2022.01.11
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変化の激しいグローバルビジネスに対応するために、必要なスキルと能力を持った人材の確保や人材不足への対応は、企業の最重要課題のひとつです。こうした問題を解決するにあたって、企業が新しい雇用形態や新しい働き方を模索していくことは、もはや避けられない時代となっています。今回は、米企業の88%が採用している「フリーランス」という働き方について考えてみましょう。
米で増加する「フリーランス」という働き方とその背景
米コンサルティング企業Tower Lane Consultingの調査によると、米国では4人に1人がフリーランスとして就労しています。調査対象となった米国主要企業の採用担当者260名のうち、60%が「フリーランスの雇用を増やす」と回答。88%の企業が、1年以内の短期プロジェクトにフリーランスを採用しているとの結果も出ています。
フリーランスの雇用が増えている背景には、常に進化し続ける技術や市場に対応できる優秀な即戦力が必要であることや、1980年頃から2000年前後に生まれたミレニアルズ世代を中心に自由な働き方を選ぶ人が増えてきていることなどが挙げられます。
企業がフリーランスを採用するメリットとデメリット
企業にとって、フリーランスを採用することのメリットやデメリットは、どのようなことがあるのでしょうか。
【メリット】優秀な人材をその都度雇用できる
1.経営状況に応じて即時に優秀な人材選択ができる
前出のTower Lane Consultingの調査では、75%の企業がタイミングや求める人材に応じてフリーランスを採用しています。
2.固定費削減ができる
人材育成費や労務関連費など、正式雇用にかかる固定費を節約できます。同調査では、50%の企業がコスト削減につながったと回答しています。
【デメリット】手続きや教育に時間がかかる?
1.優秀なフリーランスを見つけることが難しい
必要なスキルを持つ人材の確保に手間と時間がかかり、非効率な場合があります。
2.支払いや連絡に手間がかかる
1/3の企業が、報酬の支払いや連絡に手間がかかりすぎるという問題を経験しています。
3.教育と仕事管理に手間がかかる
プロジェクトに迎え入れるにあたり、組織のルールや仕事の進め方などについて教育・訓練するオン・ボーディングや仕事の進展状況の管理などに時間と費用がかかります。
こうしたデメリットは、フリーランスが組織の雇用形態に恒常的に組み込まれていないことから起きている問題です。今後、クラウドソーシングサービスのようなフリーランス管理ツールが問題の解決に役立つことでしょう。
日本のフリーランス労働市場 の現状
クラウドソーシング日本最大手のランサーズが「Lancer of the Year 2015」で発表した「フリーランス実態調査」によると、 日本では副業を含めて国内労働人口の19%にあたる1,228万人がフリーランスとして就労しています。このうち、約半数に相当する593万人はいわゆる「副業系すきまワーカー」で、本業を持ちながら副業として別の仕事をしている就労者です。
また、日米ではフリーランスとして働く理由に大きな違いがあるようです。米国では「本業以外でお金を稼ぐことができる」が最多ですが、日本では「時間や場所に縛られず、自由で柔軟な生活ができる」という理由が第1位で、新しい働き方として自ら選択する人が多いことがうかがえます。
働き方の再考を迫られる日本企業
日本の労働生産性が低いことの原因のひとつとして、として、働き方の構造があります。最近では、社内の人材資源を活用するために「タレントマネジメント」を採用し、適材適所を実現して競争力を高めようとする企業が増加しています。タレントマネジメントは個人キャリアの尊重を前提としているため、社員の企業活動への自発的貢献度である「従業員エンゲージメント」を高め、組織のパフォーマンスを向上させる方法として注目されています。
こうした社員の就労環境を重視した人事施策が企業の持続的な成長に欠かせない一方で、外部の優秀な人材の積極活用をはじめとした柔軟な人事戦略への取り組みも、ますます重要性を増すでしょう。さらに、若い世代では労働に対する意識や意欲に大きな変化が見られ、自由な働き方を求める動きがさらに強くなると予想されます。世界での競争力を維持するために、日本企業は人材採用、育成において大きな戦略変換が迫られているのです。
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