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カスタマーハラスメントの意味や事例|企業がすべき対策を解説

2024.11.18

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カスタマーハラスメントの意味や事例|企業がすべき対策を解説

顧客や取引先から悪質な指摘や要求を受けるカスハラは、従業員に大きなストレスを与え、健康被害や休職の原因になるケースも少なくありません。

それだけでなく、企業の業績やイメージを悪化させることにもつながります。

従業員を守る義務を果たし、ステークホルダーからの信頼を獲得するためにも、企業は過去のカスハラ事例から適切な対策を立てなければなりません。

そこで今回は、カスハラの事例や定義、判断基準を解説します。

企業がすべきカスハラ対策も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。

カスタマーハラスメント(カスハラ)とは

カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)とは、顧客や取引先から商品・サービスへの悪質な指摘や過剰な要求を受けることをいいます。

具体的には、大声や暴言で従業員を責めたり、頻繁に来店してその度にクレームを入れたりする行為が挙げられます。

カスハラの判断基準

厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」では、以下の2点をカスハラの判断基準としています。

  1. 顧客や取引先の要求内容に妥当性はあるか
  2. 要求を通すための手段や言動が社会の一般常識で許される範囲か

要求内容の妥当性を判断する際は、顧客等の主張に対して因果関係を確認したうえで「自社に落ち度がないか」「納得のいく根拠があるのか」を検討します。

例えば、自社に落ち度がなければ、顧客の要求は妥当ではないとし、カスハラという判断をしたうえで対応します。

仮に要求内容が妥当であっても、暴言で従業員を責め立てたり威圧的な態度をしたりした場合は、社会の一般常識においてふさわしくない言動として、カスハラに該当する可能性が高いといえるでしょう。

カスハラとクレームの違い

正当なクレームといえるのは、商品やサービス、システム、接客等に対して改善を求める行為です。

一方、カスハラは顧客という立場を利用して、無理な要求をしたり暴力的・威圧的な言動をしたりすることをいいます。

クレームとカスハラに明確な線引きがあるわけではありませんが、悪質なクレームがカスハラに発展するケースは多くあります。

【業種別】カスハラ事例

ここでは、厚生労働省が公表した「カスタマーハラスメント事例集」から一部のカスハラ事例を業種別に紹介します。

カスハラの判断基準の理解を深め、従業員を守るためにも、さまざまな事例を把握しておきましょう。

情報通信業

情報通信業では、以下のようなカスハラ事例があります。

  • 「癒されるね」「下の名前も教えて」とセクハラにあたる言葉をかけた
  • 「徹夜で明日までにバグを直せ」といった無理な要求をした
  • 「頭が悪い」「性格が悪い」といった人格否定に該当する言葉や暴言をかけた

このように、情報通信業ではサポートデスクのスタッフに対するカスハラが多く見られました。

郵便業

運輸業・郵便業では、天候不良等によるやむを得ない運用見合わせや遅延に対し、不当な請求や謝罪を要求するケースがあります。

例えば、以下のようなカスハラ事例が挙げられます。

  • 駅構内や電車内で運転見合わせのお詫び放送を繰り返していたところ「いつ発車するのか放送しろ」と厳しく問いただした
  • 自身が危険行為をしていたにもかかわらず、注意喚起を繰り返していた駅員を突き飛ばした
  • 電車の運転再開見込みが分からないことに納得せずスマートフォンで車掌の対応を無断で動画撮影した
  • 電車遅延が理由で利用したタクシー代の負担を要求された

なかには、警察への通報まで発展したケースや、顧客からの暴行により社員が負傷したケースもあります。

卸売業・小売業

特に小売業では、顧客と対面することが多く、無理な要求や不当な謝罪を求められることが多くあります。

例えば、以下のような拘束的かつ継続的なクレームを入れた事例が挙げられます。

【事例1】

  1. 顧客がプリペイドカードを購入後、返金を申し出た
  2. 店舗での返金を受け付けていないと説明したところ「店長を出せ」「店長権限で返金しろ」といった同じ内容で長時間問い詰めた
  3. 翌日も同様のやり取りがあったあと、本社の代表電話へ連絡し、本社に訪れてクレームをした

【事例2】

  1. 顧客が20年前に購入した商品が動かなくなったと無償修理を要求した
  2. 2日間、企業や商品の輸入元へ執拗に電話をかける
  3. 電話を通して長時間にわたり、不当な主張・無理な要求を続けた

