2023.07.01
人材教育
人事制度・組織づくり
日本では、大学4年生ともなれば誰もがいっせいにリクルートスーツに身をつつみ、企業説明会や面接へ向かいます。こうした就活戦線の一斉スタートや新卒市場の存在は、実は日本独特のものであり、海外ではだいぶ様子が違うようです。
今回は、欧米での新卒採用について取り上げ、いったいどのように行われているのか見ていきましょう。
欧米では新卒採用市場が存在しない
そもそも、欧米では日本のような「新卒」という採用市場自体が存在しません。欧米では労働市場が流動的なため、欠員が出たら補充するという通年採用が基本です。
新卒生が就職する場合、卒業の半年前くらいから就職活動を開始するというケースが多いですが、企業と学生が足並みをそろえて採用・就活活動をする期間がありません。そのため、3年生の時点で内定をもらっている場合もあるなど、学生によってさまざまです。
新人研修はなく、即戦力が求められる
欧米での採用は、「入社後に社会人として育てる」という日本の新人研修のようなスタンスはなく、即戦力になることが前提条件です。そのため、学生は専門的な知識とインターンシップなどでの実務経験を用意しておく必要があります。その代わり、企業は入社した社員のスキルアップや人材育成研修には、日本企業に比べるとより積極的といえます。
「○○年3月卒業予定者」という記載がない募集要項
募集要項を見ると、その違いがよく分かります。日本の場合、職種により文系、理系の区別はあるものの、一般的には「○○年3月卒業予定者」という表記がされています。欧米でも場合によっては、「新卒者も可」といった記載がある募集要項もありますが、具体的な専門性、スキル、経験などが募集要項に記載されるだけのことがほとんどです。
専攻・研究分野が職業選択に直結
欧米では、新人、経験者問わず、専攻・研究分野と職業選択に一貫性が求められます。日本はこの点では非常に柔軟で、専攻による職業選択の垣根は低く、文学部や工学部の学生が金融機関へ就職することも珍しくありませんが、欧米で、ビジネス、経済学、ファイナンス専攻以外の学生が、金融系へ就職することはあまりないようです。
採用と結びついたインターンシップ
欧米企業では、インターンシップが新卒者の選考手段のひとつとして盛んに導入されています。特に優秀な学生を選抜する目的で、書類審査と面接だけでなく、長期のインターンシップを通じて学生の能力と適性を評価するのです。
アメリカでは、産学連携でインターンシップが単位取得に連結しており、全米大学就職協議会(NACE)によれば、2010年には、企業の新卒採用のうち約45%がインターンシップからの採用となっています。
優秀成績者は採用でも優位に
さらに、成績も非常に重要視されます。企業にもよりますが、特に大手ビジネスコンサル系、投資金融業などでは、応募にはあるレベル以上の成績取得が条件となっています。また、特定有名大学・学部別のリクルートも行われています。
例えば、米国のアイビーリーグ(ハーバード大学やイェール大学などの米東部の名門私立大学)の優秀な学生に対する囲い込みなどは有名です。
ユニークな日本の新卒市場
欧米では、学生が在学中に獲得した知識や経験と学業結果が、企業が求める条件にどれだけマッチするかが採用の決め手となります。日本での新卒採用は、採用に開始時期があったり、採用条件では人柄や「見込み」の能力と適性を重視したりするなど、ユニークな市場を形成しているといえるでしょう。
参考サイト:
- 「特殊な日本の新卒採用」 JIJICO