ数や広告出稿のタイミングを適切に調整することができます。
2. 工場や建物の安全管理
工場の機械・設備に温度センサーや振動センサーを取り付けると、さまざまなデータを収集できます。データサイエンスでは、日常的に収集している温度や振動のデータから「正常な範囲」と「異常な兆候」を区別できるようになります。
「振動が通常より大きくなっている」「温度が急上昇している」といったパターンを検出し、早い段階で対処できれば故障や事故を未然に防ぎやすくなるでしょう。データを使った監視には、安全性を高めるだけでなく、保守点検を効率化するメリットもあります。
3. 配送ルートの最適化
物流業界では、届け先の住所や交通状況、配送車両の位置情報等を収集することで、配送ルートを最適化する仕組みが導入されています。
データサイエンスでは、収集したデータを基にもっとも効率よく回れるルートを導き出すことができます。
例えば「午前中は渋滞が多い道を避ける」「近隣の複数の届け先をまとめて回る」といった最適化をめざせるでしょう。配送時間を短縮できれば、燃料の削減やドライバーの負担軽減につながります。
4. 在庫管理の効率化
小売店や倉庫では、商品の入出庫データや販売データが日々記録されています。
これらのデータを分析すれば「週末は特定の商品が売れやすい」「雨の日は傘の販売が急増する」といった傾向を導き出せます。
データサイエンスによって「どの商品がどのタイミングで必要になるか」を予測できれば、在庫数を適切に調整できるようになり、品切れによる機会損失や過剰在庫によるコストを抑えられるでしょう。
5. SNSのターゲティング広告
SNSでは、ユーザーが「どのような投稿に反応したか」「どんなアカウントをフォローしているか」といったデータが収集されています。
ユーザーの行動データを整理すれば、そのユーザーがより興味をもちやすい広告を導き出せます。
表示される広告がユーザーにとって関心の高い内容になっていると、問い合わせや購入といった次のアクションにつながりやすくなるでしょう。
【日常生活】データサイエンスを活用している身近な例
データサイエンスは、日常生活で以下のように活用されています。
- 家計簿アプリの収支グラフの表示
- 健康アプリの歩数・睡眠時間の推移
- 天気予報・自然災害の予測
- 交通渋滞の予測・ルート提案
- クレジットカード不正利用の自動検知
- 通販サイトでのお勧め商品の提案
それぞれ詳しく紹介します。
1. 家計簿アプリの収支グラフの表示
家計簿アプリでは、ユーザーが入力した日々の支出や収入のデータが自動でグラフ化されます。
アプリやユーザーの入力内容によっては、食費・光熱費・交際費等のカテゴリーに分けたグラフも確認できます。
データサイエンスを取り入れた家計簿アプリを使えば、「今月は食費が先月より20%増えている」といった支出の傾向をひと目で把握でき、より効果的な節約方法を見つけやすくなるでしょう。
2. 健康アプリの歩数・睡眠時間の推移
健康アプリに歩数や心拍数、睡眠時間等を記録すると、これらのデータを折れ線グラフや比較表として表示します。
折れ線グラフや比較表を確認すれば、単に記録を並べるだけでは気付けない「平日は歩数が少ない」「睡眠時間が週ごとに減っている」といったパターンが見つかります。
データサイエンスが活用された健康アプリを使うことで、健康管理の効率化を図れるでしょう。
3. 天気予報・自然災害の予測
気象庁は気温や湿度、風向き、気圧等の気象データを日々収集しています。データサイエンスの手法で、過去の気象パターンと現在の観測値を比較することで提供されているのが天気予報です。
自然災害の予測にもデータサイエンスが活用されています。気象データや地質情報、過去の災害状況を分析すると、災害の発生確率や範囲を予測できます。
4. 交通渋滞の予測・ルート提案
カーナビや交通情報サービスは、道路に設置されたセンサーや車両からの位置情報を集めています。
収集した位置データと走行速度を組み合わせれば「どの時間帯にどの道路で渋滞が起きやすいか」等の予測が可能です。
カーナビが「金曜の夕方は高速道路の出口付近が混雑する」といったパターンを導き出せたときは、「このルートは混雑が予想されるので別の道を提案する」といった形で、効率的な移動をサポートしてくれます。
5. クレジットカード不正利用の自動検知
クレジットカード会社は、利用金額や場所、時間帯といったデータをリアルタイムで監視しているといわれています。
普段は日本国内で数千円の買い物をしている人のカードが突然海外で高額決済に使用された場合は、通常と異なるパターンとして「不正利用の可能性が高い」と検知できます。
異常な支払いデータをいち早く見つけ出せれば、被害を最小限に抑えられるでしょう。
6. 通販サイトでのお勧め商品の提案
通販サイトには、購入履歴や閲覧履歴、カートに入れた商品データが蓄積されています。
蓄積データを組み合わせると「同じような商品を買った人が他にどのような商品を購入しているか」を導き出せます。これらの情報を基にユーザーに適した商品を提案できれば、通販サイトの売上を高めることが可能です。
データサイエンスでできること
データサイエンスでは、以下のようなことを実現できます。
- データ分析・可視化
- 予測
- 分類・識別
- 最適化
- パターン・新たな知見の発見
それぞれ詳しく見ていきましょう。
データ分析・可視化
データサイエンスの基本は、膨大なデータを整理し、分かりやすく見える形にすることです。収集データをそのまま見ても傾向はつかみにくく、ビジネスに活用するのは困難です。
データサイエンスによってグラフや図表で数値を表現すれば、現状の把握や課題の発見が容易になります。
予測
