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下請法とは?対象取引や事業者の違反事例を分かりやすく紹介

2024.12.03

下請法とは?対象取引や事業者の違反事例を分かりやすく紹介

下請企業は、資本金の大きな企業と取引する際に不利な立場になりやすいことから、下請法によって保護されています。

下請法に違反した企業は、企業名の公表や罰金等のペナルティが科せられるため、どのような行為が違反になるのかを全社員が把握しておかなければなりません。

本記事では、下請法が適用される取引内容や事業者、違反と見なされる行為を解説します。

違反を防ぐ方法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。

下請法(下請代金支払遅延等防止法)とは

下請法とは、取引上不利な立場となりやすい下請企業が代金の未払いや無理な値引き等、不当な扱いを受けないように守るための法律です。

違反した企業は、企業名が公表されたり、罰金が科せられたりします。

ただし、すべての取引に適用されるわけではなく、取引内容や企業の資本金額によって適用有無が異なります。

下請法の対象となる取引

下請法が適用される取引は、以下の4つです。

  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託
  • 役務提供委託

それぞれ詳しく解説します。

製造委託

製造委託とは、製品の販売や製造をする企業が他の企業に仕様を指定して製造を依頼することをいいます。

例えば、家具メーカーが自社のプライベートブランド商品の製造を他の企業に依頼するケースや、家電メーカーが家電製品の製造に必要な部品を他の企業に発注するケースが該当します。

修理委託

修理委託とは、製品の修理を受託している企業が修理を外部委託することを指します。

また、自社で使用している製品の修理作業の一部を他の企業に依頼するのも修理委託です。

具体的には、家電メーカーが顧客から受けた修理依頼を他のメーカーに頼むケースや、製造業者が保有している機器のメンテナンス作業の一部を外部委託するケース等が当てはまります。

情報成果物作成委託

情報成果物作成委託は、ソフトウェアのプログラムや映像コンテンツ等を作成する企業が、これらの作成を他の企業に依頼することをいいます。

例えば、ゲームソフトを販売する企業が他の企業にプログラム業務を任せるケース等が該当します。

役務提供委託

役務とは、運送やビルメンテナンス、警備等のことです。

これらのサービスを提供する企業が受託した仕事を他の企業に任せることを役務提供委託といいます。

例えば、運送業者が荷物の運送の一部を他の運送業者に依頼するケースが該当します。

なお、建設業者が建設工事を外部委託する際は、下請法の適用対象外となるため注意が必要です。

この場合は建設業法によって下請企業が保護されることになります。

下請法の対象となる事業者

下請法の適用有無は、取引企業の資本金額によって以下のように異なります。

取引内容 親企業の資本金額 下請企業の資本金額
  • 製造委託
  • 修理委託
  • 情報成果物作成委託(プログラム作成のみ)
  • 役務提供委託(運送・倉庫保管・情報処理の委託のみ)
3億円超 3億円以下
1,000万円超3億円以下 1,000万円以下
  • 上記以外の情報成果物作成委託
  • 上記以外の役務提供委託
5,000万円超 5,000万円以下
1,000万円超5,000万円以下 1,000万円以下

下請企業には法人企業だけでなく、個人事業主も該当するため注意しましょう。

なお、親企業が資本金の少ない子会社に業務を委託し、子会社が他の企業へ再委託するときに以下の要件を満たすと、下請法で定められた資本金額に該当しない子会社であっても親企業として扱われます。

  • 親企業が実質的に子会社を支配している(親企業が子会社の50%を超える議決権を所有している等)
  • 親企業からの委託の50%以上を再委託している

例えば、資本金3億円超の親企業が実質的に支配している資本金2億円の子会社に製造業務を委託し、子会社が資本金1億円の企業に製造を再委託した場合は下請法が適用されます。

下請法における親事業者の義務

下請法の対象取引をする際は、資本金の多い親企業に以下の4つの義務が定められています。

  • 支払期日を定める義務
  • 発注書面の交付義務
  • 取引記録の保存義務
  • 遅延利息の支払義務

それぞれ詳しく解説します。

支払期日を定める義務

資本金の大きい親企業は、下請企業に依頼した仕事の受領日から60日以内に支払日を設定しなければなりません。

例えば、月末締めの場合は、翌月末または翌々月末払いとするのが一般的です。

双方が合意しても、受領日から60日を超えた日を支払日とすることはできません。注意しましょう。

発注書面の交付義務

口頭でのやり取りでは契約内容があいまいになりやすく、下請企業が損失を受けてしまう可能性があります。

そのような状況にならないために、発注者に対して書面を交付することが義務付けられています。

発注書には、発注内容や納期、受領場所、支払期日等を記載しなければなりません。

取引記録の保存義務

発注者は、下請法の対象取引内容を記録した書類を作成し、2年間保存する義務があります。

取引記録には、実際の受領日や支払額、支払日、発注内容の変更理由等を記載します。

取引記録を紛失しないためにも、適切な文書管理規程を設けておきましょう。

遅延利息の支払義務

支払期日を守らなかった親企業は、下請企業に遅延利息を支払わなければなりません。

遅延利息は、受領日から60日を経過した日から支払日までの日数に年率14.6%をかけて算出されます。

親企業は支払期日に遅れないように、余裕をもって事務処理を進めましょう。

親事業者の禁止行為

親企業が下請企業に業務を依頼する際には、以下の行為が禁止されています。

  • 受領拒否
  • 下請代金の支払遅延
  • 下請代金の減額
  • 不当返品
  • 買いたたき
  • 物の購入強制や役務の利用強制
  • 報復措置
  • 有償支給材料等の対価の早期決済
  • 割引困難な手形の交付
  • 不当な経済上の利益の提供要請
  • 不当な給付内容の変更ややり直し

