2025.12.15
人事制度・組織づくり
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パワーハラスメント(パワハラ)とは、優越的な関係を背景に業務上の必要性を超えた言動で労働者の就業環境を害するものとして定義されています。精神的・身体的な攻撃に関わらず、人間関係からの切り離しや過大・過小な要求もパワハラに該当します。従業員を守り、企業の信頼と健全な職場環境を維持するためには、パワハラの定義を正確に理解し、「何がパワハラに該当するか」の明確な基準を周知することが大切です。
本記事では、パワハラの定義と6つの類型を具体的な事例を交えて分かりやすく解説します。企業が講じるべきパワハラ防止策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
パワーハラスメント(パワハラ)の定義と見極めのポイント
パワーハラスメント(パワハラ)は、「優越的な関係を背景」に「業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動」で「労働者の就業環境を害するもの」として定義されています。この定義は、2020年6月に施行された改正労働施策総合推進法(通称:パワハラ防止法)に基づき、厚生労働省によって示されたものです。
ここでは、その3つの要素と判断の基本的な考え方を整理します。
なお、パワハラの定義における「職場」にはオフィスだけでなく、出張先やリモートワーク中の自宅、業務に関連する懇親会の場も含まれます。「労働者」は正社員だけでなく、契約社員・派遣社員・アルバイト、さらに就活中の学生や求職者等も対象になります。
優越的な関係を利用した言動であるか
優越的な関係とは、以下のような関係性を指します。
- 上司と部下の関係のように職務上の地位が上位である
- 知識や経験が豊富で業務遂行上優位な立場にある
- 集団による行為で抵抗または拒絶することが困難である
上司から部下に対する言動だけでなく、知識・経験の差や集団による圧力も含まれます。言動を受ける労働者がその行為を拒否・抵抗できない状況にあることがパワハラの要件になり得ます。
業務上の必要性を超えていないか
業務の目的を達成するうえで、言動が明らかに不必要または過度なものである場合は、業務上の必要性を超えているパワハラと判断されます。指導や注意であっても、感情的な叱責や長時間の説教は、パワハラに該当するといえるでしょう。業務上の指導とパワハラの境界線は、その言動が業務の目的を果たすうえで合理的かどうかで判断されます。
就業環境を害していないか
就業環境を害しているといえるのは、その言動によって労働者が精神的・身体的な苦痛を抱え、働きづらくなる状態です。ハラスメントが原因で休職や退職に追い込まれたり、仕事への意欲を失いミスが増えたりするようなケースが該当します。被害者の感じ方だけでなく、平均的な労働者の感じ方を基準にして耐え難い状況かどうかで判断されます。
パワーハラスメントの6つの類型と具体例
パワーハラスメントは、以下の6つに分類されます。
- 精神的な攻撃
- 身体的な攻撃
- 人間関係からの切り離し
- 過大な要求
- 過小な要求
- 個の侵害
それぞれの意味と具体例を紹介します。
1. 精神的な攻撃
精神的な攻撃は、人格や尊厳を否定するような言動や脅迫、侮辱といった言葉や態度によって精神的な苦痛を与える行為を指します。「バカ」「役立たず」といった暴言のほか、大勢の前で長時間にわたり叱責する行為も該当します。業務上の指導であっても、必要以上に感情的になったり、人前で繰り返し罵倒したりする行為は、業務上の必要性を超えた精神的な攻撃とみなされるのです。
2. 身体的な攻撃
身体的な攻撃は、殴る、蹴るといった暴力的な行為によって労働者の身体を傷つけることです。業務上の指導や教育を装って行われたとしても、暴力を伴う行為は、業務上の必要性を超えているパワハラと判断されます。直接的な暴力でなくとも、物を投げつけたり、胸ぐらを掴んだりするといった威圧的な行為も該当します。
