2026.07.15
人材教育
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サプライチェーン攻撃は、取引先や委託先、利用サービス等、自社と外部とのつながりが狙われるサイバー攻撃のひとつです。社内でセキュリティ対策を整えていても、つながりの先に弱点があれば、そこから攻撃を受け、被害が広がる恐れがあります。
また近年はサプライチェーン攻撃が増加しており、規模や業種を問わず、自社にも関係するリスクとして考える必要があります。しかし、実際にはどのような対策を進めたらよいのでしょうか。
本記事では、まずサプライチェーン攻撃の種類を整理したうえで、「技術・組織・人」の3つの軸による具体的な対策から、経営層から現場の従業員までの役割別アクションまでを、順を追って解説します。
サプライチェーン攻撃とは?対策が急務となっている背景
サプライチェーン攻撃では、委託先や子会社が「踏み台(攻撃の起点)」となり、攻撃の入口になってしまう場合があります。その場合、被害は自社内に留まらず、取引先や親会社へ波及する恐れがあります。
なかには情報漏えいや操業停止等に発展する事例もあり、「踏み台」にされることは、グループ全体・サプライチェーン全体を巻き込む経営危機につながりかねません。このリスクを前提に、まずは用語の意味・定義と、なぜ今対策が重視されているのかという背景から整理します。
取引先や委託先を「踏み台」にする間接的なサイバー攻撃
サプライチェーン攻撃とは、標的とする組織を正面から直接狙うのではなく、セキュリティ対策が比較的手薄な関連企業・取引先・委託先・利用サービス等を足がかりに、間接的・段階的に標的へ侵入していくサイバー攻撃です。
そもそもサプライチェーンとは、商品やサービスが企画・開発から調達・製造・在庫管理・物流・販売を経て利用者に届くまでの一連のプロセスと、それに関わる組織・外部サービスのつながり全体を指します。
ここで押さえておきたいのは、自社内の対策をどれだけ固めても、このサプライチェーンとしてつながっている先が弱点になれば被害が及び得る、という点です。これは特定の企業の落ち度を指すものではなく、組織と組織が業務でつながっている以上、どの組織にとっても起こり得る構造的なリスクとして理解しておくことが、対策の出発点になります。
IPA「情報セキュリティ10大脅威」でも長年上位に選出
サプライチェーン攻撃が企業にとって大きな脅威になり得ることは、公的機関の発表からも確認できます。IPA(情報処理推進機構)が毎年公表する「情報セキュリティ10大脅威 2026」では、組織向け脅威として「サプライチェーンや委託先を狙った攻撃」が8年連続で選出され、また4年連続で2位となっています。
注目すべきは、この脅威には自社が被害者になるケースだけでなく、「踏み台」となって、取引先や親会社、グループ全体へ影響を広げてしまうケースもあることです。
企業規模の大小に関わらず、地方の工場や子会社、委託先が取引関係上の入口となる場合があります。自社が攻撃の主目的ではなくても、取引先や親会社につながる経路として悪用されれば、信用の失墜や取引の停止、損害賠償の請求等へ発展するリスクがあります。
1か所の弱点が、自社だけでなくサプライチェーン全体を巻き込む経営課題になり得る、というのが、この攻撃の本質的な怖さです。
参考:「情報セキュリティ10大脅威 2026」
サプライチェーン攻撃の主な種類と具体的な被害事例
サプライチェーン攻撃は、どの「つながり」を悪用するかによって、代表的な手口を大きく3つに整理できます。それぞれの特徴と、近年国内で実際に起きた事例を併せて見ていきましょう。
1. ビジネスサプライチェーン攻撃
ビジネスサプライチェーン攻撃とは、取引先・子会社・委託先等、ビジネス上のつながりを悪用する手口です。セキュリティ対策が手薄な委託先を経由して標的の社内ネットワークへ侵入するケースのほか、実在する取引先とのやり取りを装い、請求書や納期確認等の業務連絡に見せかけたメールで担当者をだますケースもあります。後者は既存の取引関係や信頼関係を悪用するため警戒が緩みやすく、攻撃に気付きにくい点が特徴です。
国内では2020年代に、印刷関連業務の委託を受けていた企業が、ランサムウェアによる不正アクセスを受け、社内のサーバー等が暗号化される被害が発生しました。それに伴って委託されていた個人情報が漏えいした恐れが生じ、影響は委託元にまで波及しています。
同じく2020年代、自動車部品を供給していた企業がサイバー攻撃を受けた影響で、供給先の製造業で複数の国内工場の稼働を一時停止する事態も起きています。自社が直接狙われていなくても、つながり先が侵害されることで、操業停止や情報漏えいといった深刻な影響が及び得ることを示す事例です。
