2025.12.19
人事制度・組織づくり
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リモートワークが普及し、上司と部下のコミュニケーションが対面からオンラインに移行したことによって「リモハラ(リモートハラスメント)」という新たなハラスメントが問題となっています。リモハラとは、従来のパワハラやセクハラ、モラハラ等がオンライン環境下で発生する状態を指します。
リモート環境では、公私の境界があいまいになりやすいことからハラスメントが発生しやすく、放置すれば優秀な人材の離職や法的リスクにつながりかねません。従業員が安心して働ける環境を整備するためには、リモハラ防止策を講じることが大切です。
本記事では、リモハラの定義や発生原因、企業ができる対策を解説します。リモハラ発生時の対応方法も解説するので、経営者や人事・労務担当者は、ぜひ参考にしてみてください。
リモハラとは
リモハラとは、リモートワーク環境下で発生するハラスメントのことです。具体的には、オンライン会議やチャットツールといったデジタルコミュニケーションにおいて、相手を不快にさせたり、不利益を与えたりする行為を指します。
リモートワークでは、仕事とプライベートの境界があいまいになることや、第三者の目が届きにくくなることから「いつでも連絡してよい」「私的な空間に踏み込んでも問題ない」といった誤った認識が生まれ、ハラスメントに対する意識が低下しやすくなります。
こうした背景から、リモートワーク環境下ではハラスメントが発生しやすく、被害が深刻化しやすい傾向があるのです。
リモハラの3つの型と特徴
リモハラは、主に以下の3つの型に分類されます。
- パワハラ型
- セクハラ型
- モラハラ型
それぞれ詳しく解説します。
パワハラ型
パワハラ型リモハラとは、上司が「部下の働きぶりが見えない」という不信感から、業務上必要な範囲を超えて監視や干渉し、部下に精神的な苦痛を与える行為です。
具体的には、以下のような行為が該当します。
- Webカメラ・マイクの常時オンの強制
- パソコン操作ログや画面共有による過度な監視
- 業務時間外の即時応答の強要
- 不当な出社強要
パワハラ型リモハラが発生すると、部下は常に監視されている感覚に陥り、強いストレスを受けます。そのような状況では、仕事への集中力やモチベーションが低下し、自律性や創造性を発揮しにくくなるでしょう。
セクハラ型
セクハラ型リモハラとは、オンライン会議やチャットツールを利用して、相手が不快に感じる性的な言動をしたり、私的な空間に干渉したりする行為を指します。
セクハラ型リモハラの具体例は、以下の通りです。
- 業務と無関係な外見への言及
- プライベート空間への過度な干渉
- 私的・性的なメッセージの送信
- オンライン通話・飲み会への執拗な勧誘
セクハラ型リモハラによって精神的苦痛を感じた被害者は、リモートワークに強い抵抗を感じるようになり、業務遂行に支障をきたす可能性があります。
モラハラ型
モラハラ型リモハラとは、リモートワーク特有の物理的な距離を悪用し、特定の従業員のメッセージを無視したり、情報共有から排除したりして精神的な苦痛を与える行為です。
モラハラ型リモハラには、以下のような行為が当てはまります。
- 業務上の意図的な排除
- 業務成果に見合わない不当な評価
- 過大または過小な業務の割り当て
メッセージの無視や意図的な情報共有からの排除、過大な業務の増減は、パワハラ防止法に基づく厚生労働省の指針における「人間関係からの切り離し」や「過大要求・過少要求」といったパワーハラスメントにも該当するため、企業として厳正な対処が必要です。
モラハラ型リモハラは、被害者の業務遂行を妨げることで、生産性を低下させる要因となります。くわえて、チームの連携が崩壊したり、組織全体の士気が下がったりすることにもつながるでしょう。
リモハラが発生する原因
リモハラが発生する原因には、以下のようなものがあります。
- 仕事とプライベートの境界があいまいになりやすい
- 部下の働きぶりが見えにくい
- リモートワークに関するルールの整備ができていない
それぞれ詳しく解説します。
仕事とプライベートの境界があいまいになりやすい
自宅が職場となるリモートワークでは、仕事とプライベートの境界があいまいになりやすい傾向があります。リモートワークの特性上、連絡の頻度が増えたり、Web会議中に私的な背景が映り込んだりすることがあります。