3. 人間関係からの切り離し
人間関係からの切り離しは、労働者を意図的に孤立させる行為を指します。具体的には、以下のような言動が該当します。
- 集団で仲間外れにする
- 無視をする
- 別室に隔離する
- 必要な情報を与えない
これらの行為は、被害者を精神的に追い詰めるだけでなく、業務に必要なコミュニケーションを妨げ、労働者の能力発揮を困難にさせます。
4. 過大な要求
過大な要求は、業務上明らかに不要なことや、遂行不可能な量・質の仕事を強制することです。一人で抱えきれないほどの大量の業務を押し付けるケース等が該当します。労働者の能力や経験を考慮せず、過度なプレッシャーを与えて精神的な苦痛を生じさせる行為といえます。
5. 過小な要求
過小な要求は、業務を与えなかったり、能力・経験とかけ離れた簡単な業務のみを命じたりすることです。例えば、管理職である労働者に対し、誰でもできる単純作業だけを長期間にわたり行わせる、あるいは仕事を与えずに放置するといった行為が該当します。労働者の能力を活かす機会を奪い、精神的な苦痛や不満を生じさせ、その労働者を退職に追い込むことを目的とする場合もあります。
6. 個の侵害
個の侵害は、労働者の私的なことに過度に立ち入る行為を指します。例えば、以下のような行為が該当します。
- 執拗にプライバシーに関する質問を繰り返す
- 病歴や性自認、家族構成といったプライベートな情報を本人の同意なく暴露する
- 私的なメールやSNS、所持品を勝手に調べる
これらは労働者の個人的な領域を不当に侵害し、精神的な苦痛を与える行為といえます。
パワーハラスメントが企業に与える影響

パワーハラスメントが企業に与える影響には、以下のようなものがあります。
- 生産性が低下する
- 優秀な人材が流出する
- 社員が長期間休職するリスクを負う
- 企業のイメージが悪化する
- 法的責任を問われる
それぞれ詳しく解説します。
生産性が低下する
パワハラの被害者は、精神的な苦痛から集中力や仕事への意欲を失い、個人のパフォーマンスが低下しやすくなります。被害者だけでなく、周囲の従業員も不安や恐怖を感じ、萎縮することでチーム全体の士気が低下する恐れもあります。
報告・連絡・相談といったコミュニケーションが滞れば、業務の遅れやミスにつながり、組織全体の生産性が低下することになるでしょう。
優秀な人材が流出する
パワハラの被害者は、休職や退職を選択するケースが多くなります。ハラスメント行為を目撃した従業員も、その企業に見切りをつけ、健全な職場環境を求めて離職する可能性が高いです。
人材が流出すれば、ノウハウやスキルの蓄積が妨げられて企業の競争力が低下する恐れがあります。
社員が長期間休職するリスクを負う
メンタルの不調が業務に起因するものとして認定されれば、その社員は労働者災害補償保険の対象となります。
一方で、業務上と認められない場合でも、健康保険を利用して治療を受けることになり、療養のために仕事を休む場合には傷病手当金が支給される可能性もあります。また、症状の程度によっては障害年金の支給対象となるケースも考えられます。会社の福利厚生が十分でないケースでも、公的な保障によってメンタルに不調をきたした社員が休職できる場合もあります。
企業のイメージが悪化する
パワハラがメディアやインターネット、SNSで取り上げられると、企業の評判やブランドイメージが悪化してしまいます。
社会的な信頼の低下は、顧客からの不買運動や取引先からの信頼喪失につながり、売上の減少を招きかねません。採用活動においても、「ハラスメントのある企業」という悪いイメージが定着すれば応募者は減少し、優秀な人材の獲得が困難になるでしょう。
法的責任を問われる
企業がパワハラを認識していながら、適切な措置を講じずに放置することには、被害者から安全配慮義務違反を理由として損害賠償を請求されるリスクがあります。
裁判に発展すれば、高額な賠償金の支払いを命じられる可能性があります。パワハラ防止法に基づく義務を怠ると、厚生労働大臣による行政指導の対象となることがあり、指導に従わない場合は企業名が公表される事態にもなりかねません。