2. ソフトウェアサプライチェーン攻撃
ソフトウェアサプライチェーン攻撃とは、ソフトウェアの開発・配布のプロセスを悪用する手口です。正規のアップデートや、開発で利用するOSS(オープンソースソフトウェア)のライブラリに不正なコードを紛れ込ませるケースがあります。OSSライブラリは、さまざまな開発者が作成・更新に関わるプログラムの部品であり、通常の開発工程の一部として多くのシステムで利用されます。このため悪意を持って改ざんされている可能性に気づきにくく、被害の発覚まで時間がかかりやすい点が特徴です。
2020年代には、改ざんされたOSSライブラリが開発工程に取り込まれたことをきっかけに、開発環境への不正アクセスにつながった事例もあります。このように、ソフトウェアサプライチェーン攻撃では、完成した製品やサービスだけでなく、開発・ビルド環境そのものも攻撃経路になり得ます。ソフトウェアの開発や運用に関わる組織では、利用するライブラリや開発環境の管理を重要な防御対象として位置づけることが求められます。
3. サービスサプライチェーン攻撃
サービスサプライチェーン攻撃とは、外部のサービス事業者が侵害され、そのサービスを利用する企業にも被害や業務影響が及ぶ手口です。複数企業のシステム運用を請け負うMSP(マネージドサービスプロバイダー)やクラウドサービス事業者が侵害されると、そのサービスを利用する多数の顧客企業にも被害や業務影響が及ぶ恐れがあります。利用企業の多いサービスほど、影響が広範囲に及びやすい点が特徴です。
2020年代に、クラウド型業務システム提供事業者がランサムウェアによる不正アクセスを受けた事例がありました。この事例では、データセンター上のサーバーに保存されていたデータが暗号化され、同社サービスの利用者の多くが一時的にサービスを利用できない状況となりました。自社が直接攻撃を受けていなくても、提供元の事情で業務が止まり得る、ということを示す事例です。
サプライチェーン攻撃対策の基本となる「3つの軸」
サプライチェーン攻撃への対策は、実際に何から手を付ければよいのでしょうか。ポイントは、「技術的対策」「組織的対策」「人的対策」の3つの軸で整理して考えることです。
ここからは各軸の要点を具体的に解説していきます。
1. 技術的対策|脆弱性を塞ぎ、侵入と被害の拡大を防ぐ
まず土台となるのが、技術面での備えです。OSやソフトウェアの脆弱性を放置しないよう、修正プログラム(アップデート)を適用するとともに、社内で利用しているIT資産やソフトウェアの状況を把握しておきます。同時に、多要素認証等による認証の強化や、不正な侵入をいち早く検知して対応するためのEDR(端末上の不審な挙動を検知・対応する仕組み)の導入も検討するとよいでしょう。
ソフトウェアサプライチェーン攻撃に備えるなら、納品物や利用しているソフトウェアに、どのような構成要素が含まれているかを把握しておくことも重要です。その手段として、SCA(ソフトウェア構成分析)ツールを用いたSBOM(ソフトウェアの構成部品の一覧表)の導入等が選択肢になります。
2. 組織的対策|体制・ルールを整備し、継続的に見直す
技術だけでなく、それを運用する体制づくりも欠かせません。まずはセキュリティの責任者を定め、対応に必要な体制や予算を整理したうえで、社内ポリシーを策定しましょう。ポリシーは一度作って終わりではなく、PDCAを回しながら継続的に見直していくことが大切です。
さらに、万が一インシデントが発生した際には「社内で誰にどう報告するか」、そして「取引先との間でどのように連絡・共有を行うか」というプロセスをあらかじめ決めておくことが、被害の拡大防止につながります。
3. 人的対策|従業員のリスク感度を高め、人起点の被害を減らす
従業員一人ひとりを対象とした人的対策も重要です。標的型メールや不審な添付ファイルの見極め等、攻撃の入口となりやすい場面に気づける力を、教育を通じて育てていきます。
ここで意識したいのは、技術的対策・組織的対策をしっかり整えても、それだけではリスクを十分に抑えきれない、という点です。サプライチェーン攻撃のなかには、なりすましメールや認証情報の詐取等、「人」の判断や操作を介して仕掛けられるケースがあります。どれほど高度な仕組みを導入しても、最終的にメールを開き、リンクをクリックするのは人なのです。
これは「現場の意識が低い」という話ではありません。誰にでも起こり得る人的リスクであるからこそ、定期的・継続的に学べる機会を用意することに意味があります。
【役割別】サプライチェーン攻撃対策として今すぐ取り組める実践アクション
サプライチェーン攻撃対策は、特定の部門だけで完結するものではなく、それぞれの立場で役割を果たすことで、はじめて全体の守りが機能するものです。
