2025.10.27
ITスキル
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ITパスポートは、企業や組織で働くビジネスパーソンに求められるITの基礎知識を証明できる国家資格です。
デジタル技術の進化が加速する昨今、DX推進や業務効率化を実現するためには、エンジニア以外の社員にも一定のITリテラシーを身に付けてもらうことが欠かせません。企業の生産性を高めるには、社員教育や人材育成の一環としてITパスポートの取得を支援することが効果的です。
本記事では、社員がITパスポートを取得するメリットや、ITパスポートの活用事例を紹介します。自社のDX推進や社員のITスキル底上げに向けた取り組みを検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
ITパスポートとは
ITパスポート(iパス)は、ITを利活用する基礎力を身に付けたい人を対象とした国家試験です。
ITパスポートでは、ストラテジ・マネジメント・テクノロジの3分野にまたがる基礎知識を幅広く問われます。具体的には、以下のような内容が試験範囲に含まれます。
- AI・ビッグデータ・IoTの概観
- ネットワークや情報セキュリティの基礎
- プロジェクトマネジメントや法務・会計の基礎
ITパスポートは、業務でITを効果的に使うための基礎力、つまりITリテラシーがあることを証明できる資格といえます。社会人の合格率は50%前後と、難易度はそこまで高くないとされています。
ITパスポートが注目されている背景
令和6年度のITパスポート試験の応募者数は30万人を超え、試験開始以来最多を更新しました。
応募者の勤務先として「非IT系企業」の割合が多く、DX推進やAI活用によって関心が高まっていることが推察されます。
ITを活用してビジネスモデルの変革や業務効率化を実現するには、一部の専門部署だけでなく、全社員がITを使いこなすための共通の基礎知識をもつことが不可欠です。
ITパスポートでは、ITの知識にくわえて、経営戦略や法務といったIT活用が前提となる幅広い知識がバランスよく学べます。そのため、業種や職種を問わず、取得を推進している企業が多くあります。
労働人口減少による人材不足が予想される昨今では、企業としてIT技術の活用は欠かせないものとなり、その第一歩としてITパスポートの取得推進は有効な手段といえるでしょう。
参考:情報処理推進機構「令和6年度『iパス(ITパスポート試験)』の年間応募者数等について」
社員がITパスポートを取得するメリット

社員がITパスポートを取得すれば、以下のようなメリットが得られます。
- 社員のITリテラシーが向上する
- 生産性が向上する
- 企業リスクが軽減する
- 部署異動・配置転換をスムーズに進められる
それぞれ詳しく紹介します。
社員のITリテラシーが向上する
ITリテラシーとは、情報技術(IT)を正しく理解し、日常や業務で適切に活用できる力のことをいいます。具体的には、以下のようなスキルが挙げられます。
- 基本的なITスキル(パソコンの操作、メールや文書作成等)
- 情報収集・活用力
- 情報セキュリティ意識
デジタル化やDX推進が求められている昨今、ITパスポートを通して習得できるITリテラシーは、どの職種にも役立つスキルです。
AIやIoT、ビッグデータといった最新の技術動向も試験範囲に含んでいるため、社員のITへの興味が高まり、デジタル社会の変化に自発的に対応していく姿勢を養えるでしょう。
生産性が向上する
ITパスポートの取得を通して、ITを有効活用できるようになれば、生産性向上につながります。
非IT部門の社員がITパスポートを取得すると、IT部門とのコミュニケーションの円滑化が期待できます。
現場の社員にITの基礎知識があれば、手作業で実施していた業務をシステム化する際、スムーズに導入できるようになるでしょう。
効率化によって捻出できたリソースを顧客対応や企画立案といった付加価値の高いコア業務に充てられるようになることで、組織全体の生産性向上が見込めます。
企業リスクが軽減する
基礎的なITリテラシーがない状態では、顧客情報や企業秘密が漏洩してしまうリスクが高まります。
ITパスポートを通して、ウイルスや不正アクセス等のサイバー攻撃の仕組み、セキュリティ対策の重要性を正しく理解できるようになれば、情報セキュリティリスクを軽減しやすくなるでしょう。
知的財産権の侵害や企業コンプライアンス違反に関する法務的な知識も学べるため、法令遵守の意識が高まる効果も期待できます。
部署異動・配置転換をスムーズに進められる
現代のビジネス環境において、IT知識は情報システム部門だけでなく、営業や企画、事務といった幅広い職種で必要とされます。
社員が自部署の専門システムしか理解していない状況では、部署異動・配置転換時に新たな業務への適応に時間がかかり、企業全体の人材の流動性が低下してしまいます。
ITパスポートの学習により、社員がITシステムの基礎知識とビジネス全般の構造を体系的に習得できれば、部署異動時の学習コストと心理的なハードルが下がり、柔軟な人材配置がしやすくなるでしょう。
人材の流動性が高まると、社員の多様なキャリア形成を支援でき、離職率の低下や新たなスキル獲得へのモチベーション向上を生み出すことにもつながります。
ITパスポートを活かすには?企業が知っておきたいポイント

