2025.07.18
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ビジネスシーンでよく使われる「KPI」とは、企業が最終的な目標を達成するために設定する中間指標のことです。適切なKPIを設定すれば、目標達成へのプロセスや個人の行動指針を明らかにできます。KPIの運用効果を高めるためには、最終目標との整合性や現場の声を考慮した指標の設定が大切です。
本記事では、KPIの意味や設定・運用のポイントを紹介します。KPIの具体例を業種別に紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
KPIとは
KPIとは、ビジネスにおける企業の最終目標達成までの進捗を可視化する指標のことで、「Key Performance Indicator(重要業績評価指標)」の略称です。売上目標を例にすると、新規顧客数や成約率等がKPIとして挙げられます。
KPIを設定すると、組織全体が同じ目標に向かって動きやすくなり、効率的なマネジメントが可能になるでしょう。
【一覧表】KGI、KFS、OKRとの違い
KPIとKGI、KFS、OKRの違いは、以下の通りです。
意味 | |
KPI | KGI達成までの進捗を管理するための指標 |
KGI | ビジネスの最終的なゴールを表す指標 |
KFS | KGIを達成するために必要な要素 |
OKR | 目標と成果指標を設定することで、組織全体の方向性を統一し、生産性向上をめざす目標管理手法 |
それぞれの違いを詳しく解説します。
KGIとの違い
KGIとは、ビジネスの最終目標を表す指標で「Key Goal Indicator(重要目標達成指標)」の略称です。一方、KPIはKGIを達成するために必要な中間目標といえます。
例えば、KGIを「年間売上1億円」とする場合は、KPIを「月間新規顧客数100人」といったように年間売上1億円を達成するための数値に設定します。このようにKPIは、KGIを達成するために具体的かつ行動に直結する指標として用いられるのです。
KFSとの違い
KFSとは、KGI達成のために必要な要素を指し「Key Factor for Success(重要成功要因)」の略称です。
KGI達成までの進捗を測定する指標であるKPIに対して、KFSはその目標を達成するために設けられます。KGIを「年間売上1億円」としている企業では、リピート率の向上や営業力の強化等がKFSとして挙げられます。
OKRとの違い
OKRは、目標(Objectives)と成果指標(Key Results)を組み合わせた目標管理手法のことです。OKRを設定する際は、目標に定性的(数値化できない要素)で方向性を明らかにする内容、成果指標に定量的かつ測定できる内容を採用します。
KPIはKGIを達成するための進捗管理に使われるのに対し、OKRは挑戦的な目標を掲げて組織の成長や個人のモチベーション向上を目的に設定されます。
ビジネスでKPIを設定するメリット
ビジネスでKPIを設定することには、以下のようなメリットがあります。
- 目標達成へのプロセスが明確になる
- 個人の行動指針が明らかになる
- 成果を客観的に評価しやすくなる
- 社員のモチベーションが向上する
それぞれ詳しく紹介します。
目標達成へのプロセスが明確になる
KPIを設定すれば、最終目標達成までのプロセスを数値で管理できます。例えば「年間売上1億円」という目標に対して「月間新規顧客50人」「リピート率40%以上」といったKPIを設定すれば、売上を伸ばすためのプロセスが細分化され、進捗管理や戦略の見直しをしやすくなります。
KPIは、目標達成を計画的に進めるための指標といえるでしょう。
個人の行動指針が明らかになる
最終目標だけが示されている状態では、個人が何から取り組むべきか不明確になりがちです。「1日当たりの問い合わせ対応数を20件以上にする」「週に3件の商談を入れる」等のKPIを設ければ、日々の業務の優先順位が明らかになります。
自律的な行動や成果への意識も高まり、責任感をもって業務に取り組めるようになるでしょう。
成果を客観的に評価しやすくなる
KPIを設定すると、成果を数値で確認できるため、感覚や主観に左右されない公平な評価をしやすくなります。成果を客観的に評価しやすくなることは、フィードバックの質を高めることにもつながります。
KPIは、目標達成の指針になるだけでなく、人材育成や評価制度の見直しにも役立つでしょう。
社員のモチベーションが向上する
KPIを用いてめざすべき方向性を明確にできれば、モチベーションを高めた状態で業務に取り組みやすくなります。進捗を数値で管理できるようになれば、達成感も得やすくなるでしょう。
KPIはただの目標管理の指標ではなく、社員の意識や行動にもよい影響を与えるのです。
ビジネスでKPIを設定・運用する流れ
ビジネスでKPIを設定・運用する基本的な流れは、以下の通りです。
- KGIを設定する
- KFSを洗い出す
- KPIを設定する
- チーム内の合意を得て運用を開始する
- 進捗確認と評価をする
順番に詳しく解説します。
1.KGIを設定する
KPIを設定する前に、まずはKGI(重要目標達成指標)を明確にする必要があります。KGIは、企業の最終目標となる指標で「売上高」や「利益率」で設定されることが多いです。
最終的に何を達成したいのかを明らかにすることで、KPIの精度が高まります。
2.KFSを洗い出す
次にKGIを達成するために必要な要素であるKFS(重要成功要因)を洗い出しましょう。これには、どのような要素が必要になるのかを事前に検討し、KPI設定の精度を高める目的があります。
売上高の増加をKGIとした場合は、「商品認知の向上」や「リピーターの獲得」等がKFSに該当します。KFSの洗い出しは、業務全体を戦略的に見直すきっかけにもなるでしょう。
