勝ち続ける企業には欠かせない「グローバル人事制度」とは

2021.02.02

人事制度・組織づくり

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  • 人事労務
勝ち続ける企業には欠かせない「グローバル人事制度」とは

日本企業のグローバルビジネスにまつわる話題が、メディアを賑わさない日はありません。さまざまな事業分野でのサクセスストーリーが数多く報告されています。しかし、「今後、どんなグローバル人材が必要か」という問いには、人事・教育担当に携わる者でもなかなか即答はできないでしょう。残念ながら、人事分野でのグローバル化については、日本企業は遅れをとっているのが現状なのです。今回は、グローバル人事とは何か、グローバル人事に必要な制度とは何かをご紹介します。

なぜ人事にもグローバル化が必要なのか?

日本企業では終身雇用制度が通例であったため、社員全員を育てていこうという面が非常に強くあります。しかし、この方針では、採用基準や就労スタイルも違う海外拠点で人材は育たず、グローバル化するビジネスを効率良く伸ばせる人材が不足してきます。就労環境や文化も違う国では、本社からの人事制度の導入は難しく、だからといって、支社を置く国によって人事制度を変えていては、公正な評価が難しく足並みのそろわない経営になってしまいます。そのため、システム化された人事制度が必要となるのです。

グローバル人事とは?

「グローバル人事」とは、経営戦略に沿った業績を実現することを目的に、必要な人材育成に取り組む人事戦略のことです。たとえば、グローバル人事では、今後、世界のどの拠点にどのくらいの期間、何人のリーダーが必要となり、その人材はどんな能力を持っているべきかなどを分析し、的確に計画していきます。そのため、欧米のグローバル企業では、人材=国際競争力という考え方から、グローバル人事は「戦略的投資」として捉えられています。

「グローバル人事制度」導入に必要な仕組みとは?

人事のグローバル化には、さまざまな手法があります。国籍を問わない幹部層の採用、現地スタッフを含めたトップ養成プログラムの実施、全世界共通の評価基準や処遇の採用など、その企業の経営方針にのっとった施策を考える必要があります。以下に、日本企業の成功例をご紹介しましょう。

花王グループ

「よきモノづくり」を支える企業理念である「花王ウェイ」を柱とし、全世界で人材開発を標準化。その一環としてグローバルリーダシップ開発プログラム(GLDP)を実施。世界の拠点からリーダー候補となる人材を集め、強化、育成を行なっている。

カゴメ

全世界共通のHRポリシー(社員への働き方の指針)を構築するため、ジョブ・グレーティング(職務等級制度)、評価の仕組み、サクセッション・プラン(後継者確保・育成計画)を導入している。

トヨタ

トヨタのモノづくりの考え方を示す企業理念の「トヨタウェイ」を浸透させるためには、「人づくり」からという考えのもと、日本だけでなく、米国、英国、タイにグローバル生産推進センター(GPC)を設立している。

各社に共通することは、本社だけで世界経営を行なうのではなく、現地の人材を企業の戦力として有効活用するために、グローバルな人事体制を取っていることです。そこで重要となるのは、いかに企業理念を世界の拠点にまで浸透させていくかでしょう。言葉も文化も考え方も違う現地と共通の目的に向かうには、まず仕事の意義や課題を確認する拠りどころとなる企業理念を共有することで、一貫したグローバル経営が可能となるのです。

人事部はグローバル人事という「戦略的投資」の担い手

人事を管理するエキスパートから、人事分野から企業戦略を立案するプランナーへの変貌は、一朝一夕にできることではありません。ビジョンを唱えるだけでなく、リード役として周囲を巻き込み、企業の新しい体制を構築していく実行力が求められるからです。 人材開発のプロとして、まず企業の戦略方向性を理解する。そして、自部門の役割や業務に落とし込み、グローバル化への要となる人材開発にビジョンを持って取り組むことが、これからの人事部にますます求められる重要な役割なのではないでしょうか。

参考サイト:

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日本では、大学4年生ともなれば誰もがいっせいにリクルートスーツに身をつつみ、企業説明会や面接へ向かいます。こうした就活戦線の一斉スタートや新卒市場の存在は、実は日本独特のものであり、海外ではだいぶ様子が違うようです。 今回は、欧米での新卒採用について取り上げ、いったいどのように行われているのか見ていきましょう。 欧米では新卒採用市場が存在しない そもそも、欧米では日本のような「新卒」という採用市場自体が存在しません。欧米では労働市場が流動的なため、欠員が出たら補充するという通年採用が基本です。 新卒生が就職する場合、卒業の半年前くらいから就職活動を開始するというケースが多いですが、企業と学生が足並みをそろえて採用・就活活動をする期間がありません。そのため、3年生の時点で内定をもらっている場合もあるなど、学生によってさまざまです。 新人研修はなく、即戦力が求められる 欧米での採用は、「入社後に社会人として育てる」という日本の新人研修のようなスタンスはなく、即戦力になることが前提条件です。そのため、学生は専門的な知識とインターンシップなどでの実務経験を用意しておく必要があります。その代わり、企業は入社した社員のスキルアップや人材育成研修には、日本企業に比べるとより積極的といえます。 「○○年3月卒業予定者」という記載がない募集要項 募集要項を見ると、その違いがよく分かります。日本の場合、職種により文系、理系の区別はあるものの、一般的には「○○年3月卒業予定者」という表記がされています。欧米でも場合によっては、「新卒者も可」といった記載がある募集要項もありますが、具体的な専門性、スキル、経験などが募集要項に記載されるだけのことがほとんどです。 専攻・研究分野が職業選択に直結 欧米では、新人、経験者問わず、専攻・研究分野と職業選択に一貫性が求められます。日本はこの点では非常に柔軟で、専攻による職業選択の垣根は低く、文学部や工学部の学生が金融機関へ就職することも珍しくありませんが、欧米で、ビジネス、経済学、ファイナンス専攻以外の学生が、金融系へ就職することはあまりないようです。 採用と結びついたインターンシップ 欧米企業では、インターンシップが新卒者の選考手段のひとつとして盛んに導入されています。特に優秀な学生を選抜する目的で、書類審査と面接だけでなく、長期のインターンシップを通じて学生の能力と適性を評価するのです。 アメリカでは、産学連携でインターンシップが単位取得に連結しており、全米大学就職協議会(NACE)によれば、2010年には、企業の新卒採用のうち約45%がインターンシップからの採用となっています。 優秀成績者は採用でも優位に さらに、成績も非常に重要視されます。企業にもよりますが、特に大手ビジネスコンサル系、投資金融業などでは、応募にはあるレベル以上の成績取得が条件となっています。また、特定有名大学・学部別のリクルートも行われています。 例えば、米国のアイビーリーグ(ハーバード大学やイェール大学などの米東部の名門私立大学)の優秀な学生に対する囲い込みなどは有名です。 ユニークな日本の新卒市場 欧米では、学生が在学中に獲得した知識や経験と学業結果が、企業が求める条件にどれだけマッチするかが採用の決め手となります。日本での新卒採用は、採用に開始時期があったり、採用条件では人柄や「見込み」の能力と適性を重視したりするなど、ユニークな市場を形成しているといえるでしょう。 参考サイト: 「特殊な日本の新卒採用」 JIJICO  

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