男性の育休における現実|賛成90%で取得率2%

2023.07.01

人事制度・組織づくり

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男性の育休における現実|賛成90%で取得率2%

皆さんの会社では、育児休業(以下、育休)を取得している男性はいますか?

日本では、男性の育休取得がなかなか浸透せず、国の課題にもなっています。男性の育休取得について、現実と理想を見てみましょう。

育休について

育児休業(育休)とは、1991年に制定された育児介護休業法に基づいて、子供を養育する労働者が取得できる休業のことです。育休は、基本的に子供が1歳になる前日まで取得できます。女性の場合は、産後休業(出産日の翌日から8週間)終了日の翌日から育休取得が可能です。男性の場合は、子供が誕生した日から取得可能です。配偶者と交替で取得することもでき、保育所への入所時期などの事情などの事情により、育休期間を延長できる場合があります。

男性が育児休暇を取得するメリット

まず、なぜ男性の育休取得率を高めるべきなのか考えてみましょう。それは、男性の育休取得は、他の社会問題ともつながりがあるからです。男性が育休を取得することで、以下のようなメリットがあります。

・子育てに積極的に関わることができる

・家族との時間が多く取れる

・時間の効率的な使い方について意識するようになる

・女性の活躍の場が増え企業が活性化する

・仕事の効率化がすすみ、生産性がUPする

・企業イメージが向上する

広い目線で考えると、男性の育児参加を促進することで、女性の社会進出などにも間接的に作用するのです。

男性の育休取得の現実

このように多くのメリットがある男性の育休取得について、実に92%が賛成と答えており、世論は歓迎していることが分かります。(一般財団法人 経済広報センター「女性の活躍推進に関する意識調査」より)しかし、実際に男性が取得したかどうか状況をみてみると、2012年からの5年間で平均約2%とまだまだ低い割合となっているのが現実です。

男性が育休を取得したいのにできない理由

なぜ育休取得には賛成なのに、実際の取得率は低くなっているのでしょうか。その背景には、仕事を離れることへの不安や、職場における理解の低さ、会社によっては育休中無給である、などといった問題が根強くあるといわれています。

家計の中心となることが多い男性にとって、会社での立場や育休中の賃金は大きな障害となります。そのため、制度はあっても取得に踏み切れない男性が多いようです。

海外ではどうだろう?男性の育休事情

では、海外では男性の育休取得にどのように取り組んでいるのでしょうか。ノルウェーやスウェーデンでは、男性の育児への積極的参加を応援すべく「パパクオータ制度」という制度があります。父親が育休を取得しない場合、母親の育休権利が消滅してしまいます。夫婦で育児をしない家庭は、国からペナルティを与えられてしまうのです。また、育休中の賃金はほとんどが保障されます。このように、パパクオータ制度は男性の育休を国として積極的に後押しする制度です。その結果、ノルウェーでは導入前に5%程度だった男性の育休取得率が、現在では80%以上にまで向上しているそうです。

最近、日本の会社でも、男性が育休を取得しやすい風土や制度が見直されつつあります。筆者の知り合いにも育児休業を取得し「子供との時間を充実させた。」「育休を取得してよかった。」「復帰後、仕事に対する時間の使い方を工夫して働くよう意識するようになった。」などという声を聞きます。

男性だって育児休業を取得したい

男性が育休を取得しやすい風土づくりには、もちろん国や企業の制度づくりが重要です。しかしそれだけでは不十分で、社員一人ひとりの理解と意識によりようやく制度が有効に活用されるようになります。男性の育休に積極的な会社は、社員がいきいきと働き、限られた時間で結果を出すことができる会社へと成長します。まずあなたに出来ること、それは一緒に働く育休取得候補者への“理解と意識”です。そして、男性が育休を積極的に取得し、より働きやすい会社づくりに取り組んでいきましょう。