このような状況が「常に仕事の待機状態にある」「私的な情報に踏み込んでも問題ない」といった誤った認識を生み出す要因となるのです。その結果、ハラスメント行為への意識が低下し、プライバシー侵害や業務時間外の即時応答の強要等のリモハラにつながってしまいます。
部下の働きぶりが見えにくい
リモートワーク環境下では、上司が部下の業務状況や集中度を把握することが難しくなります。そのため、上司が不信感を抱き、Webカメラの常時オンの強要や不必要な進捗報告の要求といった過度な管理・監視をする行為に発展しやすくなります。
不信感に基づく過度な監視は、部下のストレスを高め、自律性を損なうだけでなく、生産性を低下させる原因にもなりかねません。
リモートワークに関するルールの整備ができていない
リモートワーク導入時には、勤務時間帯や連絡手段、評価基準に関するルールを設けておくことが大切です。ルールが定まっていない状況でリモートワークをすると、業務時間外の連絡や不透明な評価が起きることでリモハラが発生しやすくなります。
そのような状況では、従業員間で「どこまでが許容範囲か」という認識のズレが生じやすく、ハラスメントを未然に防ぐことが難しくなるでしょう。
リモハラが企業に与える影響

リモハラの発生は、企業に以下のような影響を与える可能性があります。
- 従業員のモチベーションが低下する
- 優秀な人材の離職につながる
- 法的リスクが高まる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
従業員のモチベーションが低下する
強いストレスや心理的な不安を感じたリモハラの被害者は、仕事のモチベーションが低下しやすくなります。過剰な監視は従業員の自主性や創造性を奪い、意図的な無視や排除はチームの連携や情報共有を妨げます。
そのような状況が続くと、被害者以外の従業員の生産性も低下し、組織全体の業績悪化につながる可能性があるでしょう。
優秀な人材の離職につながる
リモート環境での過度な監視や不当な評価は、高い自律性をもつ優秀な社員のモチベーションを低下させ、能力発揮を妨げてしまいます。企業が適切な対応をせずにリモハラが常態化すると、被害者だけでなく、周囲の優秀な人材も組織に失望し、離職するきっかけになることもあります。
優秀な人材が離職してしまうと、新たな人材を採用するために多くの時間とコストが必要になるでしょう。企業の競争力の低下にもつながることから、早期の対応が求められます。
法的リスクが高まる
リモハラを放置することは、企業が使用者責任や安全配慮義務違反といった法的責任を問われるリスクを高めることにつながります。ハラスメント行為が認定された企業は、被害者から損害賠償請求を受けたり、行政指導の対象となったりする可能性があります。
ハラスメント問題が外部に知られれば、取引先や顧客からの信頼を失い、事業継続にも影響を及ぼすリスクもあるでしょう。
企業ができるリモハラ対策
企業には、ハラスメント防止措置を講じる義務があります。
リモハラを防ぐためには、以下のような対策を実施することが重要です。
- リモートワークガイドラインの整備
- 全従業員の教育
- 相談窓口の周知
それぞれ詳しく解説します。
リモートワークガイドラインの整備
リモハラを防ぐためには、リモートワークガイドラインを策定するのが効果的です。ガイドラインがなければ、業務時間外の連絡や監視行為の許容範囲がわからなくなり、ハラスメント行為が放置されやすくなります。
ガイドラインでは、公私の境界線を明確に定めることが重要です。例えば、業務時間外の連絡を原則禁止としたり、緊急時の連絡手段と時間を具体的に示したりしましょう。また、Webカメラやマイク利用の基準(会議開始時のみ使用、音声のみ許可等)を設け、過度な監視が発生しないようにすることも大切なポイントです。
ガイドラインを整備すれば、公私の境界線のあいまいさを解消できるうえ、部下への過度な監視の抑止力となり、リモハラを未然に防止する効果が期待できるでしょう。
全従業員の教育
リモハラを防ぐためには、従業員一人ひとりが「どのような言動がハラスメントに該当するのか」を正しく認識することが大切です。リモハラの定義や具体的な事例、発生原因を学んでもらうために、定期的な研修を実施しましょう。
研修では、チャットでの不適切な表現やWeb会議時のプライベート干渉、業務時間外の連絡の危険性といったリモートワークにおけるコミュニケーションマナーを教育しましょう。管理職に対しては、部下が見えない環境下での適切なマネジメント方法や、部下を信頼したコミュニケーションの取り方を習得させるための研修が必要です。