データサイエンスでは、統計学や機械学習を用いることで、過去のデータから未来を予測することが可能です。過去の傾向から売上数量やユーザーの行動がある程度予測できれば、より効果的な施策を打ち出せるでしょう。感覚や勘に頼らない、データに基づいた意思決定が実現します。
分類・識別
データサイエンスは、データを分類・識別する技術にも活用されています。
具体的には、顧客を購買履歴や行動データから優良顧客・離反顧客に分けたり、ローン申請者を返済リスクが低い・高いで分類したりする技術です。
分類・識別の技術はマーケティング施策やリスク管理の強化等につながります。
最適化
データサイエンスは、複数の選択肢から即効性が高く、効果的な方法を導き出す最適化にも利用されます。
物流業界では配送ルートを最適化し、時間短縮や燃料費削減を実現しています。収集したデータをうまく活用すれば、限られた条件下で最大限の成果を出すことが可能になるでしょう。
パターン・新たな知見の発見
データサイエンスは、人間が気付きにくい隠れたパターンや新たな知見を発見するきっかけになることがあります。
データを分析すると、単純な数値比較では見えない関連性や傾向が明らかになります。得られた知見を応用すれば、新たな市場機会の発見や既存戦略の改善につなげられるでしょう。
データサイエンスを実施するときの流れ

データサイエンスを実施する一般的な流れは、以下の通りです。
- 活用目的を明確にする
- データを取得・収集する
- データを分析・可視化する
- ビジネスに応用する
順番に詳しく見ていきましょう。
1.活用目的を明確にする
データサイエンスを取り入れるときは「何のためにデータを使うのか」を明確にすることが大切です。
目的が定まっていないと「どのようなデータを収集すべきか」「集めたデータをどのように活用するのか」が不透明になってしまいます。
まずは「売上を伸ばしたい」「業務の効率を上げたい」「安全性を高めたい」といった具体的な課題を明らかにしましょう。めざす方向を決めることで、データ活用の努力が無駄にならず、必要な答えに近付けます。
2.データを取得・収集する
データサイエンスの目的が決まったら、関連するデータを集めます。
データは売上表やセンサーの数値、アンケート結果、Webの行動履歴等、身近なところに存在します。
重要なのは目的に直結するデータを選ぶことです。多くのデータを集められても、関係のない情報ばかりでは、適切な活用方法を導き出せません。
どのようなデータを集めるべきかを明確にしたうえで、取得・収集するようにしましょう。
3.データを分析・可視化する
集めたデータを分析・可視化して、目的達成のために必要な情報やパターンを見つけます。
そのためには、分析結果をそのまま数字で示すのではなく、グラフや図に変換することが大切です。
の羅列より、グラフや図にすることでパターンを視覚的に見つけやすくなります。
4.ビジネスに応用する
データサイエンスの最終的なゴールは、分析した結果を実際の行動につなげることです。
小売店では売上予測を使って仕入れ数を調整し、物流業界では配送ルートの最適化によって燃料コストを削減する等の戦略を立てます。
グラフや予測値を見るだけでなく、分析結果を実務に反映させることで初めて役立つ仕組みとなります。
データサイエンスに必要となるスキル
データサイエンスには、以下のスキルが求められます。
- 発想力
- ロジカルシンキング力
- 課題解決力
- プログラミングスキル
一つずつ詳しく紹介します。
発想力
データサイエンスには、データを眺めるだけでなく「どのように役立てるか」を考える発想力が求められます。
同じ購買データを使うにしても、売上を伸ばす施策に活用するのか、在庫削減の最適化に活用するのかは発想次第です。データを意思決定に結びつける柔軟な視点こそが、データサイエンスをビジネスの成長に直結させる鍵となるでしょう。
ロジカルシンキング力
ロジカルシンキング力は、データを筋道立てて整理し、因果関係を明らかにするために必要なスキルです。
複雑で膨大なデータは、論理的に整理しなければ、適切な結論にはたどりつけません。
例えば、売上が減少した場合に「広告効果の低下」「競合商品の影響」「季節要因」等、可能性を分けて考える必要があります。
論理的に考えることができなければ、データ分析をしても根拠のない推測に終わってしまいます。ロジカルシンキング力を身に付けることで、データを適切に理解し、改善につながる結論を導き出せるでしょう。
課題解決力
データサイエンスの最終的な目的は、課題の解決です。
そのためには、課題解決力が必要不可欠となります。課題解決力とは、課題やその原因を見つけて適切な方法で解決へと導く力のことをいいます。どんなに精密な分析をしても、課題の明確化や解決策に結びつかなければ、効果は得られません。
交通渋滞のデータであれば、「渋滞が多い時間帯」を明らかにするだけでは不十分です。
その結果を基に課題と原因を明らかにして、「運行時間を調整する」「配送ルートを変える」といった実行につなげる必要があります。課題解決力こそがデータサイエンスを成果へと変える力になるでしょう。
プログラミングスキル
データサイエンスには、プログラミングスキルが求められます。
扱うデータが膨大であるほど、人だけで処理することは困難です。プログラミングを使えば、自動でデータを整理してグラフ化したり、将来の予測を試算したりすることが可能になります。
プログラミングは効率的にデータを扱うための実務的なスキルといえるでしょう。
まとめ
データサイエンスは、膨大なデータから価値ある知見を導き出し、意思決定に役立てるための技術です。商品の売上予測や配送ルートの最適化等、すでに幅広い分野で活用されています。
データサイエンスをビジネスに活かすためには、身近な例を参考にデータの扱い方や応用の仕方を知っていくことが大切です。
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