3.KPIを設定する
KGIとKSFが設定できたら、それらを踏まえたうえで部署やチームのKPIを設定します。その後、部署やチームのKPIを基に、個人のKPIを検討します。KPIを設定する際は、具体的かつ管理しやすい指標にすることが大切です。
4.チーム内の合意を得て運用を開始する
KPIを設定したら、メンバーに共有し、合意を得たうえで運用を始めることが大切です。経営陣や上司のみでKPIを設定すると、現場の意見が反映されていない無理な目標になる可能性があります。
チームや本人が納得いくKPIに設定し、モチベーションや自発性を引き出しましょう。
5.進捗確認と評価をする
KPIは設定したら終わりではなく、定期的に進捗を確認し、必要に応じて見直していきましょう。
KPIの評価をする際は、達成状況だけでなく、運用方法も振り返ることが大切です。
進捗確認の頻度やKPIを達成するまでの行動を振り返り、KPI運用がどのような影響をもたらしたのかを総合的に判断します。
次回のKPI設定に活かせるように、さまざまな視点で振り返りましょう。
KPIを設定・運用するときのポイント
KPIを設定・運用するときは、以下のポイントを押さえておきましょう。
- SMARTの原則を活用する
- 現場で管理しやすい指標を設定する
- KPIツリーを活用する
一つずつ詳しく解説します。
SMARTの原則を活用する
KPIを設定する際は、SMARTの原則を活用するのが効果的です。
SMARTの原則とは、以下の5項目を満たした目標を設定することで目標達成の精度を高めるフレームワークのことです。
Specific(具体性) | 何を・どのように行うのかを具体的にする |
Measurable(測定可能性) | 数値で進捗や達成度を確認できるようにする |
Achievable(達成可能性) | 現実的に達成できる水準にする |
Relevant(関連性) | KGIやチームのKPIと関連性をもたせる |
Time-bound(期限の明確性) | 達成の期限を明確に定める |
SMARTの原則を活用すれば、現実的かつ実行可能な指標を設定しやすくなるでしょう。
現場で管理しやすい指標を設定する
KPIを設定する際は、現場が無理なく管理できる指標にしましょう。毎日確認できる数値や、既存ツールで簡単に取得できるデータをKPIにすれば、負担をかけずに活用できます。
一方、KPIが複雑すぎたり集計に手間がかかったりすると、運用が定着しない可能性が高くなってしまいます。現場で使いこなせるKPIを選ぶことで、目標達成に向けた行動へスムーズに移せるようになるでしょう。
KPIツリーを活用する
KPIを構造的に整理するためには「KPIツリー」を活用することが大切です。KPIツリーとは、KGIを達成するために必要な要素を階層的に分解し、階層ごとにKPIを設定する手法です。
KGIとKPIのつながりが可視化できると、全体の戦略と現場の業務との関係性を意識した目標設定がしやすくなるでしょう。
【業種別】KPIの設定例
KPIの導入効果を高めるためには、適切な指標を設定することが求められます。
ここでは、業種別のKPIの設定例を紹介します。
営業
営業職で設定されることの多いKPIには、以下のような指標があります。
- 新規商談数
- 成約率
- 月間売上
- 新規アポイント数
- リピート率
売上に直結する行動や成果を可視化できる指標に設定するのが一般的です。
マーケティング
マーケティングでは、施策に応じて以下のようなKPIを設定します。
SEO施策 |
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広告施策 |
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メールマガジン施策 |
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目的に応じたKPIで施策の効果を測定・改善していきましょう。
人事
人事では、以下の指標をKPIとして設定することが多いです。
- 応募者数
- 採用人数
- 内定承諾率
- 離職率
採用や職場定着率向上を図るための指標が中心となるでしょう。
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスで設定されることの多いKPIは、以下の通りです。
- 契約継続率(リテンション率)
- 顧客満足度(CSAT)
- 問い合わせ対応時間
- NPS(ネット・プロモーター・スコア)
顧客との関係性やサービスの質を可視化できる指標を設定します。
製造
製造業のKPIには、以下のような指標があります。
- 生産数
- 不良率
- 稼働率
- 納期遵守率
製造現場の効率や品質を高めるためのKPIを設定するのが一般的です。
システム開発
システム開発では、以下の指標をKPIとして設定することが多いです。
- バグ発生件数
- 開発完了までの期間
- テストの合格率
- スプリント完了率
- ストーリーポイントの消化率
システム開発の進捗や品質の客観的な評価ができる指標を設定するのが効果的です。
財務
財務で設定されるKPIには、以下のようなものがあります。
- キャッシュフロー
- 利益率
- 予算達成率
- 固定費削減率
経営の健全性や資金繰りの状況を把握できる指標を重視する傾向にあります。
まとめ
KPIは、目標達成に向けた進捗を可視化するための指標のことです。
KPIを設定すると、チームや個人の行動指針が明らかになったり、成果を客観的に評価しやすくなったりします。
KPIの運用効果を高めるためには、単なる知識だけでなく、「設計力」「伝え方」「評価への落とし込み方」までを一貫して学ぶことが大切です。
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