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相談窓口の周知
ハラスメント被害を早期に発見・解決するためには、従業員が安心して利用できる相談窓口の整備と周知が必要です。リモハラは、第三者の目が届かない状態で起こりやすく、被害が深刻化するまで気付きにくいという特徴があります。
匿名による相談を受け付けられる窓口があれば、被害者が早い段階で相談しやすくなり、早期にリモハラが発覚する確率を高められます。相談担当者は最低でも男女1人ずつを配置し、相談した事実が他の従業員に知られることのないように配慮をすることが大切です。
相談窓口の整備と周知は、リモハラ被害の拡大を防ぐための重要な対策といえます。
リモハラが発生したときの対応方法

リモハラが発生した場合、企業には事態の深刻化を防ぐために迅速かつ適切な対応が求められます。
以下の4つのステップで対応しましょう。
- 適切な事実確認
- 行為者への措置
- 再発防止策の実行
- 被害者のケアと職場復帰支援
それぞれ詳しく解説します。
1.適切な事実確認
まずは被害者と行為者からリモハラが発生した日時や場所、具体的な言動、受け止め方を聴取し、事実確認をします。このとき、リモハラの証拠となるチャット履歴やメール等のデジタル記録を確実に保管することが重要です。デジタル記録は容易に改ざんや消去ができるため、重要な証拠を失わないように注意しましょう。
事実確認は、当事者のプライバシーを守りながら、客観的な証拠に基づいて実施し、ハラスメントの有無を公平に判断しなければなりません。聴取や証拠収集の過程で公平さを欠いた対応をすると、より問題を大きくしてしまう可能性があります。
2.行為者への措置
ハラスメントの発生が認められた場合、行為の悪質性や頻度に応じて就業規則に基づいた懲戒処分を実施します。ただし、懲戒処分によって問題を終わりとするのではなく、意識改革のための研修を義務付けることが大切です。
懲戒処分だけでは行為者のハラスメントに対する根本的な認識は変わらず、職場内で同様の問題を起こすリスクが残ります。そのため、リモートワーク特有のハラスメントリスクや適切なコミュニケーション手法を習得させる研修の実施が必要です。
くわえて、行為者と被害者の接触機会を遮断するために、必要に応じて配置転換や業務内容の変更を実施しましょう。
3.再発防止策の実行
次に、リモハラが発生した原因を明確にし、再発させないための具体的な対策を実行します。原因を明確にする際は、個人の問題だけでなく、組織のルールやコミュニケーション構造、評価制度といった環境面に問題がなかったかを深掘りすることが大切です。
行為者への懲戒処分や研修だけでは根本的な解決に至らず、同様のハラスメントが発生するリスクが残ります。
再発防止策には、全従業員のハラスメント研修強化や、リモートワークガイドラインの見直し、相談窓口の周知徹底等が挙げられます。リモハラを発生させないためにも、組織全体の意識改革をしたうえで、ハラスメントを許さない職場風土を確立しましょう。
4.被害者のケアと職場復帰支援
被害者には、産業医やカウンセラーによる精神的なケアを継続的に実施することが大切です。
被害者が望む場合は、配置転換や転勤といった職場環境の変更を行い、行為者と接触しないように配慮しましょう。このとき、被害者が不利益を被ることのないように人事上の評価や給与体系の維持に努める必要があります。
休職した場合は、被害者と相談しながら職場復帰に向けた支援プランを作成します。被害者の心身の状態や医師の診断を元に、無理のないペースで復帰をサポートしましょう。
まとめ
リモートワークの増加にともない、企業としてリモハラの予防と適切な対応をすることが求められています。リモハラを放置することは、従業員の健康や企業の生産性、信頼性を損なうことにつながります。リモハラを防ぐためには、ガイドラインの整備や全従業員への教育、相談窓口の周知をすることが大切です。
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===監修者情報====
金子幸嗣(かねここうじ)
社会保険労務士
2006年に社会保険労務士として独立開業。
勤務先でのハラスメント問題を機に労働法を学ぶ。
その後、企業の労務管理や職場環境改善、ハラスメント防止体制の整備や社内相談対応の支援に携わる。
労働・年金分野を中心に執筆・監修を行い、複数のメディアに寄稿。
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