そのほかにも、接客態度や返金対応に納得がいかず、土下座を要求したり暴力をふるったりした事例があります。

宿泊業・飲食サービス業

宿泊業・飲食サービス業では、顧客の立場を利用した無理な要求をする事例が多くあります。

実際に、宿泊業では「顧客が宿泊する度に客室の清掃不備を指摘して、客室のグレードアップや顧客の前での清掃を要求する」といった事例がありました。

飲食サービス業のカスハラ事例には、以下のようなものが挙げられます。

【事例3】

  1. 顧客が半額シールの付いた弁当を自身の過失で落とし、販売できない状態となった
  2. 従業員が衛生面の観点で販売できない旨を伝える
  3. 顧客は納得せず、該当商品を販売するか、他の商品を半額にすることを求めて店内で騒ぎ続けた

サービス内容や対応に納得がいかず、大声をあげて威嚇をしたり、暴言を吐いたりする事例もあります。

生活関連サービス業・娯楽業

生活関連サービス業・娯楽業では、以下のようなカスハラ事例がありました。

【事例4】

  1. 顧客の安全を配慮し、要求を丁重に断った
  2. 顧客は納得がいかず、フロア全体に響き渡るほどの大声で怒鳴り散らした
  3. その後も暴言を吐く、靴を投げる、椅子を叩く等2時間にわたり威圧的行動をした
  4. 該当の顧客は繰り返し売場に現れ、怒鳴り散らすことが続いた

このようなカスハラが従業員のトラウマとなり、休職に追い込まれるケースも少なくありません。

医療・福祉

医療・福祉の現場では、利用者やその家族から以下のようなカスハラを受ける事例があります。

  • 利用者が看護師を叩く、つねる、唾を吐く
  • 利用者やその家族がスタッフに「へたくそ」と発言したり「帰れ」と大声で怒鳴りつけたりする
  • 利用者が看護師や介助者に対し、セクハラに該当する言動をする

厚生労働省の「職場のハラスメントに関する実態調査報告書(令和5年度)」では、過去3年間に顧客から著しい迷惑行為を受けた病院・施設の割合が53.9%と公表されています。

調書対象となった業種のなかで最も高い割合であったことから、医療・福祉はカスハラに関する相談件数が多い業種といえます。

カスハラは犯罪に該当する場合がある

カスハラの内容によっては、以下のような犯罪行為に該当する可能性があります。

  • 傷害罪
  • 暴行罪
  • 脅迫罪
  • 恐喝罪
  • 未遂罪
  • 強要罪
  • 名誉棄損罪
  • 侮辱罪 等

カスハラから大きな事件に発展し、警察や弁護士との提携が必要になった事例もあります。

企業がカスハラ対策すべき理由

カスハラには以下のような悪影響があることから、企業は適切な対策を立てる必要があります。

  • 従業員のストレスの増加やパフォーマンスの低下につながる「
  • 企業のイメージダウンや業績の悪化につながる
  • 企業責任を問われる可能性がある

ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

1. 従業員に悪影響を与える

カスハラは従業員に大きなストレスを与えるため、業務のパフォーマンスが低下したり、従業員の健康被害につながったりする恐れがあります。

なかには、現場対応にトラウマを抱えて休職や退職の原因になってしまうこともあります。

従業員を守るためにも、早急にカスハラ対策をすべきといえるでしょう。

2. イメージダウンや業績の悪化につながる

カスハラは対応に時間がかかるものが多く、業務効率が下がる原因になります。

カスハラ対応に追われることで業務に遅れが出れば、他の顧客に満足いくサービスを提供できない可能性も考えられるでしょう。

また、カスハラをする顧客がいる場所には、他の顧客も来訪しにくくなります。

その結果、企業のイメージダウンや業績悪化につながる恐れがあります。

3. 企業責任を問われる可能性がある

企業には「安全配慮義務」があり、従業員が安全かつ健康に働けるように職場環境を整えなければなりません。

カスハラに対して企業が適切な対処をしていない場合、被害に遭った従業員から責任を問われる可能性があります。

実際に、賠償責任が認められた事例がある一方で、顧客トラブルへの対応をしっかりしていたことで賠償責任が認められなかったケースもあります。

企業として従業員を守る責任を果たすためにも、カスハラ対策は必要不可欠です。

企業が取り組むべきカスハラ対策

企業が取り組むべきカスハラ対策には、以下のようなものがあります。

  • 顧客との対等な関係を築く
  • 企業としての姿勢を明確にする
  • 相談しやすい体制を整える
  • 監視カメラや通話録音サービスを活用する
  • カスハラ対応のマニュアルを作成する
  • 従業員にカスハラ対応の研修をする
  • カスハラ事例を社内で共有する
  • 警察や弁護士とスムーズに連携できる仕組みをつくる

