2025.07.18
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さまざまな価値観や背景をもつ人材が協働する現代のビジネス環境において、コンフリクトマネジメントは企業が成長するために必要不可欠な取り組みです。
コンフリクトマネジメントを適切に導入できれば、意見・アイデアが出やすくなったり、生産性が向上したりする可能性があります。
働きやすい職場にするためにも、職場で発生する対立への適切な対応方法を知っておきましょう。
本記事では、コンフリクトマネジメントの意味やメリットを紹介します。対立が起こる原因やコンフリクトマネジメントの流れも紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
コンフリクトマネジメントとは
コンフリクトマネジメントとは、職場で発生する対立(コンフリクト)を適切に管理し、建設的な解決に導く手法のことです。対立を前向きな変化や成長の機会として捉え、解決に導きます。具体的には、当事者の意見や要望を聞き出して、客観的に分析した対立の原因から双方に納得感のある解決策を見つけ出します。
コンフリクトマネジメントのメリット
コンフリクトマネジメントを取り入れるメリットには、以下のようなものがあります。
- 意見・アイデアが出やすくなる
- 生産性が向上する
- 離職率が低下する
それぞれ詳しく紹介します。
意見・アイデアが出やすくなる
コンフリクトは回避するのではなく、当事者の意見を聞き出して解決に導く姿勢を取ることが大切です。適切な対応ができれば、安心して発言しやすい環境を整えられます。否定される不安が取り除かれることで、従業員はリラックスした状態で思考できるようになり、新しいアイデアを生み出しやすくなります。
対立を避けるのではなく、建設的に向き合うことで組織全体の活性化につながるでしょう。
生産性が向上する
対立状態にあるチームでは、メンバー同士の連携が取れず、本来の業務に集中できない状況が続く恐れがあります。適切な解決によりメンバー間の信頼関係が回復すれば、協力体制を再構築しやすくなります。
連携がうまくできていないチームがある場合は、対立や衝突が発生していないかを調査したうえで解決に導きましょう。
離職率が低下する
職場の人間関係にストレスを抱え、離職を考える人は少なくありません。会社が職場の対立を放置し、従業員同士の関係性が悪化してしまうと、優秀な人材の流出にもつながってしまいます。
コンフリクトマネジメントを取り入れることにより、人間関係の悪化を防げるだけでなく、適切に対処してもらえる安心感から従業員がトラブルを相談しやすくなります。職場の居心地が改善されれば、離職を考える人を減らせるでしょう。
コンフリクトの原因
対立を適切に解決するには、原因を分析する必要があります。コンフリクトが発生する代表的な原因には、以下のようなものがあります。
条件の対立 | 仕事内容や人員の割り当て等で生まれる対立 |
感情の対立 | 個人の価値観や信念の違い、当人同士の関係性等から発生する対立 |
認知の対立 | 情報の解釈や理解の違いから生じる対立 |
一つずつ詳しく見ていきましょう。
条件の対立
コンフリクトは、以下のような条件の対立によって発生することがあります。
- 仕事内容
- 予算配分
- 人員配置
- 昇進の機会
- 業務の優先順位 等
例えば、「特定のメンバーに業務が集中する」「業績評価の基準が不明確で昇進に差が生まれる」という理由から、従業員間で不公平感が生まれて対立が発生するケースがあります。条件の対立を解決するためには、公平で透明性の高いルールの策定やリソース配分の見直し、組織構造の改善といったアプローチが効果的です。
感情の対立
感情の対立は、個人の価値観や信念の違い、当人同士の関係性等から発生します。例えば「定時退社を重視する社員」と「長時間労働を評価する社員」が同じチームにいると、働き方に対する価値観の違いから摩擦が生まれることがあるでしょう。
感情の対立は、当事者が感情的になりやすく、論理的な議論が困難になりやすいといわれています。解決に導くには、当事者の気持ちを理解し、共感を示すことが大切です。双方が冷静な判断をできるようになったタイミングで対話の機会を設け、相互理解を深められるようにサポートすることが求められます。
認知の対立
認知の対立は、情報の解釈や理解の違いから生じる対立のことです。同じ事実や状況であっても、個人の経験や知識、立場によって異なる解釈が生まれると対立が起こりやすくなります。例えば、上司は「部下を信頼して任せている」と認識していても、部下が「放置されている」と受け取り、信頼関係が築きにくくなることがあります。