ここからは対策のポイントとなる3つの軸を踏まえたうえで、「誰が」「何に取り組むか」を役割別に分かりやすく整理します。
経営層・情報システム部門|方針・体制を決め、委託先管理の仕組みを統括
経営層は、サプライチェーンのセキュリティを「経営課題」として位置づけ、体制と予算を確保したうえで、ガイドラインに沿った方針を決定する役割を担います。
具体的には、委託先・取引先に求めるセキュリティ対策の水準を明確にし、その状況を把握して必要に応じて改善を求める仕組みづくりが中心です。状況把握の手段としては、セキュリティチェックシートやセキュリティ評価サービスの活用が挙げられ、その技術的な妥当性を情報システム部門が評価していくと、実効性が高まります。
なお、取引先に対応を求める際は、相手に過度な負担をかけないよう配慮し、関連する法令も押さえておく必要がある点に注意しましょう。契約内容や法的な扱いについては、自社で断定せず、必要に応じて専門家に相談することをおすすめします。
調達・購買/営業・製造部門|契約・チェックシートで取引先のセキュリティ要件を運用
取引先と直接やり取りする部門は、決められた要件を日々の取引のなかで「運用」する役割を担います。取引の開始時や継続時にセキュリティ要件を確認し、その内容を契約に反映させたうえで、定期的に確認(監査)する流れを整えておくと安心です。併せて、サプライヤーや取引先との連絡・報告のプロセスを確立しておくことも欠かせません。
近年は、取引先から自社へセキュリティチェックシートの提出を求められる場面も増えています。「求める側」と「求められる側」のどちらの立場にもなり得る、という前提で要件を整理しておくと、いざ提出を求められた際にも落ち着いて対応しやすくなります。
現場の従業員|日常業務の中で攻撃の入口を防ぐ
現場の従業員は、攻撃の入口を日常業務のなかで防ぐ、最前線の役割を担います。「不審なメールや添付ファイル、リンクを開く前に見極めること」、「少しでも怪しいと感じたら定められた報告ルートにすぐ連絡すること」、そして「私物端末や外部記録媒体の取り扱いルールを守ること」等が、基本かつ重要な行動です。
これらは、個人の責任を追及するためのものではありません。「組織全体で守る」という前提のもと、一人ひとりの小さな行動が全体のリスクを下げる、という考え方で取り組むことが大切です。
対策の実効性を高める鍵は「従業員のセキュリティ教育」
ここまでサプライチェーン攻撃への対策を紹介しましたが、これらを実際に支え、実効性を左右するのが「人」です。対策の仕上げとして、その教育をどう実現するか、という視点を掘り下げてみましょう。
どれだけ強固なシステムを築いても、最後は「人」が分岐点になる
技術的な仕組みと組織的なルールを整えても、それを実際に運用するのは従業員です。サプライチェーン攻撃の怖さは、どれほど強固なシステムを導入していても、委託先や自社の従業員が1通の標的型メールを開いてしまうだけで、防御が崩れ得る点にあります。
裏を返せば、システムの導入と同じくらい、あるいはそれ以上に、自社の従業員はもちろん、グループ会社や委託先まで含めた「人のセキュリティ意識の底上げ」が、対策の最後の砦になるということです。
効率的かつ均一な教育を実現する「eラーニング」という選択肢
とはいえ、自社だけでなく子会社や委託先の従業員にまで定期的に集合研修を実施するのは、コストや手間の面で容易ではありません。拠点が分散していればなおさらでしょう。
そこで継続学習の環境づくりの選択肢となるのが、eラーニングです。時間や場所を選ばずに学べるため、全拠点や新しく加わった従業員にも展開しやすく、最新のサイバー攻撃の手口(標的型メールやフィッシング対策等)を、組織全体で一律に学べます。現場の負担を抑えながら教育の質を揃えやすいのもeラーニングの利点です。継続的に取り組むことで、従業員一人ひとりのセキュリティ意識が組織全体で底上げされていきます。
まとめ
サプライチェーン攻撃は、技術・組織・人という3つの軸で対策を整え、経営層から現場の従業員までがそれぞれの役割を果たすことで、被害のリスクを下げていくことができます。重要なのは、自社の対策と、取引先を含めたサプライチェーン全体の対策を「両輪」で進めることです。
そのうえで対策の実効性を左右するのが、従業員一人ひとりのセキュリティ知識と意識です。これらの底上げは、自社だけでなくサプライチェーン全体のリスク低減につながります。現場の負担は抑えつつ継続して学べる環境として、eラーニングの導入も検討してみましょう。
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