それぞれ詳しく解説します。

1. 顧客との対等な関係を築く

顧客に対して必要以上に低姿勢で対応したり、無理な要望を受け入れたりすると、カスハラの対象になってしまう可能性があります。

カスハラを防止するためにも、過剰な顧客第一主義を避け、顧客と対等な関係を築きやすい環境を整えるようにしましょう。

2. 企業としての姿勢を明確にする

企業のトップは、カスハラ対策の姿勢を顧客や従業員に明確に示すことが大切です。

企業側がカスハラを許さない姿勢を示し、従業員を守る体制を整えれば、従業員は安心感をもって働きやすくなります。

従業員自身もカスハラに関する相談がしやすくなり、大きなトラブルに発展しにくくなるでしょう。

くわえて、顧客に向けてもカスハラへの姿勢を示せば、迷惑行為を抑制する効果も期待できます。

3. 相談しやすい体制を整える

企業は従業員が相談しやすい体制を整えることが大切です。

従業員が悪質なクレームやカスハラを受けていることが分かれば、トラブルが大きくなる前に対処できます。

具体的には、相談窓口を設置したり、相談対応者向けの研修をしたりするのが効果的です。

4. 監視カメラや通話録音サービスを活用する

監視カメラを設置したり、通話録音サービスを導入したりすれば、実際にカスハラを受けたときの事実確認に役立ちます。

くわえて、監視カメラや通話録音サービスによってカスハラを抑制する効果も期待できるでしょう。

通話録音の事前案内があれば、悪質なクレームの抑止につながります。

従業員をカスハラから守るためにも、監視カメラや通話録音サービスを導入してみましょう。

5. カスハラ対応のマニュアルを作成する

カスハラを受けたときに適切な対応ができるように、以下のような内容を記載したマニュアルを作成しましょう。

  • カスハラの定義
  • カスハラの判断基準
  • カスハラへの対処方法(ケース別)

カスハラへの知識や対処方法を知らない状態では、実際にカスハラに遭遇したときに慌ててしまいます。

その結果、顧客の無理な要望に応えてしまい、従業員や企業にとって不利な状況に陥ることも考えられるでしょう。

くわえて「カスハラ対応を一人に任せず複数人で対応する」「状況によっては現場監督者が対応する」といったルールをつくることも大切です。

6. 従業員にカスハラ対応の研修をする

従業員がカスハラを受けたときに焦らず適切な対応ができるようになるには、マニュアルでルールを明確化するだけでなく、カスハラの対処法を学べる研修の実施が大切です。

マニュアルを把握していても、感情的になっている顧客を目の前にすると、どのように対応すべきか分からなくなる人もいます。

そのような状況に適切な対応ができるようになるためには、ロールプレイングのような実践形式を取り入れるのが効果的です。

7. カスハラ事例を社内で共有する

社内や社外のカスハラ事例を共有すると、カスハラに遭遇したときの対応方法をより具体的にイメージしやすくなります。

くわえて、従業員の接客態度によってカスハラを引き起こした事例を共有すれば、応対方法を見直すことでカスハラを防止できます。

カスハラは誰にでも起こりうることであるという認識をもってもらうためにも、マニュアルや研修に事例を盛り込むようにしましょう。

8. 警察や弁護士とスムーズに連携できる仕組みをつくる

カスハラの内容によっては、警察・弁護士等の協力が必要になることがあります。

その場合は、本社や本部と連携して対処するケースも多いため、どのような方法や流れで進めるのかを事前にルール化しておくことが大切です。

ルールに沿って進めることでスムーズに連携できるようになれば、大きなトラブルに発展する前に対処しやすくなります。

従業員のなかには、現場で解決しなければならないと考えている人もいます。

現場の負担を軽減するためにも、警察や弁護士との連携ができる仕組みやルールを整えるようにしましょう。

まとめ

カスハラは従業員の就業環境を害すだけでなく、企業の業績やイメージダウンにつながる可能性があります。

企業として従業員を守る責任を果たすためにも、カスハラ事例からより適切な対策を立てることが必要不可欠です。

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社員の主体性を最大限に引き出すための研修設計3つのポイント

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