2025.06.12
人事制度・組織づくり
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OKR(Objectives and Key Results)は、変化の激しいビジネス環境において、組織や個人の成長を促す目標管理手法として注目されています。
OKRを適切に導入できれば、チームの連携が強化されたり、従業員のモチベーションが上がったりできる可能性が高まります。OKRの効果を得るためには、自社に合った方法で導入することが大切です。
本記事では、OKRの意味や導入するメリットを紹介します。OKRを導入する流れや職種別の具体例も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
OKRとは
OKRとは「目標と成果指標」を意味するマネジメント手法で「Objectives and Key Results」の略称です。
OKRでは、最初に達成すべき「目標(Objective)」を明確にし、その目標に対して達成状況を測る「成果指標(Key Results)」を複数設定するのが基本です。目標では定性的(数値化できない要素)で方向性を明確にする内容を設定するのに対し、成果指標は定量的かつ測定可能であることが求められます。
企業や個人の目標を明確にし、目標に対する具体的な成果指標を設定できれば、組織全体の方向性を統一できるだけでなく、生産性を向上させる効果も見込めます。
OKRと他の目標管理手法との違い
OKR以外の目標管理手法には、以下のKPIやMBOがあります。
目標管理手法 | 内容 | 理想の達成率 |
OKR | 目標と成果指標を設定することで、組織全体の方向性を統一し、生産性向上をめざす | 60~70% |
KPI | 業績や成果を測定するための定量的な指標を設定し、日々の業務改善をめざす | 100% |
MBO | 上司と部下で目標を設定・共有し、達成度を人事評価に役立てる | 100% |
OKRとの違いを詳しく見ていきましょう。
KPIとの違い
KPI(Key Performance Indicator)は、業績や成果を測定するための定量的な指標のことです。例えば「月間の売上件数」や「顧客満足度スコア」等がKPIにあたります。
OKRにおける「Key Results」とKPIは似ていますが、KPIが実現可能な目標設定(KGI)を達成するための過程を測定する指標として使われるのに対し、OKRは目標と成果指標が一体となったフレームワークです。
くわえて、KPIは日々の業務改善に焦点を当てますが、OKRはより大きなビジョンや成果を達成するための指針として活用されるのが一般的です。
OKRでは60~70%の達成率にする一方で、100%の達成率をめざすのもKPIとの相違点といえるでしょう。
MBOとの違い
MBO(Management by Objectives)は、1950年代にピーター・ドラッカーが提唱したマネジメント手法です。
MBOでは、上司と部下があらかじめ設定した目標に向けて行動し、達成度によって評価が決まります。達成率が100%になることを理想とされており、評価制度と強く結びついているのが特徴です。
一方、OKRは評価より成長と方向性を共有することに重きを置いています。達成率が100%でなくとも、チャレンジ性のある成果指標を設定することが成長につながれば、OKRの目的は達成されます。
このようにMBOは「評価のための目標管理」、OKRは「成長と成果の最大化を目的とした目標管理」と位置づけることができるでしょう。
OKRを導入する4つのメリット
OKRを導入するメリットには、以下のようなものがあります。
- 組織全体と個人の目標の方向性が統一される
- チームの連携が強化される
- 個人目標や仕事の優先順位が明確になる
- 従業員のモチベーションが向上する
一つずつ詳しく紹介します。
1. 組織全体と個人の目標の方向性が統一される
OKRを導入すると、明確にした組織のビジョンや戦略から個人目標を設定することになります。組織と個人の目標の方向性が統一されれば、組織全体の成果が上がりやすくなります。その結果、企業の成長スピードを加速させることにつながるでしょう。
2. チームの連携が強化される
OKRは、目標と成果をチーム全体で共有することを前提としています。目標と成果を共有することには、お互いの役割が可視化する効果があるので、協力体制が生まれやすくなります。そのような環境をつくることができれば、チームの連携をより強化することができるでしょう。