ITパスポートは幅広い概念や用語を理解するものであり、プログラミングやシステム設計、ネットワーク構築といった専門的かつ実務的なスキルの深さを測れる試験ではありません。
システム開発やネットワーク運用等、すでに専門性に特化している技術職の社員に受験させることは、スキルアップの手段としては不十分でしょう。
社員にITパスポート試験を受験させるときは、IT知識が乏しい非IT部門の社員や新入社員への取得を促すのが効果的です。
資格取得をIT活用の土台作りと位置づけることで、組織全体のデジタル対応力を底上げできます。
ITパスポートを活用している企業事例
ここでは、ITパスポートを活用している企業事例を紹介します。
自社に合った方法で有効活用するためにも、企業事例を参考にしてみましょう。
物流業界の課題解決に向けた活用:大塚倉庫株式会社
大塚倉庫株式会社は、医薬品や食品等を取り扱う物流企業です。物流業界では、複雑化する情報システムの活用や正確な在庫管理、輸送の効率化が大きな課題となっています。大塚倉庫は「会社の芯までデジタル化」をテーマに、IT技術の活用によって業務の標準化・効率化を進め、物流業界の課題解決に向けて日々取り組んでいる状況です。
IT技術を活用するためには社員一人ひとりのITリテラシー向上が必須であると考え、ITパスポート試験合格を推奨し、社内勉強会の開催やテキスト支給かつ1回分の受験料補助を行っています。
※ 情報処理推進機構「【ITパスポート試験】活用事例」を参考に一部改変
グループ総合力の強化を目的とした活用:遠州鉄道株式会社
遠州鉄道株式会社は、鉄道事業だけでなく、バス、不動産、介護、保険といった幅広い分野を展開する企業です。グループ総合力を強化するには、グループ横断的なITを活用した営業力強化(IT利活用スキル)と、顧客情報の適切かつ安全な利活用(情報セキュリティスキル)が求められるとし、すべての事業部とグループ各社にこれらのスキルを兼ね備えた現場のIT管理者となる「ITリーダー」を配置しています。「ITリーダー」になるには、ITパスポート試験合格を要件としており、ITパスポート合格者に対して学習教材や受験料を負担しています。
※情報処理推進機構「【ITパスポート試験】活用事例」を参考に一部改変
病院運営における医療情報部門での活用:社会医療法人愛仁会
社会医療法人愛仁会では、1970年代から医事会計システムやオーダリングシステムといったITを活用した病院運営を行ってきました。2000年代に入ってからは電子カルテの導入によってほぼすべての職員がITを活用して業務を行っており、医療情報部門の重要性が高まっている状況です。
医療情報にかかわるスタッフには、医療や医事の知識だけでなく、情報処理全般に関する高度な知識や利活用力といった高い専門性と情報倫理が必要であるとしています。そのため、スタッフの人材教育の一環として、情報産業界から高く評価されている情報系国家試験の「情報処理技術者試験」の取得を強く奨励することとなりました。スタッフは、集合研修やeラーニングによる学習支援と受験費用支援を利用して、ITパスポート試験・基本情報技術者試験の取得をめざしています。
※情報処理推進機構「【ITパスポート試験】活用事例」を参考に一部改変
ITパスポートの企業研修にはeラーニングがお勧め

社員にITパスポートの取得を促す際は、研修の実施方法を工夫することが大切です。
集合研修やオンライン研修も有効な手段ですが、資格取得を目的とする場合は、反復学習に適したeラーニングが最も効果的です。
eラーニングであれば、社員が自分のペースで繰り返し学習でき、業務と両立しながら理解を深められます。
加えて、時間や場所の制約がなく、複数部署や拠点にまたがる社員教育にも柔軟に対応できます。
一方で、自主学習型であることからモチベーションの維持や理解度の把握が難しい点には注意が必要です。受講期間をあらかじめ設定したり、アンケートや小テストによるフォローアップを行ったりすることで、学習効果を高められます。
まとめ
ITパスポートは、全社員のITリテラシーを底上げし、DX推進の土台を築くうえで有効な資格です。ITパスポート取得を通して得られるITリテラシーは、業務効率化や企業リスクの軽減につながります。
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