これらの行為は、下請事業者の了承を得ていたとしても違反と見なされます。

禁止行為が発覚すると、罰金や下請代金の減額分の返還を求められることがあるため、注意しましょう。

下請法に違反した場合の罰則

公正取引委員会や中小企業庁は、違反行為をしていないかを確認するために、書面調査や取引記録の確認、立入検査を実施しています。

違反した企業には、以下のようなペナルティが科されます。

  • 勧告を受けた企業名と違反内容の公表
  • 発注書面の未交付や取引記録の未保存:最高50万円の罰金
  • 虚偽報告や立入検査の拒否:最高50万円の罰金

企業名と違反内容が公表されれば、これまで積み上げてきた社会的な信用を失う恐れがあります。

企業イメージを損ねてしまうと、消費者の買い控えや取引先からの契約解除に発展することも考えられるでしょう。

下請法の違反事例

下請法違反を防ぐためには、どのような違反事例があるのかを知っておくことが大切です。

ここからは、実際に勧告を受けた企業の違反事例を紹介します。

事例①下請代金の減額

下請企業が契約どおりに業務を遂行しているにもかかわらず、発注後に代金を下げるのは違反行為です。

自動車部品の製造会社が自動車メーカーから請け負った部品の製造を下請企業に委託した。しかし、下請企業が鉄くずを売却すれば金銭を得られると指摘し、2022年5月から2023年6月までの期間中の対価の一部である約6,193万円を下請代金から差し引いた。

下請企業の合意があったとしても、不良品の納入や納期遅れ等、明確な契約不履行がなければ代金の減額は違反行為となります。

公正取引委員会は、減額した自動車部品の製造会社に対して、減額した金額を速やかに下請企業に支払うよう勧告しました。

さらに、発注担当者に対して下請法の研修を実施したり、下請法違反が起きないように社内体制を見直したりする等の再発防止策を講じることを求めました。

事例②不当な給付内容の変更

発注後に給付内容を変更すると、下請企業の損失につながる可能性があります。

製紙会社は、自社が販売するマスクの製造を外部委託していたが、下請企業が納品準備に取り掛かっている段階で、発注の一部を取り消した。

下請企業は必要な部材をすでに手配していたため、約2,622万円を負担することとなった。

依頼された企業は、発注内容に沿って納品準備を始めるため、発注後の内容変更は違反行為と見なされます。

発注の一部を取り消した製紙会社は、下請企業が負担することとなった約2,622万円を支払っています。

公正取引委員会からは、全社員や取引先企業に対して違反事実と再発防止策を周知するよう勧告されました。

事例③買いたたき

買いたたきとは、親企業が一方的に不当な代金を定めることです。

中古車販売業者が、自社の販売する車や購入者から依頼された中古自動車の表面研磨加工、コーティング加工を下請事業者に委託。

営業本部の意向を踏まえ、従来の単価から27.7%引き下げた発注単価を設定した。

買いたたきによって下請企業の利益が減少すると、経営難につながる可能性があります。

この事例の中古車販売業者には、買いたたき以外にも発注書面の未交付や代金の支払遅延、車両購入の強制等、複数の違反行為がありました。

取引記録も適切に保存されていなかったため、違反行為の全容を明らかにするために第三者による調査をおこない、再発防止のためのマニュアル作成や研修の実施を求めました。

違反行為が複数あったことから、公正取引委員会は今後の違反を防止するための改善状況を継続的に監視することとしました。

下請法違反を防ぐ方法

下請法に違反した企業はペナルティが科せられるだけでなく、社会的な信用を失ってしまうことになります。そうした状況にならないためには、適切な対策をして違反を防ぐことが大切です。

ここからは、違反を防ぐ方法を解説します。

方法①下請法に関する研修を実施する

下請法違反を防ぐためには、どのような行為が違反となるかを全社員に理解してもらうことが大切です。

発注する際のルールや違反行為を正しく理解してもらうために、研修やeラーニングを取り入れましょう。

サイバー大学の「Cloud Campusコンテンツパック100」では、全社員向けの「下請代金支払遅延等防止法」等のコンテンツをeラーニングで学べます。

従業員に下請法や個人情報保護法等のコンプライアンスへの意識を高めたい企業は、ぜひ導入を検討してみてください。

方法②下請法に関するマニュアルを作成する

社員が下請法を遵守するためには、マニュアルの作成と徹底した運用が大切です。

マニュアルを見ながら取引をすることで、違反の防止につながります。

マニュアルを作成する際は、自社の業務内容に沿って、どのような行為が違反となるか、禁止行為や適切な対応方法を記載しましょう。

方法③内部監査を実施する

公正取引委員会や中小企業庁の調査によって下請法違反が発覚すると、ペナルティを科せられる可能性があります。

企業名と違反内容が公表されると社会的信用を失ってしまうため、内部監査によって日頃から違反行為が起きていないかのチェックが大切です。

部下の発注作業を上司がチェックする等、違反行為をしていないかの確認を習慣化するのも違反防止につながるでしょう。

まとめ

下請法は、立場の弱い企業が不当な扱いを受けないようにするための法律です。

違反したときは企業名と違反内容が公開されるため、社会的信用を失うことにつながります。

くわえて、罰金を科せられたり下請代金の減額分の返還を求められたりすることもあります。

違反を防ぐためにも、研修の実施やマニュアルの作成によって、どのような行為が違反にあたるのかを全社員に理解してもらうことが重要です。

サイバー大学の「Cloud Campusコンテンツパック100」では、全社員向けの「下請代金支払遅延等防止法」等のコンテンツを提供しています。

従業員の下請法への意識を高めて、違反行為のない公正な取引をしましょう。

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