企業が講じるべきパワーハラスメント防止策

企業が講じるべきパワーハラスメント防止策には、以下のようなものがあります。
- 方針を明確にし、社内に周知する
- 相談対応体制を整備する
- 発生時に迅速・適切に対応する
- 管理職・従業員への教育を継続的に行う
それぞれ詳しく解説します。
方針を明確にし、社内に周知する
企業には、パワハラの定義とパワハラを行ってはならないという方針を明確に定め、すべての従業員に周知・啓発することが義務付けられています。具体的には、就業規則にパワハラの定義やパワハラを行った者に対する処分方法を明記し、社内報や研修で従業員に周知します。周知をする際は、パワハラが起こる原因や背景についての理解を促すことも大切です。
相談対応体制を整備する
従業員がパワハラについて相談できる体制を整えることも、企業の義務です。相談に対応するための窓口を設置し、その窓口の担当者や利用方法を従業員に周知する必要があります。相談窓口の設置方法には、社内に担当者を配置したり、外部の専門機関に委託したりする方法があります。担当者は最低でも男女1人ずつを配置し、相談した事実が他の従業員に知られることのないよう配慮することが求められます。
相談窓口は、パワハラが発生したときだけでなく、発生する恐れがある場合や、パワハラに該当するかどうか分からない場合でも広く相談できる状態に整えることが大切です。
発生時に迅速・適切に対応する
企業には、パワハラが発生したときに迅速・適切な対応をする義務があります。相談を受けた際の事実関係は、相談者や行為者、第三者からのヒアリングを通じて行うことが大切です。
パワハラがあったと確認できた場合は、被害者への配慮したうえで適切な措置を進めることが求められます。行為者に対しては就業規則に基づき、懲戒処分といった適正な措置を講じます。再発防止に向けて、全従業員に対してパワハラ防止の研修を実施する等の措置も必要です。
管理職・従業員への教育を継続的に行う
パワハラ防止に関する教育は一度きりではなく、継続的に実施することが大切です。管理職には、指導とハラスメントの境界を理解し、部下の不安を早期に察知できるスキルが求められます。従業員には、パワハラを受けた・見聞きした場合の相談ルートを周知することで早期対応を促せます。教育のなかでは、自分が受けたハラスメントをファクトベースで記録するように伝えることが欠かせません。
管理職・従業員へのパワハラ防止の教育には、eラーニングを活用するのが効果的です。eラーニングであれば、時間や場所にとらわれず、複数部署や拠点にまたがる社員教育にも柔軟に対応できます。
まとめ
パワハラを未然に防ぎ、健全で生産性の高い職場環境を築くためには、パワハラの定義を全従業員が正しく理解し、どのような言動がパワハラに該当するのかの共通認識をもつことが大切です。
全国の拠点や多忙な社員に対し、時間や場所の制約なく統一された質の高い研修を効率的に提供するには、eラーニングの導入が効果的です。「Cloud Campusコンテンツパック100」では、パワハラの定義から防止策まで学べるコンテンツを配信しています。「ハラスメントのない職場づくり」では、すべてのビジネスパーソン必見のパワハラの定義や判断基準はもちろん、注意が必要な具体的言動やパワハラ防止に役立つ方法を解説します。従業員にパワハラの定義や注意点を効率的に周知するためにも、ぜひご活用ください。
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===監修者情報====
金子幸嗣(かねここうじ)
社会保険労務士
2006年に社会保険労務士として独立開業。
勤務先でのハラスメント問題を機に労働法を学ぶ。
その後、企業の労務管理や職場環境改善、ハラスメント防止体制の整備や社内相談対応の支援に携わる。
労働・年金分野を中心に執筆・監修を行い、複数のメディアに寄稿。
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