2024.03.12
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- プロダクトマネジメント
現代は、かつてのように製品を開発してリリースすればビジネスが成功する時代ではありません。
モノや情報があふれる現代のビジネスシーンにおいては、顧客のニーズを深く理解したプロダクト開発や、提供方法・購入後のアフターフォローまで注力することが求められます。
そこで重要となるのが、プロダクト全般の管理を行うプロダクトマネジメントという手法です。
当記事では、プロダクトマネジメントの概要やプロダクトマネジメントが広がった背景、業務フローや必要となるスキルまで解説します。自社にプロダクトマネジメントの機能を導入したい方も、今後プロダクトマネジメントの業務に就きたい方も、参考にしていただければ幸いです。
プロダクトマネジメントとは
プロダクトマネジメントの「プロダクト」は製品や商品です。プロダクトマネジメントを直訳すると「製品管理」という意味になります。
しかし、業務としてのプロダクトマネジメントは、単に製品管理をするだけではありません。
一般的に、プロダクトマネジメントの仕事は「上流」と「下流」に分かれます。
上流は、製品をマーケットに投入する以前に「何をつくるべきか」「どうつくるべきか」等、プロダクトの開発工程を考える仕事です。
一方の下流は、製品の市場投入方法や投入後の改廃検討等、マーケティングや製品改良・撤収時期の見極めを行います。
このようにプロダクトマネジメントの仕事は範囲が広く、製品管理だけでなくビジネスマネジメントまでおよぶといえるでしょう。
1930年代、アメリカのP&G社ではじまったプロダクトマネジメントの取り組みが礎となり、その後、HP(ヒューレットパッカード)やトヨタ等の企業で発展していきました。
プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントの違い
プロダクトマネジメントとプロジェクトマネジメントは混同されがちですが、マネジメントの対象が異なります。
プロダクトマネジメントの対象は製品であり、その製品の誕生から撤退するまでが対象です。求められる能力は、開発・技術力やビジネス全般の知識等、幅広いスキルが必要になります。
一方、プロジェクトマネジメントは管轄するプロジェクトが対象であり、決められた期間が過ぎれば終了です。プロジェクトマネジメントのスキルは必要となりますが、どちらかというと対象となるプロジェクトへの知識や理解が必要となります。
それぞれの違いは、以下の表の通りです。
プロダクトマネジメント | プロジェクトマネジメント | |
対象 | 製品・商品 | プロジェクト |
期間 | 製品が市場に存在する限りは続く | プロジェクト開始から完了まで |
目的 | 製品価値の最大化 | 想定した期限・予算内でのミッション達成 |
求められるスキル | 技術・開発の知識やビジネス全般の知識とスキル | プロジェクトを管理するスキルや当該プロジェクトへの知見 |
どちらもプロダクトの開発に関するマネジメントを行うため重複する部分はありますが、プロジェクトマネジメントはプロジェクトを完了させるのが目的です。
プロダクトマネジメントは、企業に自社プロダクトがある限り、継続的に価値や利益を最大化し続ける目的というのが異なる点になります。
プロダクトマネジメントの業務内容
欧米企業と比較して、日本企業ではプロダクトマネジメントを専任で行う人材が少ないといわれています。そのため、プロダクトマネジメントの業務内容のイメージがつかないという方も多いのではないでしょうか。
本章では、プロダクトマネジメントは具体的にどのような業務を担うのかについて紹介していきます。
製品のプロトタイピング
企業方針として製品開発が決定したら、最初にプロトタイピングを進めます。
プロトタイピングとは、製品開発を本格的に始める前に、簡単な機能やデザインのみを実装したプロトタイプ(試作品)をつくることです。
使い心地、必要な工程・リソース等を検証することを指します。
できあがったプロトタイプは、顧客に確認してもらうほか、市場リサーチ等でニーズや改善点等を分析し、さらなる検証を行います。
プロトタイピングで、開発前に製品の改善点や問題点を見つけ出せるため、より品質の高い製品開発を行える点がメリットです。
また、プロトタイプがあることで実際の商品をリアルにイメージでき、新しいアイデアを生み出すきっかけにもなります。
その後、正式に製品開発を行うことになったら、より精緻なスケジュールや予算を決定していきます。
ターゲットの設定、明確化
プロダクトマネジメントを行ううえで、ターゲットユーザーが具体的になっていると、製品の開発もしやすくなります。
できるだけターゲット層の特徴やニーズを明確にし、絞り込むことで製品開発に反映できます。
ターゲット戦略がおろそかになっている場合、見込んだ成果を得ることが難しくなるため、慎重に設定する必要があるでしょう。
このフェーズではマーケティングのフレームワークを使う傾向にあります。
例えば、STP分析や4P分析等です。
【STP分析】
市場を細分化する「Segmentation(セグメンテーション)」
その市場のうち、どの顧客を狙うか「Targeting(ターゲティング)」
その顧客に提供できる、自社の提供価値は何か「Positioning(ポジショニング)」【4P分析】
・Product(顧客からみた製品価値)
・Price(価格戦略)
・Place(流通・商流・販売の場所や方法)
・Promotion(広告宣伝・販売促進の方法)
プロダクトマネジメントで、開発技術だけでなくマーケティング要素が求められる理由は、このようなプロセスを経るためです。
プロダクトロードマップ・KPI設定
続いて、プロダクトマネジメントをどのように推進していくのかという、プロダクトロードマップを立案します。