認知の対立は、コミュニケーション不足により、重要な情報が伝わっていないことが原因となっているケースが多いです。そのため、正確な情報を共有したり、異なる視点の説明を加えたりすると、双方の誤解が解消されることがあります。
コンフリクト発生時の代表的な対応方法
コンフリクトが発生したときに当事者が取る対応には、以下のようなものがあります。
- 強制
- 妥協
- 服従
- 回避
- 協調
コンフリクトマネジメントでは、協調が理想的な対応とされています。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
強制
強制は、一方の立場や意見を優先し、もう片方に従わせることをいいます。権限や立場を使って一方的に議論を終結させるため、相手の不満や反感を招くリスクが高いです。強制された側は納得感を得られず、将来的に大きな対立を引き起こす危険性が残ります。
安全性にかかわる緊急事態を除き、避けるべき対応方法といえるでしょう。
妥協
妥協は、対立する双方が一部ずつ譲歩することで、中間的な解決策を見つける方法です。双方が公平感を得やすく、人間関係の悪化を避けやすいとされています。ただし、根本的な問題解決に至らない場合が多く、同様の対立が再発する可能性があります。
服従
服従は要求を放棄し、相手の意見に従うことで対立を終結させる方法です。関係性の維持と迅速な解決を求めるケースで取られる対応方法とされています。
相手に対する配慮を示すことで、将来的な協力関係を築きやすくなるものの、重要な意見や提案が埋もれてしまう可能性があります。根本的な解決に至らないことが多く、服従を継続するのは理想的とはいえません。
回避
回避は、対立そのものを避けたり、先延ばしにしたりすることで直接的な衝突を回避する方法です。時間の経過により状況が自然に改善されることを期待して取られるケースが多いです。回避には、関係性の悪化を避けられたり、時間をかけることで解決策が見つかったりする可能性があります。
しかし、対立が潜在化し、より深刻な問題に発展する危険性があります。問題解決の機会を逃して、組織の成長や改善が阻害されるケースも考えられるでしょう。
協調
協調は、対立する双方の要求を満たす解決策を見つけることをめざす方法で、理想的な解決手段とされています。協調では、Win-Winの関係構築を重視し、長期的な視点で最適な解決策を模索します。根本的な問題解決だけでなく、信頼関係が深まったり創造的なアイデアにつながったりする効果が期待できるでしょう。
コンフリクトマネジメントを導入するときの流れ
コンフリクトマネジメントを導入するときは、以下の流れで進めましょう。
- 現状を把握する
- 話し合いの場を設ける
- 解決案を提示する
- 解決に取り組む
- 評価をして今後の対策を決める
順番に詳しく紹介します。
1.現状を把握する
現状を把握し、対立の本質を理解することは、適切な解決策を選択するための第一歩です。現状把握では、以下を明確にします。
- 対立にかかわる当事者
- 争点
- 対立が発生した経緯
- 双方が求めること
情報収集をする際は、偏見をもたず、多角的な視点から事実を確認することが大切です。当事者への個別ヒアリングや関係者からの情報収集、記録の確認等を通じて、状況を客観的に把握します。より効果的な解決策を導くためにも、現状を適切に分析しましょう。
2.話し合いの場を設ける
現状を把握したあとは、当事者や関係者、進行役を含めた話し合いの場を設けます。建設的な対話を促進するためには、当事者が率直に意見を述べられる場を整える必要があります。
進行役は、相手の話を遮らないといったルールを事前に策定・共有し、中立的な立場を保ちながら話し合いを進めることが大切です。適切な解決策を提示するためにも、安心して発言できる環境を整えましょう。
3.解決案を提示する
話し合いを通じて明確になった当事者の立場や要求に基づき、具体的で実現可能な解決案を提示します。解決案は、単に対立を終結させるのではなく、根本的な問題の解決や将来の予防効果も考慮して作成しましょう。
加えて、当事者が納得いく解決策で進めるには、複数案を用意することをお勧めします。複数案を提示する際は、解決策ごとに以下の項目を明確に示し、当事者が適切な判断をできるように配慮することが大切です。
- メリット・デメリット
- 実施に必要なリソース
- 期待される効果
- リスク 等
すべての関係者が納得できる解決策に導くためにも、一方的に提示するのではなく、関係者の意見を取り入れるようにしましょう。
4.解決に取り組む
話し合いで決定した解決策を実行に移します。具体的な行動計画を策定し、責任者や期限を明確にしたうえで実施しましょう。定期的な進捗確認をしたなかで問題が発生した場合は、解決策を見直すことも視野に入れる必要があります。関係者同士のコミュニケーションを継続的に促進し、実行過程での新たな対立や誤解を防ぐことも大切です。
