2025.02.13
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従業員の多くが無意識の思い込みや偏見をもっていると、気付かぬうちに企業の成長を止めてしまっている可能性があります。この思い込みや偏見のことをアンコンシャスバイアスといい、社内の人間関係を悪化させるだけでなく、業績に悪影響を与えることも考えられます。
そこで今回は、アンコンシャスバイアスの具体例や企業にもたらす影響を紹介します。企業側ができる対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
アンコンシャスバイアスとは
アンコンシャスバイアスとは、無意識の思い込みを指す言葉です。
誰しもこれまでの経験や知識から無意識に「この人は〇〇だからこう思うだろう」「基本的に△△すべきだ」と決めつけてしまうことがあり、このような思い込みを完全に払拭するのは難しいといわれています。
全ての思い込みが悪いわけではありませんが、職場や人間関係において悪影響が出てしまうことがあります。
アンコンシャスバイアスが生じる理由
アンコンシャスバイアスは、自己防衛心や常識・習慣にとらわれていることによって生じるといわれています。
ここでは、アンコンシャスバイアスが生じる理由を紹介します。
自分を守るため
アンコンシャスバイアスは、自分を否定するような意見を受けたときに自己防衛をするために生じるといわれています。
「自分は間違っていない」「自分にとってストレスなく過ごせる状態にしたい」という気持ちから、無意識のうちに思い込みをしている可能性があります。
つまり、自分の都合のいいように物事を判断したり、自分の責任を回避したりすることでストレスを軽減しようとしているのです。
常識や習慣にとらわれているため
アンコンシャスバイアスは、自分のなかの常識や習慣にとらわれて生じているケースがあります。
具体的には「今までもこの方法で成功しているから今後もそうすべきだ」「常識を考えると〇〇すべきだ」といった思い込みが挙げられるでしょう。
時代が変化しているにもかかわらず、常識・習慣に固着していると周囲から違和感を抱かれ、仕事や人間関係に影響が出てしまう可能性があります。
アンコンシャスバイアスが企業にもたらす悪影響
いきすぎたアンコンシャスバイアスは、社員のモチベーション低下やハラスメント増加につながります。
例えば、管理職や上司がアンコンシャスバイアスにとらわれると、公正な人事評価ができなくなります。
その結果、社員の不満が溜まり、モチベーション低下の原因になってしまうのです。
また、年齢や性別、見た目についての偏見が言動に表れて、ハラスメントとして認識されることもあります。
アンコンシャスバイアスは、企業としての信用を失ったりパフォーマンスが低下したりする原因になってしまうのです。
代表的なアンコンシャスバイアス9種類と具体例
ここでは、アンコンシャスバイアスの代表的な9種類の具体例を紹介します。
ステレオタイプバイアス
ステレオタイプバイアスとは、他者を性別や出身国、職業等の固定観念やイメージで判断することです。
どのようなイメージをするのかは、その人の過去の経験や知識によって異なります。
特に性別に対するステレオタイプは、ジェンダーバイアスと呼ばれ、以下のような思い込みが該当します。
- 男性は外で働き、女性は家庭を守るもの
- A型は几帳面
- 日本人はまじめ
このような思い込みが採用活動や人事評価に影響することもあります。
正常性バイアス
正常性バイアスとは、予期せぬ状況が起こっても「日常のこと」として処理をしてしまうことです。
「そんなことが起こるはずがない」といった先入観から生じるといわれています。
例えば、以下のような思い込みが挙げられます。
- 自分の会社は大丈夫
- あの取引先の経営はずっと順調なので心配はない
- このくらいの残業なら大したことはない
本来であれば、冷静に考えなければならない状況にもかかわらず、正常性バイアスによって誤った判断をしてしまうことがあります。
確証バイアス
自分の思い込みや先入観を正当化するために、都合のよい情報のみを集めてしまうことを確証バイアスといいます。
具体的には、以下のような事例が該当します。
- 面接の第一印象がよかったために、履歴書に記載されているよい情報しか把握していない
- 営業成績がよい社員なので、勤務態度のよい部分だけで評価する
- とあるサービスや商品に対してよいと感じると、ネガティブな情報に目がいかなくなる