同時に、プロダクトマネジメントの成否を確認するためのKPIも設定します。
プロダクトロードマップとは、製品のビジョンやターゲットという概要と、リリースに向けての進捗方法を要約したものです。
プロダクト開発の規模が大きいほど、ステークホルダーが多くなる傾向にあります。
プロダクトロードマップを作成しておくことで、大勢のステークホルダーが、方向性や優先順位等を共有しやすくなるでしょう。
KPIとは、最終成果のみならず、プロセスが順調に進んでいるかを計測するための指標です。
あらかじめ目標数値や中間指標を決めておくことで、指標を参考にしながら途中の軌道修正もスムーズにできるようになります。
効果測定と開発の振り返り
製品をリリースするだけでなく、機能や顧客評価を効果測定し、振り返るのもプロダクトマネジメントの重要な役割です。
プロダクトマネジメントは、自社が対象製品を市場から撤退させるまで続きます。この全体のマネジメントのことを「プロダクトライフサイクル」といいます。
定期的に機能開発を振り返ることで、改良点を見いだせたり、市場でのポジショニング変化の必要性が明確になったりします。
製品の価値を増大させるために、製品に対する分析を継続することが重要です。
プロダクトマネジメントのステークホルダー
大型の開発案件であれば、プロダクトマネジメントには、多くのステークホルダーが存在します。
ステークホルダーの人数や、各メンバーが担うべき役割については企業によって異なりますが、本章では一般的な関係者や役割を紹介します。
CPO(チーフプロダクトオフィサー)
CPO(チーフプロダクトオフィサー)とは、最高製品責任者のことです。
CPOの責任や裁量範囲は企業により異なりますが、規模の小さい企業では実質的にCEO(チーフエグゼクティブオフィサー:最高経営責任者)がCPOの役割を担っているケースもあります。
PO(プロダクトオーナー)
PO(プロダクトオーナー)は、プロダクトマネジメント全体の責任者、あるいは開発チームの全体責任者を指すことが多いです。
プロダクトコンセプトに基づき、構想をどう開発現場へ落とし込んでいくかを考え、スケジュールやリソースをコントロールしながら実行する役割です。
企業やチームの規模によっては「プロダクトマネージャ」と統合し、POとPMを兼務するような役割になることもあります。
PM(プロダクトマネージャ)
PM(プロダクトマネージャ)とは、プロダクトマネジメント全体の実行を主導する役割、あるいは開発チームの実行責任者です。
プロダクトマネジメントの全体計画書や予算・スケジュールを立案し、進捗を確認しながら、何か問題が発生したら調整を行います。
現場メンバーへの指示と経営陣への報告の媒介となるため、プロダクトマネジメントの成否を分かつ重要な存在といえるでしょう。
PMM(プロダクトマーケティングマネージャ)
PMM(プロダクトマーケティングマネージャ)とは、顧客が求めているプロダクトを発見し、顧客ニーズを満たせるプロダクトの企画、マーケティング、販売戦略を考える立場です。
PM(プロダクトマネージャ)の役割から派生し、マーケティングに特化した役割として生まれました。
日本国内ではまだPMMを導入している企業は少ないものの、マーケティングが盛んな欧米企業では一般的な職種です。
プロダクトマネジメントに必要な能力
ここまでプロダクトマネジメントの業務について紹介してきましたが、どのようなスキルを持った方に適性があるのでしょうか。
本章では特にプロダクトマネジメント業務に必要な能力を3つ取り上げます。
1. 戦略立案・設計能力
前述した通り、プロダクトマネジメントは、製品管理ではなく製品を中心としたビジネスマネジメントです。
そのため、プロダクトマネジメントを担うには、製品を売るための戦略を描き、実行への道筋を設計する能力が必要となります。
具体的な戦略の内容としては、市場調査からのニーズの発掘という上流工程に始まり、ターゲットやコンセプト設計、リリース後のライフサイクルマネジメント等、多岐にわたります。
単に知見が豊富なだけではなく、実際にビジネスフレームワーク等を用いて、根拠のある戦略を導き出せるスキルが必要となります。
2. マーケティングスキル
プロダクトマネジメントでは、マーケターとしての高い能力が必要です。
対象となるプロダクトに応じたマーケティング・セールス戦略を実践し、売上を最大化させるためには、幅広いマーケティング知識や手法を駆使し、実行しなくてはいけません。
例えば、前述したSTP分析や4P分析の古典的なマーケティングのフレームワークにくわえ、最近はデジタルマーケティングに特化した知識も必要となります。
プロダクトマネジメントを担うためには、とりわけマーケティング分野の高い能力は必須です。
3. 数値理解・分析能力
製品の考案~投入~撤収までが範囲になるプロダクトマネジメントは、要所要所で数値を用い、分析する能力が必要です。
プロダクトマネジメントのプロセスは、判断場面が多い傾向にあります。
そのため、根拠となる数値データを読み解き、正しい経営判断を促す役割があります。
もちろん、成果の振り返りの際にも、定量データでの判断が求められるでしょう。
昨今はSaaS等に代表される数値分析ツールが豊富にあるため、最新のITツールを活用する能力も必要といえます。
まとめ
近年、消費者の購買行動の変化スピードは増しています。
一方、製品を作り出すには一定のタイムラグが生じます。変化の激しい時代だからこそ、素早くPDCAを回し、絶えず戦略を見直すプロダクトマネジメントの重要性も増していくでしょう。
戦略立案力やマーケティング力まで求められる能力は広範囲にわたりますが、今後さらに必要な機能といえます。
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