3. 個人目標や仕事の優先順位が明確になる
OKRを活用すれば、個人の役割や達成すべき目標を具体的に把握できるようになります。「今、何を優先すべきか」「どの業務が最も成果につながるか」といった判断ができるようになると、業務を効率的に進めやすくなります。社員それぞれが目標に適した優先順位で仕事を進められれば、より生産性を高められるでしょう。
4. 従業員のモチベーションが向上する
OKRを導入すると、高い目標・評価指標を設定したうえで、組織内に共有することになります。達成が難しい目標に向けて努力するプロセスは、従業員の成長意欲や達成感につながります。
組織内で定期的に進捗を確認し、成果を実感できれば、仕事へのモチベーションが自然と高まりやすくなるでしょう。
OKRを導入する手順
OKRを導入する基本的な手順は、以下の通りです。
- 会社のOKRを設定する
- 組織のOKRを設定する
- 個人のOKRを設定する
- 定期的な進捗確認をする
- 成果を測定して振り返る
順番に詳しく解説します。
1. 会社のOKRを設定する
まずは会社のOKRを明確に設定します。会社のミッションやビジョンに基づいて「今後数か月〜1年で何を達成したいか」を言語化しましょう。
具体的には「顧客体験を業界トップレベルに向上させる」といった定性的な目標に対して新規顧客数を月500件に増やす」「顧客満足度スコアを85点以上にする」といった定量的な成果指標を設定するのがお勧めです。従業員が目標を定めやすくするためにも、達成度合いを定量的に判断できる目標を設定するようにしましょう。
2. 組織のOKRを設定する
組織のOKRを設定するときは、会社のOKRにどのように貢献できるのかを考えるのがポイントです。
例えば「売上を前年比130%にする」といった会社の成果指標を基に「営業分野で会社の利益アップに貢献する」といった目標を立てた場合は「リード獲得数を30%増やす」「顧客満足度スコアを85点以上にする」等が成果指標になります。
会社の目標と組織の目標がずれると、会社全体の成果に結びつきにくくなるので注意が必要です。そのような状況にならないためにも、それぞれの目標と成果指標に整合性が取れているかを確認するようにしましょう。
3. 個人のOKRを設定する
組織の目標・成果指標を定めたら、個人がどのように貢献できるかを考え、OKRを設定していきます。
「リード獲得数を30%増やす」といった組織の成果指標に対して、個人目標を「組織のリード獲得数のアップに貢献する」と設定したときは「アポイント取得率を5%アップする」「SNS広告のクリック率を0.5%引き上げる」といった成果指標を設定します。
個人のOKRを設定する際は、経営陣や管理職が一方的に目標と成果指標を決めるのは避けましょう。トップダウンで決められたOKRは、個人が「どのようなスキルを伸ばしたいか」「どのようなキャリアを描きたいか」といった観点が抜けてしまう可能性が高まります。OKRの効果を高めるためにも、個々人に合わせた目標と成果指標を定めるようにしましょう。
4. 定期的な進捗確認をする
OKRは設定して終わりではなく、定期的な面談をして、進捗状況を把握することが大切です。目標に対する達成度や課題を話し合い、必要に応じてOKRを修正することも視野に入れましょう。
目標に対する進捗度を確認すれば、次回の目標を設定するときの一つの指標になります。
5. 成果を測定して振り返る
あらかじめ決めた期日を迎えたら、成果指標を集計して目標の達成度を測ります。
OKRでは、60~70%の達成率であれば、適切な難易度の目標設定ができていたと判断します。達成率が100%に近い場合、もっと野心的な目標設定を行いましょう。
定量的な成果だけでなく、チームのエンゲージメント向上や業務効率化等、定性的な効果も振り返ることが重要です。
次回以降のOKRにつなげるためにも、どのように進めれば効果が高まるのかも話し合いましょう。
OKRを導入するときのポイント
OKRを導入するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- OKRを導入する目的を共有する
- 目標と成果指標の整合性を保つ
- 昇格・昇進に連動させるのは避ける
それぞれ詳しく紹介します。
OKRを導入する目的を共有する
OKRを導入する際は、なぜ取り入れるのかを組織全体に共有するようにしましょう。OKRを導入する目的が不明確なままでは、新たにノルマが増えたと誤解され、反発やモチベーション低下を招く恐れがあります。