このように確証バイアスがかかると、物事や人に対して客観的な評価ができなくなってしまいます。
同調バイアス
同調バイアスとは、他者の意見や行動に流されて、自分の言動を決定する以下のような状態をいいます。
- 多数決のときにみんなが手を挙げるので自分も手を挙げる
- 意思決定の際にチームの和を重視するあまり他者と異なった意見を言い出せない
- 何かをするときに、周囲の人がどう思うかを確認してから行動する
同調バイアスは、同調圧力の強い会社で起こりやすい事象です。
権威バイアス
地位や肩書、権威性のある人の言動は正しいと思い込むことを権威バイアスといいます。
例えば、以下のような思い込みが挙げられます。
- 上司が指示するのだから間違いない
- 社長が求めていることだから従うべきだ
- 専門家が発信している内容だから疑いようがない
自分より経験のある上司や知識のある専門家でも、間違った判断をすることはあります。
自分で調べたり考えたりせず、上司や専門家の意見を鵜呑みにすると、損失につながる可能性も考えられます。
ハロー効果
ハロー効果とは、対象者や対象物の評価のなかで目立つ特徴によって評価することをいいます。
ハロー効果の具体例は、以下の通りです。
- 別部署でトップクラスの成績を出していた人の人事評価を高くする
- 有名大学を卒業しているので優秀だと決めつける
- 有名企業との取引経験があることで信用できる会社と判断する
一方で、マーケティングにおいてはハロー効果を使って会社や商品、サービスのイメージをよくする手法が使われています。
例えば、企業や商品のイメージアップのために、好感度の高い有名人をCMに起用する手法が挙げられます。
サンクコスト効果
サンクコスト効果とは、すでに費やしたお金や労力に固着して、今後のメリットがコストを下回ると予測できても継続してしまうことを言います。
例として以下のような状況をいいます。
- 赤字になることがわかっているプロジェクトを、開発費用をかけたことを理由に継続する
- 自社商品の売れ行きが悪いにもかかわらず、設備投資をしたので生産を続ける
- 期待していた効果が得られなかった新商品のPR企画を、これまでのコストを回収するために続ける
本来であればプロジェクトの停止を冷静に検討すべき状況にもかかわらず、これまでのコストに固着して継続すれば、大きな赤字を抱えることになりかねません。
現状維持バイアス
変化や未知のものを受け入れられず、今の状態を維持したいと望む状態を現状維持バイアスといいます。
ビジネスシーンでは、以下のような言動につながります。
- 新しい商品やサービスの導入になかなか踏み出せない
- 組織改革や業務改善に反対する
- ステップアップを望んでいても転職等の具体的な行動に移せない
現状維持に固着すると、他社との競争に負けたり、働きやすさが低下したりする恐れがあります。
インポスター症候群
インポスター症候群とは、自力で何かを達成し、周囲から高い評価を得ても、自分のことを過小評価してしまうことです。
たとえ直接褒められたとしても「評価されるほどの能力はない」「運がよかっただけ」のように否定的にとらえてしまいます。
その結果、以下のようなことに陥りやすい傾向があります。
- 自己評価が極端に低くなってしまう
- 失敗を恐れて、新しいチャレンジに積極的になれない
- 昇格や昇進の打診を受けたのだが、見送ってしまう
インポスター症候群は、従業員のパフォーマンスの低下だけでなく、精神的なストレスにつながる恐れがあります。
職場におけるアンコンシャスバイアスの具体例
アンコンシャスバイアスは、さまざまなビジネスシーンで見られます。
ここでは、シーン別に具体例を紹介します。
業務中
業務中に起こりやすいアンコンシャスバイアスには、以下のようなものがあります。
- 定時に帰る社員はやる気がない
- 電話対応やお茶出しは女性の仕事だ
- 共働きで子どもが病気になったときに看病するのは女性だ
言葉に出していなくとも、行動から偏見が垣間見えることがあります。
そのような状況が続くと、従業員の不満につながってしまう恐れがあります。
人事評価
アンコンシャスバイアスによって不当な人材評価がなされると、社員のモチベーションが低下してしまいます。
人事評価にアンコンシャスバイアスが影響している例は、以下の通りです。
- 普段から親しい部下の評価を高くする
- 直近でわかりやすい成果をあげた人を高く評価する
- 評価の低い部下の悪い部分ばかりに着目して評価する
- 仕事ぶりだけでなく、人柄や自分との関係性を重視する
仮に高く評価されている従業員であっても、周囲から「過大評価では」との疑いの目を向けられてしまい、ストレスを感じる可能性があります。