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「従業員がもっとも働きやすい会社」(Glassdoor 2015年度 米国調査)、「憧れの就職先No.1」(universum 2015年度 世界12カ国調査)にも選ばれるという愛されぶりで、他を寄せつけない企業力を発揮しているGoogle(グーグル)。 その強さを探ってみると、会社と社員の「良い関係」、つまり「エンゲージメント」に行き着きます。今回は、なぜエンゲージメントが企業に強さをもたらすのか、Googleの福利厚生を例に、人事の視点からその理由に迫ってみましょう。 人事用語としての「エンゲージメント」とは? 「エンゲージメント」とは、エンプロイー・エンゲージメント(Employee Engagement)ともいわれる人事用語です。日本ではまだ耳慣れないかもしれませんが、米国ではここ10年来、「従業員満足度」に代わる優れた職場の指標として注目されています。 この分野の第一人者であり、『Louder Than Words』の著者であるボブ・ケラー氏は、「エンゲージメント」を“企業と従業員による相互のコミットメント”と表現しています。従業員満足度が高いことで有名だったコダックやGMが経営破たんに陥ったり、破産したりした例を挙げ、「エンゲージメント」を組織風土として培うことが、健全な企業発展を継続するには不可欠だと唱えています。 社員の幸せをとことん追求するGoogle Googleの斬新なオフィスデザインや、ほかに類をみない福利厚生制度については、世界的に有名です。家でくつろいでいるかのような空間やテーマパークのようなつくりは、今までの機能性を重視したオフィスの常識をはるかに超えるため、一見、富にものをいわせてぜいたくなオフィスづくりをしているように思うかもしれません。 しかし、人事管理担当上級副社長のラースロー・ボック氏が述べているように、すべては「エンジニアが商品開発をするときと同じように、私たち(人事部)もデータを使用し、分析し、科学した」結果です。人事チームも、社内人事経験者だけでなく、コンサルタントおよびアナリスト経験者がほぼ同じ割合で構成されています。 社員のために“科学”されたオフィス環境と福利厚生 “科学”されたオフィスや福利厚生の例には、次のようなものがあります。スキーゴンドラや滑り台、ジムやボーリング場のあるオフィス、パブ風のミーティングルーム、敷地内やオフィス内でも自転車が乗れるというルールなど。 また、社員の心身の健康も気遣い、社員用キッチンや社員が世話する野菜庭園、飲食無料のカフェテリア、お昼寝スペース、ルームランナーで歩きながら仕事ができるデスクなども用意されています。 最近では、在勤中の社員が死亡した場合、年間給与の半額を10年間、遺族に毎年支払う「遺族年金」で話題となりました。さらに、洗車とオイル交換、ドライクリーニング、産地直送の食材販売、移動美容室など、生活をサポートするサービスを外部業者に委託する形で提供しています。Googleのカリフォルニアオフィスの様子は、CBS Newsの動画で視聴できます。 社員にとって最適なオフィス環境は、モチベーションと仕事効率を高めます。そして、充実したワークライフは、豊かな人生にもつながります。社員が幸せであれば、それは企業にとってプラスに働くという好循環ができあがるのです。さらに、ボック氏は、人事施策のゴールを「平均勤続年数30年」にすることだとも語っています。 企業の発展に貢献する「エンゲージメント」の成功例 Googleは、「社員がさらに充実した長い人生を健康的に送れるようにするための職場環境を作り出している」と自社サイトでも述べています。