「組織の方向性を統一したい」「挑戦的な目標に取り組む文化をつくりたい」といった目的を明示すれば、従業員の納得感が高まり、自発的な取り組みが促されるでしょう。
目標と成果指標の整合性を保つ
OKR運用では、目標と成果指標に明確な関係性をもたせることが大切です。目標と関係の薄い数値を成果指標に設定すると、目標がどれほど達成されたのかを適切に判断しにくくなります。例えば「顧客満足度を高める」という目標に対して「新規顧客数の増加」を成果指標にすると、顧客満足度が高まったことを客観的に判断することができません。
そのような状況にならないためには、目標の達成度を正確に測れる成果指標を設定することが大切です。成果指標を定められない従業員がいるときは、管理職や教育担当者にフォローするように促しましょう。
昇格・昇進に連動させるのは避ける
OKRは、評価制度と切り離して運用するのが基本です。
OKRの達成率に応じて昇格や昇進を決めると、従業員が確実に達成できる目標ばかりを設定してしまう可能性があります。
OKRの目的は、少し難しい目標「ストレッチ目標」に挑戦して、成長を促すことです。従業員がチャレンジしやすい環境を整えるためにも、OKRと評価制度は連動させないようにしましょう。
【職種別】OKRの具体例
OKRの成果を高めるには、職種に合った適切な目標・成果指標を決めることが大切です。
ここでは、職種別のOKRの具体例を紹介します。
営業
営業部門では、売上や新規顧客数等の成果が明確なため、OKRを導入しやすい傾向があります。
OKRを導入するときは結果だけでなく、その過程も目標管理に含めることで、営業活動の質を高められます。営業職における具体的なOKRは、以下の通りです。
目標 | 新規顧客との商談機会を増やし、売上拡大につなげる |
成果指標 | ・月間アポイント件数を30件に増やす
・新規商談の成約率を20%以上にする ・提案資料の作成工数を20%削減する |
人事・採用
人事・採用部門では、採用数や定着率、育成施策の成果をOKRに設定することで、組織全体のパフォーマンス向上につなげられます。人事・採用部門でOKRを導入するときは、以下のような目標と成果指標を設定するのが効果的です。
目標 | 優秀な人材を安定的に確保し、定着を促進する |
成果指標 | ・月50件の応募を集める
・内定から入社までの辞退率を10%以下に抑える ・入社後3か月以内の離職率を5%未満にする |
製造
製造職は、現場の生産効率や品質管理、安全対策といった日々の業務が数値で可視化されやすいため、OKRとの親和性が高い職種といえます。特に、組織全体の改善活動や作業標準化の取り組みは、OKRを取り入れることでスピードが上がりやすくなります。
製造部門のOKRの具体例は、以下の通りです。
目標 | 生産効率と品質を両立し、現場力を高める |
成果指標 | ・ラインあたりの生産数を月10%増加させる
・製造不良率を3%未満に抑える ・作業標準書の遵守率を95%以上にする |
マーケティング
マーケティング職にはトラフィック、コンバージョン率、リード獲得数といった明確な数値があるため、OKRを活用しやすい職種とされています。OKRを導入すると、短期的な施策と中長期の戦略を結びつけながら、効果的な集客活動が実現しやすくなるでしょう。
マーケティング職にOKRを活用する例には、以下のようなケースが挙げられます。
目標 | 見込み顧客の獲得数を最大化し、商談数の増加に貢献する |
成果指標 | ・月間のLP訪問者数を10,000人に増やす
・ホワイトペーパーのDL数を月500件にする ・SEO経由の問い合わせ件数を30%向上させる |
カスタマーサクセス
カスタマーサクセス職は、OKRの導入により業務の優先度と成果を明確にできます。定量的な指標を設けることには、顧客対応の質や顧客満足度を向上させる効果が期待できます。
具体的には、以下のようなOKRを設定するのが効果的です。
目標 | 顧客の成功体験を支援し、解約率を下げる |
成果指標 | ・NPSスコアを40以上に引き上げる
・チャーンレート(解約率)を前期比10%削減する ・月1回の導入活用セミナーを開催し、出席率70%を維持する |
まとめ
OKRは、目標を明確に示しながら、具体的な成果指標で進捗を可視化できる目標管理手法です。マーケティングやカスタマーサクセス等、あらゆる職種に応用でき、組織の一体感と生産性の向上が期待できます。OKRの効果を高めるためにも、OKRの正しい意味や導入手順を知っておきましょう。
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