アンコンシャスバイアスに対する意識改革だけでなく、偏見や思い込みが反映されにくい評価方法を取り入れることが大切です。
人材育成
人材育成で見られるアンコンシャスバイアスには、以下のようなものがあります。
- 結婚や妊娠で退職する女性には責任のある仕事を任せない
- 自分と同じ大学や出身地の部下ばかり成長の機会を与える
- 介護や育児で忙しいと決めつけて、研修の案内をしない
よかれと思って行動していることでも、成長の場を奪っている可能性があります。
採用活動
アンコンシャスバイアスによって、採用活動が片寄った結果になってしまうことがあります。
以下のような思い込みや偏見による採用活動を続ければ、自社にマッチした人材を逃す可能性があります。
- 自分と似た境遇の人を好んで選ぶ
- 規模の小さい会社に勤めていたため、活躍が期待できないと思っている
- 女性は総合職より一般職に向いていると思い込んで採用しない
- 面接の第一印象があまりよくなかったため、悪い情報ばかりに目を向ける
履歴書や見た目、第一印象で「この人は〇〇な人だろう」と判断すると、面接においてその仮説を証明するための質問ばかりしてしまうこともあります。
昇進・人事異動
昇進・人事異動で見られるアンコンシャスバイアスには、以下のようなものがあります。
- 若手だからこのポジションを任せるのは難しい
- 子育て中の女性には出張や転勤は無理だろう
- 子どものいる社員には責任のあるポジションを任せられない
このような場合、本人の意思や能力を無視して昇進・人事異動を決めているといえます。
加えて、社員自身が「私は〇〇だから」と自身の属性を気にして昇進や人事異動を断ることもアンコンシャスバイアスの一種です。
アンコンシャスバイアスの対策方法
企業側ができるアンコンシャスバイアスの対策方法には、以下のようなものがあります。
- 研修を実施する
- 実態調査をする
- 改善方法を周知する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
研修を実施する
企業はアンコンシャスバイアスに関する研修を実施し、従業員自身がもっている無意識の偏見や思い込みに気付く機会を提供することが大切です。
アンコンシャスバイアスの存在や組織に与える影響を知らない人は多いでしょう。
研修を通して、自身のバイアスに気付くことができれば、行動が少しずつ変わっていくはずです。
また、アンコンシャスバイアスへの対策は、ダイバーシティ推進やハラスメント防止にも効果的です。
社内研修に充てるリソースがない場合は、eラーニングを利用してみましょう。
サイバー大学の「Cloud Campusコンテンツパック100」では、職場のハラスメント防止セミナーの一環として、アンコンシャスバイアスについて学べる研修を提供しています。
従業員に高品質な教育を提供するためにも、コンテンツパック100の導入を検討してみましょう。
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実態調査をする
職場で「どのようなアンコンシャスバイアスが起こっているのか」「どんな影響・問題が生じているのか」といったアンケートを実施してみましょう。
より意欲的に取り組んでもらうためにも、職場で実際に起こっている事例を周知し、身近に感じてもらうことが大切です。
改善方法を周知する
アンコンシャスバイアスによる問題を解消するには、社員一人ひとりがもつバイアスに気付く必要があります。
そのためには、バイアスに気付くための方法を周知することが大切です。
バイアスに気付く方法として、自身の言動に相手がどのような反応をしているのか見るように意識付ける方法があります。
部下に指示をしているときに、相手の表情が曇ったことに気付ければ、自身のどのような言動が不快に思ったのかを振り返ることができます。
加えて、決めつけ・押しつけと思われる発言をしていないかも自己チェックしてもらうとよいでしょう。
まとめ
アンコンシャスバイアスは、人事評価や人材育成、採用活動等のあらゆるビジネスシーンで見られます。
いきすぎたバイアスは、従業員のモチベーション低下やハラスメント増加につながってしまいます。
しかし、偏見や思い込みをなくしたいと思っていても、自分自身で気付くのは簡単ではありません。
企業側は、従業員がバイアスに気付けるようにサポートしていくことが求められます。
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