そこには、企業と社員の主従関係はなく、両者がともに支え合うパートナー関係を確立して企業の発展につなげている、まさに「エンゲージメント」の成功例といえるでしょう。 今回は、福利厚生にスポットを当てましたが、Googleの採用、評価、報酬制度や風通しのよい組織づくりといった面でも、この「エンゲージメント」の精神は貫かれています。 失敗から学び、進化し続けよう Googleも最初から「最強企業」であったわけではありません。ボック氏も著書『Work Rules!(ワーク・ルールズ!)』で述べているとおり、失敗と試行錯誤を重ねた結果、今のGoogleがあります。そのことは、会社が社員の幸せを追求する組織づくりを続けるかぎり、会社も社員も進化し続けることを教えてくれます。 参考サイト: 「”Inside Google workplaces, from perks to nap pods”」 CBS News 「うらやましい!Googleの人事評価と福利厚生」 東洋経済オンライン 「企業と従業員の新しい関係「エンゲージメント」について、『Louder Than Words』の著者ボブ・ケラー氏に聞く」 HRpro 低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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「世界で市場を拡大中!企業向けeラーニング」でもお伝えしたように、eラーニングを採用する企業が年々増加しています。近年では、このeラーニングと集合研修を組み合わせた新しい学習法である「ブレンディッド・ラーニング」が米国の教育現場を中心に急速に普及し、その学習効果の高さからビジネスでも注目されています。 今回はブレンディッドラーニングの概要、導入する際に注意すべき7つのポイントを解説します。 「ブレンディッドラーニング」とは? 「ブレンディッドラーニング」とは、対面型の「集合研修」とオンライン型の「eラーニング」を組み合わせ、それぞれの特長を活かした研修や学習方法を指します。 集合研修では、一つの場所に受講生を集合させることにより強制力を持たせ、実践スキルの習得や学習の動機付けを行います。eラーニングでは、時間や場所を選ばずに、自分のペースで繰り返し学習することで知識を習得できるという特長があります。 これらをブレンド、つまり組み合わせた学習方法が「ブレンディッドラーニング」です。 「集合研修」と「eラーニング」のメリット・デメリット 集合研修とeラーニングのメリット・デメリットを表にまとめてご紹介します。 メリット デメリット 集合研修 ・非日常と臨場感を味わえる ・学習できる情報量が多い ・その場でのフィードバックをもらえる ・強制力がある ・一定のカリキュラムの確実な学習 ・その場で学習者の反応を確認しながら進められる ・一体感や帰属意識の醸成 ・グループダイナミクス(※1)を活かした相互啓発 ・理解度にばらつきが出る ・コストが高い ・時間がかかる eラーニング ・端末があれば、いつでもどこでも受講が可能 ・移動の手間が省ける ・繰り返し学習が可能 ・自分のペースで学習できる ・会場の広さや受講人数の制限なく提供できる ・必要な情報をスピーディーに対象者に提供できる ・多様なコンテンツを提供できる ・知識学習に向く ・学習の進捗や履歴管理をリアルタイムに把握できる ・最新の教材を一律に提供でき発送の手間がかからない ・導入以降のコストを削減できる ・臨場感が無い ・通信環境の整備状況に左右される ※1: グループのメンバー間に生じる「集団力の動き」 参考サイト:「よくわかる「eラーニング」講座 3.eラーニングと集合研修の特徴」日本の人事部 こちらの表からも分かるように、集合研修とeラーニングにはそれぞれメリット・デメリットがあります。そこで双方のメリットを活かし、デメリットが補完できるのが「ブレンディッドラーニング」です。 パソコンやスマートフォンによるすきま時間を使ったeラーニング学習で、知識の部分を習得し、集合研修で実践的なスキル向上や気づきを補うことで、デメリットである「研修時間や経費の削減」「理解度の均一化」「臨場感を味わえる学習」が可能になります。 ブレンディッドラーニングのメリットは? 1. 研修の成果が高まる パーソル総合研究所の「コロナ禍における研修のオンライン化に関する調査」によれば、eラーニングのようなデジタルコンテンツと集合研修を組み合わせた「ブレンディッドラーニング」の成果は通常の約1.7倍ほどになっています。 特にオンラインでの集合研修後のフォローにeラーニング等を活用する企業が多く、成果を高めるための研修手法として注目されています。 2. 研修を効率化できる 例えば、集合研修前にeラーニングで予習をしてもらっておけば、集合研修ではディスカッションや発表のような実践のみに集中できます。 事前に社員の知識を一定レベルに引き上げておくことで、より効率的に集合研修を行えます。 また、集合研修のあとにeラーニングで復習し、知識の定着を図ることもできます。 つまり、社員の状況に合わせて必要な研修を行う効率的な流れを作ることが可能です。 3. 受講者の満足度が高まる ブレンディッドラーニングを行った社員は、ただ集合研修のみ、eラーニングのみを行った場合と比較して受講満足度が高まる傾向にあります。 予習⇒研修⇒復習までを手厚くフォローしてもらえるだけでなく、繰り返し何度も学習できるeラーニングとの組み合わせで学習効果自体も実感しやすくなります。 集合研修とeラーニングの組み合わせパターン例 集合研修とeラーニングをブレンドさせ、それぞれのメリットを活かした効果的な研修の手法の例をご紹介いたします。 ① 集合研修 ⇒ eラーニング 集合研修後のフォローアップのために、eラーニングで自己学習を実施。 ② eラーニング ⇒ 集合研修 ①と逆で、eラーニングで事前学習を済ませた後、集合研修で実践的な学習を実施。 ③ eラーニング ⇒ 集合研修 ⇒ eラーニングによる確認テスト ②終了後、eラーニングによる確認テストを実施。 ④ eラーニング ⇒ 集合研修 ⇒ バーチャルクラス ②終了後、eラーニングによるバーチャルクラス(インターネットを利用した、講師の説明のライブ視聴によるeラーニング学習)を実施。 ⑤ eラーニング ⇒ 集合研修 ⇒ バーチャルクラス ⇒ eラーニングによる確認テスト ④終了後、eラーニングによる確認テストを実施 eラーニング提供側の「管理者」は、それぞれの受講者の学習進捗を管理画面上で確認できるので、集合研修後に行う「eラーニングによる確認テスト」で、受講者の理解度を把握することができます。 「確認テスト」で目標点に達するまで、eラーニングの学習に戻って繰り返し学習するよう促すことで、さらに受講者の理解度を高めることが可能です。 ブレンディッドラーニングで成果を出すための7つのポイント ポイント1:研修の目的とゴールを明確に設定 最終的に参加者が身につけるべきスキルや能力は何なのかを明確にし、そのためにどのような内容をカバーするべきかを設定をします。これは、研修のスタイルを問わず欠かせない作業です。 ポイント2:研修の全体像がわかるアウトラインを作成 参加者自身が「研修で何を学び、どのようなスキルや能力を身につけることが求められているのか」という研修の全体像をインプットできるようなアウトラインを作成します。そうすることで、参加者の目標が明確になり、学習の流れを確認しやすくなります。 ポイント3:eラーニングと集合研修の組み合わせ方を検討 研修の目標に合わせ、何をeラーニングで学び、どのような集合研修をするのかを検討します。 eラーニングと集合研修をどのようにブレンドするかは、研修の目的に応じてアレンジします。まず集合研修を行ったのちに、自己学習でフォローアップできるようにeラーニングを設ける方法、先にeラーニングを行なって参加者の知識を均等化し、その後の集合研修の質を上げる方法など、両者の組み合わせ方はさまざまです。 ポイント4:グループ学習で効果を増大 参加者の学習深度を高めるのに効果的なのが、グループ交流による学習機会です。ソーシャルメディアを用いたグループの交流を参加者に促して知識を共有する機会を設けたり、オンラインで意見やアイデアの交換ができる場を提供したりすることで、学習効果を大きく向上させることができます。 ポイント5:講師・参加者・提供者のコミュニケーション方法を確立 研修期間中のサポートとして、参加者の疑問・質問に講師や提供者がすぐに回答できる体制をつくっておきます。また、参加者が提供者へ研修内容をフィードバックできる仕組みを確立しておくことも、参加者の期待や需要に対する実際の研修内容とのズレをすぐに修正するために大切です。 ポイント6:eラーニングで学ぶ知識を深められる参考リンクや文献を提示 eラーニングの途中や終了後でも、参加者が自ら知識を深められるように、参考リンクや文献情報を提供します。 ポイント7:研修後のアセスメント計画を立てる せっかく研修を実施しても、やりっぱなしでは意味がありません。研修終了後に、参加者の習熟度や研修のゴール達成度を測ることが重要です。研修後のテストやレポート作成、ディスカッションを通じて成果を把握することは、次回以降の改善点を見出すことにつながり、参加者にとっても自分の学習がどの程度実を結んだのかを確認する機会となります。 「ブレンディッドラーニング」の研究事例 最後に、ブレンディッドラーニングの効果を研究した事例をご紹介します。 平成 20・21 年度岡山県総合教育センター個別テーマ研究 「ブレンディッドラーニングによる授業実践とその効果 -外国語学習における e ラーニングの活用-」によると、次のような効果が出たとの報告があります。 ある中学校と高等学校において、2年間「読み・聞き・書き・話すの4技能を連携させたeラーニング教材」と「集合型の実践授業」によるブレンディッドラーニングを実施しました。その効果を検証した結果、ブレンディッドラーニングの授業を実施したチームにおいて、英語運用能力のうち、リスニング力の向上、 音読力および自由発話力といった英語口頭能力の有意な上昇が見られたそうです。 よりフレキシブルで効果的な研修が実現できる 人材育成にIT教育の手法を上手に取り入れることで、高い学習効果を実現するブレンディッド・ラーニングは注目の学習法です。 このように、ブレンディッドラーニン」には多くの可能性が秘められています。 もし、現状で企業教育や研修の効果を出せていないようであれば、eラーニングを取り入れたりさまざまな研修をブレンドすることで、効果的な学習方法が得られるかもしれません。 こちらの記事も読まれています: いま話題の『ディープラーニング』って何?簡潔にまとめます 参考サイト: ・「eラーニングと集合研修の特徴」日本の人事部 ・「研修の種類と形式」日本の人事部 ・「平成15年度専修学校先進的教育研究開発事業」文部科学省 ・「ブレンディッド・ラーニング(Blended Learning)」日本イーラーニングコンソシアム ・平成 20・21 年度岡山県総合教育センター個別テーマ研究「ブレンディッドラーニングによる授業実践とその効果 ―外国語学習におけるeラーニングの活用―」2009年 ・7 Tips To Plan For Effective Blended Learning|eLearning Industry

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米国の企業文化コンサルタントが、世界各国で2万人以上の社員を対象にアンケート調査を行い、50社におよぶ企業の分析、数々の研究、文献を精査したところ、「社員のパフォーマンスのよしあしは、その仕事をするモチベーションにより決まる」との結果にいたりました。しかし、モチベーションにもさまざまな種類があります。どのようなモチベーションが、社員のパフォーマンスを向上させるのでしょうか。 人が動く6つの動機とは? 人が仕事のために動くとき、そこには何らかのモチベーションが存在します。「仕事が楽しくてしかたがない」「出世したい」「経済的安定がほしい」「上司からのプレッシャー」など、さまざまな動機づけがあるのです。 「内発的動機づけ」の研究において第一人者であるロチェスター大学のエドワード・L.デシ氏とリチャード・フラスト氏(著書『人を伸ばす力-内発と自律のすすめ』)は、1980年代に人が動く動機を6つのカテゴリーに大別しました。そして、冒頭で触れた企業文化コンサルタントのリンジー・マクレガー氏とニール・ドシ氏は、それらを現代の職場環境に置き換え、人が働く動機には次の6種類があるとしました。 1.楽しみ(Play) 仕事自体が楽しいから働く。楽しみとは、新しいことへの好奇心。楽しみが大きいと、たとえ仕事で難題にぶつかってもチャレンジ精神が刺激される。 2.意義(Purpose) 仕事が生み出す価値に意義を感じる。仕事のアウトプットが社会的貢献につながることに働きがいを感じる。 3.可能性 (Potential) 仕事を頑張ることが自身の向上につながる。仕事で成果を上げることが自らの能力を高めるとの信念に基づく。 4.感情的圧力 (Emotional pressure) 恐怖、同調圧力、恥など、仕事内容とは関係のない外部からの感情的な圧力によって、自分自身が脅かされているために働く。 5.経済的圧力(Economic pressure) 報酬を得るため、または、処罰を逃れるために働く。仕事内容や自己実現とは関係ない外的圧力によるものとなる。 6.惰性 (Inertia) 働く理由がわからず、仕事内容や自発的要素とは無関係な「昨日も働いていたから、今日も働く」という動機づけ。 「楽しみ」「意義」「可能性」を感じないと人は動かない 上記の6つの動機のうち、1~3は仕事に対する個人の自発的な意志や、行動を変えようという意欲が原動力となる内発的モチベーションです。残る4~6は、仕事内容と結びつかない外的圧力による間接的モチベーションであるため、かえってパフォーマンスを低下させる可能性があります。 なお、新しいリーダーの資質として注目を集める「サーバントリーダシップ」では、部下の主体性を引き出し成長させることでモチベーションを高め、働きがいへとつなげていきます。 内発的モチベーションが高いパフォーマンスをもたらす ハーバード・ビジネススクールのテレサ・アマビール氏による最近の研究では、内発的モチベーションがより高いパフォーマンスをもたらすことを証明しています。 その研究では文章の創作が好きな被験者を集め、ひとつのグループには創作する理由として「自己表現の場」「言葉で遊ぶのが好き」といった「楽しみ」を示すモチベーションを与えました。そして、もうひとつのグループには「自分の文才で誰かを感心させたい」「ベストセラー作家になって経済的安定が得たい」といった「感情的・経済的圧力」に該当するモチベーションを与えました。 すると、後者の外発的「圧力」によって書いたグループの創造性よりも、前者の「楽しみ」という内発的動機によって書いたグループの創造性のほうが26%高いという結果になりました。 また、別の研究では、ある分析作業を任せた2つのグループのうち、一方に「がんの医療研究に役立つ」との「意義」を与えたところ、もう一方のグループ(「意義」を与えられず、分析結果は破棄されると知らされていた)より報酬額が少なかったにも関わらず、分析により長い時間をかけ、質も後者のグループより高いという結果になりました。 このように、自発的モチベーションがパフォーマンスに好影響を及ぼすことが証明されているのです。 社員のモチベーションが低いときは会社の組織づくりの見直しを 社員のパフォーマンス向上に成功している企業は、「楽しみ」「意義」「可能性」の3つのモチベーションを最大化することに成功しています。逆に、社員のパフォーマンス向上に失敗している企業は、「感情的圧力」「経済的圧力」「惰性」で社員が動いているのかもしれません。しかし、社員が自発的に働きたくなる職場づくりは、特定の部署だけでは成し得ません。企業文化の形成として捉え、人事からの積極的な働きかけが欠かせないでしょう。 なお、モチベーションアップや人材評価については、「知っておきたい!初めての後輩指導で使える「コーチングスキル」」や「今さら聞けない「人材アセスメント」を成功させる3つのポイント」もあわせてご覧ください。 こちらの記事も読まれています: 仕事の効率化はコミュニケーションが取りやすい職場から 仕事に集中できる環境作り 参考: How Company Culture Shapes Employee Motivation|Harvard Business Review Record Display|APA PsycNET Breaking Monotony with Meaning:Motivation in Crowdsourcing Markets (PDF) |Cornell University Library  低コストで厳選コンテンツ見放題!コンテンツパック100 特にニーズの高いコンテンツだけを厳選することで1ID 年額999円(税抜)の低コストを実現。 ビジネス・ITの基礎知識を学べるeラーニングコンテンツが見放題、Cloud Campusのプラットフォーム上ですぐに研修として利用できます。 100コース・1500本以上の厳選動画をラインナップ。コース一覧詳細は無料でこちらからご確認頂けます。 >>Cloud Campus コンテンツパック100の詳細をチェックする

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