5.評価をして今後の対策を決める
解決策の実施後は、当初設定した目標の達成度や当事者の満足度、組織への影響等を多面的に評価します。振り返りをするときは、解決プロセスにおける成功・失敗要因や今後の改善策を明確にしましょう。加えて、類似の対立を起こさないための予防策や、対立の早期発見・対応の仕組みを考えることも大切です。評価結果や施策は、関係者に共有し、今後のコンフリクトマネジメントに役立てましょう。
コンフリクトマネジメントの効果を高めるには、研修プログラムの導入も効果的です。研修を通して、コンフリクトマネジメントの目的や手法を体系的に学べば、実際に対立が起こったときも適切な対応を取りやすくなるでしょう。
コンフリクトマネジメントに必要なスキル
適切なコンフリクトマネジメントを進めるには、以下のスキルが欠かせません。
- コミュニケーション力
- 傾聴力
- ファシリテーション力
一つずつ詳しく紹介します。
コミュニケーション力
コンフリクトマネジメントでは、公平性を保ちつつ、当事者双方の意見を引き出したり、対話の橋渡しをしたりするコミュニケーション力が求められます。具体的には、「感情的になっている相手を落ち着かせる力」や「双方の意見をわかりやすく伝える力」が必要です。
仲介役が適切に機能しなければ、対立が悪化する恐れがあります。そのような状況を防ぐためにも、相手の心情に配慮したコミュニケーションを意識しましょう。
傾聴力
傾聴力は、コミュニケーションを通して相手の真の感情や課題を聞き出すスキルです。コンフリクトマネジメントでは、当事者が素直な気持ちを出さなければ、納得いく解決策を導くことができません。そのような事態を避けるには、話を遮らず最後まで聞いたり、適切な質問・相づちを取り入れたりして、素直な意見を出しやすい雰囲気をつくる力が求められます。
真摯に向き合っていることが伝われば、信頼関係が構築され、スムーズな問題解決につながるでしょう。
ファシリテーション力
コンフリクトマネジメントで建設的な議論を進めるには、以下のようなスキルが必要であり、これらをファシリテーション力といいます。
- 参加者の意見を引き出す
- 脱線や感情的な発言をコントロールする
- 異なる意見を整理して共通点を見つけ出す
- 最終的に合意形成に導く
コンフリクトマネジメントに必要なスキルを身に付けるには、研修を取り入れるのが有効です。
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コンフリクトマネジメントの事例
適切なコンフリクトマネジメントを実行するには、状況や対立の原因に合った対処が大切です。
ここでは、コンフリクトマネジメントの事例を紹介します。
部門間のコンフリクト
異なる部門同士は、目標や業務内容に違いがあることから協力体制が築きにくい場合があります。例えば、マニュアルどおりの運用を求める開発部門と、業務過多によりマニュアルどおりの対応が困難な運用部門との間で対立が発生することがあります。
部門間の対立を解消するには、定期的な話し合いや相互理解を深める仕組みを構築し、協働関係が築けるようにサポートすることが大切です。
チーム内のコンフリクト
同じチーム内でも意見の対立や価値観の違いから、コンフリクトが発生することがあります。例えば、新規プロジェクトの進め方について「準備を丁寧に進めるべき」という意見をもつAさんと、「スピード重視で試しながら進めるべき」と意見をもつBさんでは、互いの行動に不満を抱く可能性があります。
チーム内でコンフリクトが起こりやすくなる原因は、方向性や情報が適切に共有できていないためです。オープンに対話できる機会を設ければ、すれ違いが起こりにくくなるでしょう。
経営層と現場のコンフリクト
全社的な効率化をめざす経営側と、現場の実情に合った業務の継続を求める現場との間で、温度差が生じて対立するケースがあります。例えば、大幅な業務フローの変更を経営層が打ち出した際に、現場が十分な説明を受けておらず、不安や反発が広がった事例が挙げられます。このような対立を解消するには、変更の背景や目的を丁寧に共有したり、現場の声をヒアリングしたりすることが大切です。
まとめ
コンフリクトマネジメントとは、職場で発生する対立を建設的な解決に導く手法のことです。対立の原因を明確にし、当事者の意見を尊重しながら、関係者や組織にとって有益な解決策を見つけ出します。コンフリクトマネジメントの導入効果を高めるためにも、正しい意味や進め方